梅毒の末期とは?末期に至るタイミングや症状を詳しく解説!

梅毒とは、梅毒トレポネーマという細菌に感染することで生じる性感染症です。5類感染症に分類されています。
かつては有効な治療法がなく、死に至るケースも多い不治の病でしたが、現在は適切な治療を受ければ完治ものぞめる病気となっています。しかし、放置すると進行し、症状が悪化することがあります。第4期(末期)まで進むと、脳、大動脈、心臓、神経などの重要な器官にも影響が及び、死に至ることもあるため、早期に適切な治療を受けることが大事です。
この記事では、梅毒の末期の症状や治療法などについて詳しく解説します。

梅毒の末期とは

梅毒は4段階で進行していく病気です。最終段階の第4期(以下、末期)は、感染からおおむね10年以上経った頃の段階を指します。

末期になると、さまざまな症状によって日常生活に支障が出たり、命にかかわるほどの状態になったりすることがあります。

しかし、梅毒に感染したからといって必ず末期に至るわけではありません。手前の第2期の症状が落ち着いた後、感染が続いたまま症状がなくなる(無症候梅毒と呼ばれる)ことも多いです。

梅毒の末期の症状

末期になると、心臓や血管の異常(心血管梅毒)、神経の異常(神経梅毒)による麻痺などが生じることがあり、症状によっては命にかかわることもあります。ここでは、心血管梅毒と神経梅毒について詳しく見ていきましょう。

心血管梅毒

心血管梅毒とは、梅毒によって心臓や血管に影響が及んでいる状態のことを指します。梅毒の感染が、心臓につながる血管に広がることで生じます。発症時期は、感染からおおむね10~25年経過した頃となります。

心血管梅毒では以下のような症状が引き起こされることがあります。

  • 大動脈瘤(大動脈の壁がもろくなり膨らんだ状態)
  • 大動脈弁(心臓から大動脈につながる弁)から血液が漏れる
  • 冠動脈(心臓に血液を供給する血管)が狭くなる

さらに、心不全や心臓発作、大動脈瘤の破裂などによって、死に至ることもあります。

中には自覚症状がある場合もあり、胸の痛みや、大動脈瘤が気管などを圧迫することによる呼吸困難、せき、声のかれなどが生じることがあります。

神経梅毒

神経梅毒とは、主に脳(大脳、小脳、脳幹)や脊髄が侵された状態のことを指します。梅毒を放置し続けた場合、一部の患者に発生することがあります。

一般的には、神経梅毒が起きることは少ないですが、免疫力の低下しているHIV感染者は発症しやすいとされています。

また、神経梅毒には進行麻痺型、脊髄癆(せきずいろう)型などさまざまなタイプがあるため詳しく見ていきましょう。

進行麻痺型

精神障害や認知症に似た症状が生じることがあるタイプです。症状としては、頭痛、発音がはっきりしなくなる、記憶障害、思考力や集中力の低下、妄想(自分を有名人だと思い込むなど)、衛生状態に無頓着になる、気分が変わりやすい、イライラや錯乱が起きるといったものが挙げられます。さらに、口、舌、手、全身に震えが生じ、最終的に全身が麻痺することもあります。

このタイプは40~50代頃に始まることが多いとされています。

脊髄癆(せきずいろう)型

脊髄の病変が少しずつ進行することで、さまざまな痛みや障害が起きるタイプです。たとえば、背中や足に刺すような強く不規則な痛みが起こります。のど、胃、膀胱、直腸に同じような痛みが起きることもあります。また、脚の感覚異常、歩行が不安定になる、体重減少、視力障害、勃起障害、排尿がコントロールできなくなることによる失禁など、症状はさまざまです。最終的に体が麻痺することもあります。

このタイプは、感染から20~30年後に生じることがあるとされています。

髄膜血管型

脳や脊髄の動脈に炎症が生じ、髄膜炎(脳を覆う髄膜の炎症)が慢性的に続くタイプです。頭痛、首の後ろの硬直、めまい、集中力・記憶力の低下、不眠症、目のかすみ、腕、肩、脚の筋力の低下、麻痺などの症状が起きることがあります。さらに、排尿・排便のコントロールが難しくなり、失禁したり、脳卒中(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞)が起きたりすることもあります。

無症候型

軽度の髄膜炎が生じるタイプです。無症候型といっても、頭痛や首の後ろの硬直、集中力低下などの症状が生じることがあります。

早期でも脳神経症状が現れることがある?

感染からおおむね1年以内でも、髄膜炎や目の症状など、脳神経系の症状が現れることがあります。これは早期神経梅毒と呼ばれ、末期の神経梅毒とは別物です。

末期の梅毒は鼻が落ちる?

「梅毒で鼻が落ちる」と聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。これは、医療が発達していなかった江戸時代頃に、梅毒によって鼻にできたゴム腫のことを言っていると考えられます。ゴム腫ができると鼻の骨や皮膚を破壊するため、「鼻が落ちる」と表現されたのではないでしょうか。

なお、ゴム腫は第3期に発生するものですが、現在はそこまで進行することはほぼありません。

末期梅毒の治療は難しい

末期まで進行してしまうと、治療をしても完治は難しいとされています。

実は2021年9月に、梅毒の治療薬として、注射用の製剤が承認されました。そのため、神経梅毒などの末期の症状には、点滴治療の選択肢が加わりました。しかし、ある程度治療成果が出たとしても、後遺症が残ることが多いと考えられています。

梅毒が末期まで進むことはほぼない

治療をせずに放置し続けた場合、梅毒が第3期以降に進行することがあります。しかし実際には、梅毒が末期まで進むことはほとんどないとされています。

梅毒は早期検査・治療が大事!

梅毒が末期に進む可能性はゼロではありません。最近では梅毒が増加傾向にあることもあり、気になる症状がある場合は早期検査、治療を受けることが大事です。

特に、体の関係があるパートナーが梅毒に感染していた場合は、自身も早めに検査を受けるようにしましょう。

梅毒の治療はクリニックフォアで!

クリニックフォアでは、さまざまな性感染症の治療を行っています。

梅毒は対面もしくはオンラインで検査・治療を行っています。治療内容は、内服薬の処方がメインとなります。

また、他の医療機関等で検査した結果がある場合は、結果をもとに治療することも可能なので、まずはご相談ください。

治療の詳細はこちら

参考文献

  1. 日本性感染症学会誌
  2. NIID 国立感染症研究所