ワキガは飲み薬で治る?
結論から言うと、ワキガを直接治療できるような飲み薬は存在しません。ワキガは、塗り薬や手術が主な治療法となります。
ただ、多汗症(過度に汗をかいてしまう症状)の治療薬が、間接的にワキガによい効果をもたらす可能性はあります。たとえば以下のようなお薬です。
- 抗コリン薬:発汗を促すアセチルコリンという神経伝達物質の作用を阻害し、汗を抑える
- 抗不安薬:緊張などの精神的な要因で汗が出る場合に効果が期待できる
汗が多いことでにおいが悪化したり広がったりすることもあり、多汗症とワキガが合併していることも多いとされています。そのため、多汗症のお薬によってワキガ改善が望めることもあるでしょう。
ワキガの治療法【外用薬】
ワキガで使うお薬には以下のようなものがあります。いずれも基本的には多汗症のお薬で、汗を抑えることで間接的にワキガの改善が期待できるものです。
塩化アルミニウム溶液
多汗症で最初に使うことが多いお薬が塩化アルミニウム溶液です。汗の通り道に沈着してふさぎ、汗を抑えます。また、汗が抑えられることでわきが乾燥しやすくなり、皮膚の常在菌が減ってにおいの軽減につながることが期待できます。ただ、副作用として皮膚炎が生じることがあるため注意が必要です。
なお、塩化アルミニウムは市販の制汗剤にも配合されていることがあります。「クロルヒドロキシアルミニウム」という成分として配合されていることが多いです。
エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)
日本初のわきの多汗症治療薬として2020年に承認されたお薬です。わきの多汗症に対しては保険適用もあります。汗の分泌にかかわるアセチルコリンという神経伝達物質を阻害することで、エクリン腺からの発汗を抑える効果が期待できます。
なお、生じうる副作用としては、皮膚炎(6.4%の頻度)、紅斑(5.7%の頻度)、かゆみ、口の渇き、排尿障害などが挙げられます。
ワキガの治療法【その他】
お薬以外の主な治療法は手術ですが、その他に、多汗症治療の際に行うボトックス注射やイオントフォレーシスも効果が期待できることがあります。詳細は以下の通りです。
手術
皮膚を切開して、アポクリン腺を取り除く「皮弁剪除法」や、アポクリン腺を皮膚と皮下組織ごと切除する「皮膚切除法」などがあります。ただ、いずれも全てのアポクリン腺を取り切れるわけではないため、手術後も多少においが残ることがあります。
また、切除した部分が一時的にひきつれたり、後が残ったりすることが多いため、理解した上で治療を受ける必要があります。
ボトックス注射
ボトックス注射は、ボツリヌス菌がつくる毒素(ボツリヌストキシン)の注射です。美容医療ではシワ改善目的でよく行われるボトックス注射ですが、発汗にかかわるアセチルコリンを抑制し、汗を抑える効果も期待できます。わきの多汗症に対しては保険適用もあります。
なお、一度の注射で効果が続くのは半年ほどであるため、継続して効果を得たい場合は半年に一度程度の頻度で治療を続ける必要があります。
イオントフォレーシス
多汗症治療で行うイオントフォレーシスもワキガ改善に効果が期待できることがあります。多汗症治療におけるイオントフォレーシスは、水道水に患部をつけ、電流を流す治療法です。
発生した水素イオンが汗の出口を障害し、汗が出にくくなるというのがメカニズムとして考えられています。
ただし、イオントフォレーシスはわきに対して行われることは少ないです。
ワキガ治療でお薬を使うメリット
ここまで、ワキガ治療で使われるお薬などについて見てきましたが、お薬のメリットデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。まずは考えられるメリットについてご紹介します。
手術せずに治療ができる
手術は体への負担が大きく、副作用のリスクもあります。重大なものでは、傷口の付近に血腫ができたり膿を持ってしまったりして、皮膚が壊死することもあります。そのため、術後は予防の目的でガーゼを大量にかたく当てておく必要があります。
また、しばらくは腕をあまり動かせなくなったり、切開部分の引きつれや色素沈着が気になったりすることもあります。切開するので、手術による傷跡は長期間残ることが多いです。
一方、お薬にも副作用のリスク(代表的なものでは、口の渇き、排尿障害など)はありますが、上記のようなデメリットはありません。
子どもでも治療ができる
子どもの場合は手術を受けられないことも多いです。また、思春期前後の年齢の場合、手術を受けたとしても、その後の成長に伴ってアポクリン腺が発達することがあり、症状がぶりかえしてしまうこともあります。
おおむね12歳以上であればお薬で治療ができるため、手術ができる年齢まで症状を抑える目的でお薬を使う方法もあるでしょう。
ワキガ治療でお薬を使うデメリット
メリットの一方で、お薬にはデメリットもあります。メリットデメリットをふまえてよく考え、治療法を選択するとよいでしょう。
治療を続ける必要がある
お薬の効果を得るためには、お薬を使い続ける必要があります。通常はお薬をやめると効果がなくなるためです。
手術をしたからと言ってアポクリン腺を全て取り除けるわけではないので、においが多少残ることはありますが、手術は基本的に1回で完了します。この点がお薬と手術の大きな違いと言えるでしょう。
ワキガが完治することはない
前述の通り、お薬の効果はお薬を使っている間のみ発揮されることが一般的なので、お薬をやめれば元通りになることがほとんどです。つまり、お薬でワキガが完治することはないと言えます。
トータルの治療費がかさむことがある
前述の通り、お薬による治療は継続することが大事なので、トータルの治療費が高くなることがあります。
また、長年お薬を続けていたけれど、最終的に手術を選択したというような方もいるでしょう。そのような場合も、最初から手術を選択するよりも治療費は高くなってしまいます。
ワキガに関するよくある質問
最後に、ワキガに関するよくある質問にお答えします。
そもそもワキガとは?
ワキガは、汗腺のうちアポクリン腺から出る汗が原因となります。この汗にはタンパク質や脂質、アンモニアなどの成分が含まれており、皮膚にいる細菌に分解されることで独特のにおいを生じます。
ワキガの方はアポクリン腺の大きさが大きい、または数が多いとされています。
ワキガと多汗症の違いは?
多汗症とは、生活に支障が出るほどの大量の汗が出る症状のことを言います。多汗症は汗の量、ワキガはにおいと、症状が異なります。ただ、多汗症とワキガは合併することも多いとされています。
なお、多汗症の原因はエクリン腺から出る汗、ワキガの原因はアポクリン腺から出る汗という違いもあります。エクリン腺から出る汗はほとんどが水分でさらっとしているのに対して、アポクリン腺から出る汗はタンパク質や脂質、アンモニアなどを含んでおり、粘り気があるのが特徴です。
ワキガのセルフチェック方法は?
ワキガをセルフチェックする際には、まずガーゼやティッシュをわきに5分ほど挟んでみましょう。5分ほど経ったらガーゼやティッシュのにおいを確認し、気になるにおいがあればワキガの可能性があります。
また、ワキガの方によくある特徴には、以下のようなものがあります。当てはまるものが多いとワキガの可能性があるので注意しましょう。
- 耳垢が湿っている
- 耳の毛が多い
- わきの毛が多い
- 下着の脇部分が黄ばみやすい
- 汗の量が多い
- 家族にワキガの人がいる
- 耳の中、乳輪、陰部周辺で異臭がする
特に、耳垢が湿っている方や、両親のうちどちらかにワキガの方がいる場合はワキガの可能性が高いとされています。
ワキガのセルフケアはどうすればよい?
セルフケアでワキガを治すことはできませんが、制汗剤を使ったり、わきを清潔に保ったりすることで悪化予防やにおいの緩和が期待できます。
- 汗をかいたらこまめにふきとったり、シャワーで洗い流したりして清潔にする
- 吸湿性、通気性がよい天然素材(綿素材など)の衣服を選ぶ
- 汗をかいたらこまめに着替える
- 制汗剤を使う
- わきを脱毛する
制汗剤はどんなものがよい?
医療機関では塩化アルミニウムが制汗剤として処方されることがありますが、市販のものでもある程度の効果が期待できることがあります。
市販の制汗剤には、以下のような成分が含まれていることが多いです。
- 殺菌成分(皮膚の常在菌を殺菌する):イソプロピルメチルフェノール、ベンザルコニウム塩化物など
- 制汗成分(汗の出口をふさいで汗を出にくくする):クロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウムなど
- 消臭成分(発生したにおいの中和や、においの発生を抑制する):ミョウバンなど
ワキガを悪化させる原因はある?
以下のような生活習慣はワキガを悪化させることがあります。当てはまるものがある場合は改善しましょう。
- 動物性脂肪、赤身肉、コレステロールなどの過剰摂取
- 過度な飲酒
- ストレス
- 睡眠不足
- 運動不足
- 喫煙
など
ワキガ悪化予防のためのセルフケアはどうすればよい?
ワキガには生活習慣も深くかかわっています。そのため、生活習慣を改善することで症状を緩和したり、悪化を防いだりすることも可能なケースがあります。以下のような点がポイントとなります。
- 動物性脂肪、赤身肉、コレステロールなどを控えめにする
- 飲酒は適量にとどめる
- ストレスを解消する
- 質の高い十分な睡眠をとる
- 適度に運動する
- 禁煙する
など
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オンライン診療はオンラインで診察が完了し、お薬はご自宅などのご希望の場所に届くため、直接の受診に抵抗がある方やお忙しい方でも受診しやすくなっています。
汗に関して気になることがある方は、まず受診をご検討ください。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。