性病とは?種類・症状・検査・治療について全般的に解説します!

性病(性感染症・STD・STI)とは、感染者との性行為や類似行為(オーラルセックスや肛門を使ったセックス)で感染することがある病気のことです。中には、性行為だけではなく、飛沫感染や接触感染するものもあるため、周囲に感染者がいる場合は注意が必要です。 この記事では、性病について全般的に解説します。原因、感染経路、症状、潜伏期間、検査方法、治療方法などを網羅するので最後までお読みください。

性病とは?

性病は、性行為で感染する病気のことです。英語ではSexually Transmitted DiseaseやSexually Transmitted Infectionsといい、略してSTDやSTIと呼ぶこともあります。

性行為には、口腔性交(オーラルセックス)や肛門性交(アナルセックス)なども含まれます。さらに、飛沫感染や接触感染など、性行為がなくても感染することもあります。

また、進行すると命にかかわるものや、不妊の原因となるものも存在します。妊娠中に感染していると、胎児に感染して、胎児に重大な障害が生じたり、胎児の命にかかわることもあるため、早期発見や早期治療が非常に重要です。

原因・感染経路

性病の原因は、ウイルス、細菌、原虫などです。先述の通り、感染者とのセックスで感染することがあり、オーラルセックスやアナルセックスでも感染のリスクがあります。

性器に発症している相手とオーラルセックスをすると、自分ののどに感染することがあります。のどの症状は出ないことも多いので、無症状で気づかないままになったり、感染を広げたりすることもあり、注意が必要です。

性行為以外で感染することもある

性行為をしていないからと言って絶対に感染していないとも言い切れません。

病原体がついた手やものから感染したり、感染者の便に含まれた病原体が手などについて感染したりすることもあるためです。

また、性病の中には、常在菌(誰にでも存在し、通常は外にはならない)が原因となる性器カンジダや、飲食物や輸血も原因となる肝炎のように、性行為をしたことがなくても感染・発症する病気もあるのです。母親が感染している場合、胎児に感染することもあります。

代表的な性病の種類一覧

ここからは、代表的な性病の主な症状、検査方法、潜伏期間の目安、治療法などについて解説します。

クラミジア

クラミジアは、クラミジアトラコマチスという細菌が原因となる性病です。女性は子宮頸管炎など、男性は尿道炎を生じることがあります。

また、女性は自覚症状がないことが多いです。おりものが増える、においが変わる、黄色いおりものが出るといった症状が出ることもありますが、症状は軽いとされています。

一方、男性は、排尿時の痛み、尿道の不快感、かゆみ、副睾丸(睾丸の上のほう)あたりの腫れ、尿道から膿(透明~白い膿)が出るといった症状が半数程度に現れます。

また、のどに感染して咽頭クラミジアを生じることがありますが、のどは症状が出ないことが多いです。

カンジダ

カンジダ属の真菌(カビの一種)が原因となる病気です。なお、これは誰にでも存在する常在菌なので、通常は問題となることはありません。もし検査で陽性になったとしても、症状がなければ治療の必要もありません。しかし、免疫力の低下などをきっかけにカンジダが異常に増殖すると、症状が現れることがあるのです。

症状としては、女性は外陰部の赤み、発疹、強いかゆみ、ジンジンするような痛み、酒粕やカッテージチーズのようなおりもの、排尿時や性交時の痛みなどが挙げられます。男性は尿道の違和感、かゆみ、排尿時や性交時の痛みなどが挙げられます。

ヘルペス

ヘルペスは一般に、単純ヘルペスウイルスの感染によって発症する病気を指します。体のどこにでも発症しますが、陰部に感染した場合は性器ヘルペス、口の周りや中に感染した場合は口唇ヘルペス、のどに感染した場合は咽頭ヘルペスと呼びます。

性器ヘルペスの場合は、陰部やその周辺にできる、痛みや違和感を伴う赤み、水ぶくれなどの症状が現れます。

また、ヘルペスは一度感染すると治療しても完治することはなく、再発を繰り返すことがあります。ただ、再発の場合は水ぶくれの数も少なく、範囲も狭いことが多いです。

トリコモナス

トリコモナス原虫によって発症する病気です。女性は黄色い泡状のおりものの増加、腟や外陰部のかゆみが生じることが多いですが、症状が出ない人もいます。また、男性では尿道炎が起きますが、無症状のことが多いです。

マイコプラズマ・ウレアプラズマ

マイコプラズマ属の、マイコプラズマ(マイコプラズマ・ジェニタリウムや、マイコプラズマ・ホミニス)やウレアプラズマという細菌が原因となる病気です。マイコプラズマといえば肺炎を思い浮かべるかもしれませんが、肺炎を引き起こすマイコプラズマと、性病を引き起こすマイコプラズマは別物です。

男性は、尿道の違和感、排尿時の痛みなど、女性はおりものの変化、下腹部痛などが現れることがあります。ただし、いずれも無症状のことも多いです。また、のどに感染するとのどの違和感、痛みが現れることがありますが、こちらもほとんどの場合が無症状とされています。

尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルスが皮膚や粘膜に感染することで引き起こされる病気です。男性は亀頭や包皮、女性は外陰部や腟に、乳頭状のイボ(薄ピンク色のイボ)ができます。イボの数が増えるとニワトリのとさかのように見えるのも特徴です。

見た目以外の変化には、かゆみや軽い痛みなどがありますが、気づかないことも多いとされています。

淋病

淋菌という細菌によって引き起こされる病気です。男性は尿道炎、女性は子宮頸管炎などが生じ、さまざまな症状が現れます。症状はクラミジアにもよく似ており、女性はおりものが増加する、黄色くなる、不正出血、下腹部痛、発熱が生じるといった症状が挙げられます。ただ、症状が出ないことも多いです。

男性は排尿時の激しい痛み、黄色~白みがかった膿が尿道から出る、精巣周辺の腫れ・発熱といった症状が挙げられます。

また、のどに感染すると咽頭淋病を生じますが、のどは症状が出ないことが多いです。

梅毒

梅毒トレポネーマという細菌に感染することで引き起こされる病気です。痛みのないしこりが現れ、その後淡く赤い発疹が全身に現れるのが典型的な症状です。

梅毒は放置すると進行し、感染から数年以上経つと、心臓、脳、神経などに影響が及び、命に関わることもあります。

また、女性が感染したまま妊娠すると、胎盤を通して胎児に感染し、赤ちゃんの先天梅毒につながるケースがあります。早産や死産、新生児死亡に至ったり、赤ちゃんに障害が生じたりする可能性があります。

HIV感染症

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することで生じる病気で、その後エイズに発展することがあります。

ウイルスは精液、腟分泌液、血液、母乳などに含まれるため、性行為以外にも血液を介して感染したり、母から子に感染したりすることがあります。

感染からしばらくすると、発熱、倦怠感、のどの痛み、筋肉痛、関節痛などの、インフルエンザのような症状が出ることがあります。しかし、しばらくすると症状は消えるため、ただの風邪だと思って見過ごしてしまうことも多いとされています。

その後、数年以上にわたって潜伏期間が続きますが、体内ではウイルスが増殖し、徐々に免疫力が下がっていきます。そして、免疫力が下がることでさまざまな病気の発症につながる

のです。なかでも、エイズ発症の定義となるいくつかの病気のうち、1つでも発病するとエイズ発症とみなします。

なお、HIVやエイズは、かつては死に至ることも多い病気でした。しかし、最近では治療法も増えており、薬をしっかり飲めば感染していない人と同じような生活を送ることができるケースも多いとされています。

一般細菌

クラミジア、淋病、梅毒、マイコプラズマ、ウレアプラズマといった細菌以外の細菌を、性感染症においては「一般細菌」と呼んでいます。一般細菌を保有していても問題ないケースが多いですが、症状が出ていれば治療する必要があります。また、保有しているだけでリスクのある細菌は、症状がなくても治療するケースもあります。

症状は、男性は尿道の違和感、痛み、尿道から分泌物や膿が出る、女性はおりものの変化、腟の痛みやかゆみなどが挙げられます。

なお、「一般細菌」とひとまとめにされていると、名前のついている性病よりも症状が弱いと思ってしまうかもしれません。しかしそうとは限らず、むしろ症状が強く出ることもあるため注意が必要です。

B型肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで引き起こされる病気です。ウイルスは血液や体液に含まれるため、性行為の他、注射器の使いまわし、輸血、分娩時の母子感染などが原因となります。症状としては、倦怠感、嘔吐、茶色い尿、黄疸などが挙げられます。

なお、3歳未満の乳幼児では、生涯にわたり感染が続くことがありますが、大人の場合は感染しても一過性で終わることが一般的です。ただし、慢性肝炎や劇症肝炎(短期間で肝臓の広範囲が壊死する)、肝硬変(肝臓が硬くなる)、肝臓がんにつながることがあるので注意が必要です。

C型肝炎

C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することで引き起こされる病気です。主に血液を介して感染するため、注射器の使いまわしや輸血などが原因となることが多いです。しかし、まれに性行為で感染することもあります。

主な症状は倦怠感や食欲不振ですが、症状が出ないことも多いです。症状がない場合は不顕性感染と呼びます。

性病の症状

ここで、性病によくある症状をまとめて見てみましょう。性病は、性器だけでなく、口の中や周辺、のど、皮膚などさまざまな場所で発症することがあります。

代表的な症状は以下の通りです。

  • 性器周辺の痛み、かゆみ
  • 性器周辺のしこり、ただれ、水ぶくれ、腫れ
  • 性器から膿が出る
  • 性器周辺のにおいの変化
  • おりものの量、におい、色のなどの変化
  • 不正出血
  • 排尿時の痛み、違和感
  • 頻尿
  • 皮膚の発疹
  • 口の中や周辺のただれ、水ぶくれ
  • 発熱
  • のどの痛みや腫れ
  • 倦怠感
  • 腹痛、下痢

など

なお、自覚症状がないこともあるため、気づかないうちに病状が悪化したり、パートナーに感染させたりすることもあります。

性病の潜伏期間

潜伏期間とは、原因となる菌やウイルスに感染してから症状が現れるまでの期間のことです。潜伏期間は病気によって異なり、数日で症状が現れる病気もあれば、数ヶ月以上症状が出ない病気もあります。この理由として、病原体の発育が早ければ潜伏期間が短く、遅ければ長くなると考えられています。

また、免疫力の高さによって発症までの期間に差が出るため、個人差もあります。

なお、潜伏期間でも人にうつすことがあるので注意しましょう。

性病の検査

検査方法

性病の検査には、主に抗原検査と抗体検査があります。

抗原検査は、病原体自体の存在を調べる検査です。尿や腟からの分泌物、患部からの滲出液を使うため、症状がないと検査できないことがあります。一方、抗体検査は、抗体(病気に対抗するためにつくられるもの)の存在を調べる検査です。血液検査によって行うことが一般的です。

性病の中には、同じような症状を呈するものも多いため、これらの検査によって病気の区別ができます。

なお、検査はどちらか一方のみ(基本的に抗原検査)を行うケースが多いですが、視診だけで済むものもあります。

検査のタイミング

パートナーが感染したら自分も必ず検査しましょう(逆の場合も同様です)。また、不特定多数のパートナーがいる場合などは、定期的に検査を受けるとよいでしょう。目安は月に1度程度です。

上記に当てはまらなくても、年に1度は検査の習慣をつけるとより安心です。

なお、検査を受ける際、感染してすぐには正しい結果が得られないこともあります。感染から24時間以降に検査を受けられるものが多いので、気になる場合は翌日以降早めに受診するとよいでしょう。

対応している診療科

性病に対応しているのは、性病科、感染症科、泌尿器科(男性)、婦人科(女性)などです。そのほか、のどに症状があれば耳鼻咽喉科、皮膚に症状があれば皮膚科でも対応してもらえることがあります。

検査キットを利用する方法もある

インターネットでは性病検査キットが販売されています。これは、自分で検体を採取し、検査機関に送ると結果が出るというものです。

検査費用

病気の種類によって異なりますが、だいたいの相場は自由診療(保険適用外)で3,000~10,000円程度です。

自由診療であれば、さまざまな性病の検査を一度にできたり(スクリーニング検査)、症状がなくても検査ができたりします。

性病の治療法

性病の治療の多くは薬物療法です。病原体に対抗するための抗生物質(抗菌薬)や抗ウイルス薬を使うことが多いです。症状によっては、対症療法としてかゆみなどを抑える薬を使うこともあります。

また、飲み薬や塗り薬を使うことが多いですが、病状によっては点滴や注射をすることもあります。稀ではあるものの、入院や手術が必要になるケースも。

病気によっては進行すると命にかかわることもあるので、早期発見、早期治療が大事であることを理解しましょう。

費用

費用は病気の種類や治療法によって異なりますが、内服薬の場合、自由診療で5,000~20,000円程度が相場です。

また、HIVや肝炎などは、保険適用でも月に数万円を超えるなど高額となることがあります。このような場合は高額療養費制度を使えば、月に6万円程度までにおさえることが可能です。(収入に応じて上限金額が異なります。)さらに、身体障害者認定などを受けられればさらに補助があり、月数千円程度に抑えられるケースもあります。

性病の予防法

性病を予防するには、以下のような心がけが大事です。

  • 感染者との性行為を控える
  • コンドームを使う
  • 免疫力が低下しないように生活習慣などに注意する
  • 陰部を清潔に保つ
  • ワクチンを打つ

ただし、性行為以外で感染することもあるため注意しましょう。予防法について詳しく解説します。

感染者との性行為を控える

最も確実な予防法は、感染者と性行為をしないことです。症状があるときは絶対に性行為しないでください。

ただし、感染しても無症状のことも多く、感染に気付かないままという人も珍しくありません。そのため、パートナーの感染に気付かないまま性行為をし、自分も感染してしまうということもあります。

コンドームを使う

感染に気付かない人がいることをふまえると、性病の現実的な予防法は、コンドームを使うことといえるでしょう。

ただし、コンドームでカバーできない場所に感染・発症していれば、コンドームだけでは防ぎきれません。

免疫力の低下に注意

免疫力の低下によって発症する病気もあります。たとえばカンジダの再発やヘルペスが該当します。

免疫力低下の原因として、ストレス、疲れ、風邪といった体調不良などが挙げられます。そのため、十分な睡眠や、栄養バランスのよい食事を心がけ、日ごろから規則正しい生活をして、免疫力が下がらないようにしましょう。

陰部を清潔に保つ

陰部が不潔だったり、蒸れていたりすると、菌などが繁殖して発症につながることもあります。逆に、感染者と性行為をしても、すぐにシャワーなどで洗い流せば感染しないケースもあります。

また、発症後も、悪化予防のために陰部を清潔に保つことが大事です。入浴時に適度に洗う、通気性のよい下着をつけるといったことがポイントです。

ただし、洗いすぎると、皮膚などの健康を保つ常在菌のバランスが崩れ、性病発症の原因につながることがあります。石けんで強くこすったりせず、シャワーできれいに洗い流す程度にしましょう。

ワクチンを打つ

病気によってはワクチンが存在するものもあります。たとえば、尖圭コンジローマ(HPV)、B型肝炎にはワクチンがあります。

HPVワクチンは子宮頸がんの予防策として知られていますが、尖圭コンジローマも原因はヒトパピローマウイルス(HPV)なので、ワクチンにより予防することができます。ただし、HPVワクチンには2価、4価、9価といった種類があり、尖圭コンジローマの予防が期待できるのは4価と9価となります。

また、B型肝炎ワクチンはB型肝炎ウイルスへの感染と持続感染を95%予防するとされています。

(参考)

https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2014/07281113.html

性病の治療はクリニックフォアで!

性病は、時には命にかかわるような重篤な症状につながったり、妊婦の場合は子どもに感染し、子どもに重篤な症状や障害が生じたりすることがあります。不妊や流産、早産の原因となることもあるため、早期発見、早期治療が大事です。

クリニックフォアでは、オンライン診療と対面診療で性感染症の検査・治療を行っています。

また、他の医療機関等で検査した結果がある場合は、結果をもとに治療することも可能なので、まずはご相談ください。

詳しくはこちら

参考

http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2016.pdf