妊活とは何をするもの?今から始めたい5つのこと

結婚をして子どもが欲しいと考えているカップルが行う妊活。「ベビ待ち」とも言われているようですが、実際に妊活をしようと思っても、何から始めれば良いのか分からない人もいると思います。今回は、妊活とはどのようなことをするのか、妊娠しやすい体になるためにはどうすれば良いのかを詳しく解説していきます。

監修医師
山田光泰先生
山田光泰先生
産婦人科専門医。大学病院等で不妊治療を中心とした最先端の医療に従事しつつ、厚生労働医系技官として母子保健施策の推進にも携わってきた。現在は、女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、テクノロジーを活用した課題解決にも取り組む。

そもそも妊活って何?

ハートを持つ男女
「妊活」について医学的に明確な定義はなく、一般的に、子どもを欲するカップルが妊娠するために行う活動のことを指しています。

とある製薬会社の調査によると、妊娠を希望するカップルの約3組に1組が妊活を行っているとされています。妊活の開始時期はやや早期化されており、2019年の調査の結果では、妊活中の女性の3人に1人が20代後半から妊活を始めたという結果が出ています(※1)

とはいえ、妊活を始めるタイミングに決まりはありません。「赤ちゃんが欲しい」と思った時が、ふたりにとって最適なタイミングです。

また、近年では男性と女性が積極的に協力して妊活を行っている傾向にあり、2021年に同製薬会社が行った調査によると、約55%の夫婦が「ふたりで妊活できている」と回答しています(※2)。以前は「妊活=女性がするもの」というイメージがあったかもしれませんが、最近は「妊活は夫婦ふたりで行うもの」と考える人が増えてきているようです。

妊活って何をすれば良いの? ふたりで意識したい5つのこと

赤いハートを持っている手
妊活には「これをすれば絶対に妊娠できる」という明確な答えはありません。しかし、妊娠にはふたりの健康な心と体が必要です。妊活を始める際は健康な体づくりを意識しましょう。ここでは、女性と男性の両方に向けた妊活を紹介します。

1. 生活習慣を整えてストレスを溜めない

ストレスは妊活の大敵です。ストレスが溜まると女性はホルモン分泌に、男性は精子の状態に影響を及ぼします。生活習慣を整える、睡眠をしっかりとる、家事はふたりで分担するなど、ストレスが溜まらない生活を意識しましょう。

2. 適度な運動をする

適度な運動は、妊娠率を向上させるという報告があります(※3)。また、運動不足が続くと血流が悪化して体の不調を招くことがあるため、日頃から体を動かすことを意識しましょう。ただし、過度な運動は逆効果となる場合もあるため注意が必要です。室内でできるヨガやストレッチ、風景も楽しめるウォーキングなど、生活に取り入れやすい運動がおすすめです。ストレス解消や気分のリフレッシュにもつながりますよ!

3. 体重管理を意識する

女性の低体重(痩せすぎ)・肥満が妊娠や出産に良くないことは知られていますが、実は男性の肥満も同じです。妊活や健康のために、男女ともに適正体重・BMIの維持を意識しましょう。BMIの適正範囲は男性が「23〜27程度」、女性が「21〜23程度」とされています。低体重・肥満は妊活に次のような悪影響を及ぼします。

<女性>
低体重も肥満も、女性ホルモンの分泌に影響を及ぼすため妊娠しづらくなります。妊娠できたとしても、母親が低体重だと赤ちゃんも低出生体重児と言う未熟な状態で生まれてしまう恐れがあります。反対に、母親が肥満だと胎児が大きくなりすぎて、肩甲難産など出産時のトラブルが起きる恐れがあります。他にも、流産や早産の可能性が上がる、胎児の発育に影響を及ぼすなどのリスクが上がります。

<男性>
肥満は、男性ホルモンであるテストステロンの低下をもたらします。肥満の男性は、精子の質が低下することで妊孕性(にんようせい:妊娠するために必要な能力のこと)も低下することが研究(※4)によって判明しています。

同じく、肥満はED(勃起不全)につながる恐れもあるため注意が必要です。

 4. 妊活中から禁煙する

喫煙は妊活から出産まで、多大な悪影響を及ぼすことが分かっています。

性別 喫煙が与える主な影響
女性 ・卵巣機能の低下
・女性ホルモンの分泌量の減少
・卵胞成長の阻害
・卵子の老化
・早発閉経
・早産
・低出生体重の誕生
・胎児発育遅延 など
男性 ・精巣の働きの低下
・精子数の減少
・精子の運動能低下(元気のない精子が増える)
・勃起障害 など

なお、パートナーは喫煙していなくても、一緒にいることで受動喫煙によって悪影響を受けてしまいます。厚生労働省は受動喫煙に関して、胎児の発育へ悪影響を及ぼすこと、乳幼児突然死症候群(SIDS)の要因になること、低出生体重・胎児発育遅延との関連などを指摘(※5)しています。

女性も男性も、タバコを吸っている人は妊活を機に必ず禁煙しましょう。

5. 各種検査を受けて妊活に備える

妊活をする際は、風疹の抗体検査や性病検査などをふたりで受けましょう。

<風疹の抗体検査>
免疫を持っていない女性が妊娠初期に感染すると、お腹にいる赤ちゃんが風疹に感染してしまう危険性があります。風疹にかかった赤ちゃんは難聴や心臓疾患など、重度の障害を持って生まれる可能性が高まるため、感染は避けたいところです。

風疹ウイルスは感染力が強く、パートナーの男性が感染すると容易に女性にうつってしまいます。リスクを減らすためにふたりとも風疹の抗体検査を受け、免疫がない場合はワクチンを接種しましょう。ワクチン接種後は2カ月間の避妊が必要なので、早めに検査を受けることをおすすめします。

<性病検査>
日本では、梅毒やクラミジアなどの性病感染が増加しています。性病は、気づかないうちに不妊の原因となることがあるため、妊活前にふたりとも性病検査を受けると安心です。

また、近年はブライダルチェックができる婦人科も増えてきています。病院によって対応できる範囲は異なりますが、子宮・卵巣機能のチェックや性感染症の検査、タイミング療法や不妊治療の指導を受けることもできます。

もし不妊の原因となる病気があった場合、自力で妊活を頑張っていてもなかなか子どもを授かることができません。自分の体をチェックすることで、妊活に対する不安の軽減や、早めの治療につながります。

“女性”が妊娠しやすい体になるには? 妊活前に知っておきたいこと

温かい飲み物を飲む女性
妊娠し、赤ちゃんを宿すのは女性の体です。妊活を始める際は先述した基本的なことに加え、妊娠しやすい体づくりを意識しましょう。ここでは、女性が妊活で意識したいことを紹介していきます。

葉酸を摂取する

医学的な観点からだと、妊活としてまず行ってほしいのが葉酸の摂取です。厚生労働省は、妊娠を計画している女性や妊娠中の女性は、通常の食事からの葉酸摂取に加えて、サプリメントなどの栄養補助食品から1日400μgのモノグルタミン酸型葉酸を摂取することを推奨しています(※6)

葉酸は赤ちゃんの成長に影響し、特に二分脊椎(にぶんせきつい)などの神経管閉鎖障害(先天異常の一つ)の発症リスクを減らせます。この発症リスクを減らすため、妊娠の1カ月以上前から妊娠初期の3カ月間は、特に意識して葉酸を摂取するようにしてください。サプリメントも積極的に活用しましょう。

体を温める

体の血行を良くすることで、子宮や卵巣の血流改善が期待できます。適度な運動を行う、湯船にはしっかりと浸かる、冷たい飲み物を飲みすぎない、体を温める作用のある食材を取り入れるなど、体を温める生活を始めてみましょう。

基礎体温の測定は無理のない範囲で行う

妊活の一つとしてよく耳にする基礎体温測定については、実は必須ではありません。基礎体温とは安静時の体温で、起床後に活動を行う前に布団の中で計ります。毎日同じ時間に継続して測り続けることによって、1カ月のホルモン変化がある程度分かるというものです。これをグラフ化することで排卵日などを予想できるようになり、妊活のための性行為に役立てることができます。

しかし、毎朝の基礎体温計測がストレスになってしまうこと、正確に計測していてもなかなか理想通りのグラフにはならないこと、超音波や排卵検査薬で正確に排卵日が予測できることから、その意義は薄れてきています。

妊活で“男性”が意識したいこと

くつろぐカップル
男性にも妊活のためにできることがいくつかあります。ここでは、妊活で男性が意識したい2つのポイントを紹介します。

下半身を温めすぎない

男性の場合、精巣を過度に温めないことが大切です。精子は熱に弱いため、男性器を温めてしまうと精子の質が低下する可能性が懸念されています。長時間の入浴、膝上でのノートパソコンの長時間使用、自転車あるいはバイクの長時間の乗車は控えておきましょう。

その他、下着は体にフィットするものよりも、風通しが良いトランクスがおすすめです。

禁欲はしない

「禁欲期間が長い方が妊娠しやすい」と思う人も多いかもしれませんが、実は間違いです。禁欲期間が長くなると精子数や量、濃度は増加・上昇するものの、精子の運動率や生存精子率は低下します。つまり、長期間にわたる禁欲は、精子の質の低下につながってしまうのです。

妊活をする際は禁欲せず、フレッシュな状態で排卵日付近に性行為をすることで、妊娠の確率を高められるでしょう。

妊活はふたりで一緒に始めよう

綺麗な緑を背景に仲良く歩く若い男女
妊活は女性だけでなく、男性も一緒にするものです。生活習慣を整えたり、風疹の抗体検査を受けたりと、できることから始めてみましょう。

なお、日本産科婦人科学会では避妊をせずに性交渉をして、1年以上妊娠しないことを不妊症と定義(※7)しています。妊活を半年以上続けても子どもを授からない場合は、医師に相談して不妊治療を検討してみても良いかもしれません

まずは妊活についてパートナーと相談して、何から始めるか考えてみてくださいね。

参考文献/サイト

※1 ロート製薬 「妊活白書2019」
※2 ロート製薬 「妊活白書2021」
※3 Fertil Steril., 2012,A prospective cohort study of physical activity and time-to-pregnancy, 97(5): 1136–1142.e4.
McKinnon, CJ., Hatch, EE., Rothman, K., Mikkelsen, EM., Wesselink, AK., Hahn, KA., & Wise, LA. (2016). Body mass index, physical activity and fecundability in a North American preconception cohort study. Fertility and Sterility, 106(2), 451-459.
※4 Fray KA., Navarro SM., Kotelchuck M., Lu MC.,(2008). The clinical content of preconception care: preconception care for men. American Journal of Obestetetrics and Gynecology, S389-395.
※5 厚生労働省,2021,「女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響」
※6 厚生労働省 「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 ~妊娠前から、健康なからだづくりを~」
※7 公益財団法人 日本産科婦人科学会 「不妊症」

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