カンピロバクターとは?(食中毒の原因菌)
はじめに、カンピロバクターがどのような菌で、どこから感染するのかを整理します。
カンピロバクターは、食中毒を起こす細菌のひとつで、日本で発生件数の多い食中毒として知られています。
主に鶏肉などを通して口から入り、おなかの不調を引き起こす細菌です。
ここからは、菌の特徴と、主な感染経路を見ていきましょう。
どのような菌か・特徴
カンピロバクターは、主に鶏や牛、豚などの腸の中にいます[1]。
この菌は乾燥に弱く、通常の加熱でも死滅するため、しっかり火を通せば防ぎやすいのが特徴です[1]。
一方で、比較的少ない数の菌でも感染する力があるとされ、わずかな量の汚染でも食中毒につながることがあります。
そのため、生や加熱の足りない鶏肉などを口にすると、感染が起こりやすいです。
日本では一年を通して発生し、細菌性の食中毒の中でも報告数が多いことで知られています[1]。
少数の菌でも感染しうる一方、加熱に弱いという性質を知っておくと、予防のポイントもつかみやすくなるでしょう。
カンピロバクターは「身近だが、加熱でしっかり防げる菌」と覚えておくとわかりやすいです。
主な感染経路
カンピロバクターの主な感染経路は、生または加熱が不十分な鶏肉を食べることです[1]。
鶏刺しや鶏レバ刺し、生焼けの焼き鳥や焼肉など、生に近い鶏肉から感染する事例が多く報告されています。
牛や豚のレバーなどの生食でも、感染が起こることがあります。
気をつけたいのが、調理中の二次汚染です。
生肉を切ったまな板や包丁で、そのまま生野菜などを切ると、菌がうつって感染につながることがあります[1]。
また、菌に汚染された水や、感染した動物との接触からうつるケースも知られています。
加熱を十分に行うことと、調理器具を使い分けることが、感染を防ぐうえで役立つでしょう。
感染経路を知っておくと、どこに気をつければよいかが見えてきて、予防に活かしやすくなります。
カンピロバクターの主な症状
ここからは、カンピロバクターに感染したときの主な症状を見ていきます。
カンピロバクターの症状には個人差があり、いきなり下痢から始まるとはかぎらず、発熱や吐き気などが先に出ることもあります。
ここからは、症状の出る流れ、それぞれの症状の特徴、間違えやすい点を順番に見ていきましょう。
前駆症状から下痢までの流れ
カンピロバクターの症状は、下痢の前に、前ぶれのような症状から始まることが多いです。
最初に、発熱や吐き気、嘔吐、腹痛、筋肉痛、頭痛、倦怠感などがあらわれ、これらの症状が出てから、数時間〜2日ほどして、下痢があらわれるという流れが多く見られます。
そのため、熱やだるさから始まり、当初は食中毒と気づきにくいことがあります。
下痢が始まると、おなかの痛みをともないながら、何度もトイレに行くことが多いです。
症状の出方や強さには個人差があり、軽くすむ方もいれば、つらい症状が続く方もいます。
このように、前ぶれの症状から下痢へと進む流れを知っておくと、経過を見通しやすくなるでしょう。
最初に熱や吐き気があり、少し遅れて下痢が出てきたときは、食中毒の可能性も考えておくと落ち着いて対応できます。
下痢・腹痛・発熱・血便などの特徴
カンピロバクターの代表的な症状は、下痢と腹痛、発熱です[1]。
下痢は1日に何回も起こることがあり、数日続くことがあります。
腹痛は下痢よりも長く続くことがあり、強い痛みを感じる方もいます。
発熱は38℃以下のことが多いとされますが、人によってはそれ以上の熱が出ることもあるでしょう。
便に血が混じる血便が見られることもあり、これはおなかの中で炎症が起きているサインのひとつです。
このほか、吐き気や嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感など、幅広い症状がみられることがあります。
下痢が続くと、体の水分が失われやすくなるため、脱水に気をつけることが大切です。
とくに、水分がとれない、尿が少ない、ぐったりするといったときは、脱水のサインのことがあります。
これらの症状は、ほかの感染性の腸炎とも似ているため、自己判断せず、つらいときは医療機関に相談すると安心です。
風邪と間違えやすい点・重症化しやすい人
カンピロバクターは、初期に風邪と間違えられることもある食中毒です。
下痢の前に、発熱やだるさ、頭痛などが出るため、はじめは風邪と思ってしまうことがあります。
そのあとに下痢や腹痛が強くなって、食中毒だったと気づくケースも少なくありません。
多くの方は1週間ほどで自然に良くなっていきますが、注意したい方もいます。
乳幼児や高齢者、免疫力が落ちている方では、症状が重くなることがあるとされています[1]。
また、持病があるなど抵抗力が弱い方も、重症化のリスクが高くなることがあります。
こうした基礎疾患のある方は、「これくらい大丈夫」と過信せず、早めに医療機関に相談することが大切です。
自分や家族に当てはまる方がいるときは、症状が軽くても、無理をせず受診を考えると安心です。
カンピロバクターの潜伏期間
カンピロバクターの大きな特徴のひとつが、潜伏期間が比較的長いことです。
潜伏期間とは、菌が体に入ってから、症状が出はじめるまでの時間を指します。
カンピロバクターの潜伏期間は、一般に1〜7日(平均2〜3日)とされ、ほかの細菌性食中毒に比べてやや長いのが特徴です[1]。
感染してすぐに症状が出るわけではありません。
そのため、症状が出たときには、「いつ食べた、どの食材が原因か思い出せない」ということも少なくありません。
潜伏期間が長いことを知っておくと、原因の心当たりを振り返るときの参考になります。
下痢や腹痛が出る数日前に、生や加熱の足りない鶏肉などを食べていないかを思い出してみると、手がかりになることがあるでしょう。
潜伏期間の長さは、原因を特定しにくくする一方で、感染を疑うヒントにもなります。
何日で治る?症状の経過と合併症
次に、カンピロバクターの症状が何日くらいで治るのか、経過と注意したい合併症を見ていきます。
多くの場合は、特別な治療をしなくても、1週間ほどで自然に良くなっていきますが、まれに、回復したあとに合併症が起こることもあります。
ここからは、回復までの経過と、ギラン・バレー症候群について見ていきましょう。
多くは1週間ほどで自然に回復
カンピロバクターの症状は、多くの場合、1週間ほどで自然に良くなっていきます[1]。
下痢は1〜3日ほど続くことが多く、腹痛はそれより少し長引くことがあります。
水分をしっかりとって安静にしていれば、徐々に回復に向かうことが多いですが、下痢や嘔吐が続くと脱水になりやすいため、こまめな水分補給が大切です。
乳幼児や高齢者、免疫力が落ちている方では、回復に時間がかかったり、症状が重くなったりすることがあります。
基礎疾患のある方も、まれに重症化することが知られており、早めの治療が必要になります。
症状が長引く、どんどん悪くなる、水分がとれないといったときは、自然回復を待たずに受診することが大切です。
多くは数日から1週間で軽くなりますが、経過には個人差があるため、つらいときは無理をしないことをおすすめします。
注意したい合併症(ギラン・バレー症候群)
カンピロバクターで注意したい合併症のひとつが、ギラン・バレー症候群です[2]。
これは、下痢などの症状が始まったあと、数週間ほどして起こることがある神経の病気です[2]。
手足のしびれや力の入りにくさから始まり、徐々に手足に力が入らなくなっていくことがあります。
ギラン・バレー症候群のうち、一定の割合がカンピロバクター感染に関連すると考えられています[2]。
多くは、数週間で症状のピークを迎え、その後は徐々に回復に向かうとされています。
ただし、起こる頻度はまれで、感染した方の多くがこの合併症になるわけではありません。
知っておきたいのは、食中毒の症状が治まったあとに、手足のしびれや力の入りにくさが出てきた場合です。
そのようなときは、「治ったから大丈夫」と思わず、早めに医療機関を受診することが大切です。
合併症があることを知っておくと、回復後の体の変化にも気づきやすくなります。
医療機関を受診すべき?受診の目安と治療・ケア
カンピロバクターは多くが自然に回復しますが、受診したほうがよい場合もあります。
受診の目安や、医療機関での治療、家でのケアを知っておくと、迷ったときに落ち着いて対応できます。
とくに、脱水や血便、高熱があるときや、基礎疾患のある方は注意が必要です。
ここからは、受診の目安と何科、治療と家でのケアを見ていきます。
受診の目安・何科
次のようなサインがあるときは、自然回復を待たず、早めに医療機関を受診することが大切です。
水分がとれない、尿が出ない・少ない、ぐったりするといった脱水のサインがあるときは、早めの受診がすすめられます。
血便が出るとき、高い熱が続くとき、下痢や腹痛が強くて眠れないときも、受診の目安になります。
下痢や嘔吐が長引いて良くならないときや、どんどん悪くなるときも、早めに相談しましょう。
乳幼児や高齢者、妊娠中の方、基礎疾患のある方は、重くなりやすいことがあるため、症状が軽くても早めの相談が安心です。
受診する科は、おなかの症状が中心のため、内科や消化器内科が向いています。
子どもの場合は小児科を受診し、迷うときはまずかかりつけ医に相談するとよいでしょう。
受診のときは、いつから・どのような症状か、数日前に食べたもの、持病やお薬などを伝えると、診察がスムーズになります。
迷ったときは、自己判断で抱え込まず、医療機関や相談窓口に相談すると安心です。
治療と家でのケア
カンピロバクターの治療は、失われる水分を補う補液を中心とした対症療法が基本です。
下痢や嘔吐で水分が失われやすいため、水分と電解質をこまめに補うことが大切です。
吐き気や腹痛で口から水分がとれないときや、脱水が強いときは、点滴で水分を補うことがあります。
重症の場合や、重症化のリスクが高い方には、マクロライド系などの抗菌薬が使われることもありますが、お薬が効かない耐性菌も出現しており、慎重にお薬を選びます[3]。
家でのケアでは、水分をこまめにとり、安静にして体を休めることが回復を助けるでしょう。
食事は、無理にとらず、状態が落ち着いてきたら、おかゆなど消化のよいものから少しずつ始めます。
このとき気をつけたいのが、市販の下痢止めの自己判断での服用です。
下痢は、菌や毒素を体の外に出そうとする働きでもあるため、強い下痢止めを自己判断で服用すると、かえって回復を遅らせることがあります。
下痢止めを使ってよいかは、自己判断せず、医師や薬剤師に相談することが安心につながります。
カンピロバクター食中毒の予防法
カンピロバクターは、日ごろのちょっとした工夫で防ぎやすい食中毒です。
最も大切なのが、鶏肉などの肉をしっかり加熱することです[1]。
カンピロバクターは加熱に弱いため、肉の中心までしっかり火を通すと、菌を死滅させやすくなります。
生や生に近い鶏肉、鶏レバ刺しなどは、感染のリスクがあるため、避けたほうが安心です。
調理のときは、生肉を切ったまな板や包丁を、洗わずにそのまま野菜などに使わないことも大切です。
生肉用と、そのまま食べるもの用で、まな板や包丁を分けると、二次汚染を防ぎやすくなります。
生肉を触ったあとは、せっけんでしっかり手を洗い、ほかの食材や調理器具に菌を広げないようにします。
肉は冷蔵庫で保存し、ほかの食材に肉汁がかからないよう、容器や袋を分けて入れると安心です。
少数の菌でも感染しうるため、「しっかり加熱」「器具を分ける」「よく手を洗う」を心がけることが予防の基本です。
下痢や腹痛、発熱などの症状がつらいとき、クリニックフォアのオンライン診療でご相談いただけます。クリニックフォアのオンライン診療では、医師が症状をうかがい、必要に応じて対症療法のお薬の処方や受診の案内を行います。
ただし、血便がある、水分がとれない、尿が出ない・少ない、ぐったりしているなどの脱水を示す兆候がある場合、また回復後に手足のしびれや力の入りにくさが出た場合は、オンライン診療では対応できないため、速やかに対面の医療機関(内科・消化器内科など)を受診してください。
※医師の判断により、お薬を処方できない場合がございます。
※対面診療をご案内する場合もございます。
※診療費は診察内容によって異なります。保険診療の自己負担割合(原則3割)に応じた金額となります。
カンピロバクターの症状に関するよくある質問
Q:カンピロバクターの主な症状は?
A:下痢や腹痛、発熱が代表的で、吐き気や嘔吐、頭痛、倦怠感などをともなうこともあります。
発熱やだるさなどの前ぶれのあと、少し遅れて下痢が出る流れが多く見られます。
便に血が混じることもあり、つらいときは医療機関に相談すると安心です。
Q:潜伏期間はどのくらいですか?
A:一般に1〜7日(平均2〜3日)とされ、時に10日ほどになることもあります[1]。
ほかの細菌性食中毒より長めなのが特徴です。
そのため、原因の食べ物を思い出しにくいこともあります。
Q:何日で治りますか?
A:多くは1週間ほどで自然に良くなっていきます。
下痢は1〜3日ほど続き、腹痛はもう少し長引くことが多いです。
症状が長引く・悪くなる・水分がとれないときは、受診を考えましょう。
Q:人にうつりますか?
A:便の中の菌が、手などを介して口に入ることでうつることがあります。
家庭内では、トイレのあとや調理の前後にしっかり手を洗うことが大切です。
タオルを分けるなどの工夫も、感染を広げない助けになります。
Q:市販の下痢止めを使ってもいいですか?
A:自己判断での服用は、注意が必要です。
下痢は菌や毒素を外に出す働きでもあるため、強い下痢止めはかえって回復を遅らせることがあります。
使ってよいかは、自己判断せず、医師や薬剤師に相談すると安心です。
まとめ
カンピロバクターは、生や加熱の足りない鶏肉などから感染しやすい、細菌性の食中毒です。
主な症状は下痢・腹痛・発熱で、発熱や吐き気などの前ぶれのあと、少し遅れて下痢が出る流れが多く見られます。
潜伏期間は1〜7日(平均2〜3日)と長めで、原因の食べ物を思い出しにくいことがあります[1]。
多くは1週間ほどで自然に良くなりますが、乳幼児や高齢者、基礎疾患のある方は重くなりやすいため注意が必要です。
まれに、回復後、数週間してギラン・バレー症候群という手足のしびれや脱力が出ることがあるため、症状を感じたときは早めに受診します[2]。
脱水や血便、高い熱が続くとき、水分がとれないときは、自然回復を待たず医療機関を受診することが大切です。
家では水分と安静を中心にケアし、市販の下痢止めの自己判断での服用は避け、医師や薬剤師に相談すると安心です。
予防には、肉をしっかり加熱し、調理器具を使い分け、よく手を洗うことが役立つため、毎日の調理で心がけながら、気になる症状のときは無理せず受診していきましょう。

