梅毒とは?症状・原因・感染経路・検査・治療法を徹底解説!

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌に感染することで生じる性感染症です。感染症法では5類感染症に位置づけられています。
発症すると痛みのないしこりが現れ、その後淡く赤い発疹が全身に現れることがあります。この発疹がヤマモモ(楊梅)の実のように見えることから、梅毒と呼ばれる、という説もあります。
かつては有効な治療法がなく、死に至るケースも多い不治の病でしたが、現在は適切な治療を受ければ完治ものぞめる病気となっています。そのため、早めの検査、治療が重要です。この記事では、梅毒の症状や原因、潜伏期間、検査、治療、予防などについて全般的に解説します。

梅毒とは

梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌に感染することで生じる性感染症です。

感染すると、まず性器、肛門、口の中といった粘膜にしこりができます。さらに、細菌が血液にのって広がるため、感染部位だけでなく、全身に発疹ができることも多いです。

また梅毒は症状がない時期(潜伏期間)を挟んで徐々に進行する病気です。末期まで進行すると、脳や心臓、神経などに重大な障害が現れ、命にかかわることもあるため、早期検査、治療がとても大事です。

先天梅毒とは

先天梅毒とは、胎児の時点で梅毒に感染している状態のことで、早産や死産、新生児死亡、障害などの影響があります。これは、母親が妊娠中に梅毒に感染しており、胎盤を通して胎児に感染することが原因です。

なお、早期に発見、治療ができれば、赤ちゃんに影響が及ぶ可能性が低下します。

梅毒の患者数

梅毒は20代女性と20~40代男性に多い病気です。また、2011年頃から増加傾向にあり、2019~20年に一旦減少したものの、2021年以降急増していることが話題となっています。

感染者の数は、2012年には約60人程度だったのが、2015年には約2,700人、2017年には約5,800人となっており、2022年は10月末までですでに1万人を超えています。1万人を上回ったのは、感染症法が施行された1999年以降初めてのことです。

(参考)

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000203809.pdf

https://www.niid.go.jp/niid/ja/syphilis-m-3/syphilis-idwrc/11612-idwrc-2242.html

梅毒の症状

梅毒は以下のように4段階で進行していきます。

【第1期】

  • 感染から3週間ほど
  • 傷口などの感染部位にしこりやただれが生じる。
  • その後、足の付け根あたりのリンパ節などが硬く腫れる
  • 症状はしばらくすると消える

【第2期】

  • 全身の皮膚や粘膜に発疹ができる
  • 3ヶ月~3年にわたって続いた後、症状が消える

このあと、再発を繰り返しながら第3期、第4期に進行します。

【第3期】

  • ゴム腫(ゴムのような腫れ)ができる

【第4期】

  • 心臓、脳、神経などに影響が及び、命に関わることがある

ここからは、梅毒の症状を段階ごとに詳しく解説します。

第1期

感染から約3週間ほど経つと、感染した場所に「初期硬結(しょきこうけつ)」と呼ばれるしこりができます。さらに数日経つと、しこりの中心部に「硬性下疳(こうせいげかん)」とよばれる潰瘍(ただれ)ができます。

その後、足の付け根あたりのリンパ節が硬く腫れることがありますが、いずれの症状も、2~3週間ほど経つと自然に消えていきます。

初期硬結

初期硬結は、感染した場所(性器や肛門、口、傷口など)にできるしこりです。大きさは3㎜~3㎝程度で、赤くはれたようになり、触るとこりこりと硬いのが特徴です。

男性は亀頭、陰茎、亀頭と陰茎の間、性器周辺の皮膚、女性は腟の中、小陰唇、大陰唇に症状が出ることが多いです。男女ともに、のどや口の中に症状が出ることもありますが、陰部以外にできることは2~3%と稀であるとされています。

(参考)

http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2016.pdf

硬性下疳(こうせいげかん)

硬性下疳は、初期硬結の中心部にできる浅い潰瘍(ただれ)のことです。ここから出る体液にはたくさんの梅毒の菌が含まれており、他者に感染させる原因にもなります。

リンパの腫れ

首や脚の付け根など、感染した場所の近くのリンパが腫れることがあります。大きさは人差し指の先くらいのもので、数個現れることもあります。なお、痛みはないことが多いです。

第2期

感染から約3ヶ月ほど経つと、手のひらや足の裏などを含む全身の皮膚や粘膜に発疹が生じます。形や状態は様々ですが、盛り上がりのある発疹(丘疹性梅毒疹)やフケを伴う発疹(梅毒性乾癬)が現れることが多いです。淡く赤い発疹(梅毒性バラ疹)や膿をもった発疹(膿疱性梅毒疹)が現れることもあります。なお、ただれなどがなければ、発疹自体に痛みやかゆみはないことが多いです。

そのほか、扁桃周辺の赤みや腫れ(梅毒性アンギーナ)や脱毛(梅毒性脱毛)、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退などが生じることもあります。

これらの症状は3ヶ月~3年にわたって続きますが、治療しなくてもいずれ症状は消えていきます。ただし、再発することもあります。

第3期

感染から3年以上経過すると、皮下組織のほか、筋肉、骨、臓器などにゴム腫(ゴムのような腫れ)ができることがあります。ゴム腫は組織を破壊し、特に鼻の骨は破壊されやすいとされています。昔は「梅毒で鼻が落ちる」と言われていたのはこのためだと考えられています。

しかし、現代では3期以降に進むことはほとんどありません。

第4期

感染からおおむね10年以上経過すると、心臓や血管の異常、神経の異常による麻痺などが生じることがあります。場合によっては死に至ることもあります。心臓や血管への影響と、神経への影響についての詳細は以下の通りです。

心血管梅毒

心臓や血管に影響が及び、大動脈瘤(大動脈の壁がもろくなり膨らんだ状態)、大動脈弁(心臓から大動脈につながる弁)からの血液の漏れ、冠動脈(心臓に血液を供給する血管)の狭窄などが生じます。心不全や心臓発作によって、死に至ることもあります。

自覚症状としては、胸の痛みや、大動脈瘤が気管などを圧迫することによる呼吸困難、せき、声のかれなどが挙げられます。

神経梅毒

主に脳(大脳、小脳、脳幹)や脊髄が侵されることでさまざまな症状が生じます。たとえば、精神障害や認知症に似た症状、全身の震え、麻痺、体のいたるところの痛み、体重減少、視力障害、勃起障害、失禁、髄膜炎(脳を覆う髄膜の炎症)、脳卒中(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞)などです。

一方で、「無症候型」といって、軽度の髄膜炎が生じるのみのケースもあります。

梅毒の原因・感染経路

菌を排出している人(第1期、第2期の段階にある感染者)と性行為を行い、粘膜の接触があった場合に感染することが多いです。肛門性交やオーラルセックスでも感染することがあり、まれではありますが、キスなどで口から口に感染することもあります。基本的には第1期と第2期が特に感染力が強く、潜伏期間でもうつすことがあるので注意が必要です。

一方で、梅毒は温度変化、湿度変化に弱く、皮膚や粘膜から離れると数時間で感染性がなくなり死滅するという特徴があります。ただし、まれに、傷のある手で多量の菌がついたもの(衣類、食器、カミソリなど)に触れたことで感染するというケースがあります。

また、通常は輸血による感染はほぼありませんが、第1期の潜伏期間にある感染者から緊急輸血を受けた場合は感染する可能性はあります。

そのほか、妊婦が感染していると、胎盤を通して胎児に感染し、先天梅毒につながるケースがあります。

梅毒にかかりやすい人

梅毒にかかりやすい人として、以下のような特徴が挙げられます。

  • HIVに感染している
  • 無防備な性行為を行っている(不特定多数のパートナーがいる、コンドームを適切に使用していないなど)
  • 男性と性行為をする男性

梅毒の潜伏期間

梅毒の潜伏期間は3~6週間程度とされていますが、実際には2~3週間程度で症状が出ることが多いです。

ただし、初期の症状は軽く、症状に気づかないこともあります。また、発症後も症状のない時期(潜伏期間)を挟んで徐々に進行していきます。なお、症状がないまま何年も経つこともありますが、体の中では病気が静かに進行していきます。一方で、生涯にわたって症状が出ない「無症候性梅毒」のまま自然経過するケースもあります。

なお、潜伏期間は人にうつる場合とうつらない場合がありますが、粘膜や皮膚にただれの症状が出ている場合は、その部位に触れるとうつる可能性があるので注意しましょう。

梅毒の検査・治療は何科に行けばいい?

気になる症状があったり、パートナーの感染が判明したりした場合は早めに医療機関を受診しましょう。性感染症の専門クリニック、性病科、感染症科、泌尿器科(男性)、婦人科(女性)、皮膚科(皮膚に症状がある場合)などが選択肢となります。また、専門のクリニックは自由診療で症状がない人に対する検査を行っていることも多いです。

インターネットでは、自分で検査するキットが販売されていることもあるので、使ってみてもよいでしょう。

なお、初期の妊婦健診でも梅毒検査が行われることが一般的です。

梅毒の検査方法

問診、視診をした上で梅毒の疑いがあれば血液検査を行い、血液に抗体(感染の際に抵抗するためにつくられたもの)が存在するかどうかを調べます。

抗体検査にはTP抗体検査(梅毒に感染した際に作られる抗体の有無を調べる検査)やRPR抗体定量検査(細菌の膜に存在する物質に対する抗体の有無を調べるもので、現在の梅毒の活動性を知る指標となる検査)などがあり、「梅毒診療ガイド」ではこの2つを併せて行うことが強く推奨されています。

また、潜伏期間中の検査も可能です。ただし、検査のタイミングが早すぎると陰性となることもあり、最低でも感染から4週間経過している必要があります(RPR法は感染から4週間以上、TP法は感染から2ヶ月以上経過している必要がある)。

なお、第1期の潜伏期間中は症状がなく、検査方法によっては陰性となることもあります。

検査費用

検査をする場所(医療機関)や方法などによって費用は異なります。

自由診療の場合は7,000~9,000円程度が相場です。また、さらに金額は上がりますが、一度の検査で他の性感染症も併せて検査できるものもあります。

梅毒の治療方法

治療は抗生物質(ペニシリン系)で行うことが一般的です。進行するほど投与期間は長くなり、第1期は2~4週間、第2期で4~8週間、第3期以降は 8~12週間程度かかります。

また、薬の投与が終わっても、半年程度は経過観察と定期的な検査を行い、完治しているかどうか確認する必要があります。

なお、第3期以降まで進行してしまうと、完治は難しいとされています。菌は死滅させられても、臓器などに生じた障害は元に戻らないためです。

2021年9月に注射用の製剤が承認され、神経梅毒などの末期の症状には点滴治療の選択肢が加わりました。しかし、ある程度治療成果が出たとしても、後遺症が残ることが多いと考えられています。

治療時の注意点

薬の投与を始めてから24時間以内に発熱や頭痛などの症状が生じることがあります。これは、菌が破壊されている、つまり薬が効いているために起こる反応です。通常は1日ほどで改善されますが、症状がひどい場合には対症療法を行うことがあります。

また、途中で薬をやめてしまうと完治にいたらないことがあるので、処方された通りに服薬することが大事です。

治療費用

自由診療(保険適用外)の場合、医療機関によって費用は異なります。1ヶ月分の飲み薬は、1~2万円程度が相場です。

梅毒の予防法

梅毒の予防法としては、性的接触を行わないことが最も確実です。

しかし、実際は性的接触を行わないことは難しいでしょう。そのため、性行為の際は、コンドームを使うことである程度予防につながります。

ただし、コンドームでカバーしきれない部分の皮膚や粘膜から感染が起きることがあるので、確実に予防できるわけではありません。そのため、感染の疑いがある人との性行為や、不特定多数のパートナーとの性行為、パートナーを頻繁に変えるといったことは避けましょう。

また、梅毒は一度治っても免疫ができるわけではありません。何度でも再感染するので注意しましょう。パートナーのどちらかが感染したら、もう一方も検査、治療をし、再感染させ合うことがないようにすることが大事です。

梅毒について知っておきたいこと

治療が不十分だと再発することがある

梅毒は、治療がしっかりできていないと再発することがあります。薬は処方された通り最後まで飲み、完治の確認のための検査もしっかり受けることが大事です。

献血はできない

一度でも梅毒にかかったことがある場合は、完治しても献血できません。

自然治癒することもあるが早期検査・治療が大事

梅毒は自然治癒する可能性があります。また、現代では、梅毒が第3期以降に進行することはほとんどないとされています。

とはいえ、他者に感染させたり、進行して重大な症状が生じる可能性があるため、気になることがあれば検査を受け、治療に進むことが大事です。

梅毒の治療はクリニックフォアで!

クリニックフォアでは、さまざまな性感染症の治療を行っています。

梅毒は対面もしくはオンラインで検査・治療を行っています。治療内容は、内服薬の処方がメインとなります。

また、他の医療機関等で検査した結果がある場合は、結果をもとに治療することも可能なので、まずはご相談ください。

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参考文献

  1. 日本性感染症学会誌
  2. 梅毒の発生動向の 調査及び分析の強化について
  3. NIID 国立感染症研究所‐IDWR 2022年第42号<注目すべき感染症> 梅毒‐