インフルエンザとは
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染したことで発症する病気を指します。
風邪にも似ていますが、風邪はライノウイルスやコロナウイルス(新型コロナウイルスを除く)など、さまざまなウイルスが原因となりえます。症状などに一部共通する部分はありますが、インフルエンザはより重症であることが多く、治療法も異なります。
インフルエンザの種類
インフルエンザには、「季節性インフルエンザ」と「新型インフルエンザ」があります。季節性インフルエンザとは、これまでと抗原性(抗体と結合する能力)が大きく変わらず、毎年流行するタイプのインフルエンザです。
一方、新型インフルエンザは、これまでとは抗原性が大きく異なるインフルエンザウイルスが現れることで、突発的に流行するインフルエンザです。多くの人が免疫を獲得していないため、急速に感染が拡大します。
世界的に感染が拡大し、多くの人が免疫を獲得すれば、新型インフルエンザから季節性インフルエンザに移行していきます。
また、人間に感染することがあるインフルエンザウイルスには、A型・B型・C型の3種類があります。ここからは、3種類それぞれの特徴を解説します。
A型インフルエンザウイルス
A型インフルエンザウイルスは、インフルエンザが大流行する原因となるウイルスです。
香港型と呼ばれるAH3亜型や、2009年にパンデミックが起こったAH1pdm09など、144種類の型(亜型)があります。
A型インフルエンザウイルスは3種類のなかでもとくに感染力が高く、症状が重くなりやすいのが特徴です。また、感染者の体内で変異することから、新型が現れやすい傾向にあります。
B型インフルエンザウイルス
B型インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスほどではないものの、感染拡大の原因になることがあるウイルスです。
人間同士で流行するウイルスは、B型山形系統とB型ビクトリア系統の2種類で、A型とB型が同時に流行することもあります。A型と比較すると症状が軽く済むことが多い一方で、症状が長引きやすいのが特徴です。
C型インフルエンザウイルス
C型インフルエンザウイルスは、A型・B型と比較して特徴的な症状が少ないため判別しづらいウイルスです。患者数が少ないため、インフルエンザ迅速診断キットもA型・B型用のものしかなく、C型用のキットはありません。
全身感染や死亡例の報告はなく、高熱が出ることがあるものの2日間程度で下がるため、「2日で熱が下がった=C型の可能性あり」といった診断になる場合があります。
なお、C型インフルエンザウイルスが全国規模で感染が拡大することはないと考えられていましたが、2004年に8県で感染が確認されたことから、全国規模で流行するケースもあるといわれます。
とはいえ、子どものうちに感染して抗体を獲得すれば成人してからもその抗体を維持できるため、1度感染すれば再感染はほぼない、または再感染しても軽症で済むとされています。
インフルエンザの症状とは?
インフルエンザは風邪よりも症状が重い場合が多く、重症化するケースもあります。正しく対処するためにも、どのような症状が出るのかを知っておきましょう。
インフルエンザの基本的な症状
A型・B型インフルエンザは、1~3日程度の潜伏期間後に下記のような全身症状が現れるのが一般的です。
- 38度以上の高熱
- 頭痛
- 筋肉痛
- 関節痛
- 全身の倦怠感など
上記の症状に続いて、咳や鼻水、喉の痛みなどの症状が出ることもあります。通常は1週間程度で症状が改善しますが、高齢者や何らかの疾患をもっている方などは、呼吸器の二次的な感染によって肺炎を起こすなど重症化するケースもあります。
また、子どもの場合は中耳炎や熱性けいれん、気管支喘息などを起こす場合もあります。さらに幼児を中心に、インフルエンザ脳症を起こすケースも確認されています。インフルエンザ脳症を起こした患者さんの約10~30%が死亡しているため注意が必要です。
C型インフルエンザも38度以上の高熱が出ることがあるほか、咳や鼻水などの症状が出る場合があります。ただし、A型・B型と比較すると症状が軽いケースが多い傾向にあります。
インフルエンザの今年の症状【2024~2025シーズン】
厚生労働省発表の「インフルエンザに関する報道発表資料 2024/2025シーズン」によると、2024年9月27日時点でインフルエンザ報告数は2,725件となっています。同資料には、どの種類のインフルエンザに感染したのかまでは記載されていません。
また、毎年インフルエンザ流行レベルマップを公開している国立感染症研究所でも、2024/2025シーズンの流行についてのデータは出ていません。
しかし、先述のとおり、C型インフルエンザウイルスの感染が拡大することは稀です。また、2022/23年シーズン・2023/24年シーズンのインフルエンザ流行レベルマップを見ると、A型・B型インフルエンザウイルスの感染者が多いことがわかります。
【2022/23年シーズン(2023年第15~19週)のインフルエンザウイルス検出状況】
- AH3亜型:88件(89%)
- AH1pdm09:8件(8%)
- B型が3件(3%)
【2023/24年シーズン(2024年第15~19週)のインフルエンザウイルス検出状況】
- B型:37件(66%)
- AH1pdm09:12件(21%)
- AH3亜型:7件(13%)
これらのデータを踏まえると、今シーズンも例年どおりA型・B型の感染が多いと考えられます。
A型・B型のインフルエンザウイルスに感染した場合、38度以上の高熱・頭痛・筋肉痛・関節痛・全身の倦怠感などの症状が出る可能性があります。また、B型に感染した場合は、腹痛や嘔吐、下痢などの消化器系症状が出る場合もあります。
(参考)
2023年 第19週 (5月8日~5月14日)|インフルエンザ流行レベルマップ
https://kansen-levelmap.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/2022_2023/2023_19/jmap.html
024年 第42週 (10月14日~10月20日)|インフルエンザ流行レベルマップ
https://kansen-levelmap.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/new_jmap.html
インフルエンザの発生状況について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001308850.pdf
インフルエンザはどうやって感染する?うつる確率は?
インフルエンザは感染力が高く、季節性インフルエンザには流行性があります。日本でインフルエンザが流行しやすい季節は冬(12〜3月ごろ)です。
ただし、春(4~5月)ごろまで感染者が出たり、夏にインフルエンザが発生したりするケースもあります。どれくらい感染が拡大するか、どの時期にピークが来るかは毎年異なるため、その年の情報を確認しましょう。
そして、毎年多くの感染者が出るインフルエンザですが、なぜインフルエンザに感染してしまうのでしょうか。ここでは、インフルエンザがうつる確率や感染経路について解説します。
インフルエンザは感染力が高い
毎年インフルエンザが流行るのは、インフルエンザウイルスが感染力の高いウイルスだからです。
とくにA型・B型のインフルエンザウイルスは非常に感染力が高く、日本国内では毎年10人に1人の感染者が発生しています。
ちなみに、ほとんどの方が抗体を獲得していない新型インフルエンザは、季節性インフルエンザよりも感染する可能性が高いといわれています。政府は新型インフルエンザが大流行した場合の発症率は、全人口の25%と想定しています。
インフルエンザの感染経路
インフルエンザの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
- 飛沫感染:インフルエンザ感染者がくしゃみや咳などをしたときに飛沫と一緒にウイルスが放たれ、それを鼻や口から吸い込み感染する
- 接触感染:感染者が触れたものを触ることで手にウイルスが付着し、その手で鼻や口を触ることで感染する
上記からわかるとおり、インフルエンザウイルスは鼻や口から体内に侵入するため、いかにウイルスと接触しないかが予防のカギとなります。
インフルエンザの検査方法
インフルエンザに似た症状が出るウイルスが数多くあるため、インフルエンザかどうかを判断するには検査をしなくてはなりません。インフルエンザの検査には、3種類のウイルス検査と抗体検査があります。
名称 | 特徴 | 検査方法 | 検査にかかる時間 |
抗原ELISA法(迅速診断キット) | 検体中のインフルエンザウイルスの抗原を検出する | 綿棒で鼻の中を擦り検体を採取する | 20~30分 |
PCR法 | 検体中のインフルエンザウイルスの遺伝子を増やして検出する | 綿棒で鼻の中を擦り検体を採取する(唾液採取の場合もある) | 数日 |
ウイルス分離法 | 検体中のインフルエンザウイルスを、鶏卵や細胞中で増やして、ウイルスの性質を調べる | 綿棒で鼻の中を擦り検体を採取する | 1~2週間 |
抗体検査法 | 感染から10~14日後に上昇する特異抗体を調べる | 血液検査 | 約2週間 |
上記のとおり、抗原ELISA法以外の方法は時間がかかるため、医療機関での検査は抗原ELISA法が用いられるのが一般的です。
インフルエンザの医療機関での治療法
急に38度以上の高熱が出た、体がだるい、関節痛や筋肉痛を感じるなどの症状が出た場合はインフルエンザに感染した可能性が高いため、医療機関を受診しましょう。インフルエンザの検査や治療に対応しているのは、内科や小児科などです。
とくに子どもや高齢者、持病がある方、妊娠中の方などはリスクが高いため、早めに受診することが大切です。
ただし、発熱から12時間未満の場合は、インフルエンザに感染していても検査で陽性にならないことがあるため、12時間以上経過してから受診するとよいでしょう。
ここでは、受診の結果インフルエンザ検査で陽性になった場合、どのような治療が行われるのかについて解説します。
抗インフルエンザウイルス薬の服用が基本
インフルエンザの検査で陽性となり、医師が必要と判断した場合は抗インフルエンザウイルス薬が処方されます。
抗インフルエンザウイルス薬とは、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する効果があるお薬です。抗インフルエンザウイルス薬には、下記のような種類があります。
- オセルタミビルリン酸塩(タミフルなど)
- ザナミビル水和物
- ペラミビル水和物(ラピアクタ)
- ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル)
- アマンタジン塩酸塩(シンメトレルなど) ※A型にのみ有効
- バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ)
抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、発熱期間が1~2日程度短縮されるほか、喉や鼻からのウイルス排出量が減少します。
ただし、発症から48時間以内に服用しないと十分な効果が得られません。十分な効果を得るためにも、早めに医療機関を受診して適切に服用することが大切です。
なお、患者さんの状態によっては、抗インフルエンザウイルス薬以外に解熱剤や抗生物質などが処方されるケースもあります。
高リスクでない場合は対処療法になる場合も
高齢者や持病がある方など、高リスクに該当しない方の場合は対処療法になる場合もあります。具体的には自宅で安静にする、しっかり水分補給するなどです。対処療法の期間中は常に体調を観察し、悪化した場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
注意したいのが、「対処療法=問題なし」ということではない点です。対処療法であってもインフルエンザウイルスに感染していることには違いありません。他者に接触するとウイルスを感染させるリスクがあるため、在宅隔離が推奨されます。
インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間はウイルスを排出すると考えられているため、学校法では発症から5日間、熱が下がってから2日間(幼児は3日間)の隔離とされています。
社会人の場合は勤め先の就業規則に従うことになりますが、学校法に準じた出勤停止期間が設定されているのが一般的です。くわしい規則については勤め先に確認しましょう。
インフルエンザを予防するには?
インフルエンザは主に飛沫・接触によって感染するため、感染しないようにするにはインフルエンザウイルスに触れないようにすることが重要です。ここでは、具体的なインフルエンザの予防方法を解説します。
人が多い場所を避ける
人が多い場所は、インフルエンザの感染者がいる可能性が高いです。人との距離も近くなり、飛沫感染や接触感染するリスクが高まるため、インフルエンザが流行している時期は人が多い場所を避けましょう。
とくに妊娠中の方や高齢の方、基礎疾患のある方、寝不足や体調不良などで免疫力が低下している方はリスクが高いので、できる限り人ごみを避けることが大切です。
マスクを着用する
100%ウイルスを防げるわけではありませんが、不織布マスクを着用すると、ある程度飛沫感染を防げます。
またマスクを着用することは、インフルエンザウイルスがついた手で鼻や口に触れるのを防止するのにも役立ちます。とくに人が多い場所に行くときは、不織布マスクを着用するよう心がけましょう。
外出後の手洗いを徹底する
インフルエンザウイルスがついた手で鼻や口を触ると、接触感染する可能性があります。外出後は石鹸での手洗いを徹底し、手についたインフルエンザウイルスを除去することが大切です。
適度な湿度を維持する
空気が乾燥すると気道の粘膜の機能が低下し、インフルエンザウイルスに対する抵抗力が落ちてしまいます。加湿器などを活用して、室内の湿度を保ちましょう。湿度50~60%が理想的です。
栄養バランスのよい食事と十分な休息を取る
生活習慣を整えて免疫力をアップし、インフルエンザウイルスへの抵抗力を高めることも重要です。タンパク質・ビタミン・ミネラル・食物繊維などが豊富な食材を使い、栄養バランスのよい食事を取るよう心がけましょう。
ダイエットのために糖質・脂質を制限している方がいますが、あまりに制限しすぎると体のエネルギーが不足してしまうため、糖質や脂質も必要最低限は取るよう意識しましょう。
また、睡眠不足が続くと免疫細胞の生成に必要な成長ホルモンの分泌が減り、免疫細胞の働きが悪くなるため質のよい睡眠を取ることも大切です。
朝日を浴びる、寝る前にTVやスマートフォンを見ないなどの習慣を身に付け、睡眠の質を向上させましょう。
こまめに水分を取る
水を飲むと、口から入り込んだインフルエンザウイルスが胃に流れます。すると胃酸によってウイルスの働きが弱まるため、こまめに水を取ることも感染予防に役立つといわれています。
インフルエンザワクチンを接種する
インフルエンザが流行する前に、インフルエンザワクチンを接種するのもインフルエンザ予防に有効です。
インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスの感染を100%防ぐものではありません。しかし、インフルエンザウイルスに感染した場合に発病を阻止するほか、重症化したり合併症・死亡を予防したりする効果を期待が期待できます。
ワクチンを接種しても十分な効果を得られない場合もありますが、とくにインフルエンザに感染した場合のリスクが高い方はワクチンを接種することを検討しましょう。厚生労働省は、下記に該当する方をインフルエンザワクチンの優先接種対象者としています。
- インフルエンザ感染者の診療に従事する医療従事者(救急隊員含む)
- 妊婦さん
- 基礎疾患がある方
- 1歳から小学校低学年までの子ども
- 1歳未満の子どもの保護者
2024年のインフルエンザの予防接種はいつから?
さいたま市では2024年のインフルエンザの予防接種は、10月1日~翌年1月31日までとされています。対象者は費用が自治体によって異なるため、居住地の自治体が公開している情報を確認しましょう。
なお、13歳以上の方の場合、インフルエンザの予防接種回数は1回が原則とされています。医師が必要と判断した場合を除き、複数回接種する必要はありません。13歳未満の方は、2回接種する必要があります。
抗インフルエンザウイルス薬ワクチンを接種する
インフルエンザ感染者の濃厚接触者となった場合は、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与も可能です。濃厚接触者とは、感染者と同居している方などを指します。
インフルエンザ感染者に接触し、自身も感染した場合、無症状または軽症であっても他人にウイルスを感染させるリスクがあります。そのため、感染拡大を防止する目的で、抗インフルエンザウイルス薬を予防目的で服用することが認められています。
インフルエンザは保険適用で診療できる?
インフルエンザは保険適用で診療が受けられることが一般的です。診療は、保険適用の保険診療と、保険適用外の自由診療に分けることができ、基本的に、高熱などの症状があり、治療の必要性があり、決められた範囲内の治療法を実施する場合は保険適用となります。
保険診療 | 自由診療(保険外診療) | |
概要 | 公的な健康保険が適用される診療 | 保険が適用にならない診療 |
主な状況 | 病気の症状があり、治療の必要性がある状況 | 美容目的や、予防目的の場合 |
診察・治療内容 | 国民健康保険法や健康保険法などによって、給付対象として定められている検査、治療 | 医療保険各法等の給付対象とならない検査、治療 |
費用 | 同じ診療内容なら、どの医療機関でも同じ | 同じ診療内容でも、医療機関によって異なる |
原則1~3割負担 | 全額自己負担 |
インフルエンザを強く疑う場合はインフルエンザの検査も保険適用で受けられますが、検査費用以外に診察代やお薬代などがかかります。また、抗原検査は保険が適用されない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
なお、抗インフルエンザウイルス薬の予防内服は自由診療であるため保険が適用されず、費用は全額自己負担となります。
インフルエンザの治療はクリニックフォアのオンライン診療へ
インフルエンザに感染すると、高熱や頭痛、倦怠感などの症状のほか、腹痛や下痢、嘔吐などの症状が出る場合もあります。
重症化したり、中耳炎や熱性けいれん、インフルエンザ脳症などを起こすおそれもあるので、インフルエンザワクチンを接種する、人ごみを避けて外出後は手洗いを徹底するなどして感染を予防しましょう。
クリニックフォアでは、さまざまなお悩みに対応するオンライン診療を行っており、保険診療の内科では、インフルエンザの診療にも対応しています。
保険適用外の自由診療(全額自己負担)となりますが、抗インフルエンザウイルス薬の予防内服や、予防接種にも対応可能です。インフルエンザ対策を徹底したい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。