ヒトパピローマウイルス(HPV)とは
ヒトパピローマウイルスとは、ヒト乳頭腫ウイルス(human papilloma virus)の略で、現在までに200種類以上が確認されており、その中でもがんに関わる種類は13個ほどといわれています。
疾患の原因によって2種類にわけられ、
- がんに関わるウイルスを【高リスク型】
- 尖形コンジローマの原因となるものを【低リスク型】
と呼称しています。
一部の型のウイルスに感染すると子宮頸がんや肛門がん、膣がんや尖圭コンジローマの原因になることもあるため、小学校6年生~高校1年生の女子を対象にHPVワクチンの定期接種が推奨されています。
ただしどちらの型のウイルスも感染すれば必ず発症するということはなく、ほとんどのウイルスは問題を起こすことはありません。
通常は感染後数ヶ月以内に自然治癒していきます。
ヒトパピローマウイルスの感染経路
ヒトパピローマウイルスはほとんどが性交渉を通じて感染します。
性交渉中に粘膜に気づかない程度のわずかな傷が生じることがあり、そこからウイルスが侵入していきます。
特に性器や肛門の接触が原因となることが多数ですが、性器や肛門以外の接触によっても感染することがあります。
そのため性交渉の経験があれば誰でも感染している可能性の高いウイルスといえるでしょう。
ヒトパピローマウイルスの潜伏期間
ヒトパピローマウイルスの潜伏期間は高リスク型と低リスク型で異なります。
高リスク型に感染した場合は自覚症状がないことが多く、感染に気づかないまま10年ぐらい過ぎてがんが発覚することもあります。
がんは発覚する前から細胞に微細な変化を起こします。定期的に子宮がん検診を受けることは早期発見に有効です。
一方で低リスク型の場合は数週間から8ヶ月ほどで尖圭コンジローマの症状であるイボが性器などに現れます。
尖圭コンジローマの場合はすぐにわかるので、定期的に自分やパートナーの性器周辺にイボがないかチェックすることで早期発見につながります。
不特定多数の人と性交渉をした、パートナーが変わったなどの後にイボなどの症状が現れた場合はすぐに医師の診察を受けるようにしましょう。
ヒトパピローマウイルスに感染したときの症状
女性の場合
高リスク型に感染した場合、自覚症状はほとんどありません。
低リスク型による尖圭コンジローマの場合は膣内や性器の周辺にぶつぶつとしたイボができます。
この場合、外陰唇など外側の場合は目視で確認できますが、膣内の場合は自覚症状が乏しいので発見が遅れることもあります。
男性の場合
男性の場合も高リスク型に感染したときは自覚症状はほとんどなく、がん化してくると徐々に排尿が困難になるなどの症状が現れます。
低リスク型の尖圭コンジローマを引き起こすウイルスに感染すると亀頭や陰茎、肛門周辺にぶつぶつとしたイボができます。
ヒトパピローマウイルスの治療方法
子宮頸がんの場合
子宮頸がんの治療は
- 外科的手術
- 放射線治療
- 薬物治療
の3つの方法があり、単独もしくは組み合わせて実施されます。
外科的手術の場合はがんの範囲やステージ、年齢などによって切除する範囲が必要なを決めます。
切除後は病理検査に回し、がんの範囲を再確認した後に術後の治療方針を決めていきます。
放射線治療は子宮頸がんに限らず、がんの治療法としてはポピュラーなもので、がんに対して高エネルギーのX線やガンマ線などを照射していく方法です。
子宮頸がんに対しては骨盤の外からの照射と膣内を通して照射する方法の他に、放射線を発する物質を直接がん組織に挿入して行う組織内照射があります。
薬物治療は転移の恐れのあるがんや再発した場合に行われることが多くなります。
陰茎がんの場合
陰茎がんの場合も子宮頸がんと同様に外科的手術や放射線治療を施します。
外科的手術の場合、がんの部位や範囲によって部分切除か全切除になりますが、重症になるほど切除する範囲が広くなり、陰茎を失う結果になることもあります。
ただし陰茎がんの治療方法は病院によって異なることもあるので、万が一発覚した場合は医師に十分に相談することが肝要です。
尖圭コンジローマの場合
尖圭コンジローマの治療方法は以下の3つがあります。
- 薬物療法
- 液体窒素による凍結療法
- 電気メス・炭酸ガスレーザーなどの手術
薬物療法はヒトパピローマウイルスにウイルスに対する免疫力を向上させる軟膏を患部に塗布します。
治療期間は概ね16週間が目安となります。
液体窒素による凍結療法はイボを凍結させて除去していきます。
麻酔なしで行うことができるのはメリットですが、複数回通う必要があるので時間がかかってしまう側面もあります。
また凍結療法だけでは完治しづらいので軟膏による治療の併用が進められています。
手術療法は電気メスや炭酸ガスレーザーなどを使ってイボを切除するので治療期間は早くなりますが、こちらも再発の可能性があります。
予防方法
ヒトパピローマウイルスの感染を予防するには性交渉を避けるのが有効ですが、現実的とはいえません。
女性の場合は小学校6年生から高校1年生相当までの年齢層に対してHPVワクチンの定期接種が推奨されています。
ワクチン以外の予防方法としては不特定多数の人との性交渉を避ける、コンドームを適切に使用するなどがありますが、これらを実行したとしても粘膜の接触だけで感染することもあるので、効果は限定的と考えられます。
基本的には誰でも感染しうるウイルスなので、定期検診を受けてがんや尖圭コンジローマを早期に発見することが有効といえます。
まとめ:ヒトパピローマウイルス感染は予防と早期発見が重要
以上、ヒトパピローマウイルスについて解説してきました。
ヒトパピローマウイルスは
- 多くの人が感染する身近なウイルス
- がんの原因になる種類は少ない
- 高リスクなウイルスにはワクチンが有効
- 感染しても自覚症状がないことが多い
- 早期発見が重要
という特徴があります。
定期的に検査を受けて早期にがんや尖圭コンジローマを発見するようにしましょう。
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