インフルエンザの潜伏期間は何日?いつからうつる?検査・受診・登校のタイミングを医師が解説

インフルエンザの潜伏期間は一般的に1〜3日程度で、多くの場合は約2日前後で発症します[1]。
感染力は発症の約1日前から高まり始め、発症後数日間は周囲にうつしてしまう可能性があります[2]。検査は症状が出現してから受けるのが適切で、抗ウイルス薬は発症後48時間以内の開始が推奨されています[2][3]。
学校の出席停止期間は「発症後5日」かつ「解熱後2日(幼児は3日)」を経過するまでとされています[4]。

インフルエンザの潜伏期間とは

インフルエンザの潜伏期間とは、ウイルスに感染してから症状が現れるまでの期間のことを指します。

潜伏期間はどれくらいなのか、またインフルエンザA型とB型では潜伏期間が異なるのかを見ていきましょう。

潜伏期間の基本:1〜3日程度

国内の公的機関である国立健康危機管理研究機構(旧国立感染症研究所)では、この潜伏期間を「1〜3日程度」としています[1]。多くの方は約2日前後で発熱や頭痛、倦怠感、筋肉痛、せき、鼻水などの症状が出現します。

世界保健機関(WHO)も潜伏期間を「約2日、範囲1〜4日」と示しており[5]、米国疾病予防管理センター(CDC)も「1〜4日」と記載しています[2]。呼吸器ウイルスを対象とした系統的レビュー論文では、インフルエンザA型の潜伏期間の中央値は約1.4日と推定されています[6]

ただし、潜伏期間には個人差があり、年齢や基礎疾患の有無、免疫状態などによって経過が異なることがあります。また、季節によってウイルスの型が変わることもあり、それによって若干の違いが見られる場合もあります。

A型とB型で潜伏期間は違う?

インフルエンザにはA型とB型があり、「型によって潜伏期間は違うのか」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。現在の研究では、A型とB型で潜伏期間に大きな違いはないとされています。ただし、B型のデータはA型に比べて研究数が限定的であり、研究間でのばらつきが見られることも報告されています[6]

一般的には、どちらの型であっても1〜3日程度の潜伏期間と考えて対応することが適切です。

いつからうつる?感染可能期間について

発症前日から感染力が高まる

インフルエンザで特に注意が必要なのは、「症状が出る前からうつしてしまう可能性がある」という点です。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の資料によれば、ウイルスの排出は発症の約1日前から始まり、発症後1〜3日目がピークとなります[2]。つまり、自分がインフルエンザだと気づく前から、すでに周囲にウイルスをまき散らしている可能性があるのです。

当クリニックのオンライン診療でも、「昨日から熱が出たが、一昨日に友人と会っていた。うつしてしまったか心配」というご相談を多く受けます。このように、症状が出る前日の行動が感染拡大に影響することを理解しておくことが大切です。

成人の場合、発症後3〜5日程度までは感染力が続くと考えられていますが、子どもの場合はより長期間ウイルスを排出することがあります[2]。そのため、発症後1週間程度は周囲への配慮が必要です。

家庭内での予防行動

家族の一人がインフルエンザにかかった場合、可能であれば部屋を分けて過ごし、発症された方・看病する方の両方がマスクを着用するようにしましょう。こまめな換気も効果的で、1時間に1回程度、窓を開けて空気を入れ替えるとよいでしょう。手指衛生も忘れずに行い、アルコール消毒や石けんでの手洗いを頻繁に実施してください。

タオルや食器の共用は避け、特に高齢者や妊婦、基礎疾患のある方との接触は最小限にすることが大切です。これらの方々は重症化のリスクが高いため、特別な注意が必要となります。

家庭内での二次感染を防ぐことが重要です。

クリニックフォアでは、インフルエンザの予防処方も行っています。ご家族に高齢の方がいらっしゃったり、インフルエンザにかかってしまい予防したい方は、お気軽にご相談ください。

※検査等が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。

検査はいつ受ける?お薬はいつ始める?

インフルエンザかもしれないと思ったら、検査をして診断を受けるのが確実です。どのタイミングで検査をし、お薬の服用をいつから開始すればよいのかを解説します。

検査のタイミング

症状が出現してから12〜24時間以上経過してから検査を受けましょう。

インフルエンザの検査には、主に迅速抗原検査と核酸増幅検査(NAAT)があります。迅速抗原検査は多くの医療機関で使用されており、15分程度で結果が分かる便利な検査です。

ただし、検査のタイミングには注意が必要です。発症直後(症状が出てすぐ)に検査を受けると、ウイルス量がまだ少ないため偽陰性(本当は感染しているのに陰性と出る)になる可能性があります。「熱が出たらすぐに病院に行かなければ」と焦る必要はありません。症状が出てから半日〜1日程度待ってから受診することで、より正確な検査結果が得られる可能性が高まります。ただし、呼吸困難や意識障害など重い症状がある場合は、検査のタイミングにかかわらず速やかに医療機関を受診してください。

抗ウイルス薬は発症後48時間以内が基本

インフルエンザ様症状を発症後、48時間以内に開始することで、病気の期間を短縮する効果が期待できるとされています[2][3]

インフルエンザに対する抗ウイルス薬(タミフル、リレンザ、イナビルなど)は、体内でウイルスが増えるのを抑える働きをします。これらのお薬は、

ただし、高齢者や基礎疾患のある方、妊婦など重症化リスクの高い方については、48時間を超えた場合でも投与が考慮されることがあります。医師の判断により、個々の状況に応じた治療方針が決定されます。

当クリニックでは、地域で流行が確認される時期には、症状や接触歴から総合的に判断し、検査結果を待たずに治療を開始することもあります。「検査で陽性が出るまで薬をもらえない」わけではありませんので、症状が強い場合は早めにご相談ください。

学校・職場の目安

学校や職場での目安、また大人の出勤停止期間についても確認しておきましょう。

出席停止:発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)

「発症後5日を経過し、かつ、解熱後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」は出席停止となります。

学校保健安全法の施行規則では、インフルエンザにかかった児童・生徒の出席停止期間が定められているためです[4]

この「発症後5日」「解熱後2日」という数え方には注意が必要です。

「発症日」と「解熱日」はそれぞれ0日目と数え、その翌日を1日目とします。例えば、月曜日に発症(発熱)した場合、発症日の月曜日は0日目となり、火曜日が1日目、水曜日が2日目、木曜日が3日目、金曜日が4日目、土曜日が5日目となります。

また、水曜日に解熱した場合、解熱日の水曜日は0日目となり、木曜日が1日目、金曜日が2日目となります。この例では、「発症後5日(土曜日以降)」と「解熱後2日(金曜日以降)」の両方の条件を満たすのは日曜日からとなり、日曜日から登校可能ということになります。

幼児の場合は解熱後3日(この例では日曜日から)を経過する必要があるため、登校・登園可能日が1日遅くなります。

大人の出勤停止に明確なルールはある?

社会人の出勤停止については、学校のような法律上の明確な基準はありません。しかし、多くの企業や医療機関では、学校の基準に準じて「発症後5日かつ解熱後2日」を目安とすることが推奨されています。

職場によっては独自の規定を設けていることもありますので、お勤め先の就業規則や上司に確認することをお勧めします。また、リモートワークが可能な職種の場合は、症状が軽快した後も数日間は在宅勤務を検討するなど、職場での感染拡大を防ぐ配慮が大切です。

医師が解説:潜伏期間に関するよくある誤解

潜伏期間では、自分で判断できない疑問を抱く方もいるでしょう。

ここでは、潜伏期間に関する疑問に対して医師が解説します。

潜伏期間中に市販の解熱剤を飲んでも良い?

市販薬を使用する場合は、アセトアミノフェンを主成分とする解熱剤が比較的安全とされています。

インフルエンザが疑われる場合、市販の解熱剤の使用には注意が必要です。特に15歳未満のお子さんには、アスピリンやアスピリンを含む解熱剤は使用しないでください。これらのお薬は、インフルエンザの際に使用するとライ症候群という重篤な脳症を引き起こす可能性があることが知られています。

自己判断で使用せず、薬剤師や医師に相談することをお勧めします。

ワクチンを打てば潜伏期間は変わる?

インフルエンザワクチンを接種していても、完全に感染を防げるわけではありません。ワクチン接種者が感染した場合(ブレイクスルー感染)、潜伏期間自体が大きく変わることはないと考えられています。

接触したが無症状です。いつまで様子を見るべき?

インフルエンザの患者さんと接触した場合、潜伏期間である1〜3日程度は注意深く様子を見る必要があります。

ほとんどの場合、接触から3日以内に症状が現れますので、その期間中は体温測定を行い、発熱やせき、倦怠感などの症状が出ていないか確認しましょう。

特に、ご家族に高齢者や妊婦、乳幼児、基礎疾患のある方がいる場合は、接触後数日間はできるだけ距離を保ち、マスクの着用や手指衛生を徹底することが望ましいです。4日以上経過しても症状が出なければ、その接触による感染の可能性は低いと考えられます。

ただし、周囲で流行している時期には、別の機会に感染する可能性もありますので、引き続き予防対策を継続することが大切です。

よくある質問(FAQ)

インフルエンザの潜伏期間についてのよくある質問にお答えします。

Q1. インフルエンザの潜伏期間は何日ですか?

国内の公的機関では1〜3日程度、WHO/CDCでは1〜4日(中央値は約2日)とされています[1][2][6]。多くの方は感染から約2日前後で発症します。

Q2.人にうつるのはいつ頃からですか?

発症の約1日前から感染力が高まり、発症後1〜3日がピークとなります[2]。発症後数日間は感染させる可能性があり、お子さんの場合はより長期間ウイルスを排出することがあります。

Q3. 検査や服用のタイミングは?

検査は症状が出現してから12〜24時間以上経過した後に受けることが推奨されます。抗ウイルス薬は発症後48時間以内の服用開始が基本とされています[2][6]

Q4. 登校・出勤の目安は?

学校は「発症後5日」かつ「解熱後2日(幼児は3日)」を満たすまで出席停止が基準です[5]。社会人についても、この基準に準じることが推奨されています。

Q5. 潜伏期間が4日以上になることはある?

ほとんどの場合は1〜3日以内に発症しますが、個人差や免疫状態によっては4日程度かかることもあります[3][6]。ただし、これは比較的まれなケースです。

Q6. 無症状でもうつす?

潜伏期間中(症状が出る前)でも、発症の約1日前からウイルスを排出し始め、感染力を持つ可能性があります[3]。そのため、症状がなくても周囲への配慮が必要です。

Q7. 同居家族はいつまで注意すべき?

ご家族の方が発症してから1週間程度は注意が必要です。特に発症後3〜5日間は感染力が高いため、マスク着用、換気、手指衛生などの対策を徹底しましょう。

注意 オンラインでお薬の処方ができない場合があります

以下に当てはまる場合はオンラインで処方ができません。

  • 依存性の高い向精神薬(不眠症のお薬を含みます)に分類されるお薬や麻薬は処方できません。
  • 触診・検査などが必要な場合(爪水虫など)、オンラインでは病状を把握するために必要な情報が十分に得られないと医師が判断した場合には、対面での診療をお願いする場合がございます。

参考文献

  1. 国立健康危機管理研究機構(旧国立感染症研究所), 2025, 感染症情報提供サイト「インフルエンザ」、最終更新2025年9月25日.
  2. CDC, 2017, Manual for the Surveillance of Vaccine-Preventable Diseases, Chapter 6: Influenza.
  3. CDC, Manual for the Surveillance of Vaccine-Preventable Diseases, Chapter 6
  4. こども家庭庁、2023年4月26日、「学校における感染症対策」
  5. WHO, 2025, Influenza (seasonal) Fact sheet, 2025年2月28日改訂.
  6. Lessler J, Reich NG, Brookmeyer R, et al., 2009, Incubation periods of acute respiratory viral infections: a systematic review. Lancet Infect Dis. PMID: 19393959
  7. 厚生労働省、「インフルエンザQ&A」