甘草(カンゾウ)とは?漢方薬に欠かせない生薬
甘草(かんぞう)は、多くの漢方薬に配合されている重要な生薬です。
その名のとおり「甘い草」で、根には砂糖の数十倍以上ともいわれる強い甘みがあります。
漢方医学では「国老(こくろう)」とも呼ばれ、他の生薬の働きを調和させる役割を担うとされています。
古代中国の医学書『傷寒論』にも多くの処方に甘草が含まれており、古くから用いられてきた生薬です。
日本では奈良時代に伝えられ、正倉院にも当時の甘草が保管されています。
現在も葛根湯や芍薬甘草湯など、身近な漢方薬の多くに配合されており、漢方薬を服用する方にとって知っておきたい生薬の一つといえるでしょう。
甘草の基本情報|マメ科の植物で根を使用
甘草は、マメ科カンゾウ属の多年草で、主に根の部分を生薬として使用します。
中国北部や中央アジア、シベリア、ヨーロッパなどの乾燥地帯に自生しており、地中深くに長い根茎を伸ばすのが特徴です[1]。
日本薬局方では、ウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis)とスペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra)などが基原植物として定められています[1]。
生薬として使用される甘草は、グリチルリチン酸を2.0%以上含むものと規定されており、この成分が主な有効成分とされています[1]。
甘草は日本国内では栽培量が限られており、中国からの輸入に依存してきましたが、近年は国内での栽培技術の開発も進んでいます。
甘草の代表的な役割|諸薬を調和する働きが特徴
甘草には多彩な働きがあり、漢方医学では様々な役割を持つとされています。
なかでも代表的なのは「諸薬を調和する」という働きです。
漢方薬は複数の生薬を組み合わせて作られますが、それぞれの生薬は「熱」や「寒」など異なる性質を持っています。
甘草はこれらの生薬同士の個性を調和させ、処方全体のバランスを整える役割を担っています。
甘草の主な役割は以下のとおりです。
| 役割 | 働き |
| 諸薬を調和する | 他の生薬の効果を調整し、処方全体のバランスを整える |
| 気を補う | 体のエネルギー(気)を補い、疲労感の軽減に関与するとされる |
| 胃をいたわる | 胃粘膜を保護する作用や、胃腸機能を整える働きがあるとされる |
| 解熱解毒 | 炎症を抑える作用などがあるとされる |
| せき止め | 気道の炎症を和らげ、せきを鎮める働きがあるとされる |
| 痛み止め | 筋肉のけいれんや痛みを和らげる作用があるとされる |
| 緩和作用 | 他の生薬の作用を穏やかにし、副作用の発現を抑える働きがあるとされる |
このように甘草は単独でも作用を持ちますが、他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。
多くの漢方薬に甘草が配合されている背景には、この「諸薬を調和する」働きが関係していると考えられています。
甘草の効果・効能|抗炎症から鎮痛まで
甘草の主成分であるグリチルリチン酸には、抗炎症作用や鎮痛作用など多彩な薬理作用があります[2]。
西洋医学的にも研究が進んでおり、さまざまな作用が報告されています。
のどの痛みやせき、筋肉のけいれん、胃腸の不調など、幅広い症状に用いられるのが甘草の特徴です。
ここでは、甘草の代表的な作用について詳しく解説します。
抗炎症作用|のどの痛みや口内炎などに用いられる
甘草には、体内の炎症を鎮める抗炎症作用があります[3]。
グリチルリチン酸は、副腎皮質ホルモン(コルチゾン)に似た構造を持っており、炎症を引き起こす物質の産生を抑制する働きがあります。
のどの痛みや口内炎、皮膚の炎症など、さまざまな炎症性の症状に用いられることがあります。
とくに風邪によるのどの痛みには、甘草を主成分とした「甘草湯」が古くから使用されてきました。
甘草湯は、のどの粘膜を潤し、炎症を鎮めることで痛みの緩和に寄与するとされています。
また、グリチルリチン酸は抗アレルギー作用も持っており、花粉症やじんましんなどのアレルギー症状にも効果があるとされています。
接触性皮膚炎や薬物疹などの皮膚症状にも用いられることがあります。
鎮痛・鎮痙作用|筋肉のけいれんに用いられる
甘草には、筋肉のけいれんや痛みの緩和に関与する鎮痛・鎮痙作用があります[2]。
グリチルリチン酸がカリウムイオンの細胞外流出を促進し、筋肉の過緊張を緩和する働きがあると考えられています。
こむら返りや足のつり、腹痛、月経痛など、筋肉のけいれんを伴う症状に用いられることがあります。
この作用を活かした代表的な漢方薬が「芍薬甘草湯」です[4]。
芍薬甘草湯は、芍薬と甘草の2つの生薬のみで構成されており、比較的速やかな作用が期待されることが特徴です。
骨格筋だけでなく、胃腸や子宮などの平滑筋のけいれんにも用いられることがあり、症状に応じて使用されます[4]。
せき止め作用|気道の炎症に対して用いられる
甘草には、せきを鎮める鎮咳作用があるとされています[3]。
気道の炎症を和らげ、粘膜を保護することで、せきの発作の軽減に関与すると考えられています。
激しいせきやのどのむずむず感がある場合に用いられることがあります。
甘草のせき止め作用は、気道粘膜からの分泌を促進する働きによるものと考えられています。
痰の切れをよくし、せきを出しやすくすることで、症状の緩和に寄与するとされています。
甘草を含むせき止めの漢方薬には、甘草湯のほか、麦門冬湯、小青竜湯、五虎湯などがあります。
それぞれせきの性質(乾いたせき、痰を伴うせきなど)によって使い分けられています。
胃粘膜保護作用|胃腸機能をサポートする働き
甘草には、胃粘膜を保護し、胃腸機能に関与する作用があるとされています。
グリチルリチン酸が胃酸の分泌を抑え、胃粘膜のバリア機能を高める働きがあると考えられています。
胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの消化器症状に対して使用されることがあります。
漢方医学では、甘草は「脾胃(ひい)を補う」生薬とされています。
脾胃とは消化吸収機能のことで、甘草は消化器系全体の働きに関与するとされています。
また、甘草は他の生薬の刺激を和らげる緩和作用も持っているため、胃腸への負担を軽減する目的で多くの漢方薬に配合されています。
胃腸が弱い方でも比較的服用しやすいとされる背景には、甘草のこのような働きが関係していると考えられています。
甘草を含む漢方薬一覧|含有量の違いに注意
日本で使用されている医療用漢方製剤148品目のうち、109品目に甘草が含まれています[5]。
漢方薬によって甘草の含有量は異なり、1日量で1.0〜8.0gまで幅があります[6]。
甘草の副作用リスクは含有量に応じて高まるとされているため、服用する漢方薬にどのくらいの甘草が含まれているか把握しておくことが大切です。
ここでは、甘草含有量別に代表的な漢方薬を紹介します。
甘草含有量が多い漢方薬(芍薬甘草湯・甘草湯など)
甘草含有量が1日6g以上の漢方薬は、副作用のリスクがとくに高いため注意が必要です[6]。
代表的なものは芍薬甘草湯(甘草6g/日)と甘草湯(甘草8g/日)で、いずれも甘草が主役の処方となっています[3][4]。
これらの漢方薬は比較的速やかな作用が期待される一方で、長期連用には注意が必要です。
芍薬甘草湯の添付文書には「治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること」と明記されており、漫然と服用を続けることは避けるべきです[4]。
こむら返りや急性の痛みに対して、頓服(症状が出たときだけ服用)で使用されることが多いとされています。
甘草湯ものどの痛みやせきに対して短期間の使用が推奨されており、5〜6回服用しても改善しない場合は医師や薬剤師に相談する必要があります[3]。
| 漢方薬名 | 甘草含有量(1日量) | 主な適応 |
| 甘草湯 | 8.0g | のどの痛み、せきなど |
| 芍薬甘草湯 | 6.0g | こむら返り、筋肉のけいれんなど |
甘草含有量が中程度の漢方薬(葛根湯・小青竜湯など)
甘草含有量が1日2〜3gの漢方薬は、一般的に使用頻度の高い処方が多くなっています。
風邪に使用される葛根湯(甘草2g/日)や小青竜湯(甘草3g/日)、女性の不調に使用される加味逍遙散(甘草1.5〜2g/日)などが該当します[6]。
単独で服用する場合は副作用のリスクは比較的低いとされていますが、複数の漢方薬を併用する際は注意が必要です。
たとえば、加味逍遙散を継続服用している方が風邪をひいて葛根湯と小青竜湯を併用すると、1日の甘草摂取量は6.5〜7gに達します。
この量では偽アルドステロン症の発生率が高まるという報告もあり、高リスクな状態といえるでしょう[7]。
漢方薬を複数服用する際は、それぞれの甘草含有量を確認し、合計摂取量の目安(2.5g程度)を参考にしつつ、過剰摂取とならないよう注意することが大切です[5]。
| 漢方薬名 | 甘草含有量(1日量) | 主な効能 |
| 小青竜湯 | 3.0g | 鼻水、くしゃみ、アレルギー性鼻炎 など |
| 葛根湯 | 2.0g | 風邪の初期、肩こり など |
| 加味逍遙散 | 1.5〜2.0g | 更年期障害、月経不順 など |
| 補中益気湯 | 1.5g | 疲労回復、食欲不振 など |
| 柴苓湯 | 2.0g | むくみ、下痢 など |
甘草含有量が少ない漢方薬(抑肝散・六君子湯など)
甘草含有量が1日1.5g以下の漢方薬は、比較的副作用のリスクが低いとされています。
抑肝散(甘草1.5g/日)や六君子湯(甘草1g/日)などが該当し、長期服用が必要な場合にも使用されることがあります[6]。
ただし、高齢者や利尿薬を服用中の方は、1日1g程度の甘草でも副作用が起こる可能性があります[7]。
甘草含有量が少ないからといって安心せず、必要に応じて医師の指示のもとで血液検査を行うなど、副作用の早期発見に努めることが大切です。
また、甘草を含まない漢方薬も存在します。
八味地黄丸、牛車腎気丸、当帰四逆加呉茱萸生姜湯などは甘草を含まないため、甘草による副作用を避けたい場合の選択肢の一つと考えられます。
| 漢方薬名 | 甘草含有量(1日量) | 主な効能 |
| 抑肝散 | 1.5g | イライラ、不眠、認知症に伴う行動・心理症状 など |
| 人参養栄湯 | 1.0g | 疲労、貧血、病後の体力低下 など |
| 六君子湯 | 1.0g | 胃もたれ、食欲不振 など |
甘草が中心となる漢方薬|甘草湯と芍薬甘草湯
漢方薬は通常、複数の生薬を組み合わせて作られますが、甘草湯と芍薬甘草湯は甘草が主役となる珍しい処方です。
甘草湯は甘草のみ、芍薬甘草湯は芍薬と甘草の2つの生薬のみで構成されています。
いずれも比較的速やかな作用が期待され、急性の症状に用いられることが多い処方です。
ここでは、これら2つの漢方薬の作用と使い分けについて解説します。
甘草湯の効果|のどの痛み・せきに用いられる
甘草湯は、甘草のみで構成される漢方薬で、のどの痛みや激しいせきに使用されます[3]。
甘草の抗炎症作用と鎮痛作用により、のどの粘膜を潤し、炎症を鎮めることで痛みの緩和に寄与するとされています。
しわがれ声や口内炎などにも用いられ、古くから使用されてきた処方です。
甘草湯は、眠くなる成分が含まれていないため、運転する方や受験生など、日中の眠気を避けたい方でも服用しやすい漢方薬です。
市販薬としてもドラッグストアで購入でき、急なのどの痛みなどに用いられることがあります。
甘草含有量が1日8gと多いため、長期連用には注意が必要です。
5〜6回服用しても症状が改善しない場合は、服用を中止して医師や薬剤師に相談してください。
発熱を伴い、のどが赤く腫れている場合は、銀翹散などの他の漢方薬が選択されることもあります。
芍薬甘草湯の効果|こむら返り・足のつりに用いられる
芍薬甘草湯は、芍薬と甘草の2つの生薬で構成される漢方薬で、こむら返りや足のつりに使用されます[4]。
服用後比較的速やかな作用が期待されることが特徴で、こむら返りなどの症状に対して用いられることが多い処方です。
就寝中や運動中に突然足がつった際に、頓服として使用されることがあります。
芍薬甘草湯の鎮痙作用は、芍薬に含まれるペオニフロリンと甘草に含まれるグリチルリチン酸の相互作用によるものと考えられています。
これらの成分が筋肉の異常な収縮を抑制し、けいれんの緩和に関与すると考えられています。
こむら返り以外にも、胃痛、腹痛、月経痛、胆石や尿路結石の痛みなど、筋肉のけいれんを伴う症状に用いられることがあります[4]。
ただし、甘草含有量が1日6gと多いため、長期服用や他の甘草を含む漢方薬との併用には注意が必要です。
甘草湯と芍薬甘草湯の使い分け
甘草湯と芍薬甘草湯は、いずれも甘草を中心とする漢方薬ですが、適応となる症状が異なります。
甘草湯はのどの痛みやせきなど、上気道の炎症に使用されます[3]。
一方、芍薬甘草湯はこむら返りや筋肉のけいれん、腹痛など、筋肉の異常収縮に伴う症状に使用されます[4]。
使い分けのポイントは「痛みの部位と性質」です。
| 漢方薬名 | 適応症状 | 使用シーン |
| 甘草湯 | のどの痛み、せき、しわがれ声、口内炎 など | 風邪によるのどの痛み、声の使いすぎ |
| 芍薬甘草湯 | こむら返り、足のつり、腹痛、月経痛 など | 就寝中・運動中の足のつり、急な腹痛 |
いずれの漢方薬も甘草含有量が多いため、同時に服用する際は、医師や薬剤師に相談することが推奨されます。
また、長期連用は副作用のリスクを高める可能性があるため、症状が出たときに頓服で使用されることが多いとされています。
甘草の副作用|偽アルドステロン症に注意
甘草は多くの漢方薬に含まれる有用な生薬ですが、過剰摂取には注意が必要です。
甘草の最も重要な副作用は「偽アルドステロン症」で、低カリウム血症や血圧上昇、むくみなどの症状が現れることがあります[7]。
漢方薬は一般的に副作用が少ないイメージがありますが、甘草による副作用は見逃されやすく、注意が必要です。
ここでは、偽アルドステロン症の症状と発症リスク、早期発見のポイントについて解説します。
偽アルドステロン症とは?症状と発症の仕組み
偽アルドステロン症は、血中のアルドステロン(血圧を調整するホルモン)が増えていないにもかかわらず、アルドステロン過剰と同じ症状が現れる状態です[7]。
甘草に含まれるグリチルリチン酸が原因の一つとされており、低カリウム血症、血圧上昇、むくみなどの症状が現れることがあります。
発見が遅れると不整脈や横紋筋融解症など、重篤な状態に至ることもあります。
偽アルドステロン症は、甘草に含まれる成分によって体内のホルモンの働きが強くなりすぎることで起こります。
甘草に含まれるグリチルリチン酸は、体の中に入ると腸内細菌の働きによってグリチルレチン酸に変わります。
このグリチルレチン酸は、本来コルチゾールというホルモンを弱い形に変える酵素の働きを邪魔してしまいます。
その結果、コルチゾールが体の中で多く働くようになります。
コルチゾールは、アルドステロンというホルモンと似た働きを持っており、腎臓でナトリウム(塩分)を体にため込み、カリウムを尿として外に出す作用があります。
この働きが強くなりすぎると、体に水分がたまってむくみが起こったり、血圧が上がったりします。
また、カリウムが不足することで低カリウム血症が起こります。
このように、アルドステロンが増えているわけではないのに、同じような作用が現れるため、「偽アルドステロン症」と呼ばれています。
偽アルドステロン症の主な症状は以下のとおりです[7]。
- 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感
- 力が抜ける感じ、脱力感
- こむら返り、筋肉痛
- むくみ、体重増加
- 血圧上昇、頭重感
- 口の渇き、食欲不振
- 動悸、倦怠感
発症リスクが高まる条件|摂取量・併用薬・体質
偽アルドステロン症の発症リスクは、甘草の摂取量に応じて高まるとされています。
甘草(かんぞう)は、日本で使用されている医療用漢方製剤148品目のうち109品目に含まれる重要な生薬です[5]。
以下の条件に当てはまる方は、とくに注意が必要です。
発症リスクが高まる条件
- 高齢者(腎機能低下により甘草の代謝が遅れる)
- 女性(男女比1:2で女性に多いとする報告があります)
- 利尿薬(ループ系・チアジド系)を服用中の方
- インスリン製剤を服用中の方
- 低カリウム血症の既往がある方
- 複数の甘草を含む漢方薬を併用している方
- 長期間にわたって甘草を含む漢方薬を服用している方
副作用の初期症状チェックリスト
偽アルドステロン症は早期発見・早期対応が重要です。
甘草を含む漢方薬を服用中に以下の症状が現れた場合は、服用を中止し、速やかに医師や薬剤師に相談することが推奨されます。
服用中止後数週間の経過で症状が改善することが多いとされています。
要注意の初期症状チェックリスト
□ 手足がだるい、力が入りにくい
□ 手足がしびれる、つっぱる感じがする
□ こむら返りが起こりやすくなった
□ 筋肉痛がある
□ むくみが出てきた、体重が増えた
□ 血圧が上がった
□ 頭が重い感じがする
□ 口が渇く
□ 動悸がする
□ 全身がだるい、疲れやすい
甘草を含む漢方薬を服用している方は、定期的に血清カリウム値の検査を受けることが推奨されています。
投与開始時や投与量変更時は1ヶ月以内、その後も3〜6ヶ月に1回程度の検査が目安とされていますが、検査の頻度は個々の状態に応じて医師が判断します。
甘草の摂取量と注意点|1日の上限はどのくらい?
甘草を安全に使用するためには、1日の摂取量を把握しておくことが大切です。
漢方薬を複数服用する場合や、甘草を含む食品・サプリメントを摂取する場合は、合計摂取量に注意が必要です。
ここでは、甘草の1日摂取量の目安と、安全に服用するためのポイントを解説します。
甘草の1日摂取量の目安|2.5g程度が一つの目安
一般的には1日2.5gを超えると偽アルドステロン症の発症リスクが上がると報告されています[5]。
1日の甘草摂取量については2.5g程度をひとつの目安として、過量摂取とならないよう注意することが望ましいとされています。
低カリウム血症の既往がある方では、甘草の摂取により症状が悪化するおそれがあるため、特に注意が必要とされています[5]。
また、高齢者や利尿薬を服用中の方は、1日1g程度でも副作用が起こる可能性があるため、より慎重な管理が必要です。
漢方薬に含まれる甘草の1日量は多くが3g以下ですが、これは単独で服用した場合の量です[6]。
ただし、複数の漢方薬を併用する場合は、合計摂取量に注意することが重要です。
漢方薬を複数服用する際の甘草量の確認方法
漢方薬を複数服用する場合は、それぞれの漢方薬に含まれる甘草の合計量を把握し、2.5g程度を一つの目安として過量とならないよう注意することが大切です。
甘草の含有量は、添付文書や製品パッケージに記載されています。
不明な場合は、医師や薬剤師に確認することが推奨されます。
甘草量の確認手順
- 服用中の漢方薬の添付文書を確認する
- 「有効成分」または「成分・分量」の欄で甘草(カンゾウ)の記載を探す
- 1日量あたりの甘草含有量を確認する
- 複数の漢方薬を服用している場合は、甘草量を合計する
- 合計が2.5g程度を目安として過量となる場合は、医師や薬剤師に相談する
また、漢方薬だけでなく、一般用医薬品(風邪薬、解熱鎮痛薬、胃腸薬など)にも甘草やグリチルリチン酸が含まれていることがあります[7]。
複数のお薬を服用する際は、甘草やグリチルリチン酸が重複していないか、薬剤師に確認することをおすすめします。
長期服用時の注意点|定期的な検査が推奨
甘草を含む漢方薬を長期間服用する場合は、副作用の早期発見のために定期的な検査が推奨されています。
偽アルドステロン症は長期服用後に突然発症することもあるため、注意が必要です。
とくに高齢者や持病のある方は、医師の管理のもとで服用を続けることが大切です。
長期服用時の注意点
- 定期的に血清カリウム値の検査を受ける(3〜6ヶ月に1回程度が目安とされています)
- 血圧の変動に注意し、定期的に測定することが推奨されます
- むくみ、手足のだるさなどの症状が現れた場合は、早めに医師に相談することが推奨されます
- 漫然と服用を続けず、定期的に服用の必要性を見直す
- 他の甘草を含む漢方薬や医薬品との併用に注意する
芍薬甘草湯のように甘草含有量が多い漢方薬は、添付文書に「治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること」と記載されています[4]。
長期服用が必要な場合は、医師と相談のうえ、適切な用量と服用期間を決めることが重要です。
甘草は食品や化粧品にも使われている
甘草は漢方薬だけでなく、食品の甘味料や化粧品の成分としても幅広く使用されています。
砂糖よりも強い甘みを持ちながら低カロリーという特徴から、さまざまな製品に活用されています。
ここでは、漢方薬以外での甘草の利用について紹介します。
甘味料としての甘草|しょう油・漬物など
甘草は、日本では古くから食品の甘味料として使用されてきました[1]。
砂糖の数十〜数百倍もの甘さがありながら低カロリーのため、ごく少量でも甘みを付与できるとされています。
しょう油、みそ、漬物、つくだ煮、清涼飲料水など、さまざまな食品に使用されています。
甘草の甘味成分であるグリチルリチン酸は、糖質を含まないため、血糖値への影響が比較的少ないとされています。
このため、ダイエット食品や低糖質食品の甘味料としても注目されています。
ただし、食品から摂取する甘草も過剰摂取には注意が必要です[7]。
漢方薬と食品を合わせて摂取する場合は、合計摂取量を意識することが重要です。
リコリス菓子とは?海外での甘草利用
海外では、甘草は「リコリス(Licorice)」という名前で知られており、キャンディーやグミなどのお菓子の原料として使用されています。
とくにヨーロッパでは「リコリス菓子」として親しまれており、独特の甘みと風味が特徴です。
また、ハーブティーの原料としても人気があります。
リコリス菓子は日本では馴染みがなく、その独特の風味から好みが分かれることがあります。
しかし、北欧ではのどのケアを目的として用いられてきました。
また、リキュールやソフトドリンク(ルートビアなど)の原料としても使用されており、欧米では幅広い食品に甘草が活用されています。
化粧品成分としての甘草|グリチルリチン酸
甘草から抽出されるグリチルリチン酸やその誘導体は、化粧品や医薬部外品の成分としても使用されています。
抗炎症作用を有する成分として知られており、肌荒れの予防を目的として、スキンケア製品やシャンプー、育毛剤、歯みがき粉などに配合されています。
また、メラニンの生成を抑える働きが期待される成分として、シミやくすみの予防を目的に使用されることもあります。
化粧品の成分表示では「グリチルリチン酸2K(グリチルリチン酸ジカリウム)」「グリチルレチン酸ステアリル」などの名前で記載されています。
敏感肌向けの製品にも使用されることが多く、比較的刺激が少ない成分とされています。
ただし、化粧品からの経皮吸収では通常、偽アルドステロン症を起こすほどの量は吸収されないと考えられています。
甘草に関するよくある質問
Q. 甘草を含む漢方薬は市販で買えますか?
甘草を含む漢方薬は、多くの製品がドラッグストアや薬局で市販薬として購入できます。
葛根湯、芍薬甘草湯、甘草湯、小青竜湯など、よく使用される漢方薬の多くは市販されています。
ツムラやクラシエなど複数のメーカーから販売されており、顆粒タイプや錠剤タイプなど形状もさまざまです。
市販薬は処方薬と比べて生薬の配合量が少なめに設計されていることが多く、比較的安全性に配慮して設計されているとされています。
ただし、複数の漢方薬を併用する場合や、長期間服用する場合は、甘草の合計摂取量に注意が必要です。
購入前に薬剤師に相談し、自分の症状や体質に合った製品を選ぶことをおすすめします。
Q. 甘草の副作用はどのくらいで現れますか?
甘草による副作用(偽アルドステロン症)は、服用開始から3ヶ月以内に発症するケースが約40%を占めます[7]。
しかし、数年以上の長期使用後に突然発症することもあり、発症時期には一定の傾向がありません。
服用期間に関わらず、副作用の初期症状には常に注意が必要です。
服用中に手足のだるさ、むくみ、血圧上昇、こむら返りなどの症状が現れた場合は、服用を中止して医師や薬剤師に相談することが推奨されます。
服用中止後数週間の経過で症状が改善することが多いとされています[7]。
定期的に血清カリウム値の検査を受けることで、副作用の早期発見につながります。
Q. 妊娠中・授乳中でも甘草を含む漢方薬は服用できますか?
妊娠中・授乳中の甘草を含む漢方薬の服用については、必ず医師や薬剤師に相談することが推奨されます[4]。
妊娠中は特別な状態にあり、お薬の影響を受けやすいため、自己判断での服用は避けるべきです。
産婦人科の担当医に現在の症状を伝え、服用の可否を確認してから使用しましょう。妊娠中は甘草を含むサプリメントや食品の過剰摂取も避けた方が無難です。
授乳中の服用についても同様に、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
Q. 甘草とリコリスは同じものですか?
甘草とリコリスは同じ植物を指します。
甘草は漢方医学での呼び名、リコリス(Licorice)は英語圏での呼び名です。
学名は「Glycyrrhiza」で、ギリシャ語で「甘い根」という意味を持っています。
日本薬局方で生薬として使用される甘草は、ウラルカンゾウとスペインカンゾウの2種類です[1]。
このうちカンゾウ属植物は総称して「リコリス」とも呼ばれ、ハーブティーやお菓子の原料として欧米で広く使用されています。
漢方薬に使用される甘草も、リコリス菓子に使用されるリコリスも、同じカンゾウ属の植物から作られています。
まとめ
甘草(かんぞう)は、日本で使用されている漢方薬の148品目のうち109品目に含まれる重要な生薬です[5]。
抗炎症作用、鎮痛作用、せき止め作用など多彩な働きを持ち、他の生薬の効果を調和させる役割も担っています。
葛根湯や芍薬甘草湯など身近な漢方薬の多くに配合されており、のどの痛み、せき、こむら返りなど幅広い症状に用いられます。
ただし、過剰摂取は「偽アルドステロン症」という副作用を引き起こすリスクがあります。
複数の漢方薬を併用する際は、甘草の合計摂取量が1日2.5g程度を目安として、過量とならないよう注意が必要です[5]。
むくみ、手足のだるさ、血圧上昇などの症状が現れた場合は、服用を中止して医師や薬剤師に相談することが推奨されます。
甘草の特性を正しく理解し、安全に漢方薬を活用することが重要です。
