ピルを飲むと血栓症になりやすい?その確率や予防方法とは?医師が解説します。

低用量ピルを飲むことで血栓症のリスクが上がるため、不安に思っている方もいるのではないでしょうか?しかし、実際に血栓症を発症する確率はかなり低く、大抵の場合、過度に心配する必要はありません。

ここでは、低用量ピルによる血栓症のリスクがどの程度なのかや、予防の方法、発症した時の注意点などについて詳しく解説します。


血栓症とは?

血栓症とは、血管の中に血栓(血のかたまり)ができ、血管がつまってしまう病気です。血液が正常に届かなくなって臓器の機能が低下したり壊死した場合、さまざまな症状が引き起こされます。

※参考:日本血栓止血学会 一血栓症ガイドブック

ピルで血栓症が起きる可能性はかなり低い!

低用量ピルの服用で血栓症のリスクが高まることは事実です。しかし、その確率はかなり

低いため、過度に心配する必要はないでしょう。

ピル服用者が血栓症になる確率は1万人中3~9人

※妊婦期間を9ヵ月とした場合の割合は7~27%

(出典:FDA2013年2月15日安全性情報)

バイエル薬品株式会社「患者(服用者)携帯カード説明資材」より作成

低用量ピルを服用していない人で、静脈血栓塞栓症(血栓症の一種)を発症するのは、年間で1万人中1~5人です。一方、低用量ピルを服用すると血栓症のリスクは高まるものの、年間で1万人中3~9人程度の発症数なので、発症する確率はかなり低いと言えるでしょう。

また、妊婦は1万人中5~20人、出産後12週間までの女性は1万人中40~65人が発症するというデータがあります。つまり、妊娠中~出産後の女性に比べれば、低用量ピル服用者の血栓症リスクはかなり低いため、過度に心配する必要はありません。

※参考:https://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf

血栓症のリスクが高くなる理由

低用量ピルに含まれるエストロゲンが、何らかのメカニズムで凝固抑制因子(血液が固まるのを防ぐ働きをもつ物質)の機能を低下させることが理由の一つと考えられていますが、詳しいメカニズムは明らかになっていません。

血栓症の可能性がある症状

以下のような症状がある場合は血栓症を発症している可能性があるため、すぐに医療機関を受診しましょう。

・激しい腹痛

・激しい胸の痛み、押しつぶされるような痛み、息苦しい

・激しい頭痛

・見えにくい所がある、視野が狭い

・舌のもつれ

・失神、けいれん

・ふくらはぎの痛み(多くの場合、片方のふくらはぎ)、むくみ、握ると痛い、赤くなっている

など

血栓ができる場所によって、突然の息切れや、喀血(咳とともに血が出る)、言語のもつれ、吐き気、嘔吐などが起きることもあります。

※参考:http://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf

血栓症のリスクが高い人やタイミングはある?

血栓症リスクが高い人

低用量ピルを服用することで、血栓症などの心血管系の障害が発生するリスクが高まる可能性がある方は、低用量ピルを処方してもらえないことがあります。

処方してもらえない人

・初経が来る前の人

・50歳以上または閉経後の人

・35歳以上でたばこを1日15本以上吸っている人

・重症の高血圧症の人

・血管に異常がある糖尿病患者

・脂質代謝異常があり、他にも心血管疾患の危険因子(高齢、喫煙、糖尿病、高血圧)などを伴う人

・妊娠または妊娠の可能性がある人

・産後4週以内の人

・授乳中の人

・手術前後の人

・長期間安静状態にある人

・心臓弁膜症患者(肺高血圧症または心房細動を合併している場合や、亜急性細菌性心内膜炎の既往がある場合)

・重篤な肝障害や肝腫瘍がある人

・前兆(閃輝暗点(稲妻のような光の波が現れ、徐々に広がって暗なり見えなくなる)など)を伴う片頭痛がある人

・乳がん患者

・血栓性素因(血栓症が起きやすい状態)をもつ人

・深部静脈血栓症、血栓症静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患の患者、または既往歴があるか、抗凝固療法中の人

・抗リン脂質抗体症候群の人

・異常性器出血があり、診断が確定していない人

・低用量ピルの成分に過敏性素因がある人

・妊娠中の黄疸、持続性掻痒症、妊娠ヘルペスの既往がある人

処方してもらえない可能性がある人

・40歳以上

・BMI30以上

・喫煙者

・軽症の高血圧症の人

・妊娠中も含め、高血圧の既往がある人

・耐糖能(血糖値を下げる働き)が低下している人

・他の心血管疾患の危険因子を伴わない脂質代謝異常の人

・心臓弁膜症、心疾患がある人

・肝障害、肝腫瘤、胆石症がある人

・前兆を伴わない片頭痛がある人

・乳がんの既往、家族歴がある人、BRCA1/BRCA2変異等がある人、診断が確定していない乳房腫瘤がある人

・血栓症の家族歴がある人、表在性血栓性静脈炎の人

・子宮頸部上皮内腫瘍、子宮頸がん、症状があり治療が必要な子宮筋腫がある人

・ポルフィリン症、テタニー、てんかん、腎疾患やその既往歴、炎症性腸疾患のある人

低用量ピルが服用できない人は「ミニピル」という選択肢も!

・低用量ピルが服用できない場合でも、ミニピルなら服用できる可能性があります。ミニピルにはエストロゲンが配合されていないため、血栓症のリスクが比較的低いといわれています。

血栓症が起きやすいタイミング

血栓症は服用開始から3ヶ月以内に起きやすいといわれています。これは、血栓ができるまでには時間がかかるためと考えられます。そのため、半年以上問題なく服用できていれば、血栓症の心配はあまりないと言えるでしょう。ただし、一度服用を中止して再開する場合は、同じ時期に血栓症のリスクが再度高まるため、注意が必要です。

参考:https://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf

血栓症を発症したときの対処法

血栓症を発症したら、薬物療法や手術などによる治療を行います。早期に適切な治療をすれば大事に至ることは少ないですが、血栓が肺の血管まで移動し、肺塞栓症を発症した場合は1%の確率で死に至るとされているため注意が必要です。気になる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。

※参考:https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/JCS2017_ito_h.pdf

https://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf

血栓症の予防法

血栓症を予防する方法もあるため、日ごろから以下のような点に注意して生活しましょう。

着圧ストッキング

弾性ストッキング(着圧ストッキング)や包帯で脚を締めつけると、脚の静脈に血流が停滞するのを防ぐことができます。こうすることで血流が速くなり、血栓ができにくくなるといわれています。ただし、市販されている着圧ストッキングと医療目的の製品では圧迫度が異なるため、しっかり選びたい場合は医師に相談してみましょう。

※参考:

http://www.jsth.org/wordpress/wp-content/uploads/2015/05/%E8%A1%80%E6%A0%93%E7%97%87%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF.pdf

水分補給

水分が少なくなると血が固まりやすくなるため、こまめな水分補給が大事です。ただし、アルコールには利尿作用があり、かえって水分不足を招くため避けましょう。

※参考:

http://www.jsth.org/wordpress/wp-content/uploads/2015/05/%E8%A1%80%E6%A0%93%E7%97%87%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF.pdf


参考文献

日本産科婦人科学会 低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤

ガイドライン(案)

https://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf

日本血栓止血学会  血栓症ガイドブックhttp://www.jsth.org/wordpress/wp-content/uploads/2015/05/%E8%A1%80%E6%A0%93%E7%97%87%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF.pdf

肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に

関するガイドライン(2017年改訂版)

日本血栓止血学会誌 https://js-phlebology.jp/wp/wp-content/uploads/2019/03/JCS2017_ito_h.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/24/1/24_56/_pdf/-char/ja