インフルエンザで解熱剤は使用できる?解熱剤の種類や注意点などをわかりやすく解説します

インフルエンザにかかると、つらい発熱や関節の痛みに悩まされることがあります。
そのようなとき「解熱剤を飲んでも大丈夫?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、インフルエンザ時に使用できる解熱剤の種類や選び方、服用のタイミング、注意点についてわかりやすく解説します。
子どもや妊婦、高齢者など年代別のポイントも紹介していますので、ご自身やご家族の体調管理にぜひお役立てください。

インフルエンザでも解熱剤は使用できる?

インフルエンザのときは、解熱剤を使うことができます。

解熱鎮痛薬には、熱や頭痛のつらい症状を和らげる働きがあるため、使用することで体力の消耗を防ぎ、安静に過ごしやすくなるでしょう。

ただし、子どもや妊娠中の方、高齢者、持病のある方などは、使用できるお薬が限られる場合もあります。そのため、自己判断での使用は避け、医師や薬剤師に相談することが望ましいです。

では、実際にどのような解熱剤が適しているのかを、次の項目で詳しくご紹介します。

インフルエンザの解熱剤は「アセトアミノフェン」が基本

解熱剤には、「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」に分類されるものと、それ以外のタイプがあります。インフルエンザを発症しているときに第一選択とされるのが、非NSAIDs系の解熱剤であるアセトアミノフェンです。

アセトアミノフェンは脳の体温調節中枢に働きかけて熱を下げるほか、痛みの原因となる物質の生成も抑える作用があります。

アセトアミノフェンはNSAIDsと比べて、インフルエンザ脳症などの重篤な合併症を引き起こすリスクが低いとされています。副作用が比較的少なく、子どもや妊婦にも使いやすい点も特徴です。

そのぶん解熱効果が緩やかで、強い発熱時には効き目を実感しにくいこともあります。特に高熱が続く場合には、効果の発現までに時間がかかると感じることがあるかもしれません。

日本小児科学会も「インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンがよいと考える」[1]と報告しており、幅広い世代に適した選択肢といえるでしょう。

インフルエンザでも使用できる市販の解熱剤

ドラッグストアなどで販売されている市販の解熱鎮痛薬を選ぶ際は、成分表示を確認し「アセトアミノフェン」と記載されているものを選ぶとよいでしょう。

風邪薬(総合感冒薬)には他の成分も含まれているため、熱や痛みだけを抑えたい場合はアセトアミノフェン単一成分の製品が適しています。また、複数のお薬を同時に使用すると、成分が重複して過剰摂取になる可能性があるため注意が必要です。

迷った場合は、薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。

解熱剤を飲むタイミングは「つらい時」が目安

解熱剤は体温の数字だけで判断するのではなく、熱が高くてつらい、眠れないといった症状がある場合に使用を検討するのが基本です。解熱剤の使用に関しては「何度以下では使ってはいけない」「何度以上で使わなければならない」といった明確な基準は設けられていません。医学的には、37.5℃以上が発熱の目安とされています。体温の数字だけでなく、発熱によるダルさや寒気といった症状が伴っているかといったことも総合的に判断し、辛い場合には解熱剤を使用して問題ありません。

発熱は体がウイルスと戦う免疫反応の一部であり、無理に熱を下げる必要はありません。解熱剤はあくまでつらい症状を緩和するために使用するものです。高熱でも比較的元気で水分がとれているなら、無理に解熱剤を使わず、安静にして自然な回復を目指すのが望ましいでしょう。

また、熱が上がりきる前、つまり悪寒がして手足が冷たいときなどに解熱剤を使うと、十分に効果が得られないことがあります。体温が上がりきってから使用する方が、より効果的に症状を和らげられます。

解熱剤の使用に迷った場合は、医師に相談しましょう。当クリニックではオンライン診療も可能なため、自宅から気軽にご相談いただけます。

※触診・検査が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。

解熱剤を使用する際の注意点

解熱剤を使用する際は、以下の4つの注意点を守りましょう。

  • 用法・用量を守る
  • 他のお薬との併用を避ける
  • 飲酒を控える
  • 使用後の過ごし方に気をつける

解熱剤の過剰摂取は、肝機能障害などの副作用を引き起こす可能性があります。他の風邪薬や鎮痛剤にも同じ成分が含まれている場合があるため、重複して服用しないよう注意しましょう。

また、アルコールはお薬の代謝に影響を与え、肝臓への負担を増大させる恐れがあります。解熱剤を使用している期間は飲酒を控えてください。

使用後は安静にして体を休め、十分な水分補給を心がけることも大切です。解熱剤はあくまで対症療法であり、インフルエンザ自体を治すお薬ではないことを心に留めておきましょう。

用法・用量を守り長期間使用しない

アセトアミノフェンの内服薬・坐薬などを使用する際は、1回の使用量と間隔(通常4〜6時間以上)を守るようにしましょう[3]

インフルエンザの症状緩和のために一時的に内服薬や坐薬を使用する分には問題ありませんが、頻繁に解熱剤が必要な状態が続く場合は、医師に相談してください。添付文書に記載された用法・用量を守り、自己判断で長期間使用しないことが重要です。

他の風邪薬や鎮痛剤との併用は避ける

総合感冒薬と呼ばれる風邪薬には解熱鎮痛成分が含まれていることが多いため、併用すると成分の過剰摂取につながる恐れがあります。

すでに解熱剤を使用している状態で風邪薬を追加すると、同じ成分を重複して摂取することになり、推奨用量を超える可能性がありす。

複数のお薬を使用する場合は、成分表示を確認してください。同じ有効成分が含まれていないかチェックし、不明な点があれば医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

飲酒を控える

解熱剤の成分もアルコールも肝臓で代謝されるため、同時に摂取すると肝臓に大きな負担がかかります。

肝臓は体内でお薬やアルコールを分解する重要な臓器です。解熱剤とアルコールを同時に摂取すると、肝臓が両方を処理しなければならず、過度な負担がかかります。アセトアミノフェンでも、アルコールとの併用により肝障害のリスクが高まる可能性があります。

解熱剤を使用している期間は飲酒を控え、体調がしっかり戻ってから少しずつ楽しむようにしましょう。

使用後は安静にし十分な水分補給を心がける

解熱剤を使用して汗をかいた後は、脱水症状を防ぐためにもこまめな水分補給が大切です。

解熱剤の作用により、発汗が促されることがあります。大量に汗をかくと体内の水分が失われ、脱水症状を引き起こす可能性があります。特にインフルエンザで高熱が続きぐったりしている状態では、もともと水分が不足しがちです。

水やスポーツドリンク、経口補水液などで定期的に水分を補給してください。一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに摂取するのがおすすめです。

また、解熱剤は対症療法であり、インフルエンザそのものを治すものではないことを理解しておきましょう。熱が下がっても体内ではウイルスと戦っている状態が続いているため、十分な休息を取ることが大切です。

インフルエンザで解熱剤を使用しても効かないと感じるときは

解熱剤が効かないと感じた場合は、自己判断で対処せず医師の診察を受けるようにしましょう。

解熱剤の効果が不十分に感じられる原因として、以下のような可能性が考えられます。

  • ウイルスによる炎症が強い場合
    インフルエンザウイルスによる炎症反応が強く、解熱剤では十分に熱が下がらないことがあります。この場合、抗インフルエンザ薬の服用や吸入も検討されます。
  • 他の疾患が隠れている可能性
    副鼻腔炎やインフルエンザ脳症など、インフルエンザ以外の病気が併発している可能性があります。特にインフルエンザ脳症は重篤な合併症であり、早期発見が重要です。意識障害、けいれん、異常行動などの症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。
  • 実際には体温が下がっているケース
    解熱剤により体温は下がっているものの、だるさや関節痛などの症状が残っているため「効かない」と感じている可能性もあります。自分の感覚だけでなく、体温計で実際の体温を確認するようにしましょう。

解熱剤が効かないと感じても、使用の間隔を短くしたり用量を増やしたりすることは避けましょう。過剰服用は肝機能障害などの深刻な副作用を引き起こす恐れがあります。

当クリニックではオンライン診療も可能なため、体調や解熱剤の効き具合に不安を感じた際にも、自宅から気軽にご相談いただけます。

※検査等が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。

【年代別】子ども・妊婦・高齢者の解熱剤使用で特に注意すべきポイント

子ども、妊婦・授乳婦、高齢者の方は使用できるお薬や注意点が異なります。

15歳未満の子どもは、インフルエンザ脳症やライ症候群のリスクから、アセトアミノフェン以外の解熱剤は原則禁忌とされています。

妊娠中の服薬は胎児への影響を考慮する必要があり、高齢者は持病や併用薬との相互作用に注意が必要です。

年代や状態によって使用できる解熱剤が異なるため、自己判断での市販薬の使用は避け、医師や薬剤師に相談しましょう。

子どもの場合

子どものインフルエンザによる発熱には、アセトアミノフェンが第一選択となります。

また、お薬は体重に合わせた用量を守ることが重要です。子どもは体重あたりの適切な用量が設定されており、過剰投与は肝機能障害などのリスクを高める可能性があります。解熱剤の効果が不十分だからといって、短時間で繰り返し使用することは避けてください。

市販のアセトアミノフェン製剤には、年齢や体重に応じた用量が記載されているため、確認するとよいでしょう。

子どもは体調が変化しやすいため、発熱時に不安を感じたら自己判断せず内科や小児科を受診することをおすすめします。

妊婦・授乳婦の場合

妊娠中にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を使用できる場合もありますが、妊娠の週数やお薬の種類によってリスクが異なるため、医師の判断が不可欠です。自己判断での使用は避け、かかりつけの医師に相談してください。

  • 妊娠初期〜中期

一部のNSAIDsは医師の管理下で使用されることがありますが、胎児への影響や流産のリスクが懸念されるため、使用は必要最小限にとどめることが推奨されます。

  • 妊娠後期(28週以降)

この時期には多くのNSAIDsが禁忌または使用を避けるべきお薬だとされています。特に、胎児の動脈管収縮や腎機能障害などのリスクが報告されており、添付文書にも注意喚起が記載されています[5]。妊娠後期では、胎児への影響がより深刻になる可能性があるため、原則として使用を控えることとなっています。

  • 局所製剤(塗り薬・貼り薬)について

局所製剤であっても、全身への吸収によって胎児に影響を及ぼす可能性があるため、飲み薬と同様に注意が必要です。特にケトプロフェンは、妊娠中期以降の使用には慎重な判断が求められます。

高齢者の場合

高齢になると腎臓や肝臓の働きが低下しやすく、お薬の代謝や排泄に時間がかかる傾向があります。そのため、通常量の解熱剤でも副作用が出やすくなる可能性があります。特に腎機能が低下している場合には、お薬が体内に蓄積しやすくなるため注意が必要です。

たとえば、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は腎血流を減らす作用があり、腎障害のある方には慎重な使用が求められます。

さらに、高血圧や糖尿病、心疾患などの持病がある方は、解熱剤との相互作用や病状への影響を考慮する必要があります。複数のお薬を使用している場合には、お薬同士の相互作用による思わぬ副作用が起こる可能性もあるため、医師や薬剤師による確認が不可欠です。

解熱剤を使用する際には、かかりつけ医に現在の健康状態や使用中のお薬についてしっかり伝え、適切な種類と用量のお薬を選んでもらいましょう。

インフルエンザと解熱剤に関するよくある質問

インフルエンザ発症時の解熱剤使用について、多くの方が疑問や不安を感じています。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。

解熱剤の使用可否や検査への影響など、実際の場面で迷いやすいポイントについて解説します。

解熱剤だけでインフルエンザは治りますか?

内服薬や坐薬などの解熱剤は、発熱や痛みなどの症状を一時的に和らげる「対症療法」として使う薬です。インフルエンザウイルスそのものを減らす働きはありません。

解熱剤を使用して熱が下がっても、ウイルスは体内に残っており、感染力も持続しています。解熱剤は体温を下げて不快な症状を緩和する役割を果たしますが、体内のウイルスには作用しないためです。

対症療法で辛い症状を抑えつつ、時間の経過とともに身体がウイルスへの免疫を獲得することで、インフルエンザは治っていきます。症状が強い場合や発症から早期の場合は、ウイルスの増殖を抑える「抗インフルエンザ薬」が処方される場合もあります。

治療方針については、医師と相談して決定しましょう。

インフルエンザ検査の前に解熱剤を飲んでも結果に影響はありませんか?

解熱剤を使用しても、インフルエンザの迅速検査キットの結果に直接影響はありません。

インフルエンザの迅速検査は、鼻やのどから採取した検体中のウイルス抗原を検出する仕組みです。解熱剤は体温を下げる作用を持ちますが、ウイルスの量そのものを減らすわけではないため、検査結果には影響しません。

ただし、発熱してから検査までの時間が短すぎると、正確に陽性にならない場合もあります。発症してから12時間後~遅くとも48時間以内に検査を受けるようにしましょう。

一度熱が下がってもまた上がってきたら再度解熱剤を飲んでよいですか?

一度熱が下がった後に再び熱が上がった場合、再度解熱剤を使用しても問題ありませんが、医師の指示に従い、用法・用量に定められた間隔(通常4〜6時間以上)を空けてください[6]

インフルエンザでは、解熱剤の効果が切れると再び熱が上がることがあります。これはウイルスがまだ体内に残っており、炎症反応が続いているためです。

ただし、指定された時間よりも短い間隔で、繰り返し解熱剤を使用しないようにしましょう。使う間隔を守らずに使用すると、肝機能障害などの重篤な副作用を引き起こす可能性が高まることがあります。

また、2日以上高熱が続く場合や、解熱剤を使用してもほとんど熱が下がらない場合は、インフルエンザ以外の疾患が隠れている可能性も考えられます。そのような場合は、自己判断でお薬を追加せず、速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。

まとめ

インフルエンザにかかった際には、解熱剤を使ってつらい発熱や痛みをやわらげることができます。中でも、副作用が少なく幅広い年代で使いやすいアセトアミノフェンが推奨されています。

一方で、ジクロフェナク・メフェナム酸・アスピリンなど一部のNSAIDsは、重い合併症との関係が懸念されているため、使用は控えることが推奨されています。

解熱剤を服用するタイミングは「つらいと感じたとき」が目安です。ただし、解熱剤はあくまで症状を一時的にやわらげる「対症療法」であり、インフルエンザそのものを治すお薬ではありません。悪化を防ぐためにもなるべく医療機関を受診するようにしましょう。

もし、「外出が難しい」「すぐに相談したい…」とお困りでしたら、オンライン診療の「クリニックフォア」を利用してみませんか?

保険適用の内科診療では、発熱やインフルエンザなどの体調不良にも対応しており、症状に応じてカロナールなどの解熱鎮痛薬を処方する場合があります。

発熱や痛みなどでお困りの方は、ご自宅から受診できるオンライン診療の活用をぜひご検討ください。

※触診・検査が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。

参考文献

  1. 日本小児科学会. インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について.
  2. 厚生労働省. 市販の解熱鎮痛薬の選び方.
  3. 厚生労働省. 資料6-1 アセトアミノフェンの「小児科領域における解熱」報告書(2006/08/29).
  4. 日本頭痛学会. 頭痛のQ&A.
  5. 日本産科婦人科学会. 手術依頼に関する通知資料(2024/10/25).