もしかして過多月経? 定義とセルフチェックリスト
過多月経とは、経血の量が多いことを言います。とはいえ、経血量を普段から測定することはまずないので、自分の量が多いかどうかなんてよく分からないですよね。そこでまずは、過多月経の定義とセルフチェックリストから見ていきましょう。
過多月経は経血量が非常に多い状態
個人差はあるものの、正常な経血量とされるのは20~140mlです。経血量が多い日であっても、2時間おきくらいにナプキンを交換しているのであれば正常だと判断できます。
一方、過多月経とは「月経の出血量が異常に多いこと」「1回の生理期間の出血量が140mlより多い場合」と、産婦人科領域で定義されています。ナプキンを1〜2時間程度の頻度で交換している人、お昼でも夜用ナプキンを使用している人は、もしかしたら過多月経かもしれません。
過多月経は10代から40代以降まで、あらゆる世代にみられる症状ですが、常に過多月経の状態であると本人にはこの経血量が当たり前となってしまいます。見逃されやすい生理中の不調の一つですが、過多月経だと貧血などによって日常生活に支障が出ることもあるので注意が必要です。
原因となる病気が潜んでいたり、大量出血につながったりする恐れもあるため、不調を放置してはいけません。
過多月経のセルフチェックリスト
自分の経血量が多いかどうかは分かりにくいもの。経血量を計らずに、過多月経かどうかを知るポイントは主に4つあります。次のチェックリストに当てはまるものがあるか確認してみましょう。
【過多月経セルフチェックリスト】
- 経血に血の塊が含まれている
- 昼用ナプキンが1時間もたない
- 昼間に夜用ナプキンを使用している
- 貧血症状(立ちくらみ、息切れ、めまいなど)がある
<経血に血の塊が含まれている>
月経のたびにレバーやゼリーのようなドロッとした血液の塊が出ている場合は、過多月経の可能性があると考えられます。
<経血量が多い>
昼用ナプキンを1時間くらいで交換している、または日中にもかかわらず夜用のナプキンを使用しないと間に合わないほど経血が出てくる場合は、経血量が通常より多いと判断できます。
<生理中に貧血を起こすことがある>
経血量が多いと体内では鉄が不足し、立ちくらみ、息切れ、めまいなどの貧血症状が出ます。生理により定期的な出血を繰り返すことで、生理期間に限らない慢性的な貧血になる場合もあります。
なぜ過多月経が起こるの? 考えられる主な原因
過多月経が起こる理由として、ホルモン分泌の異常や婦人科系の疾患が隠れていることが多いです。婦人科系の疾患の場合、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮体がん、その前がん病変である子宮内膜増しょく症などが考えられます。ここでは過多月経の主な原因を紹介します。
機能性無月経
10代〜20代の比較的若い女性、もしくは閉経が近い40代後半の女性の場合は、婦人科系機能疾患である黄体機能不全や無排卵性周期症、特発性過多月経の可能性も考えられます。
<黄体機能不全>
プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が不十分な状態のことです。通常、排卵後は卵巣からプロゲステロンが分泌されます。妊娠が成立しなかった周期では次第にプロゲステロンが低下するため、排卵から約2週間頃に次の生理が始まります。
しかし、黄体機能不全では通常2週間の黄体期が短くなり、生理が頻繁に起こるように。その結果、月経により出血している期間が長くなってしまうのです。
<無排卵性周期症>
月経様の出血はあるものの、排卵を伴わない病態を無排卵周期症と言います。生理周期は不順なことが多く、出血の期間や量もさまざまです。時には出血期間が長引いたり、量が多かったりすることがあります。無排卵性周期症は思春期や閉経前に多くみられ、初経から1~2年は無排卵性月経のことが多いとも言われます。
<特発性過多月経>
明らかな器質的疾患や、ホルモン異常を伴わない場合を特発性過多月経と言います。過多月経の原因が不明のケースに該当します。
子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮にできる小さなコブのような良性の腫瘍で、30歳以上の女性の約4人に1人にみられると言われています。子宮筋腫の原因にはホルモン分泌が関係していると考えられているものの、明確なものは判明していません。無症状のこともありますが、過多月経が症状として表れたり、頻尿、便秘、腰痛などの症状が現れることがあります。筋腫による子宮内腔の変形などによって不妊の原因になったりすることもあります。
なお、子宮筋腫は経過観察も可能ですが、症状や妊娠希望の有無などによって治療の必要性や方針が変わります。過多月経などの症状が強い場合は、薬物治療か手術療法が選ばれます。
子宮腺筋症
子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)とは、子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉の中にできてしまう病気です。30代以降の女性によく発生する良性の病気であり、主な症状は過多月経や月経痛などが挙げられます。
子宮腺筋症は、症状や妊娠希望の有無などに応じて、鎮痛剤・ホルモン剤などの薬物治療や手術療法が選ばれます。
子宮内膜ポリープ
子宮内膜ポリープとは、子宮の中に突出した腫瘤(しゅりゅう・ポリープ)ができる病気です。ポリープは良性であることが多く、大きさは数ミリから数センチのものまでさまざまです。子宮内膜ポリープは、過多月経や不正出血の原因となるだけでなく、不妊にもつながると言われています。治療は、子宮鏡手術や子宮内膜掻爬術(しきゅうないまくそうはじゅつ)が選ばれます。
子宮体がん
子宮体がんとは、子宮の内側を覆う子宮内膜から発生するがんのこと。患者の90%に不正性器出血がみられる(※)とされます。子宮体がんは、エストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンの過剰状態が一因です。治療の原則は手術ですが、薬物療法を選択できる場合もあります。
子宮内膜増殖症
子宮内膜増殖症は、本来であれば生理時に剥がれ落ちるべき子宮内膜が、分厚くなった状態でとどまってしまう病気です。溜まった子宮内膜が一気に剥がれ落ちることで、月経量が多くなったり、不正出血を伴うことがあります。子宮内膜増殖症は子宮体がんの前段階のこともあり、注意が必要な疾患の一つです。
子宮内膜増殖症の治療方法は細胞の異変の有無によって異なり、病態や年齢、妊娠希望の有無などに応じて最善なものが選択されます。
血液の疾患
まれではありますが、白血病や血友病などの血液疾患が原因で過多月経が生じている場合もあります。過多月経の精査の過程で血液疾患が診断されることもあります。
いつ受診するべき? 過多月経の検査・治療方法
過多月経は先述した病気が原因のこともあるので、放置はせず婦人科を受診しましょう。ここでは病院を受診するタイミングと、過多月経の検査・治療方法を紹介します。
病院を受診する目安
過多月経は何らかの病気が原因のこともあるので、早期発見・治療が重要です。経血量が多い、レバーのような血の塊が出るなど、気になることがあった時点で婦人科を受診しましょう。生理中でも診察を受けられますので、生理が終わるまで我慢せずに受診してください。内診台に座る場合も、シートなどを敷いてもらえるので気にしなくて大丈夫ですよ。
過多月経の検査方法
過多月経が疑われる場合は、基本的に問診と、必要に応じて以下のような検査が行われます。
<問診>
生理周期や最終生理日、経血量(ナプキンの使用状況など)や、出産経験の有無などが質問されます。
<経腟超音波検査>
内診台に座り、腟の中にプローべという棒のような機械を入れて子宮や卵巣の様子を見る検査です。子宮に筋腫やポリープなどの病変がないか確認します。性交経験がない人は、お腹の上から機械を当てて子宮内の様子を確認する経腹エコーか、痛みの少ないお尻からの検査(経直腸検査)が行われます。
その他、以下のような検査が行われることもあります。
- 貧血・ホルモン値など:血液検査
- 子宮の病変の精査:MRI、子宮鏡検査など
過多月経の治療方法
検査によって過多月経の原因が子宮やホルモンなどの病気だと判明した場合は、適切な治療を行います。例えば、外科手術や薬物治療(ホルモン療法、低用量ピルの服用など)、ミレーナの挿入などです。医師と相談して最善の治療方法を決めるので、過多月経に悩んでいる人は婦人科を受診しましょう。
過多月経かも? と思ったら医師に相談を
過多月経は貧血を起こしやすいだけでなく、何らかの病気が潜んでいることもあります。原因によっては症状のさらなる悪化や将来不妊につながるので、放置は厳禁。「経血量が多いのはいつものことだから…」と思わず、婦人科を受診して医師に相談をしてください。適切な治療を受ければ、生理時期に辛い思いをしなくて済むはずです。
参考文献
※ https://jsgo.or.jp/public/taigan.html
公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会「子宮体がん」