インフルエンザ後の止まらない咳(せき)の原因は?うつる可能性や対処法やについても解説

インフルエンザが治ったはずなのに、せきだけが長く続いてつらい、という悩みはありませんか?せきが止まらないと「まだうつるのでは?」と心配になったり、風邪や新型コロナとの違いがわかりにくく不安になったりすることもあるでしょう。

この記事では、インフルエンザ後にせきが長引く原因や、うつる可能性、考えられる合併症、受診の目安についてわかりやすく解説します。
さらに、家庭でできるせきのケアや市販薬の注意点、よくある質問にも触れながら、安心して回復に向かえるような情報をお届けします。

インフルエンザで咳(せき)が長引く主な原因

風邪やインフルエンザの後にせきが長く続く状態を「感染後咳嗽(かんせんごがいそう)」と言います。詳しい仕組みはまだ明らかになっていませんが、のどや気道の感受性が高まり、せきを起こしやすい状態になっていることが知られています。

せきは、大きく息を吸う→声門を閉じる→一気に息を吐き出す、という流れで起こりますが、このとき強い圧力が気道にかかり、炎症を起こしてせきが長引く原因になると考えられています。

さらに、ウイルス感染によって気道の働きが弱まり、せきを誘発する物質(ヒスタミンやサブスタンスPなど)が分解されにくくなるため、せきが続きやすくなるのです。そのため、乾燥した空気やホコリ、冷たい風、会話など、普段なら問題にならない刺激でもせきが出やすくなることがあります。

せきの持続期間は以下のように分類されます[1]。

  • 急性咳嗽:3週間未満
  • 感染後咳嗽:遷延性咳嗽は3〜8週間、慢性咳嗽は8週間以上

多くの場合は発症から2〜3週間で自然に改善しますが、長引くケースでは3〜8週間続くこともあります。もし8週間以上せきが続く場合は、別の病気が隠れている可能性もあるため、医療機関で詳しい検査を受けることが推奨されます。

長引くせきが心配という方は、当クリニックのオンライン診療をご活用ください。

スマートフォンやパソコンから予約・診察ができますので、忙しい方でもすき間時間を活用して受診できます。感染症の流行期でも人混みに出ることなく診察を受けられるため、安心して医師に相談できるのも大きなメリットです。

<クリニックフォア オンライン保険診療の料金目安(3割負担の場合)>

項目初診再診
診察料840円〜1,370円280円〜1,510円
システム利用料1,000円(税込)1,000円(税込)
合計1,840円〜2,370円(税込)1,280円〜2,510円(税込)

※あくまで診療費の目安であり、実際には診察内容によって異なります。診療報酬点数表に戻づいて計算され、患者様の自己負担割合(原則3割)に応じて請求されます。上記の診療費目安は2025年6月時点。
※医療証はお住まいの都道府県のみでご利用が可能です。東京都以外の在住の方は、後日ご自身で自治体での還付手続きをしていただく必要がございます。
※お薬代は、受け取り指定いただいた薬局にてお支払いいただきます。

また、クリニックフォアのオンライン診療では、インフルエンザの予防内服薬のお取り扱いもあります。

  • オセルタミビル(タミフル後発品)1日1回 10日分:8,250円
  • イナビル(先発品)2容器で1回分:10,450円
  • ゾフルーザ(先発品)2錠で1回分 ※ 80kg 未満の方向け:11,550円
  • ゾフルーザ(先発品)4錠で1回分 ※ 80kg 以上の方向け:19,250円

※自費での処方となります
※医師の判断によりお薬が処方できない場合もございます※インフルエンザの診断および抗インフルエンザ薬の処方は、オンライン診療においても最終的には医師の判断によっておこなわれます。
※症状や状況に応じて、対面での検査や診察をご案内する場合があります。
※診察料1,650円 (税込)、配送料550円 (税込)がかかります。

インフルエンザが治った後の咳(せき)からうつることはある?

インフルエンザにかかると、発症前日から発症後3〜7日間程度はウイルスが排出されると考えられています[2]。

この期間は熱が下がった後でもウイルスが排出される可能性があるため、基準期間内は自宅療養がすすめられています。

インフルエンザの発症後7日間以降もせきが続くときは、感染後咳嗽や喘息に移行している可能性が考えられます。病原体はすでに体内で影響を及ぼさない程度まで減っているため、人にうつる可能性は低いと考えられますが、ご自身だけで判断せずに、医師の診察を受けるようにしましょう。

せきが残っている間は、咳エチケットが重要です[3]。せきやくしゃみをするときは、マスクやティッシュ、ハンカチ、または袖で口と鼻を覆うようにします。とくに電車や職場、学校など人が多く集まる場所では、この習慣を心がけましょう。

インフルエンザと風邪・新型コロナとの具体的な違い

インフルエンザのせきは、高熱などの全身症状の後にやや遅れてあらわれることが多く、乾いた激しいせきが特徴です。一方、風邪はせき・鼻水・喉の痛みが同時に始まることが多く、新型コロナは味覚・嗅覚障害を伴う傾向があります。ただし、確定には検査や医師の判断が必要です。

疾患おもな症状発症の仕方潜伏期間
インフルエンザ[4]・高熱(通常38℃以上)・筋肉痛・関節痛・頭痛・全身のだるさ・せき、鼻水突然1~3日間
新型コロナ・のどの痛み・せき・鼻水・発熱・頭痛・だるさ徐々に1~14日
風邪・鼻汁・せき・のどの痛み・微熱徐々に1~3日間

それぞれの病気には特徴的な違いがありますが、症状だけで見分けるのは難しいため、体調に不安を感じたら早めに医療機関で相談することが安心につながります。正しい知識と適切な対応で、重症化や感染拡大を防ぎましょう。

咳(せき)が続く場合に考えられる合併症と受診のサイン

長引くせきに加えて、「再び熱が出る」「色のついた痰が出る」「胸の痛みや息苦しさがある」「症状が悪化し続ける」場合は、肺炎や気管支炎などの合併症の可能性があるため、速やかに医療機関を受診しましょう。

インフルエンザにかかった後は、細菌による二次感染を起こしやすくなります。高熱が長く続くことで体力が消耗し、免疫の働きが一時的に低下することがあります。さらに、インフルエンザウイルスが気道の上皮細胞を攻撃すると細胞が破壊され、細菌が侵入しやすくなるためです。とくに高齢者や持病のある方は肺炎などを合併し重症化するリスクがあるため、注意が必要です。

以下のサインがみられた場合は、早めに受診しましょう。

  • サイン1:発熱の再発 

いったん下がった体温が再び上昇する状態を指します。このような二峰性の発熱は、細菌性肺炎などの合併症を示唆する重要なサインです。

  • サイン2:痰の色の変化

透明や白だった痰が、黄色や緑色に変わった場合は、細菌感染の可能性があります。

  • サイン3:呼吸器症状の悪化

安静にしていても息が切れる、胸が痛む、横になると息がしづらいといった症状がある場合は、肺に炎症が広がっている可能性があります。

  • サイン4:全身症状の悪化

食事や水分がとれないほどの倦怠感が続く、意識がもうろうとするなどの場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

インフルエンザ感染後から3週間経っても発熱やせき症状が続く場合は受診することが望ましいです。市販のせき止め薬だけで対応を続けると、かえって病状が悪化することもあるため、症状が長引く際には早めに医師に相談しましょう。

つらい咳(せき)を和らげるために家庭でできる対処法

インフルエンザによるせきを和らげるには、部屋の加湿、こまめな水分補給、温かい飲み物の摂取、十分な休息、マスクの着用などが有効です。

<家庭でできるセルフケアのポイント>

対処法具体的な方法
部屋の加湿湿度50〜60%を維持、加湿器・濡れタオルを活用
水分補給温かい飲み物をこまめに摂取
はちみつ温かい飲み物に加える(1歳未満は禁止)
マスク着用喉の保湿と外部刺激からの保護
十分な休息睡眠を確保し、体力回復を優先

空気の乾燥は気道粘膜の防御機能を低下させ、せきを悪化させる一因となります。室内の湿度は50〜60%に保つことが推奨されています[5]。加湿器がない場合は、濡れたタオルを干す、水を入れたコップを部屋に置くといった方法でも加湿効果が期待できるでしょう。

また、水分をこまめに摂取することで、喉や気道の粘膜が潤い、せきが和らぎます。冷たい飲み物は喉に刺激を与えるため、温かい飲み物を選びましょう。はちみつは、上気道感染症を和らげる効果があるという研究報告もあるため、温かい飲み物に入れて飲むのもおすすめです[6]。ただし、1歳未満の乳児にはボツリヌス菌感染のリスクがあるため、はちみつを与えないでください。

マスクの着用は、吐いた息に含まれる水分がマスク内に留まり喉の粘膜を潤し、冷たい空気やホコリなど外部刺激から喉を保護する役割も果たします。

十分な休息と栄養の摂取は、体力回復と免疫機能の維持に重要です。無理をして活動すると免疫力が低下し、せきが長引く原因となります。

体をいたわり、環境を整えることが、症状を和らげる大切なポイントです。これらの工夫を日常に取り入れ、せきの悪化を防ぎながら回復を目指しましょう。

インフルエンザの咳(せき)を和らげる市販薬と注意点

市販薬を選ぶ際は、せきの種類に合わせて成分を確認することが重要です。痰がからまない「乾いたせき」には咳中枢に働く鎮咳(ちんがい)成分、痰がからむ「湿ったせき」には痰を出しやすくする去痰(きょたん)成分が含まれているお薬を選びましょう。

鎮咳成分であるデキストロメトルファンは、脳の咳中枢に作用して咳反射を抑える非麻薬性の成分です[7]。コデイン系と異なり依存性のリスクが少ないことが特徴です。去痰成分であるカルボシステインやアンブロキソールは、痰の粘り気を下げて排出しやすくする働きがあります[8][9]。

湿ったせきに対して強いせき止めを使用すると、痰の排出が困難になり症状が悪化する可能性があります。痰がからむせきの場合は、まず去痰成分で痰を出しやすくすることを優先しましょう。

解熱剤を併用する場合は、アセトアミノフェンを選ぶことが推奨されています[10]。ロキソプロフェンやイブプロフェンなどのNSAIDs、アスピリンは、インフルエンザ脳症やライ症候群のリスクを高める可能性があるため、インフルエンザが疑われる場合は注意しましょう。

<せきの種類別・市販薬の選び方>

せきの種類特徴成分
乾いたせき(空咳/からせき)痰がからまない、コンコンとしたせきデキストロメトルファン、ジヒドロコデインリン酸塩
湿ったせき痰がからむ、ゴホゴホとしたせきカルボシステイン、アンブロキソール、ブロムヘキシン

市販薬を選ぶ際は、薬剤師に相談すると安心です。他に服用しているお薬がある場合、成分の重複や飲み合わせの問題があるため、自己判断での購入は避けましょう。

インフルエンザの咳(せき)に関するよくある質問

インフルエンザに関して、検査のタイミングや喘息との関係などに関する疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。

ここでは、よく寄せられる質問を取り上げ、わかりやすく解説していきます。

咳(せき)がある場合、インフルエンザの検査はいつ受けるべきですか?

インフルエンザ検査を受ける最適なタイミングは、発症(発熱などの症状が出た時点)から12~48時間以内です。

発症早期では感度が低く、実際に感染していても検査結果が陰性と出てしまう「偽陰性」となる可能性があります。発症後24時間位が最も検査の感度が高いとされており、このタイミングで検査を受けることで、偽陰性のリスクを抑えることができます[11]。

また、インフルエンザの治療薬は、発症から48時間以内に服用を始めることが推奨されています。治療を開始するまでに、48時間が過ぎてしまわないよう注意しましょう。

もしも症状がつらい場合には、発症から12時間経っていなくても、病院を受診して問題ありません。体調に不安を感じたら、時間にこだわりすぎず医療機関へ相談してみましょう。

外出が難しいときや、体調が優れず通院が負担に感じられる場合には、オンライン診療という選択肢があります。

当クリニックでは、オンラインによる診療もおこなっております。

ご自宅にいながら医師の診察を受けられるため、外出の手間や体への負担を減らせるのが大きなメリットです。医師の判断によっては、初診からでもお薬を処方でき、必要なお薬をご自宅までお届けします。

当クリニックのホームページから予約できるため、忙しい方や体調が優れない方でも安心して受診でき、時間と体力を有効に使うことができます。

※インフルエンザの診断および抗インフルエンザ薬の処方は、オンライン診療においても最終的には医師の判断によっておこなわれます。
※症状や状況に応じて、対面での検査や診察をご案内する場合があります。
※診察料1,650円 (税込)がかかります。
※お薬をお届けする場合は、配送料550円 (税込)がかかります。

インフルエンザの咳(せき)がきっかけで喘息になることはありますか?

インフルエンザなどのウイルス感染がきっかけとなり、咳喘息や気管支喘息を発症することがあります。

とくに、インフルエンザウイルスを含む呼吸器感染症は、喘息をはじめとする慢性呼吸器疾患の症状を悪化させる要因のひとつであり、喘息発作の24〜85%が気道感染と関連しているとの報告もあります[12]。ウイルス感染によって炎症性物質(メディエーター)が放出され、アレルギー反応が強まり、気道の炎症や刺激に対する反応性が増すと考えられています。

このように気道が過敏な状態が続くと、冷たい風を吸い込んだときや運動後など、ちょっとした刺激でもせきが誘発されやすくなります。

インフルエンザが治った後もせきが3週間以上続く場合は、市販薬での様子見は避け、呼吸器内科の受診を検討することが望ましいでしょう。

まとめ

インフルエンザ後のせきは、回復過程でよくみられる症状ですが、長引く場合や強い症状がある場合には合併症の可能性も考えられます。自己判断で放置せず、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。

家庭では手洗いや加湿、十分な休養といった基本的なケアを心がけ、お薬の使用については医師や薬剤師に相談することが大切です。

せきが続くと不安になりますが、正しい知識と適切な対応で安心して回復を目指しましょう。

参考文献

  1. 藤森勝也, 菊地利明. 感染後咳嗽(かぜ症候群後咳嗽). 日本内科学会雑誌. 109(10):2109–2115.
  2. 公益社団法人日本感染症学会. 施設内感染対策ガイド — 結核・院内感染対策 — Q&A(PDF)
  3. 厚生労働省. 感染症法の改正に関する通知(2007年12月)
  4. 日本感染症情報センター. インフルエンザに関する情報.
  5. 厚生労働省. 結核・感染症 Q&A.
  6. Hara K, Saito N, Sakurai A, et al. Postinfectious cough in adults: Its incidence, risk factors, and clinical characteristics. Journal of General and Family Medicine. 2020;21(5):169–175. doi:10.1002/jgf2.348. PMID: 32817011.
  7. KEGG MEDICUS. デキストロメトルファン臭化水素酸塩 添付文書.
  8. KEGG MEDICUS. カルボシステイン 添付文書.
  9. KEGG MEDICUS. アンブロキソール塩酸塩 添付文書.
  10. 日本小児科学会. インフルエンザ脳炎・脳症における解熱剤の影響について.
  11. 公益社団法人日本感染症学会. 院内感染対策ガイドライン.
  12. 日本救急医学会. 重要情報 — 医療安全に関する資料.