ヘルペスとは
ヘルペスは、ヘルペスウイルスが原因となり、小さな水ぶくれができる急性炎症性皮膚疾患のことです。
ヘルペスウイルスは大きく分けて2種類あります。口唇ヘルペスや性器ヘルペスの原因となる「単純ヘルペスウイルス(HSV)」と、水ぼうそうや帯状疱疹の原因となる「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」(厳密にはHSVの亜型)です。
この記事では、単純ヘルペスウイルスによる性器ヘルペスを主に取り扱っていきます。
単純ヘルペスウイルスによって発症する病気
単純ヘルペスウイルスは体のどこにでも感染・発症することがあります。発症した部位によって、以下のように分類できます。
- 性器ヘルペス
- 口唇ヘルペス
- ヘルペス性歯肉口内炎
- 顔面ヘルペス
- 角膜ヘルペス
- 性器ヘルペス
- ヘルペス性ひょう疸(手指)
- 殿部ヘルペス(おしり)
- ヘルペス性脳炎
など
また、新生児が発症する新生児ヘルペスや、ウイルスが経皮感染して生じるカポジ水痘様発疹症もあります。
なお、性器ヘルペスがオーラルセックスによって口にうつると、口周り(口唇ヘルペス)に症状が現れます。逆に、口唇ヘルペスなどが性器にうつることもあります。
性器ヘルペスの患者数
性器ヘルペスの患者数は毎年9,000人程度確認されています。男性より女性の患者が多く、令和2年の患者数は男性3,324人、女性5,676人となっています。
また、女性では20~30代に多いですが、男性は20代以降は年齢によって大きな差はありません。
なお、赤ちゃんや子供でも性器ヘルペスを発症することがありますが、15歳未満の患者数は年間20人程度と稀です。
(参考)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0411-1.html
性器ヘルペスの症状
基本的な症状は、陰部やその周辺にできる、痛みや違和感を伴う赤み、水ぶくれなどです。ただし、最初の感染では無症状のことが多いです。
症状が出る場所は、男性は亀頭、包皮、冠状溝(陰茎と亀頭の間)など、女性は外陰部、子宮頸部(腟と子宮の間)などです。男女ともに太ももや肛門に出ることもあります。
また、性器ヘルペスは急性型(感染して初めて症状が出たもの)、誘発型(以前感染したものの無症状であり、免疫力の低下でウイルスが活性化して初めて症状が出たもの)、再発型(過去に症状が出たことがあり、再び症状が出たもの)の3タイプがあり、症状の程度が異なります。
症状が最も重いのは急性型です。この場合、外陰部の不快感やかゆみが生じた後、発熱、全身のだるさ、リンパの腫れ、強い疼痛などを伴い、浅いただれや水ぶくれがたくさん現れます。髄膜炎(頭蓋骨と脳の間の膜の炎症)を合併することもあります。特に女性は症状が強く出ることが多く、排尿困難や歩行困難のために入院が必要になる場合もあります。
再発時の症状
性器ヘルペスは再発を繰り返すことがあります。再発の場合はすでに免疫ができているので、軽症であることが多いです。
ただれや水ぶくれは1~数個程度と、初発時より少ないことが一般的です。症状の範囲もそこまで広くありません。
また、前兆となる症状が出ることがあります。たとえば、性器にヒリヒリ感やチクチク感といった違和感を覚える、太ももから足にかけて神経痛のようなビリビリとした鈍い痛みを感じる、腰がつっているような痛みが生じるといったものが挙げられます。
性器ヘルペスの原因・感染経路
性器ヘルペスは、主に性行為によって、ウイルスが陰部の粘膜に感染することで生じます。オーラルセックスも原因となります。さらに、コンドームを使用しなかったり、不特定多数と性行為を行ったりしていると、感染リスクが上がります。
水ぶくれやただれなどの症状が出ている場合、この部分に触れると感染することがあります。一方で、無症状でも、性器の粘膜や分泌液にウイルスが存在すれば感染する可能性があります。唾液にウイルスが排出されている場合は、唾液や、飛沫(せき、くしゃみ、会話)も感染源となります。
また、ウイルスがついた手指や器具などを介して感染したり、母親が感染しているケースでは、出産時に子どもに産道感染したりすることもあります。
性器ヘルペスの潜伏期間
急性型は感染から2日~3週間程度で症状が出るとされています。しかし、感染しても無症状のままということも多いです。
一方で、一度治癒しても、免疫力の低下によって再発することがあります。
性器ヘルペスの検査・治療は何科に行けばいい?
性器ヘルペスに対応している診療科は、婦人科、皮膚科、性病科、性感染症専門のクリニックなどです。クリニックフォアのように内科でも診療を行っているところもあります。
また、男性の場合は泌尿器科、口腔感染してのどなどに症状がある場合は耳鼻咽喉科なども選択肢となります。なお、口唇ヘルペスの場合も皮膚科などで診療が可能です。
性器ヘルペスの検査方法
病変の観察と、抗原検査や抗体検査によって検査・診断を行います。病変の特徴としては、外陰部に浅い潰瘍(ただれ)や水ぶくれができていることが挙げられます。
また、抗原検査は、検出したいウイルス(単純ヘルペスウイルス)が存在するかどうかを調べる検査です。血液検査や、患部からの浸出液を綿棒などで採って調べる方法などがあります。ただし、患部からの浸出液を採る方法の場合は、症状がないと検査できません。
一方、抗体検査は調べたい病気のウイルス(単純ヘルペスウイルス)に対する抗体が存在するかどうかを調べる検査です。血液検査によって行います。
なお、抗原検査は感染から24時間、抗体検査は1ヶ月以上経過していれば、検査が受けられます。それよりも早いと正確な結果が得られない可能性があるため注意しましょう。
とはいえ、時間が経過すると病状が悪化したり、他者への感染が拡大したりすることもあるため、基本的には早めの検査が大事です。感染から時間が経ちすぎると、抗体検査で正確な結果が出なくなることもあります。そのため、感染の可能性がある出来事から24時間経ったら早めに受診しましょう。
検査費用
抗原検査、抗体検査ともに、保険適用外(自由診療)の場合は5,000~10,000円程度が相場です。
なお、一般的には、症状があれば保険適用(保険診療)、症状がなければ保険適用外(自由診療)となることが多いです。一方で、性感染症を専門に扱うクリニックでは、症状の有無などにかかわらず、自由診療となっているところも多いです。
性器ヘルペスの治療方法
性器ヘルペスの治療では、抗ウイルス薬の飲み薬を5~10日程度飲むことが一般的です。抗ウイルス薬によってウイルスの増殖が抑えられ、症状が改善します。(ウイルスが完全に消滅するわけではないので、再発のリスクがある点に注意しましょう。)
飲み薬は、発症から時間が経ち、病変がかさぶたになってしまうと効果が期待できません。そのため、早めに治療を始めることが大切です。
また、塗り薬を併用したり、発熱などの全身症状が強い場合は、点滴や注射を行ったりすることもあります。
治療費用
自由診療の場合、飲み薬のみで7,000~20,000円程度が相場です。さらに診察料などで1,000~2,000円程度かかることが一般的です。
ヘルペスが完治することはない
性器ヘルペスをはじめとした、単純ヘルペスウイルスを原因とする病気が完治することはありません。単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると一生体内に存在し続けます。抗ウイルス薬による治療は症状をおさえるだけのものであり、現時点ではウイルスを死滅させる薬も、感染を予防するワクチンも存在しません。
疲れや睡眠不足、ストレスなどによって免疫力が低下すると再発することがあるため、再発予防に努めることが大事です。また、再発頻度が高い場合は、再発を予防する治療や、前兆のような症状が出た時点で治療を行う方法もあります。
性器ヘルペスの予防法、うつさないための注意点
性器ヘルペスを予防するためには、コンドームの使用や、手指などを清潔に保つことが大事です。また、再発を防ぐために生活習慣にも注意が必要です。詳しく見ていきましょう。
性行為をしない・コンドームを使う
最も確実な予防法は、性器ヘルペスを発症している相手と性行為をしないことです。発症時の性行為は、感染者自身の症状悪化にもつながります。
一方で、無症状でも人にうつすことがあります。つまり、感染していても、気づかないまま性行為をしてしまい、人にうつしてしまうことがあるのです。これを防ぐためには、性行為の際に必ずコンドームを使うことが大切です。ただし、病変が広い範囲に広がっている場合はコンドームでも確実に防ぐことはできません。
また、口唇ヘルペスがある場合はオーラルセックスやキスも控えたほうがよいでしょう。
患部に触れたら手を洗う
ウイルスのついた手や物を介して感染することがあります。そのため、感染・発症している場合は、患部を触ったらすぐに手を石けんで洗いましょう。タオルや食器などを洗わずに共用するのも控えてください。
身の回りのものを清潔に保つ
患部が触れた下着や服は、よく洗って天日干ししましょう。他の人の服と一緒に洗濯しても問題ありませんが、汚れがひどい場合はあらかじめ手洗いしておくと安心です。
また、食器やタオル、お風呂のいす、トイレの便座などの共用物は、使用前後に必ずきれいに洗うか拭くかしましょう。なお、お風呂のお湯を介して感染することはほぼないと考えられています。
再発予防のためにできること
再発予防のためには、免疫力が低下しないようにすることが大事です。規則正しい生活を送り、睡眠不足にならないようにしましょう。疲れやストレスもためないようにしてください。完治しない病気である、と意識しすぎるとストレスになるので注意しましょう。また、紫外線を避けるのもポイントです。
さらに、免疫力を高めるために、適度な運動やバランスの良い食生活を心がけるとよいでしょう。
性器ヘルペス発症時に知っておきたいこと
患部を清潔に保つ
性器ヘルペス発症時は、患部を清潔に保つことが大事です。ボディソープや⽯けんをよく泡⽴て、やさしく洗うとよいでしょう。また、洗った時にウイルスが手につく可能性があるので、最後に手指もしっかり洗ってください。
症状が悪化しないための注意点
性行為やアルコールの摂取で炎症が悪化することがあるので、できるだけ控えてください。また、患部がかさぶたになっても無理にはがさず、自然にとれるまでそっとしておきましょう。
性感染症のリスクが高まる
性器にただれができると、性感染症全般のリスクが高まります。エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)をうつしたり、うつされたりするリスクも高まるとされているため注意してください。予防のためには、症状があるときの性行為を控えることが重要です。
妊娠中の注意点
妊婦が性器ヘルペスにかかり、出産時にウイルスを排出していると、赤ちゃんに感染して重篤な新生児ヘルぺスにつながることがあります。赤ちゃんが脳炎を発症し、重い後遺症が残ったり、命にかかわったりすることもあるため注意が必要です。
妊娠中は免疫力が低下し、ヘルペスを再発しやすい状態になっています。そのため、過去に性器ヘルペスになったことがある場合は医師に相談しましょう。
なお、妊娠中に感染や再発しても、赤ちゃんに感染することはほぼないとされています。ただ、念のため、妊娠初期の感染に対しては薬で治療を行います。この薬は、胎児への悪影響はないとされているため心配する必要はありません。さらに、分娩時に症状があったり、分娩前1ヶ月以内に初めて感染し症状が出たりした場合は、帝王切開となる可能性があります。
このように、妊娠中の感染・発症は赤ちゃんや出産に大きく影響するため注意が必要です。感染を避けるために、特に妊娠後期の性行為やオーラルセックスは避けましょう。性行為をする場合は、必ずコンドームをつけてください。
性器ヘルペスの治療はクリニックフォアのオンライン診療で!
クリニックフォアでは、対面やオンライン診療で性器ヘルペスをはじめとする性感染症の検査・治療を行っています。ヘルペスの治療は、内服薬の処方がメインとなります。
PCやスマホで診察を受けた後、自宅などで薬を受けることができるので、忙しい方でも利用しやすいでしょう。
また、他の医療機関等で検査した結果がある場合は、結果をもとに治療することも可能なので、まずはご相談ください。
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