排卵痛とは|排卵時に起こる下腹部の痛みの仕組み
排卵痛とは、月経周期の中間期(排卵日前後)に起こる下腹部の痛みのことで、医学的には「中間痛(Mittelschmerz)」とも呼ばれています[1]。
排卵痛の原因や症状を知っておくことで、ピル服用中の痛みとの違いを見分けるきっかけになるでしょう。
ここでは、排卵痛の仕組みと特徴について整理します。
排卵痛は卵胞が破裂する際の刺激で起こる
排卵痛は、卵巣内で成熟した卵胞(卵子を包む袋)が破れ、卵子が飛び出す際に生じる痛みです。
卵胞が破裂する際の物理的な刺激に加え、卵胞液や少量の血液がお腹の内側の膜(腹膜)に触れることで、痛みが引き起こされると考えられています。
また、排卵前のホルモン変化(LHサージ)により、痛みや炎症に関わる「プロスタグランジン」が卵胞内で増加することも、排卵痛の一因と考えられています[1]。
痛みをまったく感じない方もいれば、日常生活に支障をきたすこともあり、痛みの感じ方には個人差が大きいです。
排卵痛は生理的な現象であるため、軽度であれば過度に心配する必要はありませんが、毎月強い痛みが続く場合は婦人科で相談することが大切です。
排卵痛の症状と持続期間の特徴
排卵痛には排卵が起こる側の卵巣に痛みを感じることや、痛みが比較的短期間でおさまるといった特徴があります。
症状の特徴をまとめると、以下のようになります[1][2]。
- チクチク・ズキズキとした下腹部の痛みが代表的で、左右どちらか片側に感じることが多い
- 痛みの持続時間は数時間から半日程度が一般的で、排卵が完了すると自然に治まる
- お腹の張りや腰のだるさ・軽い吐き気を伴う方もいるが、これらも排卵後には落ち着く
- 少量の出血(排卵出血)がみられることもあるが、多くの場合は数日程度で止まる
痛みが月経周期の中間期以外にも続く場合や、3日以上長引く場合は、排卵痛以外の原因を疑う必要があります。
我慢し続けると、病気の発見が遅れることもあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
ピルを正しく服用していれば排卵痛は起こらない
ピルには排卵を抑制する作用があるため、正しく服用していれば排卵痛が起こることは基本的にありません。
ピルの排卵抑制の仕組みを理解しておくことで、服用中の痛みへの不安を軽減できるでしょう。
ここでは、ピルがどのように排卵を抑制するのか・ピルの種類と排卵痛への効果について整理します。
ピルが排卵を抑制する仕組み|エストロゲンとプロゲスチンの働き
ピル(低用量経口避妊薬)に含まれているのは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(合成黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモン様物質です。
通常の月経周期では、脳から卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌され、卵巣内の卵胞の発育が促されることで排卵が起こります。
ピルを服用すると外部からホルモンが補充された状態になり、脳の視床下部・下垂体がFSHやLHの分泌を抑える結果、卵胞の発育と排卵が抑制されます。
排卵が起こらなければ排卵痛も生じないため、ピルを正しく服用できていれば「排卵痛が起きているかもしれない」と過度に心配する必要はないでしょう。
ピルの種類(OC・LEP)と排卵痛への効果
ピルは目的や用量によっていくつかの分類軸があります。
保険適用の有無による分類では、OC(経口避妊薬・自由診療)とLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬・保険適用)に分けられます。
また、含まれるエストロゲン量による分類では、低用量ピル(マーベロン、トリキュラーなど)と超低用量ピル(ヤーズフレックス、ルナベルULD、ドロエチなど)に分けられます。
いずれも排卵を抑制する作用をもっており、医師と相談のうえ目的に合ったお薬を選びます。
| 種類 | 主な服用目的 | 診療区分 | 代表的なお薬 |
| OC(経口避妊薬) | 避妊 | 自由診療 | トリキュラー・マーベロン・ファボワール |
| LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬) | 月経困難症 | 保険適用 | ルナベル・ヤーズ |
排卵痛そのものはLEPの保険適用対象ではありませんが、月経困難症の診断がつく場合はLEPが保険適用で処方されることがあります。排卵痛の軽減を目的としてピルを服用する場合は、OC(自由診療)が選択肢のひとつとなります。[1]。
どのピルが自分に合っているかは、体質やライフスタイルによって異なるため、医師と相談のうえで選ぶことが大切です。
ピル服用中に排卵痛のような痛みを感じる原因
ピルを正しく服用していれば排卵は起こらないはずですが、実際にはピル服用中に下腹部の痛みを感じるケースもあります。
この痛みの正体は、排卵痛そのものではなく別の原因であることが多いですが、飲み忘れや吸収不良があった場合は実際に排卵が起きている可能性も否定できません。
ここでは、ピル服用中に排卵痛のような痛みを感じる主な原因を3つのパターンに分けて整理します。
ピルの副作用としての腹痛|飲み始め1〜2か月にあらわれやすい
ピル服用中に感じる排卵痛のような痛みの原因として多いのは、ピルの副作用による腹痛・下腹部痛です。
ピルの副作用として下腹部痛や腹痛がみられるのは珍しいことではなく、たとえばトリキュラーの場合、下腹部痛の発現頻度は5%以上と記載されています[3]。
この痛みはピルに含まれるホルモンの影響で、子宮や卵巣周辺の環境が変化することに体が適応しようとする過程で生じるものと考えられています。
とくに飲み始めに起こりやすく、服用を続けるにつれて副作用の発現頻度が低下していくことが報告されています[4]。
痛みの程度は軽度であることが多く、下腹部がシクシクする・生理痛に似た鈍い痛みを感じるといった症状が典型的です。
痛みが強い場合や日常生活に支障がある場合は、我慢せず医師に相談しましょう。
飲み忘れや吸収不良により排卵が起きてしまった可能性
ピルの飲み忘れがあった場合、排卵抑制の効果が不十分になり、実際に排卵が起きてしまうことがあります。
ピルは毎日ほぼ同じ時間に1錠ずつ服用することで、安定した血中ホルモン濃度を維持するお薬です。
飲み忘れによってホルモン濃度が低下すると、脳がFSHやLHといったホルモンの分泌を再開し、排卵が起きる可能性があります。
また、服用後2〜3時間以内に嘔吐した場合や、激しい下痢が続いた場合も、有効成分が十分に吸収されていない可能性があり、飲み忘れに準じた対応が必要になる場合があります[3]。
飲み忘れや吸収不良に心当たりがあり、下腹部に排卵痛のような痛みを感じた場合は、自己判断せず医師に相談してください。
血栓症の副作用を起こしている可能性
血栓症は、ピルを服用している方がとくに注意すべき重大な副作用のひとつです。
血栓症とは、血管内に血液の塊(血栓)が形成され、血流が障害される状態です。ピルに含まれるエストロゲンの影響により、服用していない方と比べて静脈血栓症のリスクが高まる可能性があると報告されています[4]。
非常にまれですが、腸間膜静脈など腹部の血管に血栓が生じた場合、激しい腹痛があらわれることがあります。
腹痛が著しく強い・急激に悪化するといった場合は、すみやかに救急医療機関を受診してください。
激しい腹痛以外にも、以下の症状がひとつでもあらわれた場合は血栓症の可能性があります。
直ちにピルの服用を中止し、救急医療機関を受診してください[3]。
- 片側の足の痛み・腫れ
- 突然の胸痛・息切れ
- 激しい頭痛
- 手足の脱力やしびれ・麻痺
- ろれつが回らない・言葉が出にくい(構語障害)
- 視力障害
痛みが続く場合やいつもと違う痛みを感じた場合は、医療機関を受診して原因を確認してもらうことが大切です。
排卵痛と似た症状をもつ疾患による可能性
排卵痛と似た下腹部の痛みは、子宮内膜症や卵巣嚢腫・虫垂炎など他の疾患でも起こる可能性があります。
子宮内膜症[5]
月経痛のほか、月経周期に関係なく慢性的な骨盤痛が続くこともある。
卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)[6]
自覚症状がないまま進行することもある。
嚢腫が大きくなると下腹部の圧迫感や鈍痛を感じるほか、茎捻転(嚢腫がねじれること)が起きた際には突然の激痛が生じる。
虫垂炎[7]
みぞおちや臍周囲から右下腹部へと痛みが移動する。
37度台の発熱を伴うことが多い。
とくに虫垂炎は、排卵痛と似た症状を起こすことで知られています[1]。
痛みが激しい場合・発熱を伴う場合・何日も続く場合・出血量が多い場合は、排卵痛ではなく別の疾患が原因である可能性があるため、自己判断せず医療機関を受診してください。
ピル服用中に排卵痛のような痛みがあるときの対処法
ピル服用中に排卵痛のような下腹部の痛みを感じたとき、まずは落ち着いて原因を整理し、状況に応じた適切な対処をおこなうことが大切です。
多くの場合はピルの副作用による一時的な症状ですが、飲み忘れや吸収不良があった場合は避妊効果にも影響する可能性があります。
痛みの程度や飲み忘れの有無によって取るべき対応が異なるため、自己判断で放置しないことが重要です。
ここでは、具体的な対処法を状況ごとに整理します。
服用初期の場合は処方元の医師に相談する
ピルの副作用による腹痛・下腹部痛は、飲み始めの1〜3か月にあらわれやすく、体がホルモン環境に慣れるにつれて自然に治まるケースが多いです。
痛みが気になっても、自己判断で服用を中止するのではなく、まずは処方元の医師に相談しましょう。
痛みが改善しない場合や、いつもと違う痛みを感じる場合は、子宮内膜症や卵巣嚢腫など別の疾患が原因となっている可能性もあります。
受診の際には、痛みの部位・程度・頻度に加えて、ピルの種類・服用期間・飲み忘れの有無も医師に伝えるようにしましょう。
ピルの種類変更について医師に相談する
ピルにはさまざまな種類があり、含まれるプロゲスチン(合成黄体ホルモン)の種類や配合バランスがそれぞれ異なります。
現在服用しているピルで副作用としての腹痛が続く場合は、別の種類のピルに変更することで症状が改善する可能性があります。
お薬が合わないと感じた場合は、ピルの種類変更について医師に相談してみましょう。
すぐに医療機関を受診すべきケース
突然の激痛が生じた場合や痛みが増強している場合は、ためらわず救急外来を受診してください。
下腹部の痛みが強いために仕事や家事ができない・痛みで眠れないといった状態が続く場合は、排卵痛とは別の原因を疑いましょう。
卵巣嚢腫の茎捻転や破裂・急性虫垂炎など、緊急性の高い疾患が下腹部の激しい痛みとしてあらわれることがあります。
ご自身の感覚として「いつもと違う」「明らかに痛みが強い」と感じた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
ピル服用中の排卵痛に関するご相談はクリニックフォアのオンライン診療へ
クリニックフォアでは、排卵痛や低用量ピルについてのご相談をオンライン診療でお受けしています。
クリニックフォアのオンライン診療には、以下の特徴があります。
- スマートフォンやパソコンから、場所を選ばず受診できる
- 予約制のため、忙しい方でもスキマ時間を活用して相談しやすい
- お薬は最短翌日にご自宅へ配送可能
クリニックフォアのオンライン診療の料金目安は以下のとおりです。
| 項目 | 料金(税込) |
| 診察料 | 1,650円 |
| お薬代(一例)【トリキュラー】【マーベロン】【ファボワール】 | 2,255円/月〜 ※12か月まとめて定期配送の場合 |
| 配送料 | 550円 |
※医療保険が適用外の自由診療となります。
「今のピルで腹痛が続いているので種類を変えたい」「排卵痛がつらいのでピルを試してみたい」という方でも、オンライン診療で医師に症状やライフスタイルを伝えながら相談することが可能です。
排卵痛や下腹部の痛みでお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
※痛みが激しい場合や血栓症を疑う症状がある場合は、オンライン診療ではなく対面で医療機関を受診してください。
※効果・効能・副作用のあらわれ方は個人差がございます。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
よくある質問
ここでは、ピル服用中の排卵痛や下腹部の痛みについてよく寄せられる疑問にお答えします。
受診や対処法を検討する際の参考にしてください。
Q1.ピルを飲んでいるのに排卵痛のような痛みがあります。排卵していますか?
毎日欠かさず正しく服用できていれば、排卵が起きている可能性は極めて低いです。
排卵痛のような痛みは、副作用による一時的なものや、子宮内膜症などピル以外の原因による痛みが考えられます。
不安な場合は自己判断せず、医師に相談することをおすすめします。
Q2.ピル服用中の下腹部痛はいつまで続きますか?
ピルの副作用としての下腹部痛は、体がホルモン環境に慣れるにつれて自然に治まるケースが多く、1〜2か月で自然に落ち着くことも少なくありません。
ただし、いつまで様子を見るべきかは個人の状況によって異なります。
処方元の医師に症状を伝え、経過観察の目安を確認するようにしましょう。
痛みが強い場合・日常生活に支障がある場合・症状が長引いていると感じる場合は、早めに医療機関を受診してください。
Q3.ピルを1錠飲み忘れた場合、排卵してしまいますか?
1錠の飲み忘れであれば、気づいた時点ですぐに服用すれば排卵が起きるリスクは低いとされています。
ただし、2錠以上連続で飲み忘れた場合は、排卵する可能性があります[3]。
飲み忘れた錠数やタイミングに応じた対処法はピルの種類によって異なるため、不安な場合は医師に確認してください。
Q4.ピル服用中に排卵痛のような痛みがあり、市販の鎮痛薬を飲んでも大丈夫ですか?
ピル服用中に市販の鎮痛剤(ロキソプロフェンやイブプロフェンなど)を服用しても、ピルの避妊効果や治療効果には基本的に影響しないとされています。
ただし、薬剤の相互作用には個人差があるため、不安な場合は医師または薬剤師にご確認ください。
まとめ
ピルを正しく服用していれば排卵は抑制されるため、排卵痛が起きることは基本的にありません。
ピルに含まれるエストロゲンとプロゲスチンの作用で、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの分泌が抑えられ、卵胞が発育せず排卵が起こらなくなるためです。
ピル服用中に排卵痛のような痛みがある場合は、服用初期に起こりやすい副作用としての腹痛や、飲み忘れ・吸収不良による排卵の可能性が考えられます。
このほか、子宮内膜症や卵巣嚢腫といった別の疾患が原因となっているケースもあります。
痛みが気になる場合や症状が続く場合は自己判断で様子を見ず、まずは処方元の医師や婦人科に相談するようにしましょう。
※効果・効能・副作用のあらわれ方は個人差がございます。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。


