正しい避妊方法を知ることが大切
避妊をしているつもりでも、誤った情報などを信じて正しい避妊が出来ていないケースもあるようです。例えば、性交渉後にシャワーやトイレのビデ機能で腟内を洗浄したり、腟外に射精をすれば避妊できるという噂を信じている人もいるのではないでしょうか? これらは、正しい避妊方法ではありません。
望まない妊娠を防ぎ、安心してパートナーとの性生活を楽しむためにも、正しい知識を持っておきましょう。
避妊方法の一覧とその特徴
避妊方法には、薬や道具を使用する方法や、体温でチェックする方法などさまざまな方法があります。安心して性交渉するために、それぞれの避妊方法の特徴や妊娠率を理解しておくことは大切です。そこで、主な避妊方法とその妊娠率について具体的に紹介していきます。
<避妊方法の一覧とパール指数*1>
理想的な使用(%)*2 | 一般的な使用(%)*3 | |
① ミレーナ(IUS) | 0.1〜0.3 | 0.1〜0.4 |
② 低用量ピル | 0.3 | 7 |
③ リズム法(基礎体温法) | 0.4〜5 | 15 |
④ 避妊手術 | 女0.5男0.1 | 女0.5男0.15 |
⑤ 子宮内避妊具(IUD) | 0.6 | 0.8 |
⑥ コンドーム | 2 | 13 |
Hatcher RA, et al.:Contraceptive Technology. 21st edition, 844-845, 2018.
*1)100人の女性が特定の避妊方法で1年間避妊を行った場合に、何人の女性が妊娠したかを示す数字
① 避妊率が非常に高いミレーナ(IUS)
ミレーナは、子宮内黄体ホルモン放出システムとも言われ、一般的に「避妊リング」とも呼ばれています。子宮内に黄体ホルモンを持続的に放出することにより、子宮の内膜を薄く保つことで受精卵を着床しづらくさせて妊娠を予防する方法です。
月経量が少なくなることや月経痛などが緩和する効果もあるため、出血量が多い人や、月経困難症の人などにも使用されます。
<購入・装着方法>
・婦人科で医師に装着してもらう(5分程度)
<パール指数(妊娠率)>
・理想的な使用で0.1~0.3%、一般的な使用で0.1~0.4%と非常に低く、避妊率が高い
<メリット>
- 一度子宮内に装着すると、最長5年弱効果が持続する
- 薬の飲み忘れなどを気にする必要がない
- 副作用や健康的理由でピルを服用できない人なども利用できる
- 子宮内膜症や子宮体がん発症リスクの低下が期待できる
- 装着後も抜去が可能で、抜去すれば挿入前の状態に戻るので、妊娠は可能
<注意したいこと>
- 装着・抜去の際にまとまった金額(自費診療の場合、合計3〜5万円前後)が必要となる
- 挿入後しばらくは、少し出血が続く場合もあるが、時間の経過とともに徐々におさまる
- 性感染症は防ぐことはできない
- 子宮の出口が狭いと挿入が難しく、出産経験の無い人は挿入時に強い痛みを伴う可能性がある
- 子宮の病気や性感染症などの健康上の理由で装着ができない場合もある
② 正しい服用方法なら避妊効果が非常に高い低用量ピル
生理不順などでも服用されることのある低用量も、効果の高い避妊方法の1つです。女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を含む内服薬で、服用することにより排卵を抑えることができるため、妊娠を防げます。
<購入方法>
・婦人科で医師に処方してもらう
<パール指数(妊娠率)>
・理想的な使用で0.3%、一般的な使用で7%
<メリット>
- 女性主体で避妊できる
- 正しく服用すれば避妊率が高い
- 旅行やイベントに合わせて生理に時期の移動ができる
- 避妊をやめたいと思ったときに、すぐにやめられる
- 子宮内膜症や卵巣がんや子宮体がん、大腸がんの発症リスク低下が期待できる
- 生理痛の緩和や月経量の減少、PMSの改善などが期待できる
- 基本的には毎月払いなので出費が分かりやすい
<注意したいこと>
- 服用を忘れると避妊率に影響するので自己管理が必要である
- 服用初期に吐き気や少量の性器出血などの副作用が生じる可能性がある
- 血栓などの重とくな副作用が、稀だが起こりえる
- 性感染症は防ぐことはできない
③ 副作用などの心配が要らないリズム法(基礎体温法)
基礎体温法とは、基礎体温を毎日測定することで、自分の排卵時期などを予測しながら妊娠する危険性のある時期を避けて行う避妊方法です。
毎朝起きてすぐに体温を測定する必要があり、基本的に生理から排卵までは低温期、排卵以降には高温期となります。この方法は、毎月生理が規則正しく来ることを前提としています。そのため、他の避妊方法と比べると総じて避妊効果が劣りやすい方法であるのは否めません。
<購入方法>
・薬局やドラッグストアなどで体温計を購入する
<パール指数(妊娠率)>
・理想的な使用で0.4~5%、一般的な使用で15%
<メリット>
- 他の方法に比べて体への処置・影響の不安がなく、副作用の心配がない
- 避妊をやめたいと思ったときに、すぐにやめられる
- 他の避妊方法に比べて費用はかからない
<注意したいこと>
- 基礎体温の継続的な記録が必要
- 体調不良などにより体温が変動してしまう可能性があるため、
- 排卵日の正確なタイミングは予想しづらい
- 定期的に性行為が不可となるため、パートナーの協力が必須
- 他の避妊方法に比べて体調などに左右されやすいため、失敗しやすい
- 性感染症は防ぐことはできない
- 月経の周期が乱れがちな人や、体調不良・ストレスなどにより体温が変動してしまう可能性もあり、避妊率・妊娠率に影響する可能性がある
- 一時的なストレスや体調の変化に影響される可能性もある
④ 一度行うと元には戻しにくい避妊手術
避妊手術は、卵子や精子の通り道をしばったり切断したりする方法です。
<方法>
・女性は婦人科、男性は泌尿器科で手術を受ける
(女性の場合、帝王切開の際に同時に避妊手術を行うことも可能)
<パール指数(妊娠率)>
・理想的な使用で女性の場合0.5%、男性の場合0.1%、一般的な使用で女性の場合0.5%、男性の場合0.15%
<メリット>
- 高い確率で避妊できる
- 手術をすると、一生その効果が持続する
<注意したいこと>
- 手術や入院管理で高価な費用がかかる
- 手術をすると、そのあと妊娠を希望しても元に戻すこと難しい
- 性感染症は防ぐことはできない
⑤ ミレーナと同様に避妊率が高い銅付加IUD
銅付加IUDは、ミレーナと同じく「避妊リング」の一種です。避妊目的を主として開発され、女性の子宮内に器具を挿入するタイプで銅が付いており、精子の侵入や受精卵の着床を防ぐ働きがあります。
<購入・装着方法>
・婦人科で医師に装着してもらう(5分程度)
<パール指数(妊娠率)>
・理想的な使用で0.6%、一般的な使用で0.8%
<メリット>
- 一度子宮内に装着すると、最長2~5年効果が持続する
- 薬の飲み忘れなどを気にする必要がないため楽
- 副作用や健康的理由でピルを服用できない人なども利用できる
- 装着後も抜去が可能で、抜去すれば挿入前の状態に戻るので、妊娠は可能
<注意したいこと>
- ミレーナとは異なり、装着中は月経の量が増える場合がある
- 装着・抜去の際にまとまった金額(自費診療の場合、合計3〜5万円前後)が必要
- 挿入後しばらくは、少し出血が続く場合もあるが、時間の経過とともに徐々におさまる
- 性感染症は防ぐことはできない
- 子宮の出口が狭いと挿入が難しく、出産経験の無い人は強い痛みを伴う可能性がある
- 子宮の病気や性感染症などの健康上の理由で装着ができない場合もある
⑥ 手軽に入手できるコンドーム
一般的に多くの人が知っているコンドームは、男性の性器にかぶせて使用するゴム製の避妊具です。避妊方法の中で、唯一性病感染を防げる方法です。
<購入・装着方法>
・ドラッグストアやコンビニなど、誰でも手軽に購入でき、手に入りやすい
<パール指数(妊娠率)>
・理想的な使用で2%、一般的な使用で13%
<メリット>
- 避妊方法の中で唯一性感染症を防ぐ。そのため、他の避妊方法を行っている場合でも性交渉時はコンドームを使用した方が良い
- 入手方法が最も簡単
<注意したいこと>
・使用時は簡単に装着できるが、誤った装着方法や破損などにより、避妊に失敗する場合もある
避妊に失敗したかも!?アフターピルについて知っておこう
コンドームで避妊をして性交渉したのにコンドームが外れてしまった、低用量ピルの服用を忘れてしまって不安……など、時には予期せぬトラブルが起こってしまう場合もあります。そんなときのためにも知っておきたいのが、アフターピル(緊急避妊薬)。最後に、アフターピルの特徴や注意点について紹介します。
アフターピルとは
アフターピルとは、性交渉後72時間以内(薬によっては120時間以内)に服用することで、妊娠を防ぐように働くピルのこと。アフターピルは、病院を受診して医師に処方してもらうほか、現在ではオンライン診療で処方してもらうことも可能です。
アフターピルはできるだけ早く服用した方が良いため、避妊に失敗したと思ったら、早めに産婦人科・婦人科を受診するようにしましょう。
避妊方法について知り、安心して性生活を送ろう
避妊方法にはさまざまな種類がありますが、お互いが安心して性交渉をするためにはパートナーの協力も必要です。望まない妊娠を防ぐためにも、避妊方法について理解し、自分の体や生活に合った避妊方法を選んでくださいね。
また、万が一避妊に失敗してしまった場合には、アフターピルという方法もあります。その際には、できるだけ早く服用することが大切なので、早めに病院(婦人科・産婦人科)を受診するようにしましょう。