空咳に注意!オリンピック病と呼ばれる「マイコプラズマ肺炎」が急増しています

今年の夏に入り流行し、報道やメディアでも多数取り上げられているマイコプラズマ肺炎。従来より夏から秋にかけて急増し、日本のみならずアメリカなど世界各国でも数年に1度、流行するといわれています。
過去には「4年に1度」夏のオリンピックシーズンに増えることもあり、オリンピック病*1と呼ばれるきっかけにもなっています。

そんなマイコプラズマ肺炎はなぜ流行しているのか?その背景と、症状、クリニックにいくべきタイミング、治療方法について詳しく紹介していきます。

マイコプラズマ肺炎の症状は?子供だけでなく大人も罹患する可能性も

マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマという少し変わった細菌によって引き起こされる感染症で、子供が罹る病気と思っている人もいますが、大人も罹患する可能性があります。

症状に関しても大人と子供に差はなく、空咳、発熱、喉の痛み、さらに嘔吐、下痢などの消化器症状が上げられます。

また特徴的なのは全体の約25%*1に現れる胸痛で、これは肺の炎症が胸の内側まで広がって起きるものであり、助骨や筋肉の痛みとは異なる。肺炎というが、痰が少なく、風邪のような症状や、お腹などの肺以外の症状を伴うのが特徴です。

*1出典:国立感染症研究所(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html

一般的には軽症で経過することが多いですが、乳幼児、高齢者、基礎疾患のある方などは重症化のリスクが高まります。

また、適切な治療が遅れた場合や、他の感染症を合併した場合にも重症化することがあり、肺炎が進行することによる呼吸困難、39度以上の高熱が続く、脳炎、心筋炎、溶血性貧血、ギラン・バレー症候群などの合併症を引き起こすことがあり、重症な症状や合併症のサインを認めた際には、早期に診察を受けることが重要です。

風邪との見分けがつきにくい

マイコプラズマ肺炎の症状のなかでも、痰を伴わない咳、通常「空咳」と呼ばれるものが最も多く、重症感がなく、咳が続くため「ただの風邪」と自己判断してしまうケースが多いです。

また感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染が主で、発症前から菌の排出があるため感染に気づかずに多くの人にうつしてしまう可能性があります。

見分け方のポイントとしては、特徴的な痰を伴わない乾いた咳と、消化器症状などの追加の症状です。咳以外の症状としては、発熱は微熱〜38度程度、咽頭痛、下痢といった消化器症状、胸痛などがあります。

感染経路としては、飛沫感染・接触感染するため、感染力が高く、家庭内で子供がかかった後に大人がかかるというケースも多くみられるため、周囲に感染している人がいるかどうかもポイントになります。

<見分け方のポイント>

  • 痰を伴わない、乾いた咳が強かったり、ずっと続く
  • 咳症状に加え、お腹が緩い、下痢などの消化器症状がある
  • 家族や職場などでマイコプラズマと診断された人がいる

特に今年の夏は猛暑ということもあり、クリニックフォアを受診する人の中には、エアコンの使用頻度が高いせいで、喉の不調や咳を訴える患者さんもいます。患者さんによってはエアコンによる乾燥や風邪と思ってしまう人も多く、よりマイコプラズマ肺炎の罹患に気づかない要因にもなっているようです。

東京都では今年8月から流行!9月末から、再度感染者数が急増

東京都感染症情報センターの「マイコプラズマ肺炎の流行状況」をみると、7月から前週比が大幅に増え、8月中旬に頭打ちかと思いきや、お盆休みの影響か、8月下旬にかけて再度増加傾向にあることがわかります。

また9月に入り流行が下火になったかと思いきや、月末から10月頭にかけて再び感染者数が増加しています。この流行数値は、前回大流行した2016年水準*2となっています。

引用:東京感染症情報センター|マイコプラズマ肺炎の流行状況|定点医療機関当たり患者報告者数 2024年10月時点

また、都内流行マップ(保健所別)をみると、足立区・葛飾区・荒川区・墨田区・江戸川区・江東区の6区で最大値を記録しています。この6区は8月末から高い感染数がみられていたが、杉並区・中央区・新宿区でも感染が拡大していることがわかります。

引用:東京感染症情報センター|マイコプラズマ肺炎の流行状況|都内流行マップ(保健所別) 2024年10月時点

マイコプラズマ肺炎がオリンピック病*1と呼ばれるのはなぜ?

マイコプラズマ肺炎は、日本を含め各国で周期的に流行を繰り返しており、日本において顕著な流行が見られたのは過去10年では「2015年」と「2016年」*2です。

これらの年は、患者数が例年よりも大幅に増加し、社会的な問題となりました。コロナ禍以降は流行がありませんでしたが、2024年春ごろから増加し始めています。また、マイコプラズマ肺炎は数年ごとに流行しており、よくオリンピックイヤーに流行を認めていたことから、「オリンピック病*1」とも呼ばれるきっかけにもなっています。

今年の流行に関しても「パリオリンピック」が開催された年です。ただし、オリンピック開催年だからといって必ずマイコプラズマ肺炎が流行するわけではありません。あくまで過去の流行傾向から、「オリンピック病*1」と呼ばれるようになっただけですが、夏から秋にかけて流行する病気であり、これからの季節も油断は禁物です。

*2 国立感染症研究所の感染症発生動向調査のデータのうち、「IDWR過去10年との比較グラフ(週報) -マイコプラズマ肺炎 Mycoplasma Pneumonia-」の定点当たり報告数の比較

オンライン診療でもできる?マイコプラズマ肺炎の検査と治療

マイコプラズマ肺炎は自然に治癒することが多い疾患ではありますが、検査と抗生物質による治療も可能です。

マイコプラズマ肺炎の検査方法

検査に関しては、即時で判明する抗原検査と、LAMP法というPCR検査のように核酸を検査する方法があります。

LAMP法は数時間で可能ですが、多くの場合は検査会社にて行うため判定まで2-3日必要となる事が多いです。また、一般的には抗原検査は精度が高くなく、LAMP法が用いられることが多いです。

子供に関しては抗生剤の内服の判断や、感染に対して出席停止措置などもあることから、検査する機会が多いと考えられます。

大人に関しては、比較的症状が軽症なことが多く、自然に治癒する病気でもあること、検査結果が出るまでに2-3日かかることもあり、処方薬で対応する場合が多いです。マイコプラズマ肺炎と思われる症状が重たい場合や、家族や職場などで感染者がいる場合、他に合併症がある場合には、レントゲン検査やマイコプラズマ検査が検討されます。

マイコプラズマ肺炎の治療方法

マイコプラズマ肺炎の治療は、抗生物質の服薬治療がメインです。通常の細菌とは異なり細胞壁を持たないため、ペニシリン系やセフェム系の抗生物質は効果がなく、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質が有効とされています。

当クリニックでもマイコプラズマ肺炎が疑わしい患者さんや、抗原検査で陽性反応が出た場合は、該当する抗生物質と、その他症状に対応する治療を行っています。

近年、これらの抗生物質が効きにくい耐性菌の出現も報告されていますが、適切な抗生物質を服用することで、症状の改善や重症化の予防が期待できます。

また9月末から10月に入り、クリニックフォアでは対面診療だけでなく、オンライン診療でもマイコプラズマ肺炎と思われる患者さんの数が急増しています。

オンライン診療の場合、検査はできませんが、「子供がマイコプラズマ肺炎に罹り、空咳が続き怪しい」「人へ感染させてしまうリスクを考えるとオンライン診療でまずは医師に相談したい」というケースが多くみられます。

9月に引き続き、10月も増加の可能性があるマイコプラズマ肺炎。風邪と自己判断せず、対面診療やオンライン診療をうまく活用し、症状の緩和と感染拡大の抑止をしていきましょう。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。 

 

 

注意 オンラインでお薬の処方ができない場合があります

以下に当てはまる場合はオンラインで処方ができません。

  • 依存性の高い向精神薬(不眠症のお薬を含みます)に分類されるお薬や麻薬は処方できません。
  • 触診・検査などが必要な場合(爪水虫など)、オンラインでは病状を把握するために必要な情報が十分に得られないと医師が判断した場合には、対面での診療をお願いする場合がございます。

参考文献

  1. 国立感染症研究所 「マイコプラズマ肺炎とは」
  2. 東京都感染症情報センター 「マイコプラズマ肺炎の流行状況」
  3. 国立感染症研究所 「IDWR過去10年との比較グラフ(週報) -マイコプラズマ肺炎 Mycoplasma Pneumonia-」