赤痢アメーバとは?
赤痢アメーバは腸内に寄生する原虫の一種で、人に感染すると主に腸炎を引き起こすことで知られています。
原虫とはウイルスや細菌とは違い、単細胞の微生物のことでゾウリムシなどと同じ分類になり、ワクチンなどで防ぐことができません。
感染経路は赤痢アメーバで汚染された水や食物を経口摂取する【経口感染】と肛門周囲を舐める性行為に起因する【糞口感染】の2種類があります。
また赤痢アメーバは全数報告対象(5類感染症)に指定されているので、診断した医師は最寄りの保健所に届け出なければならないという決まりもあります。
赤痢アメーバの症例数
赤痢アメーバの症例数は1999年に276例で2013年の1047例までは増加傾向にありましたが、それ以降2017年までは1000件強の数で推移しています。
この1000例という数は原虫が原因の感染症としては国内最多であり、感染者の発症率が5~10%であることから国内の潜在感染者は1万人ほどいると推定されています。
海外に渡航歴がない場合、感染者の80%は性行為が原因となっており、今後の拡大感染が懸念されている現状もあります。
赤痢アメーバの感染経路
赤痢アメーバの感染経路は
- 汚染された飲食物の摂取(経口感染)
- 肛門粘膜に関する性行為(糞口感染)
の2つがあります。
汚染された飲食物の摂取
感染した人間の排泄物に汚染された生のフルーツや野菜、飲み水を口にすることで感染します。
発展途上国などが中心となるので、これらの国で食べ物や飲み物を口にするときは加熱されたものを選ぶようにしましょう。
水道水は避けて未開封のミネラルウォーターを飲む、一度沸騰させた水を飲むなどの対策が有効です。
肛門粘膜に関する性交渉
赤痢アメーバのシスト(嚢子)が付着した肛門を舐めたり、指で触った後に口に触れたりすることで感染します。
赤痢アメーバは感染者の体から糞便を通して体外にシストの状態で感染を広げていくので、肛門粘膜にシストが付着している可能性は非常に高くなります。
赤痢アメーバの潜伏期間
潜伏期は一般的に2〜3週とされていますが、数ヶ月〜数年になることもあります。
感染した人の発症率は5~10%です。
赤痢アメーバの症状
赤痢アメーバに感染した場合の症状は主に以下の2つがあります。
- 大腸炎
- 肝膿瘍
大腸炎
潜伏期を過ぎた後に大腸の粘膜が潰瘍を起こすことによって
- 粘血便
- 下痢
- テネスムス(便意はあるが便が出ない)
- 排便時の下腹痛
などの症状が起こります。
発熱することは肝膿瘍にならない限りはまれです。
症状は数週間でよくなったり、悪くなったりを繰り返して行く傾向にありますが、全身に症状が出るケースはほぼなく、通常の社会生活は送れることが多くなります。
肝膿瘍
赤痢アメーバが肝臓に達すると肝臓内に膿が溜まってしまう肝膿瘍という症状を引き起こすことがあります。
肝膿瘍になると発熱、上腹部痛、肝腫大、盗汗などの諸症状が現れ、中でももっとも多いのは発熱です。
このため初期の段階では風邪などと間違われることが多いのですが、上部腹痛が出現する頃に画像診断などを通じて肝膿瘍を発症していることが発覚することもあります。
また赤痢アメーバが原因で肝膿瘍を発症した際に約半数は粘血便や下痢などの典型的な症状がないケースもあり、大腸炎になっていなくても赤痢アメーバに感染しているパターンも見受けられます。
赤痢アメーバの検査方法
赤痢アメーバの検査は大きく分けて
- 形態学的(顕微鏡的)検査
- 病原学的検査
- 血清学的検査
の3つがあります。
形態学的検査と病原学的検査は糞便や膿瘍液などを検査し、原虫の有無を検査する方法です。
血清学的検査とは血液を検査し、感染が疑われる人が赤痢アメーバに対して免疫反応を起こしていないかを検査する方法です。
この中で形態学的検査に分類される糞便検査が一般的で、キットによって自宅で検査することも可能です。
ただし、精度があまり高くないため3回以上検査することが勧められています。
検査結果が陰性でも症状が続くようであれば医師に相談しましょう。
赤痢アメーバの治療方法
赤痢アメーバによる症状が大腸炎、肝膿瘍のどちらの場合でもメトロニダゾール内服薬が第一選択薬です。
この薬剤は日本国内だけではなく、海外でも標準治療薬とされています。
また重症患者や薬を飲むことができない患者には注射剤を投与することもあります。
通常は10~14日ほど治療を継続し、治療効果を判定するために治療が終了した1,2週後に再度糞便検査をするのが一般的です。
またメトロニダゾールで治療が終了した後に、シストを除去する目的でパモロマイシンを投与するケースもあります。
赤痢アメーバの予防方法
赤痢アメーバの感染経路が汚染された飲み水や食物の摂取であることから、予防するにはこれらに注意する必要があります。
経口感染の予防
発展途上国などの赤痢アメーバの報告が多い国に渡航する際は現地で生の食物や飲み水の摂取を避けるようにしましょう。
食物であれば加熱処理してあるもの、フルーツはカットされたものではなく皮がむかれていない状態のものを口にするようにします。
飲み水はボトル入りのミネラルウォーターや煮沸したものを口にするようにしましょう。
糞口感染の予防
肛門に関連する性行為や不特定多数の人との性交渉を避けます。
日本国内での赤痢アメーバの感染経路はおよそ80%が性行為に起因するものとなっているので、接触機会を減らすまたは絶つことで感染の確率を大きく下げることができます。
ワクチンは存在しない
赤痢アメーバは原虫の一種なので、有効なワクチンがありません。
確実にかからないようにするには感染経路を遮断することが確実かつ唯一の方法です。
まとめ:赤痢アメーバが疑われる場合は専門医の診断を受ける
以上、赤痢アメーバについて解説してきました。
海外に渡航した、思い当たる性行為をしたなどの後に以下の症状が続く場合は注意が必要です。
- 粘血便
- 下痢
- テネスムス(便意はあるが便が出ない)
- 排便時の下腹痛
- 発熱
感染しても発病率は5~10%と高くはありませんが、日本で感染拡大が懸念される病態でもあります。
赤痢アメーバの感染が疑われる場合は専門医の診断を受けましょう。
クリニックフォアでは、オンライン診療と対面診療で性感染症の検査・治療を行っています。
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また、他の医療機関等で検査した結果がある場合は、結果をもとに治療することも可能なので、まずはご相談ください。
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