新型コロナウイルスの中和抗体検査(抗体定量検査)とは?ワクチン接種後に免疫が出来ているかどうかを調べることができるの?医師が解説します

2021/12/16追記

抗体検査結果のマイページで確認していただけるようになりました。(心斎橋院での検査は未対応です)

2021年12月現在、新型コロナウイルスの第6波の恐れが取り上げられています。

ワクチン接種は新型コロナウイルス対策の本幹であり、日本でも急ピッチでワクチン接種が進んでおります。ワクチンの種類によって差はあるものの、どのワクチンも新型コロナウイルスの発症・重症化・入院率を下げることが分かっています。

現在猛威を奮っているデルタ株は感染力が非常に強く、ワクチンをすでに2回打った人でも感染、いわゆる「ブレイクスルー感染」が起こることが最近の研究でわかってきました。「ブレイクスルー感染」を発症した患者さんでは、感染前後の中和抗体価が低かったという報告があります。中和抗体価が高い人では、たとえブレイクスルー感染を起こしたとしても軽度または無症状で済むことが多いという報告もあります。

ワクチン接種によって「中和抗体」という抗体を体内に作ることでウイルスの働きを抑える、いうのがワクチンの仕組みです。ただし、ワクチンの効果には個人差があり、中には抗体が出来にくい人もいるとされているため、抗体が出来ているのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

感染を防ぐための抗体が十分量あるかどうかは、「中和抗体検査」によってその具体的な数値を知ることができます。今回は、この新型コロナウイルス中和抗体検査(抗体定量検査)について解説いたします。

新型コロナウイルスワクチンの仕組み

国内で承認されている新型コロナウイルスのワクチンのうち、主に接種が進んでいるファイザー製とモデルナ製のワクチンはどちらも「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン」と呼ばれる種類のワクチンです。

新型コロナウイルスは、その表面にスパイクタンパク質(Sタンパク質)と呼ばれる突起状のトゲ状物質を持っており、そのトゲが細胞のもつ受容体という部分に結合して細胞の中に入り込んで感染します。 mRNAワクチンは、長年研究が続けられていたのですが、新型コロナウイルスに対して初めて臨床応用されたワクチンです。ウイルスがヒトの細胞に感染するために必要なスパイクタンパク質の設計図となる遺伝情報(mRNA)だけをワクチンとして投与します。

中和抗体とは?

ワクチン接種によりこのmRNAがヒトの細胞に取り込まれると、設計図をもとにしてスパイクタンパク質(Sタンパク質)が作られます。作られたSタンパク質は、免疫システムにより異物として認識されて、スパイクタンパク抗体(中和抗体)が産生されます。一方、設計図(mRNA)は体内で速やかに分解されて消滅します。数日間で分解されるため、mRNAの情報が長期に残ったり、遺伝子に影響を与えることはないと考えられます。

中和抗体は、新型コロナウイルスのトゲ部分に先回りして結合することでブロックし、ウイルスが細胞に侵入できないようにすることで、新型コロナウイルスへの抵抗力(免疫)がつくという仕組みです。

中和抗体は、ワクチン接種後であれば程度の差はありますが通常上昇していることが知られています。

検査の手法は?

クリニックフォアでは、Roche(ロシュ)という会社の Elecsys® Anti-SARS-CoV-2 S RUOという機器を使用して、新型コロナウイルスに対する抗体の定量検査を行っております。

(心斎橋院では検査会社が異なるため、Abbott(アボット)社の、SARS-CoV-2 IgG II Quant を使用)

なお、抗体は感染後早期に出現するIgMと、やや遅れて出現し長期に持続するIgGがあります。中和抗体定量検査は、これらを区別せず同時に測定しています。これは、「IgM/IgGの比率は個人差が大きいので無理に区別しようとせず、成熟した有効な抗体を確実に測定するべき」という考え方に基づいており、ワクチン接種後に十分な免疫がついたかどうかを評価する目的に特に適している、とされています。

結果が出るまでの時間は?

クリニックにご来院いただけ、血液検査を行います。血液を約5ml程度採取する必要があるため、リモート検査はできません。

検査を提出してから通常2〜4日ほどで結果が到着します。2021年12月から、Web予約をして頂いている場合、抗体検査の結果をマイページで確認していただけるようになりました。(心斎橋院での検査はマイページ未対応です。検査会社側で遅延する可能性も鑑みて1週間程度後の再来院をお願いいたします。)お電話・メールでのお答えは運営上の問題から一切お受けしておりません。ご了承いただけますと幸いです。

費用は?

コロナ抗体定量検査の検査費用は、7,500円(税別)です。別途の診察料はいただいておりません。再来院時は、ご希望がない限り、結果解釈の記載を含む所定用紙に検査結果を記載してお渡しする形となります。ご希望のある方は、医師による診察を受けていただくことも可能です(別途、診察料(再診料 1,500円(税別)がかかります)。

ご希望される方は、クリニックフォア各院の予約フォームから「自費コロナ検査」もしくは「自費診療」を選択してご予約の上で、ご来院ください。田町院をご希望の方は、「なぎさテラス2階」から「自費診療」をご選択してください。

抗体価の結果はどう解釈すればいいの?

基本的に「<0.8 U/mL = 陰性」「 ≥0.8 U/mL = 陽性」と判定します。ただし、感染を防ぐために抗体が十分量あるかどうかは、以下が目安となります

(心斎橋院での検査機器の場合、「<50 AU/mL = 陰性」「 ≥50 AU/mL = 陽性」と判定。感染防御の抗体価の目安は、約4,000 AU/mL〜、とされています。)

以下、よくあるご質問にお答えさせていただきます。ページ下にある参考ページもご参考にしてください。

Q.ワクチン接種後すぐに抗体量は増えるの?

A. ワクチンを接種して免疫がつくまでに1~2週間程度かかります。抗体定量検査をご希望の場合は、ワクチン接種から2週間後以降での検査をお勧めいたします。

Q.中和抗体が十分あれば、もうコロナに感染しないの?

A. 中和抗体が十分量あったとしても予防的行動は今後も続けるようお願いいたします。ワクチンを受けた方は、新型コロナウイルス感染症の発症を予防できると分かっていますが、ワクチンを受けた方から他人への感染をどの程度予防できるかはまだ分かっていません。具体的には、「三密:密集、密接、密閉」の回避、石けんによる手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒の励行、マスクの着用などを心がけてください。

Q. 抗体は一生維持されるの?

A. 新型コロナウイルスワクチンによる中和抗体の量、生成された中和抗体が漸減しどれくらいの期間で効果を失うか、などについては現在研究が行われており、明確な答えは得られていません。理論上は、時間が経過するとともに抗体量は漸減すると考えられており、減少するとコロナへの感染リスクは高まる可能性があります。今後、中和抗体が効かない変異株が生まれる可能性や、個人差も存在します。

Q. ブースター接種は必要なの?

A. イスラエル、アメリカなど一部の国では、3回目の追加接種(ブースター接種)がすでに始まっており、日本でも年明けにブースター接種が検討されています。特に高齢者や医療従事者などハイリスクな人に対しては、ブースター接種が必要となる可能性がありますが、現状はできるだけ多くの方が2回の接種を完遂することが、感染拡大を防ぐためにも重要であると考えられています。

Q. 中和抗体検査とPCR検査はどう違うの?

A.中和抗体検査は、今後の感染を防ぐための抗体が十分量あるかどうかを調べる検査です。新型コロナウイルスそのものを検出する検査(PCR検査や抗原検査)ではないので、現在、新型コロナウイルスに感染している状態かどうかはわかりません。

Q.中和抗体検査は保険を使えますか?

A. 中和抗体検査は自費での検査となります。中和抗体がどれくらいあれば新型コロナウイルスの発症防止に十分であるか、どれくらいの期間有効であるのか、など、また不明な点も多いため、あくまで一つの参考所見として捉えてください。

『ご予約はこちらから』

新型コロナウイルスの中和抗体検査をご希望される方は、クリニックフォア各院の予約フォームから「自費コロナ検査」もしくは「自費診療」を選択してご予約の上で、ご来院ください。「ご相談されたい内容の欄に、「コロナ中和抗体検査希望」とご記載ください。

・田町院をご希望の方は、「なぎさテラス2階」から「自費診療」をご選択してください。・四谷院をご希望の方は、「アレルギー科」をご選択してください。

※本記事は、上記公開日時点での状況・情報・エビデンスをもとに記載しています。新型コロナウイルス感染症については、日々状況が変化し、また新しくわかることも多々ありますので、最新の情報は、直近の記事や情報をご参照くださいますようお願いいたします。

参考文献

  1. 厚生労働省新型コロナワクチン Q&A
  2. NEJM DOI: 10.1056/NEJMoa2109072
  3. CDC report July 29, 2021
  4. 国立国際医療研究センター新型コロナウイルス特設ページ
  5. こびナビ
  6. 大阪大学医学部 感染制御学 教授 忽那賢志先生の記事一覧