そもそも便秘とは?
便秘の定義は、「体外に出すべき便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされています。回数の目安としては、1週間の排便回数が3回未満とされています。
また、回数は問題なくても、便が硬かったり、強くいきむ必要があったり、残便感があったりする場合も便秘に含まれます。
そして、便秘による症状があり、検査や治療が必要になると、便秘症という病気の部類に入ります。
なお、便秘は女性の方がなりやすく、放置すると命にかかわるケースもあるので、「たかが便秘」と思わずに、早めに対処する必要があります。
便秘の原因・タイプ
便秘は大きく、以下の2つに分けられます。
- 器質性便秘:腸に病気があり、腸内の腫瘍や閉塞などの物理的な変化によって起こる便秘
- 機能性便秘:大腸の機能の異常によって起こる便秘
そして、機能性便秘はさらに以下の3つに分けられます。
- 弛緩性便秘:大腸の筋力低下によって、便を押し出しづらくなる。残便感を感じることが多い
- 直腸性便秘:排便を我慢しすぎるといったことが原因で、直腸(肛門に近い部分)のはたらきが鈍くなり、排便しづらくなる
- けいれん性便秘:ストレスによって腸のはたらきに異常が起きることで排便しづらくなる。コロコロ便や、便秘と下痢を繰り返すといった特徴がある
便秘治療における漢方薬のメリット
体質や便秘の特徴に合わせてさまざまなお薬から選ぶことができる点が、漢方のメリットです。
また、漢方薬はただ便通を改善するだけでなく、自然な便意をもよおすように導くことが特徴です。一般に、便秘改善のためによく使われるのが下剤ですが、下剤を使うと悪化する便秘があったり、無理やり排便している感じがして抵抗がある方もいたりするでしょう。そのようなケースにおいて、漢方薬はよい選択肢となります。
なお、漢方薬の効果が実感できるタイミングは体質や症状によってさまざまですが、便秘の場合は比較的早く効果を実感できることが多いです。
【症状・特徴別】便秘に効果が期待できる漢方薬
ここからは便秘の症状や特徴別に、適した漢方薬を詳しく紹介します。
便秘に対する代表的な漢方薬は「大黄甘草湯」
大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)は、大腸の動きを促進し、自然に近い排便ができるようにする漢方薬です。体力に関わらず使えるので、誰でも使いやすいのが特徴です。
- 効果が期待できる症状・病気:便秘症
熱がたまっている便秘
お腹に熱がたまると便秘になると考えられています。たとえば暑い時や風邪をひいたとき、辛いものや味が濃いものを食べ過ぎたときに、このような便秘が起こりやすいです。
このような場合は、たまった熱を冷まし、便を出しやすくする漢方薬が適しています。なお、熱がたまっている便秘は、一時的かつ回復が早い傾向があります。
【特徴的な症状】
- 便が硬い
- 数日にわたって便が出ない
- お腹の張り、膨満感がある
- 腹痛がある
- 顔が赤い
- 発熱や熱感がある
- よく汗をかく
- 色が濃い尿が出る
- 口や舌が荒れる
- 口臭が強い
- 冷たいものが飲みたくなる
調胃承気湯
調胃承気湯(チョウイジョウキトウ)は、「気」の滞りを改善し、体内の余分な熱を冷ますとともに排便を促す漢方薬です。
- 効果が期待できる症状・病気:便秘
乙字湯
乙字湯(オツジトウ)は、便が硬く、痔がある方に適した漢方薬です。漢方では、便秘によって「瘀血(おけつ)」(血(けつ)の滞り)が生じると、痔につながると考えられており、乙字湯はこのような状態を改善するとされています。
- 効果が期待できる症状・病気:いぼ痔、切れ痔
防風通聖散
防風通聖散(ボウフウツウショウサン)は、太っている方に適している漢方薬です。
糖分や油分の多い食事をしていると、胃に熱がたまり、消化機能の低下や便秘につながります。防風通聖散は、体を温めて汗を出し、腸の熱を取り除くと同時に、脂肪の燃焼・分解も促すとされています。
- 効果が期待できる症状・病気:便秘、むくみ、肥満症、高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)
気滞(ストレス)による便秘
ストレスがあると「気」が乱れて「気滞(きたい)」の状態となります。すると胃腸にも不調が出て便秘になると考えられています。
このような場合は気滞を改善し、胃腸の働きをよくする漢方薬を使うとよいでしょう。
なお、気滞の場合は下痢と便秘を繰り返すなど、症状が変化しやすい傾向にあり、便秘が慢性化しやすいとされています。
【特徴的な症状】
- 数日にわたって便秘している
- 便意はあるのに便が出ない
- 抑うつ感がある
- ゲップやため息が多い
- 上腹部につかえた感じがあり、苦しい
- 脇腹に膨満感がある
- のどの違和感や咳ばらいが多い
- 悪心や嘔吐がある
- 生理の時に胸が張る
桂枝加芍薬湯
桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)は、腹痛や下痢があるときによいでしょう。胃腸が弱く、便秘や下痢をよくする方、便意はあるのに出ない方に適した漢方薬です。
便秘や下痢は、体内の「気」や「血(けつ)」のバランスが乱れていると考えられており、桂枝加芍薬湯はこれらのバランスを整え、便秘などにアプローチします。
- 効果が期待できる症状・病気:しぶり腹、腹痛
加味逍遙散
加味逍遥散(カミショウヨウサン)は、「気」のめぐりを改善し、「血」を補って、気滞を改善する漢方薬です。便秘がひどくない場合は、加味逍遥散で気滞にアプローチする選択肢もあります。
- 効果が期待できる症状・病気:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症
大柴胡湯
大柴胡湯(ダイサイコトウ)は、ストレスがあり、肥満気味の方に適した漢方薬です。肝臓の働きをサポートし、代謝をよくするとされています。
- 効果が期待できる症状・病気:胃酸過多症、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、食欲不振、痔疾、不眠症、ノイローゼ、胆石症、胆のう炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、脳溢血、じんましん、糖尿病
桃核承気湯
桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)は、生理の悩みに効果が期待できる漢方薬です。「気」や「血」の停滞を改善することで、女性のお悩みとともに便秘改善にもつながるとされています。
- 効果が期待できる症状・病気:便秘、月経困難症、月経時や産後の精神不安、月経不順、腰痛、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)
気虚による便秘
気虚とは、「気」が不足している状態です。「気」つまり体のエネルギーが不足すると腸の機能も低下し、便秘になってしまうとされています。
このような場合は、漢方薬で気虚を改善し、胃腸の機能を回復させて、自然に排便できるようにするとよいでしょう。
【特徴的な症状】
- 便が硬い
- 便が軟らかい
- 数日にわたって便秘している
- 便秘が続いているのにお腹は苦しくない
- 便意があっても出ない
- 排便時に汗と息切れがする
- 排便後に極度に疲れを感じる
- 脱肛や胃下垂がある
- 疲れやすさや倦怠感がある
- 声に力がない
麻子仁丸
麻子仁丸(マシニンガン)は、便が硬く塊状になっている方に適した漢方薬です。
硬い便は、漢方では体内で「水(すい)」が作れなくなり、「水」のめぐりが悪くなっていると考えられています。麻子仁丸は、腸を潤して便を柔らかくしたり、腸を刺激したりして便秘にアプローチします。
- 効果が期待できる症状・病気:便秘
潤腸湯
潤腸湯(ジュンチョウトウ)は、便を柔らかくして便通をよくする漢方薬です。お年寄りのコロコロ便に特に適しているとされています。
- 効果が期待できる症状・病気:便秘
補中益気湯
補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は、体力がなく、疲れやすい方向けの漢方薬です。気を補うことで胃腸の機能を回復する効果が期待できます。
- 効果が期待できる症状・病気:食欲不振、胃下垂、痔、脱肛、風邪、夏やせ、病後の体力増強、結核症、子宮下垂、陰萎、半身不随、多汗症
冷えによる便秘
腸が冷えると腸の働きが悪くなり、便秘につながることがあります。尿トラブルを併発するケースもあり、お年寄りによくみられるタイプです。
このような場合は漢方で体を温め、弱った体を補うことが大事です。前述した麻子仁丸や八味地黄丸などが選択肢となります。
【特徴的な症状】
- 手足の冷えがある
- 寒がり
- 顔色が青黒い
- 尿の色が薄く、量が多い
- 夜中によくトイレに行く
- 排尿後に尿もれする
八味地黄丸
八味地黄丸(ハチミジオウガン)は、体を温めて、体全体の機能を改善する漢方薬です。
- 効果が期待できる症状・病気:腎炎、糖尿病、陰萎、坐骨神経痛、腰痛、脚気、膀胱カタル、前立腺肥大、高血圧
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