ワキガのセルフチェック法・病院での診断方法を詳しく解説!

わきなどから独特の強いにおいがするワキガ。腋臭症(えきしゅうしょう)とも呼ばれる病気(体質)のことで、体への悪影響は基本的にありませんが、人の目が気になるなど、生活に支障を感じることはあるでしょう。

今回は、ワキガのチェック方法について詳しく解説します。医療機関での診断方法やセルフチェックについて詳しく見ていきましょう。

ワキガの診断方法

医療機関では、問診と、ガーゼテストと呼ばれるテストでワキガを診断することが一般的です。ガーゼテストでにおいの確認が難しい場合は、分泌負荷試験や試験切開法を行うこともあります。詳しくは以下の通りです。

問診

問診では、主に以下のような点について確認します。

  • 発症時期
  • 耳垢の状態
  • 家族歴
  • 家族からの指摘の有無

発症時期

ワキガは、第二次性徴に伴って思春期頃に発症することが多いです。その後、成長とともににおいが強くなり、20代前後でピークとなるため、発症時期を確認することでワキガかどうかを判断する手がかりとなります。

耳垢の状態

ワキガには、耳垢の状態にかかわる遺伝子が関係しているとされています。具体的には、耳垢が湿っている方の多くはワキガ体質だということがわかっています。そのため、耳垢の状態を確認することでワキガかどうかを判断する手がかりとなります。

家族歴

前述の通り、ワキガには遺伝子が大きくかかわっています。湿った耳垢やワキガにかかわる遺伝子は優性遺伝するため、両親のどちらかがワキガ、または耳垢が湿っている場合、子どももワキガの可能性が高いと考えられています。

家族からの指摘の有無

ワキガではないのに、自分のにおいが他人を不快にさせるなどと思い込んでしまう「自己臭恐怖症」というものがあります。

患者さんご本人は「自分はワキガかもしれない」と思っていても、実はワキガではなく自己臭恐怖症ということもあるため、家族や周囲の方ににおいを指摘されたことがあるかどうか確認することも必要です。

ガーゼテスト

わきにガーゼを5分間はさみ、医師がにおいを確認する検査方法です。結果の判断は主観的なものになりますが、以下のようなグレードで評価します。

  • ステージ1:全くにおわない
  • ステージ2:わきに挟んだガーゼからかろうじてわかる
  • ステージ3:よくかげばわかる程度
  • ステージ4:横にいてわかる程度
  • ステージ5:電車などで人を間にはさんでいてもわかる

アポクリン腺の分泌負荷試験

ワキガでは、汗の種類のうち、アポクリン腺という皮脂成分の多い汗を、皮膚常在菌が分解することでにおいが発生します。

ガーゼテストでワキガの確認が難しい場合は、エピレナミンという成分を注射する分泌負荷試験を行うことがあります。

これにより、アポクリン腺からの汗の分泌を誘発させることができ、においを確認しやすくなります。

試験切開法

皮膚を切開し、ワキガの原因となるアポクリン腺を目視で確認する方法です。ワキガの方は、アポクリン腺が大きい、または数が多いとされています。

ワキガのセルフチェック方法

医療機関を受診する前に、まずは自分がワキガの可能性があるのかどうかセルフチェックしておきたいという方も多いでしょう。前述の通り、医療機関では問診とガーゼテストが主な確認方法なので、最終的にワキガかどうか判断するのは医師の主観です。つまり、自分でワキガかどうかをチェックする場合も、基本的にはにおいをかいで確認するしかありません。

ただ、ワキガの方によくある特徴もあるため、そのような特徴の有無を確認することも、セルフチェックに役立つでしょう。セルフチェックの詳しい内容は以下の通りです。

ガーゼテストをする

医療機関で実施するガーゼテストは、ご自身でもできる方法です。ガーゼやティッシュなどをわきに5分間はさんでにおいを確認しましょう。

ただし、ワキガの方は自分のにおいに慣れてしまい、においをかいでも気づかないこともあります。そのため、家族など周囲の方にも一緒に確認してもらうとよいでしょう。

ワキガの方によくある特徴がないか確認する

ワキガの方は以下のような特徴を持っていることが多いです。該当するものが多い場合はワキガの可能性があります。

  • 耳垢が湿っている
  • わき毛が多い
  • 下着のわき部分が黄ばみやすい
  • わきに白い粉がつく
  • 汗の量が多い
  • 顔がてかりがち
  • 家族にワキガの人がいる
  • 耳の中、乳輪、陰部周辺からもにおいがする
  • 他者ににおいを指摘されたことがある
  • 高カロリー、高脂質の食事が多い
  • 過度なストレス状態、睡眠不足状態にある

耳垢が湿っている

前述の通り、ワキガの方は耳垢が湿っていることが多いです。

これには、ABCC11という遺伝子が関係しています。この遺伝子がA/Aの場合は耳垢が乾型(乾いている)、G/GやG/Aの場合は湿型(湿っている)とされており、湿型の遺伝子を持っている方の多くがワキガ体質だとされています。

わき毛が多い

前述の通り、ワキガの方は、ワキガの原因となるアポクリン腺の数が多い傾向があります。アポクリン腺は毛穴の中にあるため、わき毛が多い=わきの毛穴が多い方は、アポクリン腺も多い可能性が高いでしょう。

また、わき毛が多いと汗がたまりやすかったり、雑菌が繁殖しやすかったりします。すると、ワキガでなくても汗がにおってしまうことがあります。

下着のわき部分が黄ばみやすい

ワキガの方は、衣服のわき部分が黄ばみやすいです。その原因は、アポクリン腺から分泌されるリポフスチンという色素成分だとされています。色が濃いほどにおいも強くなる傾向があるようです。

なお、この黄ばみは単純な汗染みとは異なり、洗濯してもきれいになりにくいという特徴があります。

わきに白い粉がつく

わきに白い粉がつくことがある場合、アポクリン腺から分泌された汗が蒸発して結晶化したものの可能性があると考えられます。そのため、アポクリン腺からの分泌が多い、つまり、ワキガの可能性が高いかもしれません。

ただし、制汗剤などによって白っぽい粉がつくこともあるので、見間違いに注意が必要です。

汗の量が多い

そもそもワキガの原因は、アポクリン腺という汗腺から分泌される汗です。この汗にはタンパク質や脂肪が含まれており、雑菌が分解することでにおいが発生するとされています。

つまり、汗の量が多いということはアポクリン腺からの汗の分泌も多く、ワキガになりやすいと言えます。また、通常のサラッとした汗はエクリン腺という汗腺から分泌されますが、エクリン腺の汗によってわきが湿ることで、アポクリン腺由来のにおいが広がりやすくなる場合があります。

さらに、寒いときなど、汗をかく環境でないのに汗が出てしまうことが多い方は多汗症である可能性があり、多汗症とワキガは合併することも多いとされています。

なお、ワキガ体質でなくても、多量の汗を放置すればにおいが強くなることがあるため注意が必要です。

顔がてかりがち

顔がてかりがちの方は、皮脂腺が活発な可能性が高いです。皮脂腺が活発だとアポクリン腺も活発な傾向があるため、ワキガの可能性があります。

家族にワキガの人がいる

前述の通り、ワキガは遺伝することが多いです。ワキガは優性遺伝するため、両親のどちらかがワキガの場合は、自分もワキガの可能性が高いでしょう。

耳の中、乳輪、陰部周辺からもにおいがする

アポクリン腺は、わきだけでなく耳の中や乳輪、陰部周辺にも存在します。そのため、ワキガの方は耳や乳輪、陰部の周辺もにおいが強いことが多いです。

他者ににおいを指摘されたことがある

ワキガであっても、自分のにおいに慣れてしまって気がつかない方は少なくありません。家族や周りの方からにおいを指摘されたことがある場合は、ワキガの可能性もふまえて受診を検討したほうがよいでしょう。

高カロリー、高脂質の食事が多い

高カロリー、高脂質の食事が多いからといってワキガを発症するわけではありませんが、もともとワキガ体質の方は、におい悪化の原因となりえます。理由としては、皮脂分泌が増加することが考えられています。食事の見直しによってワキガ予防・改善につながることもあります。

過度なストレス状態、睡眠不足状態にある

アポクリン腺からの汗の分泌はストレスによって増えるとされています。発汗には自律神経のはたらきがかかわっており(発汗は交感神経が優位なときに生じる)、ストレスは自律神経のバランスをくずして必要以上に交感神経を優位な状態にしてしまいます。また、アドレナリン分泌によって血糖値が上昇し、汗腺が刺激されるとも言われています。

緊張状態での発汗もこれらのようなメカニズムで引き起こされており、ストレスや緊張によって過剰な発汗が生じてしまう多汗症の方もいます。

また、睡眠不足も自律神経のバランスをくずす原因となります。さらに、ストレスや睡眠不足などによって自律神経のバランスがくずれると、肝機能が低下して体内のアンモニアが分解されにくくなります。すると、汗と一緒にアンモニアが排出され、においが強くなることもあります。

ワキガの予防・改善法【セルフケア】

セルフチェックでワキガの可能性が高い、または予備軍の可能性がある方は、できることから予防や改善に努めていきましょう。以下のような生活習慣の改善によって、わきがの悪化予防・改善につながる可能性があります。

ヘルシーな食事を心がける

動物性脂肪やコレステロールは控えめの、ヘルシーな食事を心がけることをおすすめします。

動物性脂肪、コレステロールは、皮脂分泌増加によってワキガを悪化させることがあるため、過剰摂取は避けましょう。また、赤身肉の大量摂取もワキガ悪化につながるとされています。心当たりのある方は、控えることでワキガが改善することがあります。

お酒はほどほどにする

飲酒は以下のような理由でにおいの原因となることがあります。飲酒はほどほどにしましょう。

  • アルコールによって血管が広がり、発汗が促進される
  • アルコールが汗腺を刺激する
  • アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドは刺激臭のある物質で、過度にアルコールを摂取すると汗腺からも排出されることがある

禁煙する

タバコに含まれるニコチンは、中枢神経を刺激してアポクリン腺やエクリン腺を刺激し、発汗につながるため、できれば禁煙しましょう。

また、皮脂腺がつまったり、毛細血管の収縮が繰り返されて代謝が低下したりすることもワキガ悪化の原因になると考えられます。

ストレスを解消する

ストレスは自律神経のバランスを乱す原因となります。ゆったりする時間や趣味に没頭する時間をつくって、ストレス解消に努めましょう。

適度に運動する

運動は、代謝を高めたりストレスを解消したりする効果が期待できます。また、においの原因となる老廃物が汗とともに体外に排出されることも期待できるでしょう。運動はストレス解消にもつながります。

良質な睡眠を十分にとる

睡眠不足は自律神経のバランスを乱すなどしてワキガ悪化につながることがあります。十分な睡眠をとりましょう。

また、睡眠の質もとても重要です。寝る前は部屋を暗めにし、スマホやテレビは消して、ストレッチやアロマなどでリラックスした時間を過ごしましょう。こうすることでスムーズに入眠できるようになり、質の高い睡眠につながるとされています。

なお、睡眠はストレス解消にもつながります。

汗対策をする

ワキガ根本的な改善にはなりませんが、汗の予防・処理をしっかり行うことで、においの軽減につながることもあります。

制汗剤を使ったり、汗をかいたらすぐにふき取る、シャワーを浴びる、着替えるなどしたり、脱毛して清潔な環境をつくったりするなどの方法が挙げられます。

ワキガについて知っておきたいこと

最後に、ワキガに関して知っておきたい基礎知識をご紹介します。

ワキガの原因

ワキガの原因はアポクリン腺です。汗腺にはアポクリン腺とエクリン腺があり、通常のサラサラした汗はほとんどが水分で、エクリン腺から出ています。

一方、アポクリン腺から出る汗にはアンモニアや脂肪、タンパク質などが含まれており、粘り気も強いです。この汗を皮膚の表面にいる細菌が分解することで、ワキガのにおいが生じます。わきにはアポクリン腺が多いため、ワキガ体質の方は、わきからにおいがすることが多いのです。

なお、ワキガの方はアポクリン腺が大きかったり、数が多かったりするとされています。

ワキガのにおい

ワキガのにおいは人によってもさまざまですが、たとえば以下のようなにおいがすると言われることがあります。複数のにおいがまざっているようなケースもあります。

  • ツンとするにおい
  • 香辛料のようなにおい
  • 酢のようなにおい
  • 硫黄のようなにおい
  • ミルクのようなにおい
  • 生乾きのようなにおい
  • カビのようなにおい
  • 鉄のようなにおい

 など

ワキガの治療法

ワキガの治療法には、お薬を使う保存的治療と手術があり、具体的には以下のような治療法があります。

  • 塩化アルミニウムの外用:汗管(汗が出る通り道)をふさぐなどして汗を抑え、においの軽減につながる
  • ボトックス注射:発汗につながる神経伝達物質(アセチルコリン)を抑制して汗を抑え、においの軽減につながる
  • イオントフォレーシス:水道水などの液体に患部をつけて電流を流すことで、汗の出口が障害され、汗を抑えてにおいの軽減につながる
  • 皮弁剪除法:皮膚を切開し、アポクリン腺が存在する部分をハサミのようなもので切除する
  • 皮膚切除法:アポクリン腺を皮膚と皮下組織ごと切除する

なお、いずれの治療法も副作用や注意点があります。たとえば塩化アルミニウムは皮膚炎など、ボトックス注射は一時的な筋力低下、手術は傷が残ったり血腫ができたりするリスクがあるといった点です。そのため、治療の際はリスクも十分理解した上で治療を受けましょう。

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※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。

注意 オンラインでお薬の処方ができない場合があります

以下に当てはまる場合はオンラインで処方ができません。

  • 依存性の高い向精神薬(不眠症のお薬を含みます)に分類されるお薬や麻薬は処方できません。
  • 触診・検査などが必要な場合(爪水虫など)、オンラインでは病状を把握するために必要な情報が十分に得られないと医師が判断した場合には、対面での診療をお願いする場合がございます。

参考文献

  1. 原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版
  2. 形成外科診療ガイドライン