インフルエンザ予防に必要な栄養と対策方法を解説

インフルエンザの流行シーズンが近づくと、どうすれば感染を防げるのだろうと気になる方も多いのではないでしょうか。
忙しい毎日を過ごしていると、つい体調管理が後回しになりがちですが、正しい知識を身につけて感染のリスクを減らすことが大切です。
この記事では、インフルエンザに負けない体をつくるための栄養のとり方や、もし感染してしまったときの食事・対応法について、わかりやすくご紹介します。

インフルエンザ予防の基本

インフルエンザ予防は、ワクチン接種、手洗いが重要です。これに加え、十分な休養と栄養摂取、適度な湿度の保持やこまめな換気、人混みへの外出を控えることなども心がけましょう。

<インフルエンザ予防のための行動[1]

予防策具体的な内容
ワクチン接種流行前(12月中旬まで)に接種推奨
手洗い流水と石鹸で帰宅時
・食事前に実施
休養
・栄養
十分な睡眠とバランスの良い食事
適度な湿度の保持加湿器などを使って湿度を50~60%に保つ
人混みへの外出を控えるやむを得ず人混みに入る場合は不織布(ふしょくふ)製マスクを着用することも検討する
こまめな換気常時換気設備や台所
・洗面所の換気扇を使うと室温を大きく変えることなく換気が可能

これらの対策は1つだけ取り組むよりも、組み合わせることで効果が高まります。
自分での対策だけに頼るのではなく、まずはワクチン接種と手洗いを基本とし、そのうえで抵抗力を維持する生活習慣を整えましょう。

とくに高齢者や幼児、妊娠中の方、持病を抱えている方は、インフルエンザが重症化しやすい傾向があります。そのため、ご本人だけでなく周囲の人も日頃から意識して予防に取り組むことが大切です。

流行前のワクチン接種が発症と重症化のリスクを下げる

インフルエンザワクチンは、感染した際の発症リスクを低減させる働きがあり、さらに発症した場合の重症化防止にも有効です[1]。ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、発病を一定程度予防し、肺炎や脳症などの重い合併症を防ぐ可能性が高いといわれています[2]

インフルエンザは、日本では12月頃から流行が始まるため、接種は12月中旬までに済ませるのが望ましいとされていますが、もちろん流行中であれば接種することは有効です。接種回数は13歳以上が原則1回、13歳未満は2回です[2]

とくに重症化リスクが高い高齢者、幼児、妊婦、慢性疾患のある方は、かかりつけ医と相談しながら早めの接種を検討すると安心です。

正しい手洗いと消毒でウイルスを物理的に除去する

流水と石鹸を使った手洗いは、手指に付着したウイルスを直接洗い流す有効な方法です[1]
インフルエンザは飛沫感染と接触感染の2つの経路があり、接触感染を防ぐために手洗いが重要になります。

手洗いのタイミングや手順は以下を参考にしてみてください[3]

<手洗いをおこなうべきタイミング>

  • 帰宅時
  • 調理の前後
  • 食事前

<正しい手洗いの手順>

  1. 流水で手をしっかりと濡らし、石鹸をつけて手のひらをこする
  2. 手の甲を伸ばすようにこする
  3. 指先と爪の間を念入りにこする
  4. 指の間を洗う
  5. 親指と手のひらをねじり洗いする
  6. 手首も忘れずに洗う
  7. 石鹸を十分に水で流し、清潔なタオルで拭く

石鹸と流水が使えない場合は、アルコール消毒剤による手指衛生も有効です。
外出先では携帯用アルコールを活用することで、感染のリスクを下げられるでしょう。

十分な休養と栄養摂取・適度な運動で体の抵抗力を高める

体の抵抗力を高めるためには、十分な休養とバランスのとれた食事を続けることが大切です。
睡眠不足や偏った食事は免疫機能の低下につながり、インフルエンザにかかりやすくなる可能性を高めます。

免疫力を維持するには、「栄養バランスのとれた食事・適度な運動・十分な休養」を意識し、感染予防につとめましょう。

<抵抗力を高めるための生活習慣>

  • 十分な睡眠時間を確保する
  • 主食・主菜・副菜を基本にした食事をとる
  • 適度な運動を継続する
  • 過度な疲労を避ける

このような日々の積み重ねが、インフルエンザに負けない強い体づくりにつながります。

インフルエンザの予防内服薬を検討する

インフルエンザは家族や職場など、身近な人から広がることが少なくありません。そのため、予防の一つとして抗インフルエンザ薬を事前に服用する方法があります。周囲で感染者が出た際に服用することで、感染リスクを下げられる可能性が高まります。

予防の基本はワクチン接種ですが、接種していても必ずしも感染を完全に防げるわけではありません。抗インフルエンザ薬にはウイルスの増殖を抑える働きがあり、ワクチンと組み合わせることでより高い予防効果が期待できます。

予防内服薬を処方しているクリニックをお探しの方は、クリニックフォアをご検討ください。

当クリニックでは、抗インフルエンザ薬の予防内服薬の処方を行っており、オンラインでの処方にも対応しています。ご家族や職場で感染者が確認された場合でも、早めに服用することでリスクを減らせる可能性があります。気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。

※保険適用外の自由診療になります。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※検査等が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。

 

  • オセルタミビル(タミフル後発品)1日1回 10日分:8,250円
  • イナビル(先発品)2容器で1回分:10,450円
  • ゾフルーザ(先発品)2錠で1回分 ※ 80kg 未満の方向け:11,550円
  • ゾフルーザ(先発品)4錠で1回分 ※ 80kg 以上の方向け:19,250円

※お薬代(税込)
※価格は2025年11月時点のものになります。
※診察料1,650円(税込)と配送料550円(税込)がかかります。

免疫機能をサポートする栄養素

免疫機能を維持するためには、アミノ酸やビタミン類が大きな役割を担うと考えられています。これらの栄養素は免疫細胞の働きを支え、感染症への抵抗力を保つうえで欠かせない存在です。

アミノ酸は、免疫細胞の材料やエネルギー源として働き、体の防御機能を支える重要な栄養素です。なかでもアルギニン、グルタミン、システイン前駆体は、免疫機能に深く関与する栄養素とされています[4]

多数のアミノ酸が鎖のようにつながることでタンパク質となり、筋肉や臓器、皮膚、髪など体の構成成分を形づくるほか、酵素やホルモン、抗体として生命活動や免疫機能を支えます。食事から摂取した肉や魚、卵、豆類などのタンパク質は消化の過程でアミノ酸に分解され、体内で再び必要なタンパク質に組み立て直されることで健康維持に役立ちます。

ビタミンCは免疫機能を維持するうえで欠かせない栄養素です。抗酸化作用によって細胞を守り、免疫細胞の働きを支えるほか、コラーゲン合成を助けて皮膚や血管を丈夫に保ち、病原体の侵入を防ぎます。また好中球の機能を強化し、自然免疫と獲得免疫の両方に関与することが知られています。さらに植物性食品からの鉄分吸収を促すことで間接的に免疫を支えます。欠乏すると感染症にかかりやすくなり、免疫力の低下につながります。[5]

アミノ酸・ビタミンCを日々の生活で取り入れる

アミノ酸やビタミンC、タンパク質は、互いに働きを補い合い、細胞の修復や抗体の生成、病原体への抵抗力を高める役割を果たします。

毎日の食事に意識して取り入れることで、季節の変わり目や感染症の流行期にも強い体づくりにつながります。

栄養素代表的な食品例
アミノ酸肉類、魚類、卵、大豆製品など
ビタミンC柑橘類、緑黄色野菜など

これらの栄養素は単体でとるよりも、主食・主菜・副菜をそろえた食事の中で自然に取り入れることが、体の抵抗力を支える基本となります。

日々の食事の中で、少しずつ取り入れてみましょう。

一汁三菜を基本としたバランスの良い食事が免疫を支える

免疫力を維持するためには、特定の栄養素にかたよるのではなく、主食・主菜・副菜をそろえた食事を基本にすることが大切です[6]

食事の構成要素主な栄養素免疫機能への貢献
主食炭水化物エネルギー源として免疫細胞の活動を支える
主菜タンパク質
・アミノ酸
免疫細胞の材料となる
副菜ビタミン
・ミネラル
・食物繊維
免疫機能の調節に関与

栄養バランスのとれた一食の例として、以下の要素が挙げられています[S4]。

  • 主食(ごはん、パン、麺類など)
  • 主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)
  • 副菜(野菜、きのこ、海藻など)
  • 減塩への配慮

感染症を防ぐためには、手洗いなどの基本的な対策に加え、このような食事を日常的に続けることが土台になります。特定のサプリメントだけに依存するのではなく、毎日の食事全体を少しずつ見直してみましょう。

インフルエンザの感染が疑われる際の行動

インフルエンザに感染した疑いがある場合、まず安静と水分補給を心がけてください。無理に食事をとるよりも、まずは体を休めることに専念しましょう。

感染が疑われる際にとるべき行動は以下のとおりです[1]

<安静にする>

  • 睡眠を十分にとり、体を休めてください。
  • 人混みや繁華街への外出は控えるのが望ましいです。
  • 無理をして学校や職場に行かないことも重要になります。

<水分補給>

  • 高熱や発汗による脱水を防ぐために、こまめに水分を摂取してください。
  • 飲み物はお茶やスープなど、飲みやすい物で構いません。

体をしっかり休めながら水分を補うことで、回復を早めるだけでなく、周囲への感染拡大を防ぐ助けにもなります。

医療機関への受診が推奨される症状

以下の症状があれば、早めに内科や小児科などの医療機関を受診することをおすすめします。

  • 高熱が続く場合
  • 呼吸が苦しいと感じる場合
  • 意識がもうろうとしている、または様子がおかしい場合
  • けいれんが起きる、呼びかけに反応しない場合
  • 顔色が悪く(青白いなど)、ぐったりしている場合
  • 嘔吐や下痢が長引く場合

高齢者や子ども、妊婦さん、持病のある方は重症化しやすいため、具合が悪ければ早めに医療機関を受診することがすすめられています。

家庭内で感染を広げないためのせきエチケットと環境調整

家庭内でインフルエンザの感染を広げないためには、せきエチケットの徹底と室内環境の調整が大切です。インフルエンザウイルスの主な感染経路は飛沫感染と接触感染であるため、それぞれに応じた対策をとりましょう。

飛沫感染は感染者のくしゃみやせき、つばなどに伴ってウイルスが放出され、それを別の人が口や鼻から吸い込むことで起こります。

接触感染は、感染者が手でくしゃみやせきを押さえた後に触れた物にウイルスが付着し、別の人がその物を触ることで感染する経路です。

家庭内感染を防ぐ主な対策は以下の通りです。

対策具体的な方法目的
せきエチケットマスク着用、ティッシュや袖で口を覆う飛沫感染の予防
湿度管理加湿器で50〜60%を維持気道粘膜の防御機能維持
換気常時換気設備の稼働、窓を開けるウイルス濃度の低減
消毒ドアノブ等の共有部分を消毒接触感染の予防

熱が下がってもウイルスが体内に残る場合があるため、周囲への二次感染を防ぐための配慮は続けるようにしましょう。

せきやくしゃみの際はマスク着用やハンカチで口を覆う

せきエチケットとは、くしゃみやせきが出るときに飛沫に含まれるウイルスから、周囲への感染を防ぐための配慮を指します。

インフルエンザは主に飛沫感染で広がるため、せきやくしゃみの際に発生する小さな水滴に注意が必要です。

せきエチケットの具体的な方法は以下のとおりです[3]

マスクの着用・くしゃみやせきが出ている間はマスクを着用する
・使用後のマスクは放置せず、ごみ箱に捨てる
・鼻と口の両方を覆い、隙間がないよう正しく装着する
マスクがない場合の対応・ティッシュで口と鼻をおおう
・腕の内側などで口と鼻をおおい、顔を他の人に向けない
・口と鼻をおおったティッシュはすぐにごみ箱に捨てる
・手のひらでせきやくしゃみを受け止めた場合はすぐに手を洗う
その他の配慮・せきやくしゃみの飛沫は1〜2メートル飛ぶため、他の人にかからないよう顔をそらす
・感染した人もこまめな手洗いを心がける

室内ではこまめな換気と湿度50〜60%の維持を心がける

室内の適切な湿度管理と換気をこまめにおこないましょう。空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下して感染しやすくなるおそれがあります。

乾燥しやすい室内では加湿器などを使い、適切な湿度(50〜60%)を保つことが推奨されます[1]
また、季節を問わず十分な換気が重要で、一般家庭でも室温を大きく変えずに換気をおこなう方法があります。

  • 建物に備わる常時換気設備(24時間換気システム)を稼働させる
  • 台所や洗面所の換気扇を常時運転する
  • 窓による換気は、対角線上にある窓やドアを二か所開ける
  • 冬場も暖房を使いながら換気をおこなう

寒いときはつい窓を閉めがちですが、こうした方法をうまくとり入れながら、環境づくりに取り組みましょう。

ドアノブやスイッチなど共有部分の消毒をおこなう

接触感染を防ぐためには、感染者が触れた物を介して別の人に感染が広がる可能性がある点に注意してください。

ウイルスが付着しやすい共有部分を定期的に消毒することが大切ですが、こまめに消毒するのはなかなか難しいものです。消毒グッズをすぐ使える場所に置いておくなど、日常にとり入れやすい工夫をしてみましょう。

<接触感染の典型的な流れ>

  1. 感染者がくしゃみやせきを手で押さえる。
  2. その手で物に触れ、ウイルスが付着する。
  3. 別の人がその物に触れてウイルスが手に付く。
  4. その手で口や鼻を触ることで粘膜から感染する。

<消毒がすすめられる主な場所>

  • ドアノブ
  • 電気スイッチ
  • 手すり
  • テーブルや椅子の触れる部分
  • リモコン
  • 水道の蛇口 など

<消毒の方法>
インフルエンザウイルスにはアルコール製剤が有効とされています[7]。市販のアルコール消毒液を布やペーパータオルに含ませて上記の場所を定期的に拭きとりましょう。
また、手洗いも接触感染予防の基本です。流水と石鹸での手洗いは手指に付着したウイルスを物理的に除去する効果があるため、帰宅時や調理の前後、食事前などにこまめにおこなうことがすすめられます。

インフルエンザ予防に関するよくある質問

インフルエンザ予防接種については、ワクチンを打っても感染する可能性についてや、副反応について疑問を持つ方も多いでしょう。

ここからは、インフルエンザの予防についてよく寄せられる質問についてお答えします。

インフルエンザワクチンを打っても感染することはありますか?

現行のインフルエンザワクチンは感染を完全に防ぐものではないため、ワクチンを接種しても感染する可能性はあります。

ただし、ワクチンには以下のような効果が認められています。

  • 発病予防:感染後に発症する可能性を低くする効果
  • 重症化予防:発症した場合の重症化を防ぐ効果

ワクチンの最も大きな効果は重症化予防にあるため、インフルエンザの流行前に接種を検討することが推奨されます。

当クリニックでは、毎年10月から2月末頃までインフルエンザワクチンの接種をおこなっています。接種をご希望の方は、オンライン予約のうえご来院ください。なお、ワクチンの在庫がない場合はホームページでお知らせいたします。

  • 料金:4,000円(税込4,400円)
  • 対象年齢:6歳以上(小学生以上)

※5歳以下のお子さまについても、近隣の小児科でワクチンが不足している場合や兄弟と一緒に接種を希望される場合など、状況に応じて受付可能です。ただし、当クリニックには小児科医が在籍していないため、じっとしていられないような場合は接種できない可能性があることをご了承ください。

また、各種証明書の発行にも対応しており、英文での作成も可能です。詳細はホームページをご確認ください。

予防接種の副反応にはどのようなものがありますか?

インフルエンザワクチン接種後に見られる副反応は、局所反応と全身反応に大別されます。

<比較的多く見られる副反応[8]

種類症状発生頻度
局所反応接種部位の発赤
・腫脹
・疼痛
10〜20%
全身反応発熱
・頭痛
・悪寒
・倦怠感
5〜10%

これらの症状は、多くの場合2〜3日で消失します。


また、まれではありますが、次のような重い反応が報告されています。

  • ショック、アナフィラキシー様症状(発疹、じんましん、呼吸困難など)
  • ギラン・バレー症候群
  • 急性脳症、急性散在性脳脊髄炎
  • けいれん、肝機能障害、喘息発作、血小板減少性紫斑病など

ショックやアナフィラキシー様症状はワクチンに対するアレルギー反応で、接種後比較的短時間に起こることが多いため、接種後30分間は医療機関内で安静にすることが推奨されています[1]
帰宅後に異常が見られた場合は速やかに医師に連絡してください。

まとめ

インフルエンザの予防には、毎日の手洗い・マスク着用といった基本行動に加え、アミノ酸やビタミンCを含むバランスの良い食事が重要です。

もし感染の疑いがある場合は、無理をせず水分をとって安静にし、早めに医療機関を受診してください。

日頃の生活習慣を整え、ウイルスに負けない体づくりを心がけましょう。

参考文献

参考文献

  1. 厚生労働省. 令和6年度インフルエンザQ&A.
  2. 厚生労働省. インフルエンザ(総合ページ).
  3. 政府広報オンライン. インフルエンザの感染を防ぐポイント「手洗い」「マスク着用」「咳(せき)エチケット」.
  4. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2015年版).
  5. 厚生労働省「統合医療」情報発信サイトeJIM. ビタミンC.
  6. 東京都保健医療局 多摩小平保健所. 栄養・食生活(新しい日常).
  7. 東京都感染症情報センター. インフルエンザの予防ポイント.
  8. 厚生労働省. インフルエンザワクチンの副反応について.