アレルギー性鼻炎と花粉症の違い
アレルギー性鼻炎とは、アレルギー反応によって、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった鼻症状が現れるものです。
アレルギー性鼻炎の中でも、花粉が原因となるものを「花粉症」と呼びます。
アレルギー性鼻炎は正確には、年間を通して生じることがある「通年性アレルギー性鼻炎」と、特定の時期にだけ生じる「季節性アレルギー性鼻炎」に分類され、季節性アレルギー性鼻炎は主に花粉症のことを指します。花粉は飛散時期が決まっているため、特定の時期にだけ症状が出ます。
なお、1998年から3度にわたって行われた鼻アレルギーの全国疫学調査によると、通年性アレルギー性鼻炎も季節性アレルギー性鼻炎(以下、花粉症)も年々増加しており、両者を合わせた有病率は、1998年が29.8%、2019年が49.2%となっています。
原因の違い
アレルギー性鼻炎と花粉症の大きな違いは発症原因です。詳しくは以下の通りです。
通年性アレルギー性鼻炎:ハウスダストなど
- ハウスダスト
- ほこり
- ダニ
- カビ
- 動物の皮膚など
ハウスダストは目に見えないくらい小さなチリ・ほこりのことです。中にはダニのふんや死骸、動物の皮膚や毛、カビ、細菌、虫などのさまざまな物質が存在します。
花粉症:スギなどの花粉
花粉症の原因となる花粉には、以下のようなものがあります。
- スギ
- ヒノキ
- シラカンバ(シラカバ)
- イネ
- ヨモギ
- ブタクサ
- カナムグラ
- ハンノキ
- カモガヤなど
よく知られているのはスギ花粉症で、実際に、花粉症の約7割がスギ花粉症だと考えられてます。ただ、スギが生えていない地域があるなど、植物の生息地による地域差もあります。
(参考)
花粉症の原因|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/dl/ippan2.pdf
メカニズムに違いはない
通年性アレルギー性鼻炎も花粉症も、メカニズムは同様。アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)に対して免疫が過剰に反応してしまうことで生じるものです。
具体的なメカニズムは以下のようになります。
- ①アレルゲンが鼻などの粘膜に付着する
- ②アレルゲンに対抗するために抗体(IgE抗体)が作られる
- ③マスト細胞と呼ばれる細胞と結合する(感作)
- ④アレルゲンが再度体内に侵入する
- ⑤マスト細胞からアレルギー誘発物質(ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサン、PAFなど)が放出される
- ⑥アレルギー誘発物質の以下のような働きによって症状が現れる
アレルギー誘発物質の種類 | 働き | 症状 |
ヒスタミン | 鼻の粘膜組織内の知覚神経を刺激する | くしゃみ、鼻水 |
・ロイコトリエン ・トロンボキサン ・PAF | 鼻の血管を広げて炎症を起こし、鼻腔を狭くする | 鼻づまり |
なお、全ての人の体内で上記のような現象が起こるわけではありません。たとえばスギ花粉やダニの場合、感作が成立するのは約半数だとされています。そして、感作が成立したうち、発症するのは約半数ほどとされています。
発症の原因は明確になっていませんが、遺伝的要因、大気汚染や花粉の飛散量といった環境要因などとの関連が考えられています。
症状の違い
通年性アレルギー性鼻炎も花粉症も、主な鼻症状は以下のようなものです。
- 透明でサラサラした鼻水
- くしゃみが何度も出る
- 鼻づまり
ただ、通年性アレルギー性鼻炎と花粉症では、以下のような違いもあります。
通年性アレルギー性鼻炎の症状
通年性アレルギー性鼻炎では、鼻症状に加えて、以下のような症状を合併することがあります。
- 気管支喘息(ぜんそく)
- アトピー性皮膚炎
- アレルギー性結膜炎(目のかゆみ、涙、充血など)
花粉症の症状
花粉症では、鼻症状に加えて、以下のような症状が生じることもあります。
- アレルギー性結膜炎(目のかゆみ、涙、充血など)
- のどのかゆみ
- 皮膚のかゆみ
- 下痢
- 熱っぽさ
- 口腔アレルギー症候群など
口腔アレルギー症候群とは、花粉症の方が特定の果物や野菜を食べた際に、口の中のかゆみや腫れの症状が生じるものです。特にイネ科、ハンノキ、シラカンバに対する花粉症の方に見られることがあり、原因となる果物や野菜としては以下のようなものが挙げられます。花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)とも呼ばれます。花粉症の原因物質と似た物質が果物などの食物に含まれていることが原因です。
- モモ
- キウイ
- オレンジ
- スイカ
- リンゴ
- トマトなど
風邪との違い
ちなみに、アレルギー性鼻炎と風邪の症状の違いは以下のようになります。
アレルギー性鼻炎 | 風邪 | |
原因 | アレルゲン(ダニ、ハウスダスト、花粉など) | ウイルスや細菌 |
症状 | ・透明でサラサラした鼻水 ・くしゃみが何度も出る ・鼻づまり ・目やのどのかゆみなど | ・くしゃみ ・鼻水 ・発熱 ・せき ・のどの痛みなど |
症状が続く期間 | アレルゲンが存在すれば継続することが通常 | ある程度時間が経てば、自然治癒することが多い |
発症時期の違い
通年性アレルギー性鼻炎と花粉症は原因が異なるため、発症時期も異なります。詳しくは以下の通りです。
通年性アレルギー性鼻炎
通年性アレルギー性鼻炎は、1年を通して生じることが一般的です。ただ、ダニが原因の場合のアレルギー症状は、秋ごろに症状が悪化しやすい傾向があります。
花粉症
花粉症は、原因となる花粉の飛散時期に発症します。北海道と九州では飛散時期が大きく異なることがあるため、あくまで目安ですが、おおむね以下のようになります。
- スギ:10~5月頃(特に2~4月に多い)
- ハンノキ:1~6月頃
- ヒノキ:2~5月頃(特に3~4月に多い)
- イネ:3~10月頃(特に5~6月に多い)
- シラカンバ(シラカバ):4~6月頃
- ヨモギ:8~10月頃
- ブタクサ:8~10月頃
- カナムグラ:8~10月頃
なお、複数の花粉に対してアレルギーを持っている方もいるため、1年中花粉症に悩まされる方もいます。
検査、診断方法に違いはない
通年性アレルギー性鼻炎も花粉症も、検査や診断方法はほぼ同じです。まずは問診と診察で、症状の内容、時期、既往歴(特にアレルギーについて)、家族歴、鼻粘膜の状態などを確認することが一般的です。
その他に、必要に応じて以下のような検査を行うこともあります。
(クリニックフォア対面診療では一部検査は対応しておりません。血液検査は全院で対応可能です。)
検査 | 内容・方法 | わかること |
鼻鏡検査 | 鼻の中に細長いカメラを入れる | ・鼻粘膜の状態 ・副鼻腔炎などの他の病気の可能性の有無 |
レントゲン検査 | レントゲンを撮る | ・鼻の状態 ・副鼻腔炎などの他の病気の可能性の有無 |
鼻汁好酸球検査 | 鼻水の中にある、好酸球※という白血球の量を調べる | 鼻炎がアレルギーによるものか判断できる |
※好酸球(白血球の一種):アレルギー性鼻炎では、鼻粘膜で好酸球が増加するのが特徴
さらに、アレルギーの原因を探るための検査としては、以下のようなものがあります。
検査 | 内容・方法 |
血液検査 | 血液中の好酸球の数値やIgE抗体※の有無を調べる |
皮膚プリックテスト | ・皮膚にアレルゲンを含む液体を付着させ、針で皮膚を軽く刺す ・刺した部分のじんましんの大きさで、その物質に対するアレルギー反応の有無がわかる |
鼻誘発試験 | アレルゲンをろ紙などで鼻粘膜に付着させ、症状を確認する |
※IgE抗体は、アレルゲンに対して作られる抗体。アレルゲンごとに異なる抗体(特異的IgE抗体)が作られるため、何に対するIgE抗体が存在するかで、アレルギーの原因がわかる
いずれも調べられるアレルゲンの項目は多岐にわたります。MAST36という血液検査では、基本的に保険適用で、一度に36種類のアレルゲンに対する検査を行うことができます。
治療法の違いはほとんどない
通年性アレルギー性鼻炎も花粉症も、主な治療法は薬物療法、アレルゲン免疫療法、手術療法の3つです。症状や患者さんの生活状況などをふまえて治療法を検討します。
また、アレルゲンを避けるために、部屋の環境などを整えることも重要です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
薬物療法
アレルギー性鼻炎のお薬は作用などによっていくつかの種類に分類することができ、症状などによって適切なものを選んで使います。症状が同じようなものであれば、通年性アレルギー性鼻炎であっても、花粉症であっても、使うお薬に大きな違いはありません。
種類 | 主な作用 | 主に期待できる効果 | その他特徴 |
抗ヒスタミン薬 | ヒスタミンの受容体をブロックし、ヒスタミンが作用するのを防ぐ | くしゃみ、鼻水 | 眠気を感じるものもあるので注意する |
ケミカルメディエーター遊離抑制薬 | ヒスタミンなどのアレルギー誘発物質が遊離(放出)されるのを抑える | くしゃみ、鼻水、鼻づまり | ・効果が現れるまでに1~2週間程度時間がかかる ・処方されることが減っている |
ロイコトリエン受容体拮抗薬 | 鼻粘膜の腫れに関与するロイコトリエンというアレルギー誘発物質の働きをおさえる | 鼻づまり | 眠くなることは基本的にない |
経口ステロイド薬 | 抗炎症作用や抗アレルギー作用を発揮する | くしゃみ、鼻水、鼻づまり | 副作用のリスクを考慮し、1週間程度しか使えない |
鼻噴霧用ステロイド | くしゃみ、鼻水、鼻づまり | ・点鼻薬における主流 ・患部だけに作用し、全身性の副作用の心配が少ない | |
血管収縮薬 | 鼻の中の血管を収縮させることで鼻の通りをよくする | 鼻づまり | ・点鼻薬は即効性が高い ・点鼻薬は薬剤性鼻炎という副作用のリスクがあるため、使い過ぎない |
アレルゲン免疫療法(減感作療法)
アレルゲンの成分を配合したお薬や注射を使って体をアレルゲンに慣らし、アレルギー反応を弱めていく治療法です。他の治療法は症状を抑えるものが多いですが、アレルゲン免疫療法は約7割で根治が見込めるとされています。
なお、お薬にはさまざまなものがあり、アレルゲンによって使い分ける必要があるため、通年性アレルギー性鼻炎と花粉症では、使うお薬に違いが出てきます。
治療の名称 | 方法 | 対応できるアレルゲン |
舌下免疫療法 | 舌下錠(舌の下に入れるお薬)を飲む | ・スギ花粉 ・ダニ |
皮下免疫療法 | 注射をする | ・スギ花粉 ・ブタクサ花粉 ・ダニ ・カビ |
根治が見込める治療法ではありますが、以下のようなデメリットもあるため、理解した上で治療を受けましょう。
- 治療初期はお薬を頻繁に投与する必要がある
- 口内のかゆみや不快感、じんましん、ぜんそくなどの副作用が現れることがある
- 治療期間が3~5年ほどかかる
(参考)
アレルギー性鼻炎ガイド|日本アレルギー学会
https://allergyportal.jp/documents/bien_guide_2021.pdf
手術療法
お薬では効果が見られないときは、手術を行うケースもあります。手術には以下のようなものがあります。
手術の方法 | 主に期待できる効果 |
鼻の粘膜を切除し、小さくする | 鼻づまり |
レーザーで鼻の粘膜を焼く | くしゃみ、鼻水、鼻づまり |
鼻水の分泌に関わる神経を切る | 鼻水 |
アレルゲンを避ける
通年性アレルギー性鼻炎の場合はダニ、ハウスダスト、ペットなどの原因となるアレルゲンの対策、花粉症の場合は花粉の対策を行いましょう。
通年性アレルギー性鼻炎の対策
- 室内をまめに掃除する
- カーペット、布張りソファー、畳などのダニが付着しやすいものを避ける
- 防ダニカバーを寝具につけるなど
花粉症の対策
- 室内をまめに掃除する
- 花粉の飛散が多い季節、天気、時間帯の外出を避ける
- 外出の際はマスクやメガネをつける
- 毛羽立ったアウターなど、花粉が付着しやすい服装を避ける
- 帰宅後は衣服の花粉をはらってから室内に入る
- 帰宅後はうがい、洗顔をする
- 窓やドアはできるだけ閉める
- 花粉に対応できる空気清浄機を使うなど
アレルギー性鼻炎・花粉症のセルフケア
アレルギー性鼻炎の発症・悪化予防のために、以下のようなセルフケアを心がけることもおすすめです。
- 保湿ティッシュを使う
- 鼻のまわりをワセリンで保護する
- 鼻うがい液や生理食塩水で鼻を洗浄する
- 加湿器などで室内の乾燥対策をする
- 規則正しい生活を送る
- 疲れやストレスをためない
- 低カロリー、低脂肪を心がける
- 栄養バランスのとれた食事を心がける
- アルコール、香辛料などの刺激物を避ける
アレルギー性鼻炎は保険適用で診療できる?
アレルギー性鼻炎は保険適用で診療が受けられることが一般的です。診療は、保険適用の保険診療と、保険適用外の自由診療に分けることができ、基本的に、病気の症状があり、治療の必要性があり、決められた範囲内の治療法を実施する場合は保険適用となります。
保険診療 | 自由診療(保険外診療) | |
概要 | 公的な健康保険が適用される診療 | 保険が適用にならない診療 |
主な状況 | 病気の症状があり、治療の必要性がある状況 | 美容目的や、予防目的の場合 |
診察・治療内容 | 国民健康保険法や健康保険法などによって、給付対象として定められている検査・治療 | 医療保険各法等の給付対象とならない検査・治療 |
費用 | 同じ診療内容なら、どの医療機関でも同じ | 同じ診療内容でも、医療機関によって異なる |
原則1~3割負担 | 全額自己負担 |
なお、血液検査で調べられるアレルゲンは200種類以上ありますが、保険診療の場合は、1回に調べられるアレルゲンの数に上限がある点に注意が必要です。
アレルギー性鼻炎の治療はクリニックフォアのオンライン保険診療へ
クリニックフォアでは、さまざまなお悩みに対応するオンライン診療を行っています。アレルギー性鼻炎の診療は、保険診療のアレルギー科で対応が可能です。
また、花粉症のオンライン診療も保険診療で行っており、飲み薬、目薬、点鼻薬の処方や舌下免疫療法を行っています。鼻炎で外に出るのもつらいという方でも、自宅にいながらアレルギー性鼻炎の治療が始められますので、受診をご検討ください。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。
オンラインでお薬の処方ができない場合があります
以下に当てはまる場合はオンラインで処方ができません。
- 依存性の高い向精神薬(不眠症のお薬を含みます)に分類されるお薬や麻薬は処方できません。
- 触診、検査などが必要な場合(爪水虫など)、オンライン診療では病状を把握するために必要な情報が十分に得られないと医師が判断した場合には、対面での診療をお願いする場合がございます。