性病で発疹は出る? 身体にぶつぶつができた時に考えられる性感染症や具体的な症状を解説!

身体にぶつぶつができ、性器にも何らかの症状がある場合は、性病を疑ってもよいかもしれません。

性病は性器だけに症状が出ると思っている方も多いかもしれませんが、実は性器を含む身体のさまざまな場所に発疹が出ることもあります。

今回は、発疹やぶつぶつができる性病の種類や、性病について知っておきたいさまざまな知識を詳しくご紹介します。

発疹が出る性病の種類

発疹やぶつぶつができる性病にはいろいろなものがありますが、代表的なものとして下記の4つがあります。

  • 梅毒
  • HIV(エイズ)
  • ヘルペス
  • 尖圭(せんけい)コンジローマ

それぞれの特徴や主な症状、治療法などについて詳しく解説します。

梅毒

梅毒とは、梅毒トレポネーマという病原菌に感染したことで発症する性病です。日本では1960年代の大流行後、梅毒の感染者数は減っていっていました。しかし、2011年ごろから再び感染者が増加し始め、2021年ごろから急増しています。

主な感染経路は性行為で、性器・口の粘膜や皮膚の傷などから感染します。感染後の潜伏期間は3~6週間程度、その後時間の経過とともに全身に発疹をはじめとするさまざまな症状が現れます。梅毒感染後の経過と主な症状は下記のとおりです。

1期(感染から3~6週間程度)

口や性器、肛門などの梅毒が感染した部位に、小さなしこりやただれなどの症状が現れます。痛みは少なく、数週間で症状が改善することから「治った」と勘違いする方も少なくありません。

しかし、病原菌が体内に潜伏しているだけであり消失したわけでないため、適切に治療しなければ症状が進行します。

2期(感染から約3ヶ月後)

梅毒感染後、適切な治療を受けないまま数ヶ月経過すると、病原菌が全身に広がりさまざまな症状が現れます。この時期には、以下のような多彩な発疹ができることが多いです。

名称特によく見られる場所・人症状
丘疹性梅毒疹胴体を中心に、顔、四肢にもできる・赤みを帯びたしこりのような発疹・赤褐色から赤銅色・小豆~エンドウ豆大
梅毒性乾癬手のひら・足の裏・手のひら・足の裏に生じる丘疹性梅毒疹・赤褐色から赤銅色・鱗屑(皮膚のはがれ。フケのようなもの)を伴う
扁平コンジローマ肛門のまわり、外陰部など・丘疹性梅毒疹の一種・平らなしこりのようなもの・淡紅色~灰白色
膿疱性梅毒疹胴体を中心に、顔、四肢にもできる・膿疱(膿を持ったできもの)の多発・丘疹性梅毒疹から移行することがある・免疫が低下しているなど、健康状態が悪い人に見られる
梅毒性バラ疹・胴体を中心に、顔、四肢にもできる・手のひら、手の甲、下腿(ひざ~くるぶし)、前腕、背部など・淡紅色の発疹・爪の大きさくらいまでの小さい発疹・バラの花に似ている・気がつかないほど目立たないケースも多い

そのほか、熱が出たり倦怠感を感じたりすることもありますが、1期の症状と同じく数週間から数ヶ月ほどで症状が改善します。症状が消える、再発するを繰り返すケースもありますが、いずれにしても病原菌は体内に残ったままです。

晩期顕性梅毒(感染から数年~数十年)

2期を過ぎても適切な治療を受けなかった場合、病原菌が数年、数十年と体内に残り続け、皮膚や筋肉などに腫瘍ができたり、脳や心臓などに障害が出たりするおそれがあります。

現在ではここまで進行することはほとんどありませんが、死に至る可能性もゼロではありません。

治療法

梅毒感染後にこれといった症状が出ない場合もありますが、将来的に問題が出る可能性があります。思い当たることがある場合は、早めに検査を受けて治療を開始することが重要です。梅毒治療では、ペニシリン系の抗菌薬を筋肉注射あるいは内服するのが一般的です。

なお、妊婦さんが感染した場合は、死産・早産が起きたり子どもの神経や骨に異常が出たりすることがあります。妊婦健診でも梅毒の検査を行うため、感染がわかったら早めに治療を受けましょう。

HIV(エイズ)

HIV感染症とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染したことで発症する病気です。エイズ(AIDS・後天性免疫不全症候群)は、HIVに感染して免疫力が低下し、日和見感染症(通常なら問題ない菌やウイルスで病気になること)や悪性腫瘍などの合併症を起こした状態を指します。

梅毒と同じく主な感染経路は性行為で、性器・口の粘膜や皮膚の傷などから感染します。また、感染者の血液に直接触れたりHIVに汚染された医療器具を使用したりしたことによる感染や、母子感染もあります。

HIV感染後は、急性期、無症候期を経てエイズ発症期に移行していきます。無症候期は数年~数十年と、人によって期間が大きく異なります。

エイズ発症期の発疹

適切な治療をせずに放置するとエイズ発症期に移行します。体内のHIVによって免疫力が下がり、健康体であれば問題のない細菌によって感染症を起こしたり、肺炎を起こしたりとさまざまな症状が現れ始めるのです。

なお、エイズ発症とは、23種類あるいずれかの合併症を発症したことを指します。中でも発疹が現れる合併症には以下のようなものがあります。

疾患症状
単純ヘルペスウイルス感染症性器や唇に水ぶくれやただれが生じる
カポジ肉腫(悪性腫瘍)アザのような赤紫の斑点が生じる

23の疾患には含まれていませんが、帯状疱疹という、帯状に赤い斑点や水ぶくれができる疾患が繰り返されることもあります。

治療法

昔はエイズ発症後の致死率は100%といわれていましたが、強力な抗HIV療法が開発されたことにより、HIVの増殖を抑制して免疫力を保つことができるようになっています。数十年単位で治療を続ける必要はありますが、これまでどおりの生活を続けることも可能です。

ただし、エイズ発症後は治療の難易度が上がるため、思い当たることがある場合はできるだけ早く検査を受け、治療を開始することが大切です。

ヘルペス

ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)または2型(HSV-2)に感染したことで発症する病気です。水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による感染症もヘルペスと呼ばれることがありますが、ここでは単純ヘルペスウイルスについて解説します。

ヘルペスの主な症状は発疹

単純ヘルペスウイルスに感染しても、とくに症状が出ないケースも少なくありません。しかし、3~7日程度の潜伏期間を経て、口や性器の周辺に痛がゆさを感じた後に水ぶくれや潰瘍(皮膚が傷つきただれている状態)ができる場合があります。

単純ヘルペスウイルスは1度感染すると生涯体内から消えることがなく、感染者の体内に潜んで抵抗力が下がったときに再発するというやっかいな性質があるため、何度も繰り返しできることも珍しくありません。

予防法・治療法

症状が出ているときのキスやオーラルセックスを避ける、食器やタオルを共用しない、規則正しい生活を心がけて病気への抵抗力を維持するなどして、感染・再発を避けることが重要です。

それでも感染・再発してしまい症状が現れたときには、主に抗ウイルス薬の内服もしくは外用で治療します。

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染したことで発症する病気です。ヒトパピローマウイルスは80種類以上存在しますが、尖圭コンジローマの原因となるのは主にHPV6型・11型、時には16型の3種類です。

尖圭コンジローマの主な感染経路も性行為で、性器・口の粘膜や皮膚の傷などから感染します。

尖圭コンジローマの主な症状はブツブツ(イボ)

感染後の潜伏期間は数週間~3ヶ月程度で、その後に性器や肛門などに先の尖ったイボ状の腫瘍が多数発生します。

鶏のとさかのような見た目で、色は皮膚の色の場合もあれば褐色がかっていることも、黒っぽいこともあります。大きさは2~3mmから指先くらいの大きさが多いですが、イボが徐々に増えて合体し、大きなイボになり、カリフラワーのようになることもあります。また、かゆみや痛みを感じることもあります。

イボ自体は良性であり、放置していても自然に治ることもありますが、がんに移行する場合もあります。

治療法

治療法にはCO2レーザーや電気メスなどを用いた外科的治療や、軟膏を塗布する薬物治療などがあります。

発疹以外の性病のよくある症状

性病になると、発疹以外にもさまざまな症状が出ることがあります。代表的な症状は以下の通りです。

  • 性器周辺の痛み、かゆみ、違和感
  • 性交中・後の性器の痛み
  • 性器や肛門周辺のできもの、水ぶくれ、腫れ
  • 性器の異臭
  • おりものの量・色の変化、異臭
  • 不正出血
  • 排尿時の痛み、違和感
  • 尿道の痛み
  • 尿道からの膿や分泌物
  • 下腹部の痛み

性病について知っておきたいこと

最後に、性病について知っておきたい知識を詳しくお伝えします。

無症状のケースも多い

性病は、発疹やぶつぶつなどのわかりやすい症状が出るとは限りません。症状がなく、気づいたときには重症化しているケースもあります。

また、梅毒のように、症状が出ては消えるようなものもあります。症状が消えても体内では感染が広がっている性病はよくあるので、必要に応じてしっかり治療を行うことが大事です。

放置すると重症化する

自然治癒する性病は少なく、放置すると重症化することがあります。性病の中でも感染者数の多いクラミジアや淋病は、放置すると女性の子宮や卵巣、卵管、男性の精巣上体などに炎症が広がり、卵子や精子がスムーズに通過できず、不妊につながることがあります。救急車を呼ぶような激しい腹痛が生じることもあります。

また、前述の通り、梅毒を放置すると命にかかわることも。さらに、妊娠中に性病に感染していると、流産、死産、先天的な障害など、胎児に影響することもあるため注意が必要です。

感染経路は主に性行為

性病の感染経路の多くは性行為です。皮膚、粘膜、精液、腟分泌液が触れることで感染したり、皮膚や粘膜に小さな傷がある場合はそこから病原体が侵入して感染したりします。

また、アナルセックスやオーラルセックスで、肛門や口に感染することもあります。

1度の性行為でも感染する

1度の性行為でも感染することはあります。例えば淋病は、感染者との1回の性行為で感染する確率は約30%とされています。

また、梅毒の場合も、感染後1年以内の人との性行為で感染する確率は約30%と推定されています。

性行為以外で感染するケースもある

血液を介して感染したり、母子感染したりする性病もあります。また、稀ではありますが、唾液でうつるケースもゼロではありません。中には、お風呂やトイレなど、日常生活の中で感染するものもあります。

なお、性病の一種であるカンジタは、真菌(カビ)が原因であり、常在菌として体内に存在することもあり、基本的に、免疫力が落ちるなどのきっかけで発症します。

このように、感染・発症の主な原因が性的接触ではない性病もあります。

何度も感染するものもある

感染しても免疫ができない性病が多いため、治療して治っても何度も感染する恐れがあります。また、ヘルペスやカンジダは、免疫力の低下などをきっかけに再発することも多いです。

妊娠中の感染にはさまざまなリスクがある

今回紹介した性病は全て、以下のように妊娠中の感染が胎児に影響する恐れがあります。

性病の種類胎児への影響・症状出産方法
梅毒・流産・死産・母子感染による先天梅毒・難聴・肝脾腫・⾓膜炎・⾻異常・⼼奇形・⻭の異常・精神発達遅延 など自然分娩のケースも多い
HIV感染症母子感染(妊娠中の抗ウイルス療法などの適切な予防対策が行われれば、母子感染することはほとんどない)帝王切開が推奨されている
ヘルペス・母子感染による先天性ヘルペスウイルス感染症・水ぶくれ・瘢痕性病変・眼球・口腔粘膜の病変・発熱・活気や哺乳力の低下・肝脾腫・黄疸・呼吸障害・けいれん発作・脳炎・肝障害・神経学的後遺症 など性器に病変がある場合は、帝王切開が推奨されている
尖圭コンジローマ・母子感染による若年性再発性呼吸器乳頭腫症・呼吸不全腟内に病巣が多発している場合や、病巣が大きい場合は帝王切開が検討される

ただ、梅毒、HIV感染症、ヘルペスについては、妊婦健診で検査が行われます。適切な治療を受けることで、赤ちゃんへの影響を最小限にできるため、陽性になった場合は必ず治療を受けてください。(治療を受けても赤ちゃんに感染するケースがあるため、妊娠前に検査を受けるのが望ましいでしょう。)

性病の疑いがあるときはまず検査を受ける

気になる症状が合ったり、感染者と性行為をしたりした場合は、まず検査を受けましょう。以下のように、患部に病原体が存在するか調べる「抗原検査」を行うことが多いです。

  • 尿道に症状がある場合:尿検査
  • 女性の性器周辺に症状がある場合:腟ぬぐい検査
  • のどに症状がある場合:うがい検査

また、梅毒やHIVのように、血液検査をして、血中に病原体に対する抗体が存在するか調べる「抗体検査」を行う場合もあります。

なお、病気によって検査が可能な時期が異なります。目安の時期よりも早すぎると正確な結果が出ないことがあるので、よく確認しましょう。

検査・治療が受けられる場所はさまざま

検査、治療は、性病科、感染症科など、性感染症を専門に扱う科で受けることができます。また、男性は泌尿器科、女性は婦人科症状がのどにある場合は耳鼻咽喉科、皮膚にある場合は皮膚科でもよいでしょう。

また、保健所で検査が受けられるものもあります。

パートナーと同時に治療を受ける

性的関係にあるカップルのどちらか一方に性病の感染が判明したら、もう一方も検査を受けましょう。そして、感染していたら必ず治療を受けることが大事です。

性病は性的接触によって感染するので、どちらかが未治療だと、完治した人もパートナーからまた感染させられてしまうためです。このような感染は、ピンポン感染と呼ばれています。

コンドームで最低限の予防ができる

性病の予防のためには、コンドームが不可欠です。コンドームなしの性行為では低くない確率で感染してしまう性病も多いです。

ただ、コンドームで完全に感染が防げるわけではないため、「コンドームをつけたから大丈夫」と思ってはいけません。

ワクチンが存在するものもある

性病にはワクチンが存在するものがあります。たとえば尖圭コンジローマの原因となるHPVには、感染を防ぐための以下のようなワクチンがあります。

ワクチン予防できるHPVの型予防できる病気接種可能な人
9価「シルガード9」6・11・16・18・31・33・45・52・58型左記のHPVが原因となる以下の病気
・尖圭コンジローマ・子宮頸がん・外陰がん・腟がん
・9歳以上・女性
4価「ガーダシル」6・11・16・18型左記のHPVが原因となる以下の病気
・尖圭コンジローマ・子宮頸がん・外陰がん・腟がん・肛門がん
・9歳以上・男女
2価「サーバリックス」16・18型左記のHPVが原因となる子宮頸がん・10歳以上・女性

また、性的な接触によって感染するおそれがある病気にA型肝炎やB型肝炎もありますが、A型肝炎やB型肝炎にもワクチンが存在します。

  • A型肝炎:A型肝炎ウイルスに感染したことで発症する病気。発熱・倦怠感や食欲不振などの肝機能の低下による症状が起こることがある。重症化すると死亡するリスクがある
  • B型肝炎:B型肝炎ウイルスに感染したことで発症する病気。発熱・倦怠感や食欲不振などの肝機能の低下による症状が起こることがある。感染後20~30年かけて慢性肝炎・肝硬変・肝がんを発症するケースがある

性病に感染・発症してから後悔することのないように、接種を検討してみるとよいでしょう。

クリニックフォアの性感染症オンライン診療

クリニックフォアでは、オンラインと対面で性病の検査・治療を行っています。今回紹介した性病の対応可否は以下の通りです。

オンライン対面
検査治療検査治療
梅毒△内服薬のみ(注射は不可)
HIV感染症××
ヘルペス△(視診)
尖圭コンジローマ◯(視診)〇(視診)

気になる症状があったり、パートナーの感染が判明したりした場合は、まずは検査を受けてください。複数の性病の検査も同時にできるプランもあります。

なお、オンライン診療の場合は、スマホなどで診察を受けていただき、お薬はご希望の場所に配送します。性病のお薬とはわからない形で配送しますので、安心してご受診ください。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※自由診療
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。

参考文献

  1. 厚生労働省 「これって性感染症?」
  2. 厚生労働省 「梅毒」
  3. 東京感染症情報センター 「梅毒の流行状況(東京都 2006年~2023年のまとめ)」
  4. 厚生労働省検疫所 「単純ヘルペス、性器ヘルペス (ファクトシート)」
  5. 厚生労働省 「尖圭コンジローマ」
  6. 厚生労働省 「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」
  7. NIID 国立感染症研究所 「トラベラーズワクチンとしてのA型肝炎ワクチン」
  8. 一般社団法人 日本肝臓学会 「【B型肝炎】B型肝炎ワクチンについて知ろう!」
  9. 日本産科婦人科学会 「梅毒と先天梅毒(⺟⼦感染)が増えています!」
  10. HIV感染症とその合併症 診断と治療ハンドブック 「母子感染対策」
  11. 小児慢性特定疾病情報センター 「先天性ヘルペスウイルス感染症」
  12. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 「シルガード9水性懸濁筋注シリンジ」
  13. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 「ガーダシル水性懸濁筋注シリンジ」
  14. GSK 医療関係者向け情報 「サーバリックス添付文書」