皆さんは、ビオチンという栄養素について聞いたことはありますでしょうか?日本では、あまり聞き慣れないかもしれませんが、海外では、髪や頭皮の健康を考えたサプリなどによく使われている成分です。
サプリメントを含む食品は医薬品とは異なり、身体への構造や機能への影響を表示することは原則認められていません(疾患に対する診断・治療・予防・軽減の表現は一切認められていません)。しかし、現実的には、世の中にまるで効果があるように謳われている成分が多く存在することは事実です。また、一部の成分は、たしかに海外では効能を謳うことを認めらる成分であったり、古くから民間療法で使用されており、間接的な効果が否定できないということも事実ではあります。
医師から見て、各成分がどのように見えているのかを共有することは、一定程度の意味があると考え、記事を作成致します。
この記事では、ビオチンの効能について解説いたします。
1.ビオチンの役割とは?髪にどんな影響が出るの?
ビオチンは水溶性ビタミンのビタミンB7(ビタミンHとも言われます)で、体内で糖・アミノ酸・脂質などの代謝に関わる補酵素として働きます。また、皮膚や粘膜の維持、爪や髪の代謝に影響を及ぼすと考えられており、特に、皮膚の炎症を防止する働きがあります。また、髪を形作るケラチンの生成において重要な役割を果たしていることがわかっています。実際にビオチンの摂取量が髪の量や太さに影響すると報告している論文も報告されています。
また、ビオチンは脂質、タンパク質、糖質の代謝に関与することが分かっています。ですので、皮膚・粘膜の新陳代謝を改善し、皮膚や粘膜を健康な状態に保つ働きがあるとされています。
その結果、頭皮の健康状態を維持し、髪の毛に必要な栄養をよりよく届ける効果がビオチンにはあるという報告もあります。論文には、接触皮膚炎や小児のアトピー、ニキビなどの皮膚疾患を治療するためにビオチンを用いた治療方法も報告されています。
2.ビオチンは毎日どれくらいとればいいの?日本人はビオチン不足?
ビオチンの摂取目安量は、18 歳以上の男女ともに1日 50µg/とされています。
ビタミンは通常の生活をしていると不足することは有りませんが、下記のような特殊な環境下では不足することもあります。
偏食
1つ目は偏食です。ビオチンが含まれる食事 (詳細は後述します)をあまり食べないという方、ダイエットなどで食事摂取量が少ない方や日頃から偏った食生活をされている方は、ビオチンが不足することもありえます。また、通常の生活で取る分には問題有りませんが、生の卵白に含まれるアビジンという物質もビオチンの代謝を障害するとされており、過剰に食べる機会のある方は、不足することも有りえます。
胃腸障害
2つ目は胃腸炎など胃腸障害になりやすい方です。胃腸炎などになると腸管の細菌叢からビオチンが産生されなくなることに加えて食事の摂取が難しくなるため、不足するという報告もあります。胃腸関連の疾患を慢性的に抱える方は、ビオチンの不足に至ることも考えられます。
お薬
3つ目は飲まれているお薬の影響です。抗菌薬、サルファ剤の服用や抗てんかん剤(フェニトイン、プリミドン、カルバマゼピン)の長期服用はビオチンの代謝に影響を及ぼすとされています。国民皆保険の日本では風邪を引けばすぐに医療機関を受診でき、医療機関では抗菌薬などをすぐに処方してもらえます。また、抗菌薬の影響で腸内細菌バランスに影響が出ることも考えられます。薬剤の影響でビオチンを含むビタミンの不足を起こすケースは稀にありえます。
3.ビオチンが不足すると髪や身体にどんな影響が出るの?
皮膚のトラブル
ビオチンは、皮膚のトラブルにも関与すると考えられており、アトピー性皮膚炎の原因にもビオチンが関係しているという報告もあります。舌や眼球結膜にも影響が出るとされ、舌炎や結膜炎もビオチンが不足することによって起こる症状と言う報告もあります。
他にも、ビオチンはビタミンであるため、これが不足すると身体にもさまざまな症状を引き起こすとされており、食欲不振、吐き気、悪心、うつ症状、筋緊張低下、知覚異常、痙攣、発達遅延、筋肉痛、有機酸尿が起こると考えられています。
ビオチンは代謝をサポートする補酵素です。そのため、慢性的にビオチンが不足するとリウマチ、シェーグレン症候群、クローン病などの免疫不全症や、インスリンの分泌能が低下し1型および2型の糖尿病のリスクが高まるという報告もあります。糖代謝が正常に行われなくなってしまうと身体の中に乳酸が蓄積してしまうことから筋肉痛になりやすくなり、最終的には乳酸アシドーシスという病気を引き起こすという報告も過去にはあります。
頭皮のトラブル
ビオチンが不足すると頭皮に炎症を引き起こすなど頭皮のトラブルにつながることが考えられています。また、頭皮の状態が悪くなるため髪の状態にも影響を及ぼし、薄毛の原因になると考えられています。薄毛は、遺伝の影響やホルモンの影響で起こりますが、日々の食習慣・生活習慣の影響で必要な栄養がとれないことの影響もゼロでは有りません。
4.ビオチンが含まれる食べ物は?サプリが効果的?
ビオチンの含有量が多い代表的な食品はレバーや卵黄です。その他にも種実類と豆類、穀類にもビオチンが含まれますが、穀類の場合は玄米などの未精製のものに多く含まれており、精白米の約4倍ほどのビオチンが含まれています。また、しいたけやマイタケなどのキノコ類やあさりなどの貝類にもビオチンは含まれています。
これらの食材を好んで積極的に摂取するという方は、ビオチンを食品で気軽に摂取することができます。ですが、特にレバーが嫌いな方、米よりパン派という方、大豆食品をあまり食べない方は、食品からの摂取で十分量ビオチンを摂れていない可能性がありますので積極的にこれらを摂取するようにしましょう。
近年ではビオチンを含んだサプリメントもありますので、食事で補えない方・何かしらの疾患がある方などは、マルチビタミンサプリメントなどを積極的に活用することもビオチンを体に入れる方法の一つと言えるでしょう。
いずれにしても、サプリメントは、あくまで健康の補助として、特定の病気に対する診断・治療・予防・軽減を期待せずに摂取することをお勧め致します。
参考文献
東北大学病院 https://www.hosp.tohoku.ac.jp/pc/img/tyuuou/hiroba04.pdf
一般財団法人海外法人医療基金 https://jomf.or.jp/report/kaigai/20/313.htm
公益財団法人長寿科学振興財団 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/biotin.html