無排卵月経とは|排卵がないのに「月経様出血」が起こる仕組み
無排卵月経は、医学的には「無排卵周期症」と呼ばれます。出血はあるものの卵巣から卵子が排出される「排卵」が起きていない状態を指します。
出血があるため、通常の生理だと思い込み無排卵に気づきにくく、婦人科を受診して初めて判明するケースも少なくありません。
月経のような出血はあるが排卵が起きていない状態
通常の月経周期では、視床下部や下垂体から分泌されるホルモンの働きによって卵胞が成熟し、排卵が起こります。排卵後は黄体からプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、妊娠が成立しなければ子宮内膜が剥がれて月経が起こる仕組みです[1]。
しかし無排卵月経では、この一連の流れのうち「排卵」が起きないため、プロゲステロンが十分に分泌されません。その結果、子宮内膜が不安定な状態となり、月経のような出血だけが起こることがあります。
子宮内膜が維持できず剥がれて出血する
無排卵の場合でも卵巣内の卵胞は途中まで発育するため、卵胞からエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されます。
エストロゲンの作用によって子宮内膜は徐々に厚くなりますが、排卵が起きないためプロゲステロンによる内膜の安定化がおこなわれません。
子宮内膜がエストロゲンだけでは維持できなくなると、支えを失った内膜が自然に剥がれ落ちて出血が起こります。
この出血は「破綻出血」と呼ばれ、排卵後に起こる消退出血とは仕組みが異なり、出血量や持続期間が不安定になりやすいという特徴があります[1]。
通常の月経と外見上は区別しにくい
無排卵月経で起こる出血は、外見上は通常の月経と区別がつきにくいのが特徴です。
出血の色や性状も通常の経血と似ているため、本人が見た目だけで「排卵していない」と気づくことは難しいとされています。
生理が毎月規則的に来ている方であっても、実際には排卵が伴っていないケースがあります。
とくに月経周期が25〜38日の正常範囲内に収まっている場合は、無排卵であることに気づきにくい傾向にあります[1]。
無排卵月経かどうかを正確に判断するためには、基礎体温の測定や婦人科での検査が必要です。気になる症状がある場合は早めに医師に相談することをおすすめします[1]。
無排卵月経の特徴と見分け方
無排卵月経は自覚症状が少ないため、自分では気づきにくい状態ですが、いくつかの特徴的な傾向がみられることがあります。
<無排卵月経を疑うサイン>
【基礎体温】二相にならず一相性のまま
【月経の変化】月経周期が不規則・月経日数や経血量に異常がみられる
【妊娠関連】妊活を続けても妊娠しない状態が続く
これらのサインを知っておくことで、早めに異変に気づき適切なタイミングで受診するきっかけになるでしょう。
基礎体温が低温期と高温期の二相性にならず一相性のまま
基礎体温は、無排卵月経かどうかを判断するうえで重要な指標のひとつです。
通常の月経周期と無排卵月経では、基礎体温の変化に以下のような違いがあります。
| 項目 | 正常な月経周期 | 無排卵月経 |
| 体温の変化 | 低温期 → 排卵 → 高温期へ移行 | 排卵が起こらず低温のまま推移 |
| 体温上昇 | 約0.3〜0.5℃上昇する | 体温の上昇がみられない |
| パターン | 二相性になる | 一相性のまま |
排卵後に分泌されるプロゲステロンには体温を上昇させる作用があるため、排卵が起きていれば基礎体温は高温期へ移行します。
一方、無排卵月経ではプロゲステロンが十分に分泌されないため、体温は上がらず低温のまま推移します。
そのため、基礎体温を2〜3か月記録しても高温期がみられない場合は、無排卵月経の可能性が考えられます。
月経周期が不規則
正常な月経周期は25〜38日とされていますが、無排卵月経ではこの範囲から大きく外れることが多いです。
月経周期が24日以内の場合は「頻発月経」、39日以上の場合は「希発月経」と呼ばれ、いずれも排卵が正常におこなわれていない可能性を示すサインのひとつです[1]。
1か月に2回生理が来たり、逆に2か月以上生理が来なかったりする場合は、無排卵月経が疑われます。
ただし、月経周期が正常範囲内であっても排卵が起きていないケースがあるため、周期だけで判断することはできません。
月経日数や経血量に異常がみられる
無排卵月経では、月経の持続日数や経血量にも異常がみられることがあります。
正常な月経の持続期間は3〜7日とされていますが、無排卵月経ではこの範囲から外れるケースが多いです[1]。
| 状態 | 定義 | 考えられる状況 |
| 過短月経 | 2日以下で終わる | 子宮内膜が十分に厚くならないまま出血が起きている可能性 |
| 過長月経 | 8日以上出血が続く | ホルモンバランスの乱れによって子宮内膜が不規則に剥がれ落ちている状態 |
経血量についても、排卵が起きていない場合はプロゲステロンによる子宮内膜の十分な成熟がおこなわれないため、内膜が薄い状態のまま剥がれ落ちて経血量が少なくなる傾向がみられます。
茶色っぽい少量の出血がだらだらと続くような場合も、無排卵月経の特徴のひとつです。
経血量には個人差があるため、経血量だけで無排卵かどうかを判断することは難しく、ほかの特徴とあわせて総合的に確認することが大切です。
妊活を続けても妊娠しない状態が続く
妊娠を希望しているにもかかわらず、なかなか妊娠に至らない場合は、無排卵月経が関係している可能性があります。
基礎体温が一相性のままである場合や月経周期に乱れがある場合は、医療機関を受診してみましょう。
無排卵月経の原因|ホルモンバランスが乱れる背景
無排卵月経は、さまざまな要因によってホルモンバランスが乱れ、排卵が正常におこなわれなくなることで起こります。
原因は日常生活に関わるものから疾患によるものまで幅広く、複数の要因が重なっているケースも少なくありません。
原因を正しく理解しておくことが、適切な治療や予防につながるでしょう。
ここでは、無排卵月経の主な原因を3つのパターンに分けて整理します。
過度なストレスや不規則な生活習慣が排卵を抑制する
排卵は脳の視床下部と下垂体から分泌されるホルモンによってコントロールされています。
過度なストレスがかかると視床下部の機能に影響が及び、排卵に必要なホルモン(GnRH・FSH・LH)の分泌が低下する場合があります。
ホルモンの分泌が低下すると卵巣内の卵胞が十分に成熟できなくなり、排卵が起こらないまま月経様の出血だけが生じます。
精神的なストレスだけでなく、不規則な食事・慢性的な睡眠不足・過度な肉体的疲労もホルモン分泌に影響を及ぼす可能性があります。
とくに急激な体重減少は無排卵月経の主要な原因のひとつです。
無理なダイエットなどで体脂肪率が極端に低下すると、体がエネルギー不足の状態と判断し排卵が停止する場合があります。
規則的な食事・十分な睡眠・適度な運動を心がけることが大切です。
思春期や更年期のホルモン変動で起こりやすい
思春期と更年期は、生理的な理由で無排卵月経が起こりやすい時期です。
思春期では視床下部—下垂体—卵巣のホルモン軸が未成熟なため、排卵が安定して起こらないことが多いとされています。
一方、更年期では卵巣機能が低下し始めるため、排卵が不規則になったり無排卵の周期が増えたりします。
思春期や更年期の無排卵月経はある程度生理的なものと捉えられるため、すべてが治療の対象になるわけではありません。
ただし頻繁な出血による貧血がみられる場合や月経が長期間止まらない場合は日常生活に支障をきたすため、婦人科での相談が必要です。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や高プロラクチン血症などの疾患が原因となるケース
無排卵月経の背景に、特定の疾患が関係しているケースもあります。
多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群(PCOS)は無排卵を引き起こす代表的な疾患で、月経異常や排卵障害・卵巣の多嚢胞所見を特徴とします[2]。
PCOSでは、LH(黄体形成ホルモン)の分泌亢進やアンドロゲン(男性ホルモン)の過剰などによってホルモンバランスが崩れ、卵胞が十分に成熟できず排卵が起こりにくくなります[1][2]。
高プロラクチン血症は、本来は授乳時に分泌されるプロラクチンというホルモンが異常に高くなる状態で、排卵を抑制する原因となります。
甲状腺機能異常(甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症)もホルモンバランスに影響を及ぼし無排卵月経を引き起こすことがあるため、これらの疾患が原因の場合はそれぞれの疾患に対応した治療を優先することが重要です。
無排卵月経を放置するリスクと受診の目安
無排卵月経は自覚症状が少ないため、気づかないまま放置してしまう方も多い状態です。
しかし、無排卵の状態が長期間続くと不妊や子宮の疾患など深刻なリスクにつながる可能性があります。
放置するリスクを正しく理解しておくことが、適切なタイミングで医療機関を受診するきっかけになるでしょう。
ここでは、放置するリスクと受診の目安を3つのポイントに分けて整理します。
不妊の原因のひとつになる
排卵が起きていなければ自然妊娠は成立しないため、無排卵月経が続いている場合は妊娠が難しい状態です。
妊娠を希望する方は、早めに婦人科を受診し、排卵の有無を確認することが重要です。必要に応じて適切な治療を開始しましょう。
子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスクが上昇する可能性がある
無排卵月経が長期間続くと、子宮内膜増殖症や子宮体がんの発症リスクが高まる可能性があります。
通常の月経周期では排卵後に分泌されるプロゲステロンが子宮内膜の増殖を抑制し、適切な厚さに保つ役割を果たしています。
無排卵月経ではプロゲステロンが十分に分泌されないため、エストロゲンの作用だけで子宮内膜が増殖し続けやすくなります。
エストロゲンによる刺激が長期間続くと「子宮内膜増殖症」を発症するリスクが高まり、さらに放置すると一部が子宮体がんに進展する可能性があるとされています[1]。
ただし、適切な治療と定期的な経過観察で管理することが可能なため、とくにPCOSが原因の無排卵月経でエストロゲン優位の状態が続いている場合は早めに婦人科を受診することが重要です。
基礎体温の一相性が3か月以上続く場合は早めに受診する
無排卵月経かどうかを判断するうえで重要な指標のひとつが、基礎体温のパターンです。
基礎体温を2〜3か月記録しても高温期がみられず一相性のままである場合は、無排卵月経の可能性が高いと考えられます。
月経周期が極端に短い(24日以内)または長い(39日以上)場合や、経血がだらだらと8日以上続く場合も受診の目安となります[1]。
妊娠を希望している場合はとくに早めの受診が重要で、排卵の有無を確認したうえで適切な治療を開始することが妊娠への近道になります。
受診の際には基礎体温表や生理管理アプリの記録を持参すると医師が状況を把握しやすくなるためおすすめします。
無排卵月経の診断と治療
無排卵月経が疑われる場合は、婦人科での検査を受けて正確な診断を得ることが重要です。
治療法は妊娠を希望するかどうかによって異なり、それぞれの状況に応じた対応が選択されます。
自己判断ではなく、医師と相談のうえで自分に合った治療法を見つけることが大切です。
ここでは、診断の手順・妊娠を希望する場合の治療・希望しない場合の治療の3点を整理します。
婦人科での血液検査・超音波検査で診断する
無排卵月経の診断には、複数の検査を組み合わせておこなうのが一般的です。
まず基礎体温の記録をもとに、高温期がみられない一相性のパターンが確認されます。
血液検査では以下のホルモンの値を測定して、ホルモン分泌の異常やPCOS・高プロラクチン血症・甲状腺機能異常などの原因疾患の有無を確認します。
- エストロゲン(卵胞ホルモン)
- プロゲステロン(黄体ホルモン)
- LH(黄体形成ホルモン)
- FSH(卵胞刺激ホルモン)
- プロラクチン
- 甲状腺ホルモン
超音波検査(経腟エコー)では、卵巣の形態や卵胞の発育状況・子宮内膜の厚さなどを観察します。
PCOSでは卵巣に多数の小さな卵胞が連なる「ネックレスサイン」と呼ばれる特徴的な所見がみられる場合があります[1]。
妊娠を希望する場合は排卵誘発剤による治療をおこなう
妊娠を希望する場合は、排卵を促す治療が中心となります。
第一選択として用いられるのがクロミフェン(クロミッド)などの排卵誘発剤で、脳に働きかけてFSHやLHの分泌を促し、卵胞の発育と排卵を促進します[1]。
クロミフェンで十分な効果が得られない場合には、FSHやhCGを用いたゴナドトロピン療法が検討されます。より強い排卵誘発効果が期待できる一方で、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などのリスクがあるため、専門医による慎重な管理のもとでおこなわれます。
また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が背景にある場合には、インスリン抵抗性の改善を目的とした治療を併用することもあります。原因や体の状態に応じて治療方針が異なるため、医師と相談しながら進めることが重要です。
妊娠を希望しない場合はホルモン剤や低用量ピルで月経周期を整える
妊娠を当面希望しない場合は、ホルモン剤を用いて月経周期を整える治療が選択されます。
代表的な方法として、黄体ホルモン製剤を周期的に投与し、定期的な消退出血を起こす「ホルムストローム療法」があります[1]。
卵巣機能がより低下している場合には、エストロゲンと黄体ホルモンの両方を投与する「カウフマン療法」が用いられることもあります[1]。
また、低用量ピルによって月経周期を規則的に整えつつ、エストロゲン過剰による子宮内膜への刺激を抑える方法も選択肢のひとつです。子宮内膜増殖症の予防効果も期待されています。
ただし、低用量ピルは年齢や喫煙習慣、血栓症の既往、特定の持病などにより服用できないケースもあります。
服用を検討する際は、かならず医師に相談したうえで自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
いずれの治療法も自己判断は避け、婦人科医と相談しながら自分に合った方法を選ぶことが重要です。
無排卵月経が気になるならオンライン診療の活用も視野に
「婦人科に行く時間がない」「まずは気軽に相談したい」と感じる方は、オンライン診療の活用も選択肢のひとつです。
クリニックフォアでは、スマートフォンやパソコンからビデオ通話で医師の診察を受けられるため、忙しい方でも受診しやすい環境が整っています。
月経周期の乱れや基礎体温の異常について相談でき、低用量ピルによる月経周期の管理が適切と判断された場合はオンライン診療で処方を受けることも可能です。
ただし、無排卵月経の確定診断には血液検査や超音波検査が必要なため、精密検査が必要と判断された場合は対面で医療機関を受診してください。
処方されたお薬は最短翌日に自宅へ届くため、医療機関に足を運ぶ必要がなく、定期配送を利用すれば毎月の受け取りもスムーズにおこなえます。
月経周期の乱れや無排卵月経が気になる方は、まずは医師に相談することをおすすめします。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※検査等が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。
※お薬の配送日時は診察時間や配送先により異なります。
※診察料・システム利用料:合計1,650円(税込)
※配送料は550円(税込)です。
よくある質問
Q1:無排卵月経は自分で気づくことができますか?
無排卵月経は自覚症状が少ないため、自分だけで気づくのは難しいケースが多いです。
もっとも有効なセルフチェック方法は基礎体温の測定で、2〜3か月記録しても高温期がみられず一相性のままであれば無排卵月経の可能性があります。
月経周期の乱れや経血量の異常が気になる場合は婦人科を受診して検査を受けることをおすすめします。
Q2:無排卵月経の翌月は妊娠しやすいというのは本当ですか?
「無排卵月経の翌月は妊娠しやすい」という説は、医学的に確立された根拠に基づくものではありません。
無排卵月経の周期では排卵が起きていないため妊娠することはできず、翌月の排卵が自動的に回復するわけでもありません。
妊娠を希望する方は早めに婦人科を受診し、排卵の有無を確認することをおすすめします。
Q3:思春期の無排卵月経は治療が必要ですか?
初経後数年間の無排卵月経はホルモン軸が未成熟であることによる生理的なものが多く、多くの場合は経過観察します。
ただし、頻繁な出血による貧血がみられる場合や月経が長期間止まらない場合は治療の対象となることがあります。
不安がある場合は早めに婦人科に相談してください。
Q4:低用量ピルの服用で無排卵月経は改善しますか?
低用量ピルは月経周期を規則的に整え、エストロゲン過剰による子宮内膜への刺激を抑制する効果が期待できます。
ただし、低用量ピルは排卵を抑制するお薬であるため、服用中に排卵が再開するわけではありません。妊娠を希望する場合は排卵誘発剤による治療が必要となるため、医師と治療方針を相談してください。
なお、低用量ピルは年齢・喫煙習慣・持病などにより服用できないケースがあるため、希望する方も医師の診察のうえで服用の可否を判断してもらう必要があります。
まとめ
無排卵月経(無排卵周期症)とは、月経のような出血はあるものの実際には排卵が起きていない状態です。
途中まで発育した卵胞から分泌されるエストロゲンで子宮内膜が厚くなり、維持できずに剥がれ落ちて出血するため、通常の月経と外見上は区別しにくい特徴があります。
月経周期の不規則さや月経日数の異常・経血量の変化・基礎体温が一相性のままである点が見分けるポイントです。
原因としては、過度なストレスや不規則な生活習慣・急激な体重減少・思春期や更年期のホルモン変動・PCOS・高プロラクチン血症・甲状腺機能異常などが挙げられます。
無排卵月経を放置すると不妊の原因になるほか、子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスクが上昇する可能性があるため注意が必要です。
妊娠を希望する場合は排卵誘発剤、希望しない場合はホルモン剤や低用量ピルによる月経周期の管理など、状況に応じた治療法が選択されます。
月経周期の乱れや妊娠に至らないことへの不安がある方は、婦人科やオンライン診療で早めに医師に相談してみてはいかがでしょうか。
※効果・効能・副作用のあらわれ方は個人差がございます。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
