インフルエンザでも下痢になる?胃腸炎との見分け方や水分補給について解説

「インフルエンザにかかったら下痢の症状も出てきた…これって普通のこと?」と不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
インフルエンザに感染すると、発熱などの全身症状に加えて、下痢や嘔吐といった消化器症状がみられることもあります。
B型インフルエンザではA型と比較して消化器症状があらわれやすい傾向があり、小児では成人と比較して下痢や嘔吐を伴う割合が高いことが報告されています[1][2]。
下痢が続くと体内の水分や電解質が失われ、脱水症状を引き起こすリスクが高まるため、水分補給と食事管理が重要です。
また、症状の程度によっては医療機関への受診が必要となる場合もあるため、受診の目安を知っておきましょう。
この記事では、インフルエンザで下痢が起こる原因や、症状がつらい場合の食事・水分補給の方法、医療機関を受診すべき症状まで詳しく解説します。

インフルエンザでも下痢になるのか

インフルエンザに感染すると、38℃以上の高熱や頭痛、関節痛、全身倦怠感といった全身症状が急激にあらわれるのが特徴です[3]

これらに加えて、下痢や嘔吐、腹痛などの消化器症状を伴うこともあります。

消化器症状はすべての人に起こるわけではありませんが、小児では成人よりも下痢や嘔吐がみられやすいとされています。

発熱や食欲低下により水分摂取量が減ることも多く、下痢がある場合は脱水に注意が必要です[3][4]

B型インフルエンザは消化器症状を伴いやすい

ヒトに感染するインフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3つがありますが、季節性インフルエンザとして流行するのは主にA型とB型です[4]

このうちB型インフルエンザでは、下痢や嘔気・嘔吐などの消化器症状が見られることがあると報告されています[5]

また、B型インフルエンザは例年1月から3月ごろに流行のピークを迎えることが多く、A型の流行が落ち着いた後に増加する傾向があります。

そのため、流行シーズン後半にインフルエンザと診断され、下痢や嘔吐などの消化器症状が目立つ場合には、B型インフルエンザである可能性も考えられます。

抗インフルエンザ薬の副作用で下痢がみられることもある

インフルエンザの治療に用いられる抗インフルエンザ薬の中には、副作用として消化器症状を引き起こすものがあります。

オセルタミビル(タミフル)などの抗インフルエンザ薬では、下痢や嘔気といった消化器症状が副作用として報告されています[6]

ただし、インフルエンザそのものによる消化器症状と、お薬の副作用による症状を明確に区別することは難しいでしょう。

また、これらの副作用は一般的に軽度であり、自然と改善することが多いとされています。

抗インフルエンザ薬を服用してから下痢が始まった、あるいは悪化したと感じる場合には、医師に相談するようにしてください。

なお、抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に服用を開始することで効果が期待できるため、自己判断で服用を中止せず、医師の指示に従うことが大切です[3]

インフルエンザによる下痢と感染性胃腸炎の違い

下痢や嘔吐の症状があらわれたとき、インフルエンザによるものなのか、ノロウイルスやロタウイルスなどによる感染性胃腸炎なのか、判断に迷うことがあるかもしれません。

両者の違いを知っておくことは、適切な対処を行ううえで役立ちます。

症状のあらわれ方と経過の違い

インフルエンザと感染性胃腸炎では、症状のあらわれ方や経過に違いがあります。

インフルエンザの場合、まず38℃以上の高熱が突然あらわれ、それに伴って頭痛や関節痛、筋肉痛といった全身症状や下痢や嘔吐などの消化器症状が出現するのが典型的なパターンです[3]

一方、ノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎では、下痢や嘔吐といった消化器症状が先行してあらわれることが特徴です。また、多くの場合、発熱を伴う場合でも、インフルエンザほどの高熱にはなりません。

感染性胃腸炎の症状は、原因によって差はありますが比較的短期間でピークを迎え、多くの場合数日以内にで改善に向かいます[7][8]

一方、インフルエンザでは、通常1週間以内に改善しますが、せきや倦怠感が2週間以上持続することもあるといわれています[4]

正確な診断には医療機関での検査が必要

症状のパターンからある程度の推測は可能ですが、インフルエンザか感染性胃腸炎かを判断するためには、医療機関での検査が必要です。

インフルエンザの診断には、鼻腔拭い液や咽頭拭い液を用いた迅速診断キットが広く使用されており、15分程度で結果が判明します[4]

ただし、発症直後は体内のウイルス量が少なく、検査で陽性にならないこともあるため、発熱から12時間以上経過してから検査を受けることが望ましいでしょう[9]

自己判断で「ただの胃腸炎だろう」と考えて放置してしまうと、インフルエンザであった場合に適切な治療のタイミングを逃してしまうおそれがあります。

高熱を伴う下痢や嘔吐の症状がある場合、あるいは周囲でインフルエンザが流行している時期には、早めに医療機関を受診して正確な診断を受けましょう。

正しい診断に基づいて適切な治療を受けることが、早期回復と重症化予防につながります。

下痢がつらいときの水分補給の方法

インフルエンザに伴う下痢では、体内から大量の水分と電解質が失われるため、適切な水分補給が重要です。

高熱による発汗も加わると脱水のリスクはさらに高まるため、意識的に水分を摂取する必要があります。

経口補水液の活用と飲み方

下痢の症状があるときの水分補給には、経口補水液やスポーツドリンクが適しています。

経口補水液は水分だけでなく、下痢によって失われやすいナトリウムやカリウムなどの電解質も含んでいるため、効率的に体内の水分バランスを整えることができます[10]

経口補水液を飲む際のポイントは、一度に大量に飲むのではなく、少量ずつ、こまめに摂取することです。

経口補水液が手元にない場合は、水1リットルに対して食塩3g(小さじ2分の1程度)と砂糖40gを溶かすことで、簡易的な経口補水液を自宅で作ることも可能です。レモン果汁など柑橘類の果汁を少量加えると、飲みやすくなります[11]

下痢時に避けるべき飲み物

水分補給が大切とはいえ、下痢のときに適さない飲み物もあります。

コーヒー、紅茶、緑茶、コーラなどのカフェインを含む飲料は利尿作用があり、体内の水分が失われやすくなるため控えましょう。また、腸の動きを活発にして下痢を悪化させる可能性もあります[12]

加えて、アルコールは強い利尿作用に加え、胃腸の粘膜を刺激するため、体調が回復するまで避ける必要があります。

飲み物は、経口補水液や白湯、常温の水・麦茶など、胃腸への刺激が少ないものを選ぶことが大切です。

下痢のときに適した食事と避けたい食品

下痢の症状があるときは、胃腸に負担をかけない食事を心がけることが回復への近道です。

無理に食べる必要はありませんが、体力を維持するためにも、食べやすいものから少しずつ摂取していきましょう。

消化のよいおすすめ食品と食べ方

下痢がひどいときは、まず胃腸を休めましょう。水様便が繰り返し見られるような状態では固形物は控え、経口補水液や湯冷ましなどで水分補給を行います。

無理に食べる必要はありませんが、下痢の間隔が長くなり少し回復してきたら、消化のよいものから食事を再開してください。

<消化によい食事例>[13]

  • おかゆ
  • 煮込みうどん
  • 味噌汁・野菜スープ(具は柔らかく煮る)

また、以下のような体の回復を助ける栄養素を、体調や症状に合わせて取り入れるとよいとされています。

<回復を支える主な栄養素>[13]

栄養素特徴食品例
たんぱく質体の修復や免疫機能の維持に関与食欲がある場合は、消化のよい調理法で取り入れる肉類魚類卵 など
ビタミンAのどや鼻の粘膜を健康に保つ働きがあるほうれん草かぼちゃにら など
ビタミンC免疫機能をサポートする働きがあるいちごみかんレモン など

なお、下痢や腹痛が続いている間は、柑橘類や乳製品などが症状を悪化させることがあります。これらの食品は、症状が十分に落ち着いてから少量ずつ再開してください。

食事よりも水分補給が優先される状態では、無理に栄養を摂取しようとせず、経口補水液などで体調の回復を待つことが大切です。

下痢時に避けたい食品と注意点

下痢の症状があるときは、胃腸に負担をかける食品を一時的に避けることが大切です。以下は、下痢時には避けたほうが望ましい食品の例です。

<下痢時に避けたい食品>[14]

分類避けたい食品例避けたほうがよい理由
脂っこい食品揚げ物脂身の多い肉バターマヨネーズ など脂肪は消化に時間がかかり、胃腸に負担をかける
刺激の強い食品香辛料を多く使った料理唐辛子スパイス類 など胃腸の粘膜を刺激し、炎症や下痢を悪化させる可能性がある
食物繊維が多い食品ごぼうれんこんたけのこきのこ類海藻類豆類さつまいも など消化しにくく、腸の動きを活発にして症状を悪化させることがある
乳製品牛乳ヨーグルトチーズ など下痢による腸粘膜の障害で乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の働きが低下し、消化不良を起こしやすい
糖分の多いもの
・炭酸飲料
お菓子ケーキ清涼飲料水炭酸飲料 など胃腸への刺激が強く、下痢を助長することがある

少量ずつ様子を見ながら、徐々に通常の食事内容に戻していきましょう。

医療機関の受診を検討すべき症状

インフルエンザに伴う下痢の多くは、適切な水分補給と休養によって自然に回復していきます。

しかし、症状の程度によっては医療機関を受診すべき場合もあるため、受診の目安を知っておくことが重要です。

脱水症状のサインと受診の目安

下痢が続くと体内の水分と電解質が失われ、脱水症状を引き起こすリスクが高まります。

また、乳児は成人と比べて体内の水分量が多く、1日に必要とする体重当たりの水分量も多いため、発熱や下痢によって脱水症になりやすいとされています[15]

脱水症状は放置すると重症化する可能性があるため、早めに気づいて対処することが大切です。脱水症状のサインとしては、次のような変化が挙げられます。

<初期のサイン>

  • 口の渇き
  • 唇・舌の乾燥
  • 尿量の減少
  • 尿の色が濃くなる など

<さらに脱水が進行した場合のサイン>

  • めまい、ふらつき
  • 頭痛
  • 倦怠感
  • 皮膚の弾力低下(皮膚をつまんでも元に戻りにくくなる) など

重度の脱水では、意識がもうろうとする、ぐったりして反応が鈍くなる、血圧が低下するといった危険な状態に陥ることもあります。

嘔吐が激しくて水分を口から摂取できない場合には、点滴による水分補給が必要となることもあるため、医療機関を受診しましょう。

すぐに受診・救急相談が必要な症状

次のような症状がみられる場合は、重症化や別の疾患の可能性があるため、早めの受診や相談が必要です。

症状
・状況
受診
・相談が必要な理由
血便(便に血が混じる)腸管の粘膜に炎症や出血が起きている可能性がある感染症や別疾患の疑いがある
白っぽい便
・クリーム色の便
通常の下痢とは異なり、胆道系や肝臓など別の異常が隠れている可能性がある
激しい腹痛が続く腸炎以外の疾患や重症化の可能性があり、早期の受診が必要
水様性の下痢が1日数回以上続く脱水や症状悪化のリスクがあるため、早めの受診が推奨される
下痢が5〜7日続いている脱水や症状悪化のリスクがあるため、早めの受診が推奨される
38℃以上の高熱が3日以上続く細菌感染や合併症の可能性があり、医療機関の受診が望ましい
呼吸困難
・息切れ
・胸の痛み
全身状態の悪化が疑われ、早急な対応が必要

小児の場合はさらに注意が必要で、次の症状がある場合には、直ちに医療機関を受診することが望まれます[9][16]

  • けいれん
  • 呼びかけに答えないなど反応が鈍い
  • 落ち着きがない、あばれる
  • 意味不明の言動がみられる
  • 呼吸が速い、息苦しそうにしている
  • 顔色が悪い(土気色、青白いなど)
  • 唇が紫色
  • 涙が出ない(乳児の場合)

上記のような症状がある場合には、速やかに医療機関を受診するか、救急相談窓口(#7119)や小児の場合は小児救急電話相談(#8000)に連絡することをおすすめします。

下痢がつらく受診を迷うときはオンライン診療の活用を

下痢が続くと外出自体がつらく、医療機関を受診すべきか迷ってしまうこともあるでしょう。そのようなときの選択肢の一つとなるのが、オンライン診療の活用です。

スマートフォンがあれば自宅にいながら医師の診察を受けられ、症状や経過を伝えたうえで、必要に応じて治療方針やお薬の処方について相談できます。

クリニックフォアでも、保険診療のオンライン診療を実施しています。

「この症状で受診したほうがよいのか」「インフルエンザなのか胃腸炎なのかわからない」など、判断に迷う場面でも、医師に相談できる手段があること自体が安心材料になるでしょう。

なお、インフルエンザの診断や抗インフルエンザ薬の処方については、最終的な判断は医師が行います。

症状や経過によっては、対面での検査や診察が必要と案内されるケースもあります。

外出が難しいからといって自己判断で我慢を続けたり、市販薬のみで経過を観察し続けたりするのではなく、体調や状況に応じて医療につながる方法を選びましょう。

※インフルエンザの診断および抗インフルエンザ薬の処方は、オンライン診療においても最終的には医師の判断により行われます。
※症状や状況に応じて、対面での検査や診察をご案内する場合があります。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合もございます。

インフルエンザによる下痢や体調悪化を避けたい場合は予防内服

インフルエンザに感染すると、高熱や全身倦怠感に加えて、下痢や嘔吐などの消化器症状があらわれることがあります。症状が強い場合は、脱水や体力低下につながり、回復までに時間もかかります。

こうしたリスクをできるだけ減らすための対策として、予防接種に加え、「予防内服」という方法があることも知っておくとよいでしょう。

予防内服とは、治療にも用いられる抗インフルエンザ薬を発症前に服用し、インフルエンザの発症リスクや重症化リスクを下げる目的で行う方法です。

感染を完全に防げるわけではありませんが、発症や症状の悪化を抑える効果が期待されています。

次のような状況では、医師の判断のもとで予防内服薬が検討されることがあります。

  • 身近な人(職場・学校など)でインフルエンザの感染者が出たとき
  • 受験や仕事など、絶対に体調を崩したくない予定があるとき
  • 基礎疾患があるなど、重症化リスクが高く感染を避けたい場合

ただし、予防内服薬は保険適用外の自由診療となり、服用しても100%発症を防げるわけではありません。インフルエンザによる下痢や全身症状が心配な場合の選択肢の一つであることを理解したうえで、必ず医師に相談して適切かどうか判断してもらうことが大切です。

予防内服薬として処方できるお薬は以下のとおりです。

  • オセルタミビル(タミフル後発品)1日1回 10日分:8,250円
  • イナビル(先発品)2容器で1回分:10,450円
  • ゾフルーザ(先発品)2錠で1回分 ※ 80kg 未満の方向け:11,550円
  • ゾフルーザ(先発品)4錠で1回分 ※ 80kg 以上の方向け:19,250円

予防内服薬を希望される場合は、医師に相談のうえ、ご自身の状況に合った対応を確認しましょう。

インフルエンザの下痢症状に関するよくある質問

インフルエンザと下痢に関して、多くの方が疑問を抱くポイントをQ&A形式でまとめました。

インフルエンザで下痢だけの症状が出ることはありますか?

インフルエンザの典型的な症状は高熱や全身倦怠感、関節痛などですが、まれに発熱が軽度で下痢や嘔吐といった消化器症状がみられることがあります。また、高齢者や乳幼児では発熱を伴わないケースもみられます[3]

下痢だけの症状でインフルエンザを疑うことは難しく、ノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎など、他の原因による可能性も考えられるでしょう。

周囲でインフルエンザが流行している時期に下痢の症状があらわれた場合や、家族にインフルエンザの患者がいる場合には、念のため医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

正確な診断を受けることで、適切な治療と感染拡大防止につなげることができます。

インフルエンザで下痢になったら何日外出を控えるべきですか?

一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出するため、この期間は外出を控える必要があります。

また、インフルエンザによる出席停止期間も「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」とされています[3]

たとえ出席停止期間を過ぎていても、下痢が続いている場合は体力も回復しきっていないことが多いため、無理をせず十分に休養を取るようにしてください。

職場や学校への復帰時期については、医師と相談して決めるとよいでしょう。

子どものインフルエンザで下痢が出たとき、特に気をつけることは?

子どもがインフルエンザにかかり下痢の症状が出た場合には、脱水予防を優先して考える必要があります。

少量ずつ頻回に水分を与え、経口補水液やイオン飲料を活用して電解質の補給も行いましょう。

母乳を飲んでいる乳児の場合は、量を制限せずそのまま母乳を与え続けて問題ありません[14]

また、小児の場合は自分の症状をうまく伝えられないことも多いため、保護者が注意深く様子を観察することが大切です。

  • 泣いているのに涙が出ない
  • ぐったりして反応が鈍い
  • 顔色が悪い
  • 唇や舌が乾いている

上記のようなサインが見られた場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてください [16]

下痢が治まらないとき、インフルエンザ以外の病気の可能性はありますか?

インフルエンザに伴う下痢は、通常であれば発熱などの全身症状の改善とともに数日で治まることが多いとされています。

しかし、1週間以上経っても下痢が続く場合や、インフルエンザの他の症状が改善したにもかかわらず下痢だけが長引く場合には、インフルエンザ以外の原因を考える必要があるかもしれません。

考えられる原因としては、ノロウイルス、ロタウイルス、細菌性胃腸炎などへの感染です。

また、抗インフルエンザ薬や解熱剤などのお薬の副作用によって下痢が続いている可能性も考えられるでしょう。

下痢が長引く場合や、便に血液や粘液が混じる場合、腹痛が強い場合、体重が減少している場合などには、医療機関を受診して詳しい検査を受けることをおすすめします。

医師に相談する際には、下痢がいつから始まったか、下痢は1日何回程度か、水っぽい・軟らかい・血液が混じるなどの便の状態、下痢以外の症状の有無、服用中のお薬などを伝えると、診断の参考になるでしょう。

まとめ

インフルエンザは高熱や関節痛といった全身症状が特徴的な感染症ですが、下痢や嘔吐などの消化器症状を伴うこともめずらしくありません。

B型インフルエンザでは消化器症状があらわれやすく、小児では成人と比較して下痢や嘔吐を伴う割合が高いことが報告されています。

下痢が続くと体内の水分と電解質が失われるため、経口補水液などを活用した適切な水分補給が重要です。水分補給の際は、一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに摂取します。

食事については、下痢がひどいときは無理に食べず、回復に応じておかゆや煮込みうどん、野菜スープなど消化のよいものから少しずつ始めていきましょう。

脂っこい食べ物や食物繊維の多い食品、乳製品などは胃腸に負担をかけるため、症状が落ち着くまで控えてください。

また、口の渇きや尿量減少、ぐったりするなどの脱水症状のサインが見られる場合や、血便、激しい腹痛、高熱が3日以上続く場合などには、速やかに医療機関を受診してください。

乳幼児や高齢者は脱水が進行しやすいため、注意深く様子を観察し、気になる症状があれば早めに医師に相談するようにしてください。

インフルエンザによる下痢は適切な対処によって多くの場合は回復します。しかし、症状が長引く場合や悪化する場合には、自己判断せず医療機関を受診して専門家の診察を受けましょう。

参考文献

  1. Influenza B infections in children: A review - PMC
  2. Differences in clinical features between influenza A H1N1, A H3N2, and B in adult patients
  3. 厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A」
  4. インフルエンザ(季節性)(seasonal influenza)|症状からアプローチするインバウンド感染症への対応
  5. Patel S, et al. "Influenza virus infection mimicking an acute abdomen in a female adolescent" Influenza Other Respir Viruses. 2014
  6. タミフルカプセル添付文書
  7. 感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎を中心に) infectious gastroenteritis | 東京都感染症情報センター
  8. 東京都こども医療ガイド | 感染性胃腸炎
  9. 政府広報オンライン「インフルエンザの感染を防ぐポイント『手洗い』『マスク着用』『咳エチケット』」
  10. 近畿大学保健管理センター「風邪や下痢の時に自宅で行える対処法」
  11. 経口補水液の使用法と作り方 | 総合東京病院【公式】中野区 練馬区 24時間救急受入
  12. Stimulation of defecation: effects of coffee use and nicotine on rectal tone and visceral sensitivity - PubMed
  13. 風邪や下痢の時に自宅で行える対処法 食事のとり方
  14. 子どもの救急ってどんなとき?~下痢をした時 - 群馬県ホームページ(医務課)
  15. 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」
  16. 東京都感染症情報センター「インフルエンザ対策のポイント」