腟(女性器)の痛みの原因とは?考えられる原因を医師が解説。

腟が痛い時に原因がわからないと不安になりますよね。一人で悩んでいる女性も多いかもしれませんが、腟の痛みの背景に隠れている病気にはさまざまなものがあります。どのような病気の可能性があるのか、症状や治療法もあわせて紹介します。

腟が痛い原因は?

腟に痛みをもたらす原因は複数考えられます。摩擦などが刺激になることもあれば、かぶれて痛い場合や、性感染症が痛みを引き起こしている場合もあります。また、非常にまれではありますが、腟がんの可能性も否定できません。このほか、子宮内膜症や膀胱炎といった病気がひそんでいることもあります。それぞれがどのようにして痛みを引き起こすのか、くわしく見ていきましょう。

刺激や傷

性交時は腟内に摩擦が生じますが、このこすれが刺激となったり、傷ができたりして痛むことがあります。なかには腫れをともなうケースもみられます。

腟周辺はデリケートな粘膜なので、わずかな刺激でも傷ができたり痛みを感じたりしますが、このような痛みは数日程度でおさまることが多いです。

かぶれ

腟周辺の皮膚は薄くデリケートです。下着や生理用ナプキンに触れることでかぶれることがあります。とくに月経中は陰部に経血が付着して蒸れやすい環境になっているため、かぶれて痛みを感じやすくなります。

また、腟にコンドームが接触することでかぶれるケースもあります。この場合はコンドームの素材となっているラテックスに対するアレルギーの可能性も疑ったほうがいいかもしれません。

前庭部痛

「前庭部」とは、小陰唇の内側の腟の入り口部分のことです。いわゆる性交痛のひとつで、挿入する前や挿入中にこの部分に痛みを感じることを前庭部痛と呼んでいます。

原因ははっきりわかっていませんが、腟周辺の痛みが脳に伝わる過程で、神経回路に異常が生じて痛みを感じやすくなるのではないか、という説もあります。また、何度もカンジダ症にかかっている人は、前庭部痛を発症しやすかったり、悪化しやすかったりすることもあるようです。

萎縮性腟炎

更年期以降の女性に発症しやすい病気です。加齢によって女性ホルモンが減少すると、腟などの陰部の粘膜が萎縮して分泌液が減り乾燥しやすくなるため、何気ない日常の動作でこすれて痛みを感じると考えられています。

症状が進むと出血したり感染症にかかって膿が出たりすることもあります。ホルモン補充療法やレーザー治療などで治療が可能です。

性感染症

腟が痛い以外に、いつもと違うおりものが出たり、腟のあたりにできものができたりしている場合は、性感染症が疑われます。ここでは主なものを7つ紹介します。

カンジダ腟炎

「カンジダ」という真菌(カビの一種)に感染して発症する病気です。カンジダは健康な人にも存在する常在菌ですが、免疫力が低下したり、抗生物質を飲んだりすると、カンジダが増殖してカンジダ腟炎を発症することがあります。性行為だけが原因ではないため、注意が必要です。

カンジダ腟炎になると、強いかゆみやヒリヒリと焼けるような痛みを感じます。おりものにも異常がみられることが多く、人によって「ヨーグルトみたい」「酒粕のようなドロドロ」といった表現がされます。原因が真菌なので、治療には抗真菌薬が使われます。

性器クラミジア

「クラミジア・トラコマティス」という細菌から発症する感染症です。感染すると、女性は排尿時の痛みやおりものの変化(臭いや量)などの症状が現れます。

なかには症状が出ない人もいますが、自覚がないままに放置すると、精巣や子宮頚管が詰まって不妊の原因になってしまうこともあります。治療法としては、抗生物質の服用が一般的です。

淋病

「淋菌」という細菌が原因となる感染症です。女性の場合、初期のうちは自覚症状はあまりありませんが、しだいに排尿痛やおりものの変化などの症状が現れてきます。クラミジアに似た症状ですが、淋病のほうが症状は強い傾向があります。

治療には抗生物質の点滴や注射薬を使います。

性器ヘルペス

「単純ヘルペスウイルス」の感染から発症する病気です。性器周辺に痛みをともなう水泡ができるのが特徴で、かゆみ、腫れ、ただれなどの症状が出ることもあります。

抗ウイルス薬の外用や内服で治療しますが、ウイルスは一度感染すると症状が治まった後も残り続けるため、免疫力が低下したときなどに症状がぶり返すことも珍しくありません。

腟トリコモナス症

「トリコモナス」という目に見えないほどの小さな原虫が感染源となります。原因は性行為とは限らず、バスルームやトイレの便座、下着などから感染することもあります。

感染すると、腟が激しくかゆくなったり、充血で赤くなったり、痛みや違和感を生じることがあります。また、おりものが黄色い泡のように変化するのも特徴です。治療は、抗菌薬の内服や腟錠で行われます。

梅毒

「梅毒トレポネーマ」という細菌が感染して生じる病気です。症状が現れるのは3週間ほどの潜伏期間の後です。小さなコリコリと硬いしこりが腟などにでき、まれではありますが、痛を感じるケースもあります。また、しこりは自然に消えることも多いため、治ったと思い込みがちです。

しかし、治療をしないまま3ヶ月ほどすると、やがてピンク色のバラ疹と呼ばれる発疹が全身に現れます。この症状も自然に消えることがありますが、梅毒トレポネーマは体内に残っています。さらに病状が進むと、3年ほどで内臓や骨にも病気が広がり、腫瘍が現れてやがて心不全や脳梗塞などを引き起こします。

梅毒は、一見よくなったように思えても、感染が広がり病状が悪化していくため、放置してはいけない病気です。早期であれば抗菌薬で治療が可能なので、受診して正しい治療を受けましょう。

マイコプラズマ・ウレアプラズマ

「マイコプラズマ」や「ウレアプラズマ」という細菌が性行為によって感染して起こる病気です。感染した女性は、不正出血や腟のかゆみ、下腹部痛、おりものの異常などの症状が出ることがあります。しかしなかには症状が出ないケースもあり、放置すると不妊症や流産・早産につながってしまうリスクもあります。

治療には抗菌薬が処方されますが、治療をしてもなかなか治らないケースもあるため、治ったことを確認できるまで医師の指示に従う必要があります。

腟の痛みを放置するリスク

腟が痛いと思っても、受診をためらってしまう人もいるようです。しかし腟の痛みを放置することには、さまざまなリスクがあります。

たとえば、腟に傷がある状態で蒸れたり不潔な状態が続いたりすると、細菌が繁殖して痛みの原因となることがあります。また、そのまま放置していると、感染が腟から子宮や卵巣に拡大し、不妊症になるリスクもあります。

さらに、性感染症は性行為によって感染が拡大するため、治療を受けずに性行為を続けると、パートナーにも感染させてしまうおそれもあります。

受診したほうが良いケース

腟は傷つきやすいデリケートな部分です。痛みを生じるのはそれほど珍しいことではありませんが、数日ほど様子を見ても痛みがおさまらないようであれば、医療機関に相談したほうがよいでしょう。

とくに次のような症状があるときは、医療機関の受診を検討しましょう。

  • 腟が強く痛む
  • おりものの量や色、匂いなどがいつもと違う
  • 不正出血がある
  • できものやできていたり、膿が出たりなどの異常がある
  • 発熱などの症状がある
  • 性的関係にあるパートナーにも症状がある
  • パートナーが性感染症に感染している

これらの診療は、基本的には婦人科で行なっています。しかしパートナーにも同様の症状があったり、パートナー自身が感染したりしている場合は、双方に性感染症の治療が必要かもしれません。このような場合は、性感染症を扱っている病院へ相談するとよいでしょう。

腟が痛いときはクリニックフォアへ

腟が痛いときは、ためらわずに婦人科を受診しましょう。クリニックフォアでは、直接クリニックを受診しなくても、オンラインでも性感染症の検査が可能です。

オンラインで検査可能な性感染症は、次の6種類。

  • クラミジア
  • 淋病
  • トリコモナス
  • 梅毒
  • B型およびC型肝炎
  • HIV感染

自分で尿やおりものを採取したり、専用のキットで指先から少量の血液を採取したりするだけで、手軽に確認ができます。治療も、基本的にオンラインでのお薬の処方が可能です。腟の痛みや不調を感じたら、お気軽にご相談ください。