下痢症で病院に行くべき?タイミングや目安・診療科などについて解説

一般に、水分の多い便のことを下痢と言いますが、それが1日に3回以上ある場合は下痢症と定義されています。

下痢も下痢症も、症状がそれほどつらいものではなく、数日程度でよくなれば、必ずしも病院を受診する必要はありません。ただ、中には重大な病気が背景にあり、慢性化したり、命にかかわったりするものもあります。

下痢や下痢症を引き起こす原因にはさまざまなものがあり、原因や症状によっても対応は異なるため、今回は、下痢症の原因や、病院に行く目安、自宅でできる対処法や病院での治療法について解説します。

下痢症とは

下痢と下痢症は、区別して考えられています。下痢は一般に、水のような便が出る症状のことをいいますが、1日に何度も排便したり、ひんぱんに便意を感じるのに便が出なかったりすることも下痢に含まれます。

一方下痢症は、1日に3回以上、軟便や水のような便が出るものと定義されています。その原因の多くは、ウイルスや細菌、寄生虫などの感染と考えられており、食べ物や飲み水、不衛生な生活環境などによって生じることがあります。

下痢症には主に3種類ある

下痢症は症状によって以下の3種類に分類できます。

  • 急性水様性下痢症:数時間から数日間、水のような便が続く
  • 急性血性下痢症:突然血便が出る下痢
  • 遷延性下痢症:14日以上の長期にわたって下痢が続く

下痢症は脱水症状を起こしやすい

下痢症で心配されるのが脱水です。便には多くの水分が含まれていますが、この中には生命の維持に欠かせない、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルも含まれています。下痢によってこれらの水分が大量に失われると、口の渇き、尿の減少、肌の乾燥、めまい、頭痛、倦怠感などの脱水症状が生じることがあります。ひどい場合は昏睡状態に陥ることもあるため、注意が必要です。

下痢・下痢症は病院を受診すべき?何科を受診したらよい?

下痢になると、受診すべきかどうか迷うかもしれません。単なる下痢であれば数日程度で症状がおさまることがほとんどですが、次のような場合は、内科や消化器内科の受診を検討したほうがよいでしょう。

  • 1週間以上下痢が続いている
  • 発熱がある
  • 食事がとれない
  • 便に血や膿がまざっている
  • 脱水症状がある
  • その他、下痢以外に気になる症状がある

症状によっては救急外来を受診する

通常の下痢であれば自宅療養で回復することがほとんどですが、次のような症状がある場合は、早急な治療が必要なケースがあります。救急外来の受診も検討してください。

  • 脱水症状がひどい
  • 尿がほとんど出ない
  • 動けない
  • 呼びかけても反応がない
  • 排便回数が極端に多い

 など

下痢が起こる原因

下痢の原因にはさまざまなものがあります。ここでは、下痢が起こる仕組みと、タイプごとの原因を見ていきましょう。

分泌性下痢:腸内の分泌液が過剰になる

腸には水分を分泌する働きがあります。なんらかの原因によって腸の粘膜に炎症が起こると、腸内の分泌液が過剰になって便の水分量が増えるため、下痢を起こしやすくなります。

腸内の分泌液が増える原因には次のようなものが考えられます。

  • ウイルスや細菌の感染
  • 食物アレルギー
  • お薬の服用(解熱剤、抗菌薬、抗がん剤など)

 など

浸透圧性下痢:腸内の浸透圧が上がる

腸の浸透圧とは、簡単に言えば、腸の内外のバランスを保つ力のことです。腸の浸透圧が高くなると、腸内で水分が上手く吸収されなくなり、便の水分も過剰になってしまうため、下痢を起こしやすくなるのです。

腸の浸透圧を上げるものには、次のようなものがあります。

  • マグネシウム含有製剤などの下剤
  • 人工甘味料(ソルビトール、キシリトールなど)の過剰摂取
  • 牛乳(乳糖不耐症の場合)

 など

運動亢進性下痢:自律神経の乱れ

自律神経のバランスが乱れると、腸のぜん動運動が過剰になることがあります。すると、便が通常より速く腸内を通り過ぎ、便の水分が十分に吸収されないまま排出されます。このような下痢の場合、多くは腹痛を伴います。

自律神経のバランスが乱れる原因には次のものがあります。

  • ストレス
  • 暴飲暴食
  • 冷え

 など

下痢が症状として出る病気

下痢は、大きく分けると急性と、4週間以上継続する慢性に分類することができます。それぞれにどのような病気や原因があるのかを解説します。

急性下痢

急性下痢は、おおむね1週間、長くとも4週間以内によくなる下痢のことです。下痢は感染が原因として引き起こされることが多いため、急性の症状があらわれることも少なくありません。

病気や原因によって症状にはやや違いがありますが、おおむね以下のような症状が出ることが多いです。

  • 腹痛
  • 下痢
  • 血便
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 発熱

急性胃腸炎

急性胃腸炎は、何らかの原因で胃腸に炎症が生じ、下痢などの症状が現れるものです。ウイルスや細菌の感染が原因となることが多く、原因となる病原体には、ノロウイルス、ロタウイルス、大腸菌、サルモネラ菌などがあります。

これらの病原体が付着した食べ物を食べることで生じる「食中毒」のほか、人から人へと感染することもあります。

なお、軽度であれば数日で軽快することが一般的です。

薬剤性腸炎

お薬の服用によって腸内が炎症を起こしたものです。重症化すると、腸が塞がって生命にかかわるケースもあります。

偽膜性腸炎

抗菌薬によって腸内細菌のバランスが崩れ、「クロストリジオイデス・ディフィシル」という菌が大量に増殖してしまうことで生じる腸の炎症です。この菌は毒素を発生するため、腸の粘膜を傷つけて下痢症状を引き起こします。

症状があらわれるのは、抗菌薬投与後1~2週間後頃です。高熱や粘液便が出ることもあります。

急性出血性大腸炎

抗菌薬を服用して数日後に突然発症する大腸炎です。腸内に赤みやむくみ、ただれなどが生じ、突然の激しい腹痛や血便が出ますが、原因となる抗菌薬の服用を中止すれば回復することが多いです。

MRSA腸炎

抗生物質に耐性があるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が腸内で大量に増殖することが原因で発症する腸炎です。体力や免疫力の低い病気の人に生じることが多いです。

重症化すると敗血症などにつながることもあります。

慢性下痢

目安として、4週間以上下痢が続くものは慢性下痢と定義されています。感染などが原因の場合は急性下痢となることが多い一方で、慢性的な下痢は、なんらかの病気が背景にあるケースが多いです。代表的なものを詳しく見ていきましょう。

過敏性腸症候群

長期にわたって腹痛や便秘、下痢などを繰り返す病気です。腸そのものには異常がみられないにもかかわらず、腸が正しく機能しなくなるのが特徴です。

はっきりとした原因はわかってませんが、ストレスやカロリー・脂肪の多い食べ物、薬、ホルモンなどが関与しているのではないかと考えられています。治療では、症状に合わせて、食事のコントロールやお薬を使用するのが一般的です。

大腸がん

大腸の粘膜に発生するがんです。初期のうちは症状が出ないことがほとんどで、自覚症状のないままにゆっくりと進行していきます。

下痢などの症状が現れるのは、ある程度進行してからです。その際、下痢のほか、血便や便秘、便が細くなる、残便感、貧血、腹痛、嘔吐などの症状もよくみられます。

ただし、がんができた場所によっても出やすい症状が異なり、肛門に近い部分にがんができた場合は、下痢、腹痛、嘔吐、便秘、便が細くなるなどの症状が代表的です。

一方、大腸の入り口のほうにがんができた場合は、下痢などの腹部の自覚症状はほとんどなく、貧血や腹部のしこりなどが主な症状です。

潰瘍性大腸炎

大腸に炎症が起こって、潰瘍(ただれ)ができるものです。発症すると、粘液や血液をともなう激しい下痢や、高熱、腹痛などがあらわれ、再発を繰り返しやすいのも特徴です。

治療には、炎症を抑えて水分・栄養素を補うための食事管理やお薬の投与が行われます。なお、潰瘍性大腸炎の方は、結腸がんのリスクが高いとされています。

クローン病

消化管すべてに炎症が起こることがある病気です。そのため、胃腸だけでなく、口や肛門にも炎症が生じることがあります。原因は今のところはっきりわかっていませんが、免疫が関与しているのではないかと考えられています。

クローン病で多い症状は、腹痛や下痢のほか、発熱、全身の倦怠感、食欲低下、体重減少、切れ痔、肛門周囲の腫れやただれ、排便時の出血や痛みなどです。これらの症状は自然に治まることもありますが、完全に治るわけではなく、生涯にわたって不定期に再発を繰り返すことが多いです。治療では、炎症を和らげるお薬や下痢止めのお薬、抗菌薬などの投与、食事制限、手術などが行われます。

下痢を和らげるための対処法

下痢を起こしたときは、つらい症状をやわらげたり、悪化を予防したりするために、次の点に注意してください。

胃の負担の少ない食べ物を選ぶ

下痢をしているときは胃腸に負担をかけないことが大切です。脂質が少なく、やわらかく、消化のよい次のような食べ物を摂るようにしましょう。

  • おかゆ
  • 野菜スープ
  • よく煮込んだうどん
  • 味噌汁
  • りんごのすりおろし

 など

なお、コーヒーや炭酸飲料、アルコール類は胃腸に刺激を与えます。回復するまではなるべく避けてください。

水分補給をする

下痢によって通常より多くの水分を排出してしまうため、脱水症状を起こしやすくなります。水分をしっかりと補給し、できればナトリウムやカリウムなどのミネラルも取り入れましょう。

おすすめは次のような飲み物です。

  • 経口補水液
  • スポーツドリンク
  • 少量の塩を溶かした水
  • 常温のミネラルウォーター
  • 湯ざまし
  • うすめのお茶

休息をとる

下痢をしていると体力を消耗しやすくなります。なるべく安静にして過ごして、十分な休息をとるようにしましょう。

お腹を温める

お腹が冷えると、腸に刺激を与えたり、腸の機能が低下したりするおそれがあります。食べ物や飲み物は温かいものを選び、お腹が冷えないように注意しましょう。使い捨てカイロや腹巻なども活用することをおすすめします。

病院での下痢の検査方法

下痢の治療は、下痢が起きている原因によって異なります。そのため、まずは問診の他に、下痢の原因を突き止めるために以下のような検査を行うことがあります。

  • 血液検査(白血球数を調べたり、炎症の有無を調べる炎症マーカー、下痢によって失われやすいミネラルの量を調べる電解質検査などを行ったりする)
  • 血中ホルモン検査(内分泌腫瘍が疑われる場合)
  • 便検査
  • 内視鏡検査
  • 超音波検査

ウイルス感染が疑われる場合は、ウイルスを調べる検査を行うこともあります。原因を突き止める手がかりとなるため、受診する際には、便の様子や日ごろの体調、飲んでいるお薬、持病の有無なども医師に伝えてください。

病院での下痢の治療法

病院では、下痢の原因に応じて、症状に合ったお薬が処方されます。たとえば、腸の活動が過剰になっている場合は腸管の運動を抑えるお薬、腸に炎症が起こっている場合は、炎症を抑えるとともに腸内の粘膜を修復するお薬、腸内環境が乱れている場合は整腸剤(腸内の細菌バランスを整えるお薬など、さまざまなお薬があります。

ただし、下痢の原因が明らかでない場合は、下痢止めを使用するとかえって悪化させてしまうリスクがあります。特にウイルスや細菌が原因の場合、下痢は、腸内の病原菌を排出する自己防衛反応であるため、それを止めてしまうことになるので注意が必要です。また、下痢の原因がお薬であれば、そのお薬の使用を中止するのが基本です。

なお、下痢で脱水症状を起こしている場合は、点滴を打つことがあります。水分や栄養補給が難しい状態でも、点滴ならば必要な水分や栄養を補い、お薬の投与をすることも可能となります。

下痢・下痢症は保険適用で診療できる?

下痢・下痢症は保険適用で診療が受けられることが一般的です。診療は、保険適用の保険診療と、保険適用外の自由診療に分けることができ、基本的に、下痢などの症状があり、治療の必要性があり、決められた範囲内の治療法を実施する場合は保険適用となります。

保険診療自由診療(保険外診療)
概要公的な健康保険が適用される診療保険が適用にならない診療
主な状況病気の症状があり、治療の必要性がある状況美容目的や、予防目的の場合など
診察・治療内容国民健康保険法や健康保険法などによって、給付対象として定められている検査・治療医療保険各法等の給付対象とならない検査・治療
費用同じ診療内容なら、どの医療機関でも同じ同じ診療内容でも、医療機関によって異なる
原則1~3割負担全額自己負担

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※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。 

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