漢方薬の処方を受けられる場所・方法
まずは、漢方薬の処方を受けられる場所についてです。医療機関を受診するだけでなく、漢方専門薬局で調合してもらったり、ドラッグストアで市販薬を購入したりする方法もあります。詳しく見ていきましょう。
医療機関
漢方薬は、多くの症状や病気に使われているお薬であり、一般の医療機関でも処方されることは珍しくありません。保険適用も可能なケースが多いです。
ただ、西洋薬による治療がスタンダードである場合も多いので、希望したからといって、医師の総合的な処方判断によるため、必ずしも漢方薬を処方してもらえるとは限りません。
また、漢方は西洋医学とはまた違ったジャンルなので、漢方にはそこまで詳しくない医師もいます。
漢方内科
漢方内科などの、漢方専門の診療科であれば、漢方薬を処方してもらえる可能性が高いでしょう。また、専門的な知識を持った医師が在籍していることも多いです。
オンライン診療
オンライン診療とは、スマホやパソコンなどの電子機器を使い、ビデオ通話などで医師の診察を受けることです。問診や患部の見た目などで診断ができる病気は、オンライン診療での診察が可能な医療機関もあります。
お薬は配送されることもあれば、処方箋のみ発行され、自分で薬局に行く必要があることもあります。
薬局・ドラッグストア(市販薬)
漢方薬には医療用漢方製剤(医療機関で処方される漢方薬)と、一般用漢方製剤(市販されている漢方薬)があります。
医療用漢方製剤と同じお薬が、一般用漢方製剤として市販されていることも多く、これは西洋薬との大きな違いと言えます。
ただ、医療用漢方製剤と一般用漢方製剤では、有効成分量や既定の服用量が異なる場合があります。
漢方専門薬局(薬局製剤)
薬局製剤(薬局製造販売医薬品)とは、製造販売・製造業許可と、製造販売承認などを受けた薬局が製造・販売するお薬のことです。「漢方専門薬局」のような薬局も存在します。
このような薬局では、薬局独自に製造した漢方薬を処方してくれます。
また、普段よく見る漢方薬は、袋にパッケージされたようなものが多いと思いますが、薬局製剤であれば、生薬を調合した煎じ薬を調合してもらえることもあります。煎じ薬は、麦茶のように煮出して飲むお薬です。量産品ではなく、一から調合してくれることもあるため、一人一人の症状に合った漢方薬を入手することもできます。
漢方薬はどんなお薬?
漢方薬は生薬を組み合わせたお薬であり、エキス製剤や煎じ薬といった形状があります。
主なアプローチは体質改善による症状緩和を目指すというものです。気血水(体を構成すると考えられている要素)から使用するお薬を導き出したり、証(症状の傾向・性質や体質)を見て処方されたりするのも特徴。詳しくは以下の通りです。
生薬を組み合わせたお薬
漢方薬は、植物、動物、鉱物など、自然界にある素材(生薬)を組み合わせて作ったお薬です。
保険適用となる漢方薬の187種類(2021年時点)の生薬に期待できるさまざまな作用があり、それらを組み合わせることで漢方薬の効果が発揮されるようになっています。
体質改善による症状緩和を目指すことが多い
漢方薬の基本的な考え方は、症状の原因となる体質を改善することによって、症状緩和を目指すというものです。そのため、複数の症状が出ている場合や、はっきりとした病名がつかないときに使われることも多いです。
なお、西洋薬は、人工的に作られた1~数種類の成分が、1つの病気や症状に対して高い効果を発揮するものなので、漢方薬とは大きく異なります。
気血水から治療法を導き出す
東洋医学では、体は主に気血水の3つの要素で構成され、これらのバランスが崩れると、不調となって現れると考えられています。
- 気:エネルギー(自律神経に近いものだと考えられている)
- 血:血液
- 水:血液以外の液体(水分の代謝や免疫機能などともかかわりがあるもの)
気血水がどのようになっているかで、気虚ならこのお薬、水滞ならこのお薬というように、使用する漢方薬を考えることが一般的です。なお、必ずしも1つのタイプに当てはまるわけではなく、複数のタイプが複合していることが多いです。
代表的なタイプは以下の通りです。
タイプ | 状態 | 症状の例 |
---|---|---|
気虚(ききょ) | 気が不足している | ・疲れやすさ・風邪をひきやすい |
気滞(きたい)・気うつ | 気が滞っている | ・イライラする・ため息がよく出る |
気逆(きぎゃく) | 気の流れが乱れ、逆になっている | ・のぼせ・動悸 |
血虚(けっきょ) | 血が不足している | ・顔色が白い・めまい |
瘀血(おけつ) | 血が滞っている | ・冷え・肩こり・腰痛 |
陰虚(いんきょ) | 水分が不足している | ・皮膚の乾燥・便秘がち |
水滞(すいたい)・水毒(すいどく) | 水分が滞っている | ・むくみやすい・下痢気味 |
証を見て処方判断される
漢方薬は、証によって処方されるお薬が異なるのも特徴です。証とは、簡単に言えば症状の傾向・性質や、体質などを表したもの。同じような症状が出ていても、証によって最適なお薬が異なることがあるのです。
証の分類の一例は以下の通りです。なお、それぞれの体質や症状などを、以下のように一対にして陰と陽に分けて考えることもあります。
表すもの | 陽証(陽の要素が強い) | 陰証(陰の要素が強い) | ||
病気の勢いや体質 | 実証 | ・体力がある・暑がり など | 虚証 | ・体力がなく弱々しい・寒がり など |
病気の性質・症状 | 熱証 | ・顔色が赤または黄色・熱感が強い など | 寒証 | ・顔色が白いまたはどす黒い・悪寒が強い など |
病気の位置 | 表証 | ・浅表上部 | 裏証 | ・深下部・内臓 |
2種類の形態がある
市場に流通している漢方薬は、エキス製剤と生薬(煎じ薬)の2つに分類することができます。詳細は以下の通りです。
エキス製剤
医療機関で処方されたり、ドラッグストアに売っていたりする、袋に入っているような漢方薬がエキス製剤です。流通している漢方薬の多くはこのようなタイプでしょう。生薬からエキスを抽出して製剤したもので、エキスと名前がつくものの、液体というわけではなく、錠剤やカプセル、顆粒状など、いくつかの種類があります。
なお、エキス製剤の特徴の一つとしては、同じ種類のお薬であれば、どの医療機関で処方されても、有効成分量や品質などが一定であることが挙げられます。
生薬(煎じ薬)
煎じ薬とは、麦茶のように煮出して飲む漢方薬のことです。エキス製剤のように量産されているのではなく、体質や症状に合わせて生薬の種類や量などを調整することができます。
多くはありませんが、医療機関でも煎じ薬を調合しているところはあります。また、漢方専門薬局に行くのも一つの方法です。
漢方薬が処方されるシチュエーション
漢方薬は、西洋薬にはないさまざまな特徴があるため、以下のようなシチュエーションで有益な存在と言えます。
はっきりした病名がわからないとき
検査をしてもはっきりとした病名がわからないものの、なんらかの症状に悩んでいる場合は、西洋薬が処方できないケースも多いです。
このような時でも、漢方薬であれば症状や証に合わせて処方できるケースがあります。
有効な西洋薬がないとき
病気の正体は特定できたものの、有効な治療法やお薬が確立されていないこともあります。このような時に、漢方薬が有効であるケースもあります。
症状が多岐にわたるとき
病気によっては、症状が多岐にわたることがあります。たとえば更年期症状の場合は、のぼせ、ほてり、めまい、イライラ、気分の落ち込みなど。月経困難症の場合は下腹部や腰の痛み、頭痛、吐き気、イライラ、憂うつ感など、さまざまな症状が現れることがあります。
このように、身体的にも精神的にもさまざまな症状が出る場合には、複数の成分が配合された漢方薬が有効なケースがあります。
すでに複数のお薬を使っているとき
複数の西洋薬を使っていると、副作用のリスクが高まります。特に高齢の方は使っているお薬の種類が多くなる傾向にあり、体力も低下しているため、治療をしたいからといってむやみに西洋薬を増やせないケースも多いです。
そんなときには、西洋薬と成分が被らないように、漢方薬を選択する方法があります。
ただし、漢方薬にも副作用のリスクはあります。同じ成分を重複して摂取するのは特に危険なので、医師や薬剤師の指導のもとで服用するのがよいでしょう。
西洋薬と同じように治療の選択肢の一つとなりえる
漢方薬はサポート役といったイメージがあるかもしれませんが、西洋薬と同じように、治療の選択肢の一つとなることも珍しくありません。
各種の診療ガイドラインに治療法の一つとして掲載されていることもよくあります。診療ガイドラインとは、適切や診断や治療を行うためのマニュアルのようなもので、主流となる治療法がエビデンスとともに掲載されています。
たとえば機能性ディスペプシア(胃腸にまつわる症状があるものの、原因がはっきりわからない状態)のガイドラインには、「六君子湯は有用であり、使用することを推奨する」との記載があります。これは、西洋薬と並んで最も推奨度の強い治療法の一つとして、まず行う治療の一つに数えられています。
クリニックフォアの漢方薬処方の流れ
クリニックフォアのオンライン診療では、必要に応じて漢方薬の処方を行っています。自由診療と保険診療があるので、それぞれについて処方の流れを簡単に紹介します。
漢方のオンライン診療【自由診療】の流れ
「漢方のオンライン診療」は、自由診療(全額自己負担)となっています。クリニックフォアでは全32種類(2024年9月時点)の漢方を取り扱っており、なんとなく体の調子が悪い方や、体質から改善したい方などに向けて、症状や目的に合った治療を提案しています。
診療予約はWEBからいつでもご予約いただけます。予約時間になったらビデオ通話などで医師の診察を受けていただき、その後、医師が症状や目的に合わせて適切なお薬を処方いたします。
なお、お薬はご希望の場所に配送します。定期配送が可能なケースもあります。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
内科・皮膚科・アレルギー科のオンライン診療【保険診療】の流れ
クリニックフォアでは、内科、皮膚科、アレルギー科のオンライン保険診療もご用意しています。こちらでは、治療薬の一つとして漢方薬を処方するケースがあります。
自由診療と同じくWEBからご予約いただき、時間になったらビデオ通話などで医師の診察を受けていただきます。その後、医師が症状に合わせて適切な治療を提案いたします。処方されたお薬は配送か薬局受け取りかをご選択いただけます。
なお、漢方薬の処方が適切でないと判断するケースもあります。症状や保険適用条件との兼ね合いもあり、必ずしもご希望の漢方薬を処方できるわけではないことをご了承ください。
漢方薬の処方に関するQ&A
最後に、漢方薬の処方に関する質問と答えをご紹介します。
漢方薬処方時の診察の方法は?
本来の東洋医学に則るのであれば、以下のような四診を行います。
- 視診:見て診察する
- 聞診:呼吸や腸の音を聴く
- 問診:症状などを聞き取る
- 切診:脈やお腹を触る
西洋医学の診察と大差はないため、一般的な医療機関であれば、処方するお薬が漢方薬だとしても、特殊な診察をするようなことはほとんどありません。
ただ、医師によっては、舌や脈の状態を詳しく確認することもあるでしょう。
なお、東洋医学に則って処方される場合は、前述した「証」や「気血水」を踏まえて処方するお薬が決まります。
どのような病気・症状でも漢方薬は使える?
前述の通り、漢方薬が西洋薬と同等の治療選択肢となることもあれば、西洋薬が効かなかった時の選択肢として検討されることもあります。
ただ、漢方薬はあくまで、体質を改善し、根本からじっくり症状緩和を目指すお薬であるため、西洋薬ほどの明確な効果が得られない症状・病気も多いです。たとえばがんや心筋梗塞などの重大な病気や、まず手術を行う必要があるような病気、緊急性の高い病気などは、漢方薬では対応しないことが一般的です。
漢方薬は保険適用?
保険適用が可能な漢方薬を、保険適用の条件に合った症状に対して、治療目的で使う場合は保険適用となることが一般的です。
ただ、お薬ごとに保険適用可能な病気・症状や条件が決まっているので、希望の漢方薬があっても、そのお薬が保険適用にはならないケースもあります。また、予防や美容目的は保険適用外となります。
漢方薬は飲み続ける必要がある?
お薬の種類によっては即効性が期待できるものもありますが、継続することで効果が実感できるものも多いです。これは、漢方薬の性質上、根本から体質を変え、症状の予防や改善を目指すものが多いためです。
漢方薬に副作用はある?
実は、漢方薬にも副作用はあります。過度に心配しなければならないような危険性は少ないですが、中には間質性肺炎や肝機能障害といった重大な症状につながるケースもあります。
できる限り副作用を避けるためにも、用法用量を守り、飲み合わせに注意することが大事です。また、自己判断で漢方薬を複数飲むようなことは避け、医師や薬剤師に相談の上で服用することをおすすめします。
漢方薬はどうやって飲む?
エキス製剤の飲み方は、西洋薬と同じです。用法用量を守り、水かぬるま湯で飲みましょう。食前に飲む漢方薬が多いです。
また、煎じ薬は自分で煎じる必要があるので、処方してくれた医師や薬局の指示に従いましょう。
漢方薬が飲めない人はいる?
漢方薬は幅広い年代、体質の方が飲むことが可能です。ただ、以下のような方は注意が必要なケースがあります。
- 妊娠中
- 授乳中
- 子ども
- 高齢者
など
妊娠中や授乳中の場合は、主治医や薬剤師に相談しましょう。また、子どもや高齢者の場合は用量が異なることもあるため、確認が必要です。なお、お薬によっては独特のにおいや味があるため、お子さんには服薬ゼリーを使うなどの工夫が必要となることも多いです。
漢方薬の処方はクリニックフォアのオンライン診療へ
クリニックフォアでは、さまざまなお悩みに対応するオンライン診療を行っています。保険
診療の内科・皮膚科・アレルギー科では、必要に応じて漢方薬を処方することがあります。
また、自由診療では、漢方のオンライン診療も行っています。医師に相談しながら漢方薬を選びたい方は受診をご検討ください。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。