不眠に効果が期待できる漢方薬とは?不眠の特徴ごとに徹底解説!

眠れない、寝が浅い、寝てもすっきりしないなどの睡眠トラブルは、日常生活にも大きな支障が生じます。治療したいけれど、睡眠薬を使うのには抵抗があるという方も多いでしょう。 そんな方に向けて今回は、不眠に効果が期待できる漢方薬をご紹介。漢方における不眠の原因やメカニズムなども含めて詳しく解説します。

不眠(不眠症)はどういう状態?

不眠症は、以下のような状態が週2回以上かつ1ヶ月以上続いており、苦痛を感じたり、社会生活や仕事などに支障が出ている状態のことです。

  • 入眠障害:なかなか眠れず、眠るまでの時間がいつもより2時間以上かかる
  • 中間覚醒:夜中に2回以上目が覚める
  • 熟眠障害:起きた時に、ぐっすり寝られた感じがしない
  • 早朝覚醒:いつもよりも2時間以上目が覚めてしまう

上記の条件には当てはまらなくても、眠れなかったり、眠りが浅くて目覚めやすかったり、朝早く目が覚めてしまったりすることを不眠といいます。

漢方における不眠

漢方では、体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3つの要素で成り立つと考えられています。

なかでも眠りに関連するのは「気」や「血」。疲れやストレスによって気のめぐりが滞ることや、血が不足することが不眠につながると考えられています。そのため、漢方薬で気の流れを整えて心を落ち着かせるなどして不眠の改善を目指します。

なお、漢方医学における不眠は大きく分けて、「気滞」「気逆」「気血両虚」の3タイプ。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

気滞:不安感による不眠

気滞とは、気(生命エネルギーや気持ち)の巡りが悪くなり、気が滞った状態のことです。この場合、不安に陥ることで不眠につながることがあります。

以下のような症状に心当たりがある場合は、気滞タイプの可能性があります。

  • イライラ
  • 不安
  • 憂うつ
  • 情緒不安定
  • 胸やのどがつまった感じ
  • お腹が張る

気逆:神経過敏による不眠

気逆とは、気が逆方向に流れてしまう状態のことです。通常は、夜になると気から生じる熱を鎮めて眠りにつくのですが、気逆では熱を鎮めきれず、寝つきが悪かったり、途中で目覚めやすくなったりすると考えられています。

以下のような症状に心当たりがある場合は、気逆タイプの可能性があります。

  • 神経過敏
  • イライラ
  • 怒りっぽい
  • 焦燥感
  • のぼせ、ほてり
  • 動悸
  • 吐き気
  • げっぷ

気血両虚:体力不足による不眠

気血両虚は、睡眠のために必要な気や血が不足したり、働きが低下したりしている状態のことです。眠るためのエネルギーが不足しており、疲れているのに眠れなかったり、ぐっすり眠れなかったりします。

以下のような症状に心当たりがある場合は、気血両虚タイプの可能性があります。

  • 全身の倦怠感
  • 気力がない
  • 疲れやすい
  • 貧血気味
  • 血色が悪い
  • 胃もたれ
  • 食欲不振
  • 食後に眠くなる
  • 寝汗

不眠治療における漢方薬のメリット

漢方薬による不眠治療は、直接眠りを誘発するのではなく、眠りを妨げている原因にアプローチして不眠の改善を目指すことになります。

たとえば気滞の場合は気のめぐりを促す漢方薬、イライラして不眠になっている場合は、イライラを落ち着かせる漢方薬を選ぶといった形です。そのため、より自然な状態で、不眠の改善を目指すことができます。睡眠薬に依存したくないと考える方にもよい選択肢となるでしょう。

一方西洋医学では、まず不眠の原因を取り除き、眠りやすい環境を整えることから始まります。たとえば、寝具や寝室の環境を整える、リラックスする、カフェインを控えるなどの方法が挙げられます。

それでも不眠が改善されないときは睡眠薬を飲んだり、必要に応じて精神療法を実施したりします。

【特徴別】不眠に効果が期待できる漢方薬

ここからは、不眠の特徴別に、効果が期待できる漢方薬を紹介していきます。

疲れやすい方の不眠

疲れやすい方の不眠には、以下のような漢方薬がよいでしょう。

  • 人参養栄湯
  • 酸棗仁湯
  • 帰脾湯
  • 加味帰脾湯

人参養栄湯

人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)は、体力虚弱な方向きの、気と血を補う漢方薬です。

抗うつ作用や鎮静作用がある生薬が配合されており、滋養強壮と睡眠リズムの改善が期待できます。

  • 効果が期待できる症状・病気:疲労倦怠、寝汗、病後の体力低下、食欲不振、手足の冷え、貧血

酸棗仁湯

酸棗仁湯(サンソウニントウ)は、心身が疲れ、弱って不眠となっている場合に効果が期待できる漢方薬です。体力は中等度以下で、心身が疲れ、精神不安などがある方向きです。

  • 効果が期待できる症状・病気:心身が疲れ弱って眠れないもの

帰脾湯

帰脾湯(キヒトウ)は、「気」や「血」の不足に対して使われる漢方薬。虚弱体質で血色が悪い人向きです。

  • 効果が期待できる症状・病気:不眠症、貧血

加味帰脾湯

加味帰脾湯(カミキヒトウ)は、帰脾湯に柴胡(サイコ・せり科の植物)、山梔子(サンシシ=くちなし)を加えた漢方薬です。消化器の働きをサポートし、不足した「血」を増やして不眠を改善するとされています。

体力が中等度以下で、心身が疲れ、貧血気味の方向きであり、更年期障害がある場合は第一選択となる薬です。

  • 効果が期待できる症状・病気:不眠症、精神不安、神経症、貧血

ストレスがある方の不眠

ストレスがある方の不眠には、以下のような漢方薬がよいでしょう。

  • 大柴胡湯
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯
  • 桂枝加竜骨牡蛎湯
  • 柴胡桂枝乾姜湯
  • 半夏厚朴湯
  • 柴朴湯
  • 香蘇散

大柴胡湯

大柴胡湯(ダイサイコトウ)は、体力があり、便秘気味の方向きの漢方薬です。ストレスを改善するほか、便秘の改善によっても不眠の解消につながるとされています。

  • 効果が期待できる症状・病気:不眠症、ノイローゼ、胆石症、胆のう炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、脳溢血、じんましん、胃酸過多症、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、食欲不振、痔疾、糖尿病

柴胡加竜骨牡蛎湯

柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)は、不安やストレスによる不眠に効果が期待できる漢方薬。「気」のめぐりをよくし、体内ににこもった熱を冷まして心を落ち着かせるとされています。

体力は中等度以上で、不安、動悸、不眠、便秘などがある方向きです。

  • 効果が期待できる病気・症状:神経衰弱症、神経性心悸亢進症、ヒステリー、小児夜啼症、てんかん、高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、陰萎

桂枝加竜骨牡蛎湯

桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)は、気逆を改善する漢方薬。神経の高ぶりを抑え、不安を取り除いて「気」や「血」を補い、不安定な精神を整えるとされています。眠りが浅かったり、夢見が多かったりするときによいでしょう。比較的虚弱な体質の方向きです。

  • 効果が期待できる病気・症状:神経衰弱、性的神経衰弱、小児夜尿症、遺精(無意識の射精)、陰萎

柴胡桂枝乾姜湯

柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)は、「血」が不足(栄養が不足)しており、比較的虚弱な方向きの漢方薬です。女性のストレスによる不調に使われることがあります。

  • 効果が期待できる病気・症状:不眠症、神経症、更年期障害、血の道症(生理や更年期などの女性ホルモンバランスの変化によって生じる不安などの症状)

半夏厚朴湯

半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)は、「気」のめぐりを改善する漢方薬です。体力は中等度で、気分がふさぎがち、のどや食道につかえるような異物感があるような方向きです。

  • 効果が期待できる症状・病気:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声

柴朴湯

柴朴湯(サイボクトウ)は、免疫機能を調整して炎症を和らげるとされる小柴胡湯(ショウサイコトウ)と半夏厚朴湯を合わせた漢方薬です。半夏厚朴湯で効果が不十分な場合に使うとよいでしょう。

  • 効果が期待できる症状・病気:不安神経症、咳、気管支炎、気管支喘息、小児喘息

香蘇散

香蘇散(コウソサン)は気鬱(抑うつ気分など)の治療に使われる漢方薬です。胃腸や気分がすぐれない方向きです。

  • 効果が期待できる症状・病気:胃腸虚弱で神経質な方の風邪の初期

イライラがある方の不眠

イライラがある場合、「肝」の高ぶり(精神の高ぶり)を抑えるような漢方薬を使うことが多いです。肝とは、精神や自律神経のはたらきなどが含まれる概念のことです。

イライラがある方の不眠には、以下のような漢方薬がよいでしょう。

  • 加味逍遥散
  • 抑肝散
  • 抑肝散加陳皮半夏
  • 黄連解毒湯
  • 四逆散

加味逍遙散

加味逍遥散(カミショウヨウサン)は、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害に対して効果が期待できる漢方薬です。体力は中等度以下で、のぼせ感があり、肩こり、疲れやすさ、イライラ、精神不安、ときに便秘などがある方向きです。

  • 効果が期待できる症状・病気:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症

抑肝散

抑肝散(ヨクカンサン)は、体力中等度かつ、神経がたかぶって怒りやすかったり、イライラがあったりする方向きの漢方薬です。名前の通り、「肝」の高ぶりを抑える作用が期待できます。

  • 効果が期待できる病気・症状:不眠症、神経症、小児夜泣きなど

抑肝散加陳皮半夏

抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)は、抑肝散に陳皮(みかんの皮)と半夏(サトイモ科の植物)を加えた漢方薬です。「肝」の高ぶりを抑え、「気」と「血」のめぐりもよくすることで、ストレスによる影響を改善させるとされています。

体力中等度かつ、消化器がやや弱く、神経がたかぶって怒りやすかったり、イライラがあったりする方向きです。

  • 効果が期待できる病気・症状:不眠症、神経症、小児夜泣きなど

黄連解毒湯

黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)は、比較的体力があり、のぼせやイライラ傾向がある方向きの漢方薬です。

  • 効果が期待できる病気・症状:不眠症、ノイローゼ、鼻血、高血圧、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症

四逆散

四逆散(シギャクサン)は主に胃炎などの胃腸症状の改善に使われる漢方薬ですが、イライラなどの精神症状にも効果が期待でき、不眠改善につながるとされています。比較的体力がある方向きです。

  • 効果が期待できる病気・症状:神経質、ヒステリー、胆嚢炎、胆石症、胃炎、胃酸過多、胃潰瘍、鼻カタル、気管支炎

高血圧に伴う不眠:三黄瀉心湯

三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)は、体の熱や炎症を取り除き、イライラを抑える効果が期待できる漢方薬です。体力が中等度以上で、のぼせ気味・顔面の紅潮、精神の不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などがある方向きです。

  • 効果が期待できる症状・病気:高血圧の随伴症状(不眠、のぼせ、肩こり、耳なり、頭が重い感じ、不安)、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症

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