ピルの副作用でイライラする?ピルはイライラを解消する?ピルとイライラの関係とは

ピルの服用中にイライラが気になる方や、「ピルを飲むとイライラする」と聞いたことがある方もいるでしょう。そこでこの記事では、ピルによるイライラの原因や対処法を詳しく解説します。 また、生理の頃にイライラすることで悩んでいる方もいると思います。そんな時に、ピルでイライラを改善できる可能性もあるため、こちらについても解説します。特にPMS(月経前症候群)について詳しく解説するので、心当たりがある方はぜひ最後までご覧ください。


ピルを飲むとイライラするのは副作用?

低用量ピルには、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類のホルモンが含まれています。そのため、特に服用を開始したばかりの頃は、血液中の女性ホルモンの量が変化するため、ホルモン分泌量が安定するまでの間、イライラなどの症状が現れることがあります。

ある研究では、副作用を理由にピルをやめた割合は46%であり、そのうちの5%が気分の変調を理由としているという結果が出ています。ただし、ピルによって気分変調につながることについて、詳細なメカニズムは明らかになっていません。

また、イライラ以外にも、気分の落ち込み、吐き気、むくみ、不正出血などの副作用が現れることもあります。

イライラが気になるときの対処法

ピルの服用中にイライラしてしまう場合はどうすればよいのでしょうか。対処法をご紹介します。

しばらく様子を見る

服用を開始した直後に生じる副作用の場合は、ピルを飲み続けると解消されることが多いです。そのため、我慢できる程度の症状であれば、2~3ヶ月くらい様子を見てもよいでしょう。

医師に相談する

イライラが強く困っている、またはしばらく様子を見ても改善されない、といった場合は医師に相談しましょう。ピルの種類を変えることで、イライラが改善される場合もあります。

また、イライラの原因が他にある可能性もあるため、悩んだら医師に相談するとよいでしょう。

ピルは生理前~生理中のイライラ解消に効果が期待できる!

実は、生理にかかわるイライラの症状をピルで改善できることがあります。

ピルの服用有無にかかわらず、生理前にイライラする場合はPMS(月経前症候群)の可能性があります。PMSは、女性の5~8割に見られるともいわれており、決して珍しいものではありません。

また、月経困難症が原因でイライラを感じることもあります。月経困難症とは、生理中に生じる生理痛をはじめとするさまざまな症状が、日常生活に支障をきたすレベルの場合をいいます。ピルの服用により、PMSや月経困難症の改善といった効果が期待できるため、イライラも解消できる可能性があります。

ここからは特にPMSについて詳しく解説します。

PMS(月経前症候群)とは

PMSとは月経前症候群といい、「月経前、3日~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するもの。」と定義されています。

PMSの症状

次にPMSの症状について説明します。PMSの症状では、主に以下の様な症状があります。

【精神神経症状】情緒不安定(気分の落ち込みなど)、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害

【自律神経症状】のぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、

【身体的症状】腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張り

PMSの症状はPMS以外でも起こり得るものがほとんど。PMSかどうかの見分け方は「症状が月経前に毎月現れ、月経開始後には和らぐか」です。症状を記録し、月経周期との関連や、症状が似ているうつ病など精神神経疾患でないことの確認が必要です。

精神神経系の症状が強いものはPMDD(月経前不快気分障害)

PMSの重症型にPMDD(premenstrual dysphoric disorder・月経前不快気分障害があります。これは、精神神経系の症状が強く出るものです。

生理前に、日常生活に支障をきたすほどのイライラなどの精神的な症状が現れる場合は、PMDDの可能性があります。PMDDもピルで改善が期待できるため、イライラに悩んでいる場合はピルの服用を検討するとよいでしょう。

女性の85.9%がPMSを経験。しかし男性の認知度はわずか12.6%

製薬会社が行ったPMSに関するアンケート調査によると、女性の85.9%がPMSを経験しており、88.6%がPMSに対してストレスを感じているとしています。

このように、約9割の女性がPMSに悩まされているという事実に対して男性のPMSの認知度は非常に低く、PMSについて知っていると回答した男性はわずか12.6%。まだまだ男性にはPMSについての理解が進んでいないということが分かります。

PMSの原因

PMSの原因は、生理前の女性ホルモンの変動と考えられています。

排卵後から生理前にかけて、黄体ホルモンのプロゲステロンが分泌されます。プロゲステロンの主な働きは「妊娠しやすいような体を作る」ということ。

それに伴い、以下のような身体の変化が起こります。

体温上昇

体内に水分をため込む

腸の動きを抑える

これらは、妊娠の初期にも同様に起こるものです。そのため、生理前には上記のPMS症状が出現すると考えられています。

PMSは女性ホルモンと強く関係していることから、女性ホルモンを安定させるピルが効果的だと言われています。

PMS・PMDD改善目的のピル処方について

ピルは特にPMDDに対して有効

PMS、PMDDともに、ピルによって症状の改善が期待できます。ただし、PMSに関しては、薬物療法が必要な比較的重症なものに対する研究があまり行われておらず、はっきりした有効性は不明といわれています。

一方でPMDDの薬物療法では、ドロスピレノン含有のピルや、選択的セロトニン受容体阻害薬(抗うつ薬)が有効とされています。ドロスピレノン含有のピルとは、日本では「ヤーズ」や「ヤーズフレックス」というピルが該当します。

PMS・PMDDの改善目的の場合は保険適用外

PMS・PMDDの改善が目的でピルを使用する場合でも、自由診療となり、保険が適用されません。しかし、ほとんどの低用量ピルにおいて、保険適用の自己負担費用と、自由診療にかかる費用に大きな差はありません。

ピルにはほかにも嬉しい効果が期待できる!

ピルはPMSやPMDDの改善の他にも様々な嬉しい効果が期待できます。

肌荒れの改善

生理の量の軽減

卵巣がん・子宮体がんの予防

薬を使わずPMSを改善したい方へ

薬に頼らずにPMSを改善するためには、まず自分の症状を把握することから始めます。日記などに記録することで自分の症状をきちんと把握し、対処することができるようになります。

そして、以下のような点を心がけるとよいでしょう。

適度な運動をする

お風呂にゆっくり浸かる

ビタミン・ミネラル・カルシウム・マグネシウムなどをバランス良く摂取する

カフェイン・アルコールの摂取を控える

喫煙を控える

基本的に、生活習慣を見直すことで、ある程度はPMSを改善することができます。また、カフェインやアルコール、タバコ等はPMSを悪化させる原因になるため、PMS症状が出る時期にはなるべく控えるようにしましょう。

参考文献

Rosenberg MJ, Waugh MS.: Oral contraceptive discontinuation: a prospective evaluation of frequency and reasons. Am J Obstet Gynecol 1998; 179:577-582 (III)

https://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf

小林製薬 – 《2012年 PMS(月経前症候群)に関する男女の意識調査》