インフルエンザに兄弟がかかっても症状のない子どもは学校を休む必要はない
インフルエンザに兄弟がかかっても、症状のない子どもは原則として学校を休む必要はありません。
学校保健安全法では、出席停止の対象を「感染症にかかった者」と定めており、インフルエンザと診断された本人のみが対象です[1]。
つまり診断されていない兄弟は法律上、通常どおり登校・登園できます。
ただし、学校や園によっては集団感染の状況に応じて独自の対応を求める場合があります。登校・登園前に連絡し、念のため学校・園の方針を確認しておくと安心です。
インフルエンザにおける子どもの出席停止期間
インフルエンザと診断された子どもの出席停止期間は、学校保健安全法で明確に定められています。
出席停止期間の基準は「発症後5日間」かつ「解熱後一定期間」で、年齢により解熱後の日数が異なり、小学生以上は解熱後2日、幼稚園・保育園児は解熱後3日です[1]。
この基準を満たせば、登校・登園を再開できます。
小学生以上の子どもの出席停止期間:「発症後5日」かつ「解熱後2日」
小学生以上の子どもがインフルエンザにかかった場合、「発症後5日、かつ解熱後2日」が出席停止期間です[1]。
この基準は学校保健安全法で定められており、インフルエンザは第二種感染症として管理されています[1]。両方の条件を満たす必要があるため、たとえば発症後3日目に解熱した場合は、出席できるのは発症から6日目以降です。
発症後、解熱後、この2つの条件のうち、より長い期間のほうが適用されます。
幼稚園・保育園に通う幼児の出席停止期間:「発症後5日」かつ「解熱後3日」
幼稚園・保育園に通う幼児は、「発症後5日、かつ解熱したあと3日」が出席停止期間です[1]。
小学生以上より1日長く設定されている理由は、年齢が低い子どもほど免疫機能が未熟であり、ウイルス排出期間が長い傾向があると考えられているためです。
出席停止期間の計算方法は小学生以上と同じで、発症後5日と解熱後3日の両方を満たす必要があります。
出席停止期間の正しい数え方
出席停止期間を正しく計算するには、「発症した日」を発症0日目、解熱した日を解熱0日目という数え方を理解する必要があります。
以下の表を参考に、登校・登園日の目安をチェックしてみてください。
| 日付 | 発症からの経過 | 熱の状態 | 登校可否 |
| 11/1 | 0日目(発症日) | 発熱 | ✕ |
| 11/2 | 1日目 | 発熱継続 | ✕ |
| 11/3 | 2日目 | 解熱(0日目) | ✕ |
| 11/4 | 3日目 | 解熱1日目 | ✕ |
| 11/5 | 4日目 | 解熱2日目 | ✕ |
| 11/6 | 5日目 | 解熱3日目 | ✕(条件達成) |
| 11/7 | 6日目 | 解熱4日目 | 登校可 |
上の表の場合は、幼児、小学生以上のどちらの場合でも11/7から登校可能です。
数え方を誤ると、感染力が残っている状態で登校・登園してしまうリスクがあるため、自信がない場合は学校や園に確認しましょう。
登園・登校の再開に「治癒証明書」や「登園許可証」は必要?
出席停止期間が終了したあと、登園・登校を再開する際の治癒証明書や登園許可証について、厚生労働省は「インフルエンザ罹患後の治癒証明書は必ずしも必要ではない」との見解を示しています[2]。
ただし、学校や園によってはこれらの証明書・許可証の提出を求める場合があります。
これらの書類のために再受診が必要であるかどうかは、事前に学校や園へ確認しましょう。
方針を確認することで、不要な受診を避けられます。
元気な兄弟がインフルエンザを周囲へうつす可能性は?潜伏期間と感染力について
インフルエンザの主な感染経路は飛沫感染と接触感染で、日本小児科学会によると感染力は発症1日前から発症後3日頃がピークです[3]。
潜伏期間は通常1〜4日間で、もし発症した方と接触があったのであれば、この期間中は体調変化に注意が必要です[3]。
ウイルスの特性を正しく理解し、適切な対応につなげましょう。
主な感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」の2つ
インフルエンザの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です[3]。
| 感染経路 | 感染の仕組み | 具体的な場面例 |
| 飛沫感染 | 感染者のせきやくしゃみで飛散したウイルスを含む飛沫を、他者が口や鼻から吸い込む | 近距離(1〜2メートル以内)での会話、同じ部屋で生活する |
| 接触感染 | ウイルスが付着した手で口・鼻・目などの粘膜に触れる | ドアノブや手すりなど共用部分を触った手で顔を触る |
飛沫(口から飛び出す細かいしぶき)は約1〜2メートルの範囲に飛散するため、近距離での会話や同じ空間での生活で感染リスクが高まります[4]。
接触感染は、感染者がせきやくしゃみを手で押さえたあとにドアノブや手すりを触ることで、そこにウイルスが付着することから始まります。
別の人がその部分に触れて無意識に目や鼻、口を触ると、ウイルスが体内に入り感染が成立するのです[4]。
家庭内では、これら2つの感染経路が重なり合いやすく、感染の広がる確率が高くなります。
インフルエンザの潜伏期間と感染力の強い時期
インフルエンザの潜伏期間は1〜4日とされており、インフルエンザの感染力が強い時期は発症1日前から発症後3日頃までです[3]。
この期間はウイルスの排出量がもっとも多く、他者へ感染させるリスクが高くなります[3]。
注意すべきは、発症前日からすでに感染力を持つという点です。つまり、本人に自覚症状がなくても、ウイルスを排出している可能性があります。
発症後3日を過ぎるとウイルス排出量は減少しますが、完全に消失するわけではありません[3]。そのため、学校保健安全法で発症後5日間かつ解熱後一定期間の出席停止が定められているのです。
まだの変化に気づきにくい発症の前日から、発症後数日までと幅広い期間にわたって感染力を持つため、元気にしている兄弟についても接触があったのであれば食欲や体温の変化など、毎日の健康観察を続けることが大切です。
クリニックフォアでは「家族がインフルエンザになってしまった」「どうしてもかかれない理由がある」といった方へのインフルエンザの予防内服薬の処方もおこなっていますので、ご相談ください。
インフルエンザの感染を家庭内で広げないための予防策
家庭内でインフルエンザの感染を広げないためには、政府が推奨する具体的な予防策を実践することが重要です[4]。
- 換気と空間分離
- マスクの正しい着用
- 手洗いの徹底
- 日用品の共有を避けること
- 適切な湿度管理と休養
特別な準備が不要で、すぐに実践できる対策です。
できる限りの対策を講じ、家庭内感染を防ぎましょう。
可能な範囲での空間分離とこまめな換気
家庭内での感染拡大を防ぐ基本は、可能な範囲で感染者と他の家族の空間をわけることと、こまめな換気です[4]。
感染した子どもはなるべく別の部屋で休ませ、看病する大人も1〜2人に限定すると、ほかの家族がウイルスに触れる機会を減らせます。
住宅事情や子どもの年齢によって完全な部屋分けが難しい場合でも、できるだけ距離を取り、同じ空間にいる時間を短くするだけで飛沫感染のリスクを下げられます。
一般家庭には、24時間換気システムや台所・洗面所の換気扇など、常時空気を入れ替える設備が備わっていることが多く、寒い季節でも室温を大きく下げずに換気が可能です[2]。
窓を開けて空気を入れ替えることでも、飛沫を減らすことができます。
自宅に備わっている換気設備を活用しながら、ときどき窓を開けて空気を入れ替えると、より効果的に感染対策ができるでしょう。
正しいマスクの着用と手洗いの徹底
家庭内感染を防ぐうえで、マスクの正しい着用とこまめな手洗いは欠かせない対策です。
マスクは看病する側だけでなく、感染した本人も着用します。
看病する人のマスクは飛沫を吸い込むリスクを減らす役割があり、感染者のマスク着用はせきやくしゃみによるウイルスの飛散を防ぎ、周囲への拡散を大幅に抑えられます。
手洗いは、政府が推奨するように石けんと流水で丁寧におこないましょう[4]。
以下の場面では入念に洗うようにしてください。
- 看病をしたあと
- 食事の前後
- トイレのあと
インフルエンザにはアルコール消毒液も有効ですが、飛沫などが付着している可能性が高い場面では石けんと流水での手洗いが優先されます。
家族全員がこれらの対策を徹底することで、飛沫感染と接触感染の両方のリスクを減らせるでしょう。
タオルや食器などは個人専用で共有部分はこまめに消毒
接触感染を防ぐため、感染者とほかの家族で日用品を共有しないようにしましょう。
タオルはとくに注意が必要です。感染者が手や顔を拭いたタオルにはウイルスが付着しており、ほかの家族が使うと手指を介して感染する可能性があるためです。
洗面所やトイレのタオルは個人専用にするか、ペーパータオルを活用してください。
食器も同様に個人専用とすることが推奨されます。食器は使用後にしっかり洗浄すれば問題ありませんが、食事の際には共有しないようにするなど注意が必要です。
ドアノブや手すり、リモコンなど、家族が頻繁に触れる箇所は、アルコールや塩素系漂白剤で定期的に消毒するとウイルスの増殖を防げます。
適切な湿度(50~60%)の維持
室内の湿度を適切に保つことは、インフルエンザウイルスの活動を抑えられると期待できます。
インフルエンザウイルスは乾燥した環境で活発に増える性質があるため、室内の湿度を50〜60%に保つことが、日本医師会より推奨されています[5]。
加湿器を使うほか、濡れタオルを室内に干して湿度を調整する方法もおすすめです。
インフルエンザに兄弟がかかったときによくある質問
インフルエンザに兄弟がかかったとき、学校や習い事、親の出勤など、さまざまな疑問が生じるものです。
ここでは保護者からよく寄せられる質問にお答えします。
インフルエンザの予防薬を兄弟に飲ませたほうがいいですか?
ご家族に基礎疾患のある方がいる場合や、受験などどうしても体調を崩せない事情がある場合には、予防内服が検討されることがあります。
クリニックフォアのオンライン診療でも、現在の症状の有無やご家族の状況、接触の時期などを踏まえて、予防薬が適切かどうか相談できます。
自己判断でお薬を用意するのではなく、医師に相談するようにしましょう。
※触診・検査が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。
※インフルエンザ予防内服は自費での処方となります。
元気な兄弟の習い事は行かせても良いですか?
症状のない兄弟の習い事への参加は、登校と同じ考え方で判断して良いでしょう。
学校保健安全法の出席停止規定は、幼稚園や小学校、中学校などを対象としており、習い事の施設には法的な制限がありません。
ただし、習い事の施設が独自の方針を持っている場合があります。
スイミングスクールや体操教室など、子どもが密接に接触する環境では、施設側が慎重な対応を求めるケースも珍しくありません。
事前に電話で「兄弟がインフルエンザと診断されたが、本人は元気で症状がない」と伝え、参加の可否を確認しましょう。
親がインフルエンザになった場合、子どもの登校はどうなりますか?
親がインフルエンザにかかった場合でも、子ども本人に症状がなければ出席停止の対象にはなりません。
学校保健安全法では、出席停止の対象を「感染症にかかった者」と定めており、家族の感染状況は出席停止の判断基準に含まれていません[1]。親がインフルエンザと診断されても、子どもがインフルエンザと診断されていない限り、法律上は原則、通常どおり登校できます。
子どもがインフルエンザになったら親の出勤はどうすれば良いですか?
子どもがインフルエンザに罹患した場合、親に対する法律上の出勤制限はないため、保護者が元気で症状がなければ、通常どおり出勤できます。
ただし、職場によっては独自の方針を持っている場合があります。
医療機関や高齢者施設など、感染リスクに敏感な職場では、家族の感染状況を報告し、一定期間の出勤自粛や健康観察を求められるかもしれません。
事前に職場の規定を確認しましょう。
症状のない兄弟は登校は可能です!家庭内感染対策を徹底しよう
インフルエンザに兄弟のひとりがかかっても、症状のない兄弟は原則、登校を控える必要はありません。
出席停止の対象になるのは、インフルエンザと診断された本人のみです。
家庭では換気や手洗い、マスク着用など、基本的な感染対策を続けることで、家族内での広がりを抑えられます。
今は症状のない兄弟も潜伏期間中に症状が出る可能性があるため、数日間は食欲や体温などの体調の変化をこまめに観察してください。
「本当に行かせていいのかな」と迷う場面では、学校や園に確認しましょう。
それでもインフルエンザに感染するわけにはいかない、という方はクリニックフォアに予防内服薬の相談をしてみてくださいね。
※検査等が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。
