ワキガとは?症状・原因・治し方・対策・予防法を詳しく解説

わきから独特の強いにおいが発生している場合は、ワキガの可能性があります。今回は、ワキガがどのようなものなのかや、原因、治療法、対策、予防法などを詳しく解説します。

ワキガとは?

ワキガは、正式には「腋臭症」「アポクリン臭汗症」といった名前の病気です。わきなどから強いにおいが発生するため、「腋(ワキ)」「下(ガ)」からワキガと呼ばれています。

ワキガはどんなにおい?

ワキガのにおいは、においを発する人、かぐ人によってさまざまで、例えば以下のようなにおいがすることがあります。また、以下のようなにおいが複数まじりあっているケースもあります。

  • ツンとするにおい
  • 香辛料のようなにおい
  • 酢のようなすっぱいにおい
  • 硫黄のようなにおい
  • ミルクのようなにおい
  • 生乾きのようなにおい
  • カビのようなにおい
  • 鉄のようなにおい

 など

患者数

日本人のワキガ患者の比率はおおむね10%程度だとされています。

実は日本などのアジア系の方はワキガの有病率が低いのですが、世界で見るとワキガ体質の人種のほうが多いとされています。西欧やアフリカ系の方の場合、90%がワキガ体質だという説もあります。

なお、ワキガは第二次性徴に伴って思春期頃に発症し、20代でピークとなることが多いとされています。そして、壮年期(おおむね40~64歳頃)以降は症状が軽くなっていくことが一般的です。

ワキガのメカニズム

ワキガはアポクリン腺から出る汗が原因となります。汗腺はアポクリン腺とエクリン腺の2種類があり、通常のサラッとした汗はエクリン腺から出ます。一方、アポクリン腺から出る汗にはタンパク質や脂質などが含まれており、皮膚に存在する常在菌によってこの汗が分解されると、ワキガ特有のにおいが生じるのです。

汗は体のいたるところから出ることから、エクリン腺は体のいたるところに存在することがわかります。一方でアポクリン腺は、わき、乳輪周辺、陰部、鼻、目の周り、耳の中などの限られた部位にだけ存在します。そのため、ワキガはわきのほか、乳輪周辺や陰部からにおいが発生するケースもあります。

また、皮脂が多い部分や雑菌が繁殖しやすい場所は、雑菌によって皮脂が分解されるなどしてにおいが出やすいとされています。

ワキガの原因

ワキガの根本的な原因は、アポクリン腺が発達していることです。ワキガの方はアポクリン腺が大きい、または数が多いとされています。その理由としては、まず遺伝が挙げられるでしょう。

また、男性ホルモンや女性ホルモン、汗の量、ストレスや緊張、生活習慣なども、ワキガの発症や悪化に関連している可能性があります。詳しく見ていきましょう。

遺伝

ワキガは遺伝しやすく、具体的にはABCC11という遺伝子が関連すると考えられています。

ワキガは耳垢との関連が知られており、このABCC11遺伝子がA/Aでは耳垢は乾型(乾いている)、G/GやG/Aでは湿型(湿っている)になり、湿型の場合は80%がワキガ体質だとされています。

また、ワキガは優性遺伝するため、両親のうちどちらかがワキガまたは耳垢が湿っていると、子どももワキガとなる可能性が高いです。

性ホルモンの分泌増加

ワキガが第二次性徴に伴って思春期頃に発症することからも、男性ホルモンや女性ホルモンといった性ホルモンがワキガに関係する可能性が高いと言えます。

アポクリン腺は乳輪や陰部周辺にも存在すると説明しましたが、アポクリン腺はフェロモンを分泌する組織だという説もあり、性ホルモンがアポクリン腺を活発にすると考えられているのです。

なお、女性の場合は女性ホルモン分泌の増加やバランスの変化が生じる生理前や生理中、妊娠中などにワキガのにおいが強くなったり、逆に女性ホルモンの分泌が減る更年期以降はにおいが気にならなくなったりすることがよくあります。

過度な発汗

汗が多いと雑菌が繁殖しやすくなり、においの悪化につながります。太っている方や内臓脂肪が多い方は、体温調節のために汗の量が多い傾向があるとされているため注意が必要です。

また、アルコールやニコチン(タバコ)も汗腺を刺激するため、汗の量が増える原因となります。

緊張やストレス

汗は自律神経によってコントロールされています。自律神経は交感神経と副交感神経がバランスをとって成り立っており、緊張状態などのときは交感神経が優位に、リラックスしているときは副交感神経が優位になっています。

発汗には交感神経がかかわっているため、緊張によって汗が増えることがあるのです。また、交感神経が過剰に反応する状態になっている方は、多少の緊張でも多量の汗が出てしまうことがあります。さらに、ストレス状態が続くことも、交感神経が優位になる原因となります。

以上のことから、緊張やストレスがあると汗が増えてしまい、もともとワキガ体質の方はワキガのにおいの悪化につながることが考えられます。

なお、ストレスはアポクリン汗腺からの汗の分泌量増加にもつながるとされています。

生活習慣の乱れ

コレステロールや動物性脂肪はワキガの悪化につながるとされています。食事で摂取した脂質は、一部が皮脂となって排出されたり、皮脂腺につまってしまったりするためだと考えられています。つまり、食生活がワキガの悪化に関連するのです。赤身肉やアルコールの過剰摂取もよくないとされています。

また、前述の通り、緊張やストレスといった精神的なことも関与するため、生活リズムの乱れや睡眠不足もワキガ悪化につながると考えられます。

その他、運動不足や喫煙習慣などもよくありません。

ワキガの人に多い特徴【セルフチェック】

ワキガの診療では、問診で耳垢の状態や家族歴、他者からのにおいに関する指摘の有無などの聞き取りを行うことが一般的です。最終的にワキガかどうか判断するのは、わきに挟んだガーゼのにおいを確認する「ガーゼテスト」で判断することが多いです。

つまり、自分でワキガかどうかをチェックする場合もにおいをかぐしかありません。チェックしたい場合は、医療機関で行うガーゼテストと同様、わきにガーゼなどを5分間挟んでからにおいをかいで確認するとよいでしょう。

しかし、ワキガの方は自分のにおいに慣れてしまっていることも多く、においをかいでも気がつけないことがあります。そのため、ワキガの方によくある以下のような特徴がないかも確認しましょう。

  • 耳垢が湿っている
  • 耳の毛が多い
  • わきの毛が多い
  • 下着の脇部分が黄ばみやすい
  • 汗の量が多い
  • 家族にワキガの人がいる
  • 耳の中、乳輪、陰部周辺で異臭がする
  • 高カロリー、高脂質の食事が多い

当てはまる項目が多い場合は注意が必要です。また、周囲の人からにおいを指摘されたことがある方も、一度受診を検討するとよいでしょう。

ワキガの治し方

ワキガを放置しても、悪化したり体に悪影響を及ぼすようなことはありません。ただ、周囲の目が気になったり、生活に支障をきたすことがあるため、必要に応じて治療を受ける選択肢もあります。ワキガの治療は、お薬などを使う保存的治療と、手術療法の大きく2つに分類できます。

ここからは、ワキガの治療法について詳しく見ていきましょう。

保存的治療

実はワキガを根本的に治療するお薬はありません。ただ、多汗症治療のお薬を使うことで、汗の量が減り、わきが乾燥することでワキガのにおい改善につながるケースがあります。また、後述する生活習慣の見直しも大事です。

塩化アルミニウムの外用

塩化アルミニウム溶液は、多汗症治療でまず使うことが多いお薬です。塩化アルミニウムが汗管(汗が出る通り道)に沈着してふさぐなどのメカニズムで、汗が抑えられるとされています。

塩化アルミニウムは、ワキガの原因となるアポクリン腺には作用しませんが、汗を抑えてわきを乾燥させることで皮膚の常在菌が減り、においの軽減効果が期待できます。

エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)の外用

原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう・わきの多汗症)治療目的のお薬として2020年に承認されました。わきの多汗症治療では塩化アルミニウムにかわって第一選択となる可能性がある新しいお薬です。

こちらもワキガの原因となるアポクリン腺には作用しませんが、発汗に関係する神経伝達物質(アセチルコリン)を阻害することで、エクリン腺からの汗を抑え、においの軽減につながる可能性があります。

ボトックス注射

ボトックス注射とは、ボツリヌストキシン(ボツリヌス菌がつくる毒素)を注射する治療法です。多汗症治療でも行われることがあり、わきの多汗症に対しては保険適用も可能となっています。

メカニズムは、発汗につながる神経伝達物質(アセチルコリン)を抑制することで汗を抑えるというものです。一度注射すると1週間ほどで汗が減り、半年ほど効果が続くとされています。

ただし、こちらもアポクリン腺に作用するわけではなく、多汗症を抑えることで間接的にワキガ改善効果が期待できるとされている治療法です。

イオントフォレーシス

イオントフォレーシスは、水道水などの液体に患部をつけ、電流を流す治療法です。電流を流すことで汗の出口が障害され、汗が抑えられるとされています。

こちらも多汗症治療で行われる方法ですが、患部を液体につける必要があるといった理由から、主に手のひらや足の裏の多汗症治療目的で行うことが一般的です。

日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」でも、わきの多汗症に対する治療の推奨度はC1(行うことを考慮してもよいが十分な根拠がない)となっています。

抗生物質

ワキガの原因は、皮膚の常在菌がアポクリン腺からの分泌物を分解して、においの原因となる物質をつくることです。そのため、菌に対して効果を発揮する抗生物質を外用することで、一時的にワキガが改善することがあります。

ただし、抗生物質による耐性菌の出現が問題となることも多いです。つまり、常在菌が抗生物質に対して耐性を持ってしまう(抗生物質が効かなくなってしまう)のです。そのため、安易に長期間にわたって抗生物質を使うべきではないとされています。

手術療法

においが強く、ご本人もとても悩んでいるような場合は、アポクリン腺を取り除く手術がよい選択肢となります。皮弁剪除法や皮膚切除法といった方法があるため、詳しく見ていきましょう。

皮弁剪除法

皮弁剪除法(皮弁法または剪除法とも言う)は、皮膚を切開し、アポクリン腺が存在する部分をハサミのようなもので切除する方法です。ハサミではなく、超音波メスや脂肪吸引器、マイクロ波を出す機器で切除を行うこともあります。

皮弁剪除法は保険適用が可能で、ワキガ手術の第一選択となる方法です。

皮膚切除法

アポクリン腺を皮膚と皮下組織ごと切除する方法です。大きな跡が残ったり、切除した部分が引きつれたりするため注意も必要ですが、皮膚にたるみのある高齢の方に対してはよい選択肢となります。

手術の注意点

手術を行ってもアポクリン腺を全て取り除けるわけではないため、多少のにおいが残ることはあります。

また、手術後、傷が治るまでの間に皮膚の下に血腫や膿ができ、皮膚が壊死するリスクもあります。予防のために、手術後はわきにガーゼを大量に当てたり、腕をあまり動かさないようにしたりするなどの対応が必要となります。しばらくは切除した部分が引きつれたり、色素沈着が生じたりすること、手術による跡はずっと残ることがあることなども理解した上で手術に進みましょう。

ワキガの対策

ワキガのにおいを少しでも軽減するためにはセルフケアも大事です。詳しく見ていきましょう。

汗をこまめにふき取る・入浴する

汗をかいたらこまめにふき取ったり、シャワーや入浴で洗い流したりすることで、においの原因物質が取り除かれ、雑菌の繁殖も抑えられて、一時的にワキガのにおい軽減につながります。

ふき取る際にアルコールを使うのも一つの方法です。ただし、アルコールによる肌荒れやアレルギーに注意しましょう。

制汗剤・デオドラント製品を使う

市販の制汗剤やデオドラント製品は、一時的ではあるものの消臭効果が期待できます。

まず、制汗剤とは、汗の出口をふさぐことでワキガの原因となる汗の分泌を抑えるものです。代表的な成分は塩化アルミニウムで、市販品では「クロルヒドロキシアルミニウム」という成分が配合されていることがあります。

一方デオドラント製品とは、抗菌成分などでにおいの発生を抑えるもの、においを吸着するもの、芳香作用でにおいをカバーするものなどのことです。市販品の場合、制汗作用とデオドラント作用の両方を兼ね備えているものが多いです。

スプレー、ロールオン、クリームなどさまざまなタイプがあるため、使いやすいものを選びましょう。

制汗剤・デオドラント製品の注意点

このような製品は、使うのをやめると症状が戻ってしまうことが多いため、継続的に使うことが大事です。また、汗で流れると効果がなくなってしまうため、製品の使い方に則った上でこまめにつけなおすなどの対策をしてください。

なお、市販品であっても皮膚炎やアレルギーなどのリスクはあるため、異常が生じたり、合わないと感じたりする場合は使用をやめてください。

ムダ毛を処理する

わきのムダ毛はできるだけ処理しましょう。ムダ毛が多いと汗がわきにとどまったり、雑菌が繁殖しやすくなったりするためです。

ただし、カミソリなどを使って肌に負担をかけると、皮膚炎などを発症する恐れがあるため注意しましょう。レーザー脱毛によってワキガが改善されたという報告もあるため、検討してみてはいかがでしょうか。

なお、エステサロンにおける脱毛は永久脱毛ではないため、ワキガに対しては無効だとされています。

衣類に気を遣う

蒸れやすい衣服はわきに汗をとどめ、においを悪化させる原因となります。綿などの、吸湿性や通気性の高い衣類を選びましょう。汗をかいたらこまめに取り替えることも大事です。

また、ワキガの方は衣服のわき部分が黄ばむことが多いです。これは、アポクリン腺から分泌されるリポフスチンという成分(タンパク質、脂質からなる成分)が原因とされています。服を汚さず清潔に保つためにも、汗わきパッドなどを活用するとよいでしょう。

ワキガの予防法

ワキガは体質が影響することが多いため、完全に予防することは難しいです。しかし、生活習慣がワキガの悪化につながることもあるため、少しでもにおいが軽減されるよう、下記のような生活習慣の改善に取り組みましょう。

食生活の見直し

前述の通り、動物性脂肪やコレステロールはワキガ悪化の原因となります。そのため、野菜や魚、大豆製品など、脂質が少なめで、植物性のヘルシーなものなどが中心の食事を心がけましょう。

赤身肉や、汗腺を刺激するとされるお酒の過剰摂取もよくないので控えましょう。

禁煙

喫煙によって皮脂腺がつまったり、タバコに含まれるニコチンで汗腺が刺激されたりすることで、ワキガが悪化する可能性があります。喫煙は、ワキガ以外にも体にさまざまな害をもたらすため、禁煙に努めることをおすすめします。

適度な運動

適度に運動して汗をかくことで、老廃物の排出が促進されます。老廃物が少なくなると雑菌も繁殖しにくくなり、ワキガのにおいの緩和が期待できるでしょう。さらに、運動はストレス発散や、良質な睡眠にもつながるためおすすめです。

ただし、汗をかくと一時的ににおいが強くなってしまうので、ふき取りやシャワーをすぐ浴びるなどの対応を心がけましょう。

ストレス解消

交感神経が必要以上に活発にならないよう、ストレス解消に努めることが大事です。趣味に没頭する時間やリラックスする時間をつくるとよいでしょう。しっかり睡眠をとることも、ストレス解消につながります。

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※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。

注意 オンラインでお薬の処方ができない場合があります

以下に当てはまる場合はオンラインで処方ができません。

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