脂肪肝とは?肝臓に脂肪がたまった状態
まずは、脂肪肝とはそもそもどのような状態のことを指すのか、基本からやさしく整理していきましょう。
脂肪肝とは、ひとことでいえば、肝臓の細胞の中に中性脂肪がたまりすぎてしまった状態のことです[1]。
肝臓は本来、エネルギーをためたり、栄養を加工したり、体に有害なものを分解したりと、とても多くの大切な役割を担っている臓器です。
その肝臓に脂肪がたまりすぎると、こうしたはたらきが少しずつ低下し、さまざまな不調や病気の入り口になってしまうことがあります。
脂肪肝は決してめずらしい病気ではなく、生活習慣の乱れから誰にでも起こりうる、ごく身近な状態だといえます[1]。
ここからは、脂肪肝の具体的な定義と、肝臓という臓器の特徴について見ていきます。
脂肪肝の定義(肝細胞の5%以上が脂肪化)
脂肪肝とは、医学的には、肝臓の細胞のうち5%以上に脂肪がたまった状態を指します[1]。
もともと肝臓は、エネルギー源として脂肪をつくり、肝細胞の中に一定量の脂肪をたくわえるはたらきをもっています。
ところが、体が使うエネルギーよりも、食事などからつくられる脂肪のほうが多くなる状態が続くと、使いきれない脂肪が肝細胞の中にどんどんたまっていってしまうのです。
こうして肝臓全体が脂肪でいっぱいになっていくようすは、よく「フォアグラのような状態」とたとえられます。
肥満と診断された方では、その2〜3割に脂肪肝がみられるという報告もあり、体重が増えるほどリスクが高まりやすいことがわかっています[3]。
健診で「脂肪肝」と指摘されたということは、すでに肝臓に脂肪がある程度たまり、はたらきが落ちはじめているサインだと受け止めておくとよいでしょう。
数値や言葉だけにおびえる必要はありませんが、体からの大切なお知らせとして、前向きに向き合っていきたいところです。
「沈黙の臓器」肝臓と脂肪肝の関係
肝臓は、多少のダメージを受けてもなかなか症状としてあらわれにくいことから、「沈黙の臓器」と呼ばれています。
これは、肝臓がとても我慢強く、少しくらい脂肪がたまったり傷ついたりしても、残った部分が頑張って働き続けてくれるためです。
そのため、脂肪肝になっていても、痛みやだるさといったわかりやすい症状が出ないまま、何年も気づかずに過ごしてしまう方が少なくありません。
健康診断の血液検査で肝機能の数値の異常を指摘されて、はじめて自分が脂肪肝だと知る、というのがよくあるパターンです。
裏を返せば、症状が出てこないからこそ、健診の結果を手がかりに早めに気づき、対処していくことがとても大切です。
「沈黙の臓器だからこそ、数値の変化を見逃さない」という意識をもっておくと、脂肪肝の進行を防ぐ大きな助けになるでしょう。
症状がないことは「問題がない」ことと同じではない、という点をおさえておくと安心です。
脂肪肝と中性脂肪・コレステロールの関係
健診の結果を見ていると、脂肪肝と一緒に「中性脂肪」や「コレステロール」の数値も高い、という方は多いのではないでしょうか。
脂肪肝とこれらの脂質は、実は互いに深く関わり合っています。
肝臓は、食事からとった糖質や脂質をもとに中性脂肪をつくり、コレステロールを調整する中心的な役割を担っている臓器です。
そのため、肝臓に脂肪がたまって脂肪肝になると、血液中の中性脂肪が増えたり、悪玉のLDLコレステロールが上がったりしやすくなります[2]。
反対に、中性脂肪やコレステロールが高い状態が続くことも、脂肪肝を進める一因になり、互いに悪循環をつくってしまいます[2]。
こうした脂質の数値は、脂肪肝と同じく食事や運動の見直しで整えやすいため、あわせて改善を目指していくのがおすすめです。
健診で脂肪肝と脂質の数値の両方を指摘された方は、別々の問題ととらえず、生活習慣全体を見直すきっかけにしていくとよいでしょう。
脂肪肝の主な原因
脂肪肝と言われると、「どうして自分の肝臓に脂肪がたまってしまったのだろう」と、その原因が気になりますよね。
脂肪肝の原因の多くは、食べすぎや飲みすぎ、運動不足といった、毎日の生活習慣の積み重ねです[2]。
体に取り込むエネルギーが、運動や日常生活で使うエネルギーを上回る状態が続くと、余った分が中性脂肪となって肝臓にたまっていきます。
肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が背景にあることも多く、これらは互いに関わり合いながら脂肪肝を進めてしまうのです。
意外に思われるかもしれませんが、痩せている方やお酒をほとんど飲まない方でも、脂肪肝になることがあります。
ここからは、脂肪肝の主な原因を、ひとつずつくわしく見ていきます。
食べすぎ・飲みすぎ・運動不足
脂肪肝のもっとも代表的な原因は、食べすぎや飲みすぎ、そして運動不足といった生活習慣の乱れです[1]。
脂っこい食事や甘いもの、ごはんやパンなどの糖質をとりすぎると、使いきれなかったエネルギーが肝臓で中性脂肪につくり替えられていきます。
そこに運動不足が重なると、たくわえられた脂肪が消費されずに残り、肝臓にどんどんたまってしまうのです。
お酒の飲みすぎも見逃せない原因で、アルコールは肝臓で分解される過程で中性脂肪の合成を活発にしてしまうため、飲む量が多いほど脂肪がたまりやすくなります[1]。
毎日の晩酌や、締めのラーメン、甘い飲み物の習慣などが、知らないうちに脂肪肝を進めてしまっていることも少なくありません。
思いあたる生活習慣があるなら、まずはどれかひとつでも見直してみることが、脂肪肝を整えるための確かな第一歩になるでしょう。
肥満・糖尿病・インスリン抵抗性
肥満や糖尿病、そしてインスリンのはたらきの低下も、脂肪肝の大きな原因になります[4]。
インスリンは、膵臓から出て血糖値を下げるはたらきをもっていて、エネルギーの調整にも深く関わるホルモンです。
ところが、肥満の状態になるとこのインスリンがうまく働かなくなり、肝臓に脂肪がたまりやすい環境ができてしまいます[4]。
この「インスリンがうまく効かなくなった状態」はインスリン抵抗性と呼ばれ、糖尿病や脂質異常症とも互いに関わり合っています。
そのため、脂肪肝はこうした生活習慣病と一緒にあらわれることが多く、脂肪肝があると糖尿病が進みやすく、糖尿病があると脂肪肝も悪化しやすい、という関係になりがちです。
肥満や血糖値、コレステロールの数値が気になる方は、脂肪肝もあわせて意識して、体全体を整えていくことが大切だといえるでしょう。
痩せ型やお酒を飲まない人でもなる理由
脂肪肝は太っている人だけの病気と思われがちですが、痩せ型の方やお酒をほとんど飲まない方でも、なることがあります。
日本人は体質的に、欧米の人にくらべて少しの脂肪でも肝臓にたまりやすいといわれており、見た目が細くても油断はできません。
極端な食事制限やリバウンドをくり返していると、かえって肝臓の代謝が乱れて、痩せていても脂肪がたまってしまう場合があります。
また、運動の習慣がなく筋肉量が少ない方は、エネルギーを消費しにくいため、食べる量が多くなくても脂肪肝になりやすいです。
お酒を飲まない方でも、糖質や脂質のとりすぎ、肥満や糖尿病などが背景にあれば、非アルコール性の脂肪肝になることがあります。
「自分は太っていないから」「お酒を飲まないから」と安心しすぎず、健診の数値はきちんと確認しておくのが望ましいといえます。
脂肪肝になりやすい人のセルフチェック
自分は脂肪肝になりやすいタイプなのだろうか、と気になっている方もいらっしゃいますよね。
脂肪肝は生活習慣と深く関わっているため、ふだんの過ごし方や健診の結果から、なりやすさをある程度見当づけることができます[1]。
当てはまる項目が多いほど、肝臓に脂肪がたまりやすい生活になっている可能性が高いです。
ここで自分の傾向を知っておくと、何を優先して見直せばよいのかがはっきりして、対策に取りかかりやすくなるでしょう。
ここからは、生活習慣と健診結果の2つの面から、脂肪肝のセルフチェックのポイントを見ていきます。
こんな生活習慣は要注意
脂肪肝になりやすい生活習慣には、いくつかの共通したパターンがあります。
ごはんや麺類、パンなどの主食をおかわりすることが多い、揚げ物や脂っこい料理が好き、甘いお菓子やジュースを毎日とっている、といった食習慣をもつ方は注意が必要です[2]。
また、ほぼ毎日お酒を飲む、夜遅い時間に食事をとることが多い、運動の習慣がほとんどない、という生活も脂肪がたまりやすい傾向にあります[2]。
仕事が忙しくて食事の時間が不規則になりがちな方や、デスクワーク中心で一日の歩数が少ない方も、知らないうちに脂肪肝が進んでいる場合が少なくありません。
こうした習慣はひとつひとつは小さくても、積み重なることで肝臓に脂肪をためこむ大きな原因になっていきます。
思いあたる項目があっても落ち込む必要はなく、どれかひとつ見直すだけでも、肝臓にとっては大きな前進になります。
まずは自分の生活の中で「これは減らせそう」と思える習慣から、無理なく整えていくとよいでしょう。
健診結果でチェックしたい項目
脂肪肝のなりやすさは、毎年の健診結果からも確かめることができます。
まず注目したいのが、AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTPといった肝機能の数値で、これらが基準値を超えている場合は肝臓に負担がかかっているサインです[5]。
あわせて、中性脂肪やコレステロール、血糖値(HbA1c)、血圧、腹囲といったメタボ(メタボリック・シンドローム)に関わる項目も、脂肪肝と深く関係しています[2][5]。
体格の目安となるBMI (Body Mass Index: 体重(kg)÷ 身長(m)²)が25以上の方や、おなかまわりが気になる方は、肝臓にも脂肪がたまりやすい状態だと考えられます[2]。
これらの数値が複数当てはまる場合は、脂肪肝だけでなく、糖尿病や脂質異常症ともあわせて見ていきましょう。
去年と今年の結果を見くらべて、数値が少しずつ上がってきていないかを確認しておくと、早めの対処につなげやすくなります。
気になる項目が複数あるようなら、自己判断で済ませず、医療機関で一度くわしく相談しておくと安心です。
働き盛りの世代はとくに注意
脂肪肝は、とくに30代から50代の働き盛りの世代で多くみられる傾向があります[6]。
この世代は、仕事や家庭で忙しく、外食や会食、お酒を飲む機会が増えやすいうえに、若いころにくらべて代謝も落ちてきます。
運動の時間がとりにくく、ストレスから食べすぎや飲みすぎにつながりやすいことも、脂肪肝が増える理由のひとつです。
近年は、成人男性のおよそ4割が脂肪肝ともいわれ、けっして一部の人だけの問題ではなくなっています[6]。
一方で、女性も更年期を境にホルモンの影響で脂肪肝が増えやすくなるとされ、男性だけの病気ではありません[6]。
「自分はまだ若いから」「女性だから大丈夫」と思わず、心あたりのある世代の方は早めに生活を見直しておくと安心です。
忙しい世代だからこそ、できる範囲の小さな工夫を積み重ねていくことが、脂肪肝を防ぐ現実的な方法になります。
脂肪肝の種類(アルコール性・非アルコール性とMASLD・MASH)
脂肪肝とひとことで言っても、実はいくつかの種類に分けられることをご存じでしょうか。
脂肪肝は、その原因によって、お酒が関係するものと、お酒とは関係しないものとに大きく分けられます。
近年はこの分け方が国際的に見直され、「SLD」「MASLD」「MASH」といった新しい呼び名が使われるようになってきました[7]。
聞き慣れない言葉が多くてとまどうかもしれませんが、ひとつずつ整理していけば、それほどむずかしいものではありません。
自分の脂肪肝がどのタイプに近いのかを知っておくと、これから何に気をつければよいのかが見えやすくなります。
ここからは、脂肪肝の代表的な種類を、新しい呼び名もまじえながら順番に見ていきます。
アルコール性の脂肪肝
アルコール性の脂肪肝とは、その名のとおり、お酒の飲みすぎが原因で起こる脂肪肝のことです。
お酒に含まれるアルコールは、その大部分が肝臓で分解されますが、この分解の過程で中性脂肪の合成が活発になり、肝臓に脂肪がたまりやすくなります[8]。
毎日たくさんのお酒を飲む習慣が続くと、肝臓は休む間もなくアルコールの処理に追われ、少しずつ脂肪がたまっていってしまうのです。
アルコール性の脂肪肝が進んで肝臓に炎症が起きた状態は、アルコール性脂肪肝炎と呼ばれ、さらに進むと肝硬変や肝がんへとつながるおそれもあります[8]。
ただし、早い段階であればお酒の量を減らすことで肝臓は回復しやすく、減酒や休肝日が何よりの対策になると考えられています[8][9]。
毎日の晩酌が習慣になっている方は、まず週に2日ほどの休肝日をつくることから始めてみると、肝臓をいたわる第一歩になるでしょう。
お酒との付き合い方を見直すことは、アルコール性の脂肪肝を整えるうえで欠かせないポイントです。
非アルコール性の脂肪肝(旧NAFLD→MASLD)
非アルコール性の脂肪肝とは、お酒とは関係なく、肥満や糖尿病、脂質異常症などの代謝の異常が背景となって起こる脂肪肝のことです[8]。
お酒をほとんど飲まないのに脂肪肝になるのは、食べすぎや運動不足、インスリンのはたらきの低下などによって、肝臓に脂肪がたまってしまうためです[8]。
この非アルコール性の脂肪肝は、これまで「NAFLD(ナッフルディー): Non-Alcoholic Fatty Liver Disease」という名前で呼ばれてきました。
しかし2023年には国際的な合意のもとで分類が見直され、代謝の異常をともなうタイプは「MASLD(マッスルディー): Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease」という新しい名前に整理されました[7]。
MASLDは、脂肪肝に加え、肥満や2型糖尿病、高血圧、中性脂肪が高い、善玉コレステロールが低いといった代謝のリスクをひとつ以上もっている場合に当てはまります[8]。
MASLDという呼び名には、「脂肪肝は肝臓だけの問題ではなく、全身の代謝の異常のサインである」という大切なメッセージが込められています。
名前はむずかしく感じても、「お酒以外が原因の脂肪肝で、生活習慣病と深く関わっているもの」とおさえておけば十分です。
炎症が進んだMASH(旧NASH)とは
脂肪肝の中には、ただ脂肪がたまっているだけでなく、肝臓に炎症が起きてしまっているタイプもあります[8]。
このうち、代謝の異常を背景とした脂肪肝に炎症が加わった状態は、「MASH(マッシュ): Metabolic dysfunction-Associated Steatohepatitis」と呼ばれ、以前は「NASH(ナッシュ): Non-Alcoholic Steatohepatitis」という名前で知られていました[7]。
脂肪がたまるだけの段階であれば回復しやすいのですが、炎症が長く続くと、肝臓が少しずつ硬くなっていく線維化という変化が進んでしまいます[8]。
線維化がさらに進行すると、もとに戻りにくい肝硬変や、肝がんへとつながるおそれが高まっていきます[8]。
やっかいなことに、MASHになっていても自覚症状はほとんどなく、健診の数値や画像検査ではじめて見つかることも少なくありません。
だからこそ、脂肪肝の段階で早めに気づいて生活習慣を整え、炎症が進む前に手を打っておくことがとても大切です。
「脂肪がたまるだけ」と「炎症が起きている」とでは大きな違いがあると知っておくと、健診結果と落ち着いて向き合えるようになるでしょう。
脂肪肝に症状はある?気づきにくいサイン
脂肪肝と言われても、痛みもないし元気だから大丈夫、と思っている方も多いのではないでしょうか。
脂肪肝は、初期の段階ではほとんど自覚症状があらわれない病気です。
肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるとおり、脂肪がたまっていても痛みやだるさとして感じにくく、自分では気づきにくいのが大きな特徴です。
そのため、症状がないことを「問題がない」と思い込んでしまい、対処が遅れてしまうことも少なくありません。
とはいえ、進行してくると、なんとなくの倦怠感やだるさといった、ぼんやりとした不調があらわれてくる場合もあります。
ここからは、脂肪肝が気づきにくい理由と、ときにあらわれる不調について見ていきます。
脂肪肝が気づきにくい理由
脂肪肝が気づきにくいいちばんの理由は、肝臓がとても我慢強い「沈黙の臓器」だからです。
肝臓は、一部に脂肪がたまったり傷ついたりしても、残った部分がしっかりとはたらきを補ってくれるため、不調として表に出てきにくい性質をもっています。
そのため、かなり脂肪がたまった状態になっても、痛みやかゆみ、はっきりとしたつらさを感じることはほとんどありません。
多くの方は、健康診断の血液検査で肝機能の数値の異常を指摘されて、はじめて自分が脂肪肝だと知ることになります。
逆に言えば、自覚症状を待っていては手遅れになりかねないため、健診の数値こそが脂肪肝に気づくための大切なサインです。
毎年の健康診断で肝機能の項目をきちんと確認しておくことが、脂肪肝を早めに見つける何よりの近道だといえるでしょう。
「症状がないから安心」ではなく、「症状がないからこそ数値で確かめる」という意識をもっておくと安心です。
進行するとあらわれやすい不調
脂肪肝が進んでくると、はっきりとはしないものの、いくつかの不調があらわれてくることがあります。
代表的なのは、なんとなく体がだるい、疲れやすい、しっかり休んでも疲れが抜けにくい、といった倦怠感です。
これは、肝臓のはたらきが落ちることで、エネルギーの処理や老廃物の分解がうまくいきにくくなるためだと考えられています。
また、肝臓に脂肪がたまって血液の流れが滞りがちになると、頭がぼんやりする、集中力が続かないといった感覚をおぼえる方もいます。
ただし、これらの不調は脂肪肝に特有のものではなく、睡眠不足や疲れなど、ほかの原因でも起こりうるものばかりです。
こうした不調が続くときは、自己判断で見過ごさず、健診の結果とあわせて医療機関で確かめておくと安心です。
なんとなくの不調が続いていて健診でも肝機能の数値が気になる、という場合は、一度相談しておくのが望ましいといえるでしょう。
脂肪肝はどう診断する?健診の数値の見方
脂肪肝は、どのように調べて診断されるのか、気になるところですよね。
脂肪肝の診断では、健康診断でおなじみの血液検査に加えて、腹部の超音波(エコー)やCTといった画像検査が用いられます。
血液検査の数値だけで脂肪肝と決まるわけではなく、画像で肝臓の状態を実際に確かめることで、はじめて診断がつきます。
健診の結果票には肝機能を示すいくつかの項目が並んでいますが、その見方を知っておくと、自分の数値を落ち着いて受け止めやすくなるでしょう。
ここからは、血液検査と画像検査のそれぞれについて、何を見ているのかをわかりやすく見ていきます。
血液検査(AST・ALT・γ-GTP)の見方
健診で肝臓の状態を知る手がかりになるのが、AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTPという3つの数値です[5]。
ASTとALTは、肝臓の細胞が傷つくと血液中に増える数値で、とくに脂肪肝ではALTのほうが高くなりやすいです[8]。
γ-GTPは、お酒の飲みすぎや胆道の異常などで上がりやすい数値で、アルコール性の脂肪肝が疑われるときの手がかりになります。
これらの基準値は検査機関によって少しずつ異なりますが、いずれも基準を超えて高い場合は、肝臓に負担がかかっているサインと考えられます。
ただし、脂肪肝があっても数値が正常範囲におさまっていることもあり、数値だけで安心しきれない点には注意が必要です。
数値の高さそのものよりも、毎年の健診で「去年より上がっていないか」という変化を見ていくことが大切だといえます。
気になる数値があるときは、結果票を持って医療機関で相談すると、画像検査も含めて必要な確認を進めてもらえるでしょう。
画像検査(腹部超音波・CT)
脂肪肝を確定するためには、血液検査だけでなく、肝臓そのものを画像で確かめる検査が行われます[8]。
もっともよく使われるのが腹部の超音波(エコー)で、体に負担をかけずに、肝臓に脂肪がどのくらいたまっているかを調べられる検査です[8]。
脂肪がたまった肝臓は、超音波の画像で白っぽく明るく映るという特徴があり、その見え方から脂肪肝かどうかを判断していきます。
より詳しく調べたいときには、腹部のCT検査が行われることもあり、肝臓の脂肪の量をくわしく評価するのに役立ちます[8]。
近年は、肝臓の硬さ(線維化の進み具合)を調べる特別な超音波検査が用いられることもあり、進行の程度を確かめるのに役立つ検査です。
これらの検査は健康診断のオプションや医療機関で受けられる場合があるので、数値が気になる方は一度相談してみるとよいでしょう。
画像検査まで受けておくと、自分の肝臓の状態をより正確に知ることができ、安心して対策を進めていけます。
脂肪肝を放置するとどうなる?進行のリスク
脂肪肝は症状が出にくいぶん、つい「そのうち治るだろう」と放置してしまいがちですよね。
しかし脂肪肝を放っておくと、肝臓そのものの病気だけでなく、全身の健康にも影響が広がっていくことがあります。
肝臓の中では、たまった脂肪が炎症を起こし、それが長く続くと肝臓が硬くなっていく、という変化が静かに進んでいきます。
さらに脂肪肝は、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病とも深く関わっており、動脈硬化を進めるきっかけにもなりかねません。
「ただの脂肪肝」と軽く考えず、放置のリスクを知っておくことが、早めの対処につながります。
ここからは、脂肪肝を放置したときに起こりうる進行のリスクを、順番に見ていきます。
肝炎・肝硬変・肝がんへの進行
脂肪肝を放置していちばん心配なのは、肝炎から肝硬変、そして場合によっては肝がんへと進んでしまうおそれがあることです[8]。
脂肪がたまっただけの段階では、生活習慣を整えることで回復しやすいのですが、そこに炎症が加わると話が変わってきます。
肝臓の炎症が長く続くと、傷ついた部分を修復しようとして、肝臓が少しずつ硬くなっていく「線維化」という変化が進んでいきます。
線維化がさらに進行して肝臓全体が硬くこわばってしまった状態が肝硬変で、ここまで来るともとに戻すことがむずかしいです[8]。
そして肝硬変が進んだ肝臓では、肝がんが発生するリスクも高まることが知られており、命に関わる病気へとつながっていきます。
こうした深刻な段階に進む前の、「脂肪がたまっているだけ」の早い時期にこそ、生活習慣を見直して食い止めることが何より大切です。
脂肪肝は、早く気づいて手を打てば十分に立て直せる段階だからこそ、放置せずに向き合っていきたい状態だといえるでしょう。
全身に広がる生活習慣病・動脈硬化のリスク
脂肪肝の影響は、肝臓だけにとどまらず、全身の健康へと広がっていく点にも注意が必要です。
脂肪肝は、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病と互いに関わり合いながら、悪循環をつくってしまいます。
新しい考え方であるMASLDという呼び名にも、「脂肪肝は全身の代謝の異常をあらわすサインである」という意味が込められています。
肝臓に脂肪がたまると血液中の悪玉コレステロールが増えやすくなり、血管の壁に少しずつコレステロールがたまって動脈硬化が進んでいくのです。
動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳卒中といった、命に関わる病気のリスクも高まっていくことが知られています。
脂肪肝を整えることは、肝臓を守るだけでなく、全身の血管や代謝の健康を守ることにもつながっていくといえます。
健診で脂肪肝を指摘されたら、肝臓だけの問題ととらえず、生活習慣全体を見直すよいきっかけにしていきたいところです。
脂肪肝の進行段階をやさしく整理
脂肪肝は、ある日突然に重い病気になるわけではなく、いくつかの段階を経て少しずつ進んでいきます[8]。
進行の段階をおおまかに知っておくと、自分がいまどのあたりにいるのか、そしてどこで食い止めればよいのかがイメージしやすいでしょう。
大きな流れとしては、「脂肪がたまるだけの段階」から「炎症が起きる段階」、そして「肝臓が硬くなっていく段階」へと段階的に変化します。
どの段階かによって回復のしやすさも変わってくるため、早い段階で気づくことがとても大切です。
ここからは、脂肪肝の進行の段階を、わかりやすく順番に整理していきます。
単純な脂肪肝から脂肪肝炎へ
脂肪肝の最初の段階は、肝臓に脂肪がたまっているだけの「単純性脂肪肝」と呼ばれる状態です。
この段階では、まだ肝臓に強い炎症は起きておらず、食事や運動などの生活習慣を見直すことで、比較的もとに戻りやすいとされています。
ところが、脂肪がたまった状態が長く続くと、肝臓の細胞に炎症が起きはじめ、脂肪肝炎と呼ばれる段階へと進んでしまうことがあります。
代謝の異常を背景とした脂肪肝炎は、近年の分類ではMASH(旧NASH)と呼ばれ、ただ脂肪がたまっているだけの状態よりも注意が必要です[7][8]。
炎症が起きていても自覚症状はほとんどないため、本人が気づかないうちに進行してしまう点が、この段階のこわいところです。
だからこそ、まだ炎症が起きていない単純性脂肪肝のうちに気づき、生活習慣を整えておくことが何よりの近道になります。
「脂肪がたまるだけ」と「炎症が起きる」の境目を意識しておくと、早めに手を打つ大切さが実感しやすくなるでしょう。
線維化から肝硬変・肝がんへ
脂肪肝炎の段階で炎症が長く続くと、肝臓が硬くなっていく「線維化」という変化が進んでいきます[8]。
線維化とは、炎症で傷ついた肝臓を修復しようとする過程で、かたい組織が少しずつ増えていく状態のことです。
この線維化がさらに進むと、肝臓全体がごつごつと硬くこわばった「肝硬変」へと進行し、ここまで来るともとの状態には戻りにくくなります。
肝硬変まで進んだ肝臓では、本来の機能が大きく低下するだけでなく、肝がんが発生するリスクも高まることが知られています。
こうした段階は一足とびに進むわけではなく、何年もかけてゆっくりと進行していくため、その間に気づいて食い止めることが十分に可能です。
早い段階ほど立て直しやすいからこそ、「まだ大丈夫」と思える今のうちに向き合っておくことが大切だといえるでしょう。
脂肪肝は治る?整えるための3つのポイント
ここまで読んで、「では脂肪肝は治るのだろうか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
うれしいことに、脂肪肝は早い段階であれば、生活習慣を見直すことで十分に改善が期待できる状態です[2]。
肝臓はもともと回復する力の強い臓器で、脂肪がたまっただけの時期なら、食事や運動を整えることで脂肪が減っていきます。
特別なお薬や治療にいきなり頼らなくても、毎日の食事・運動・お酒との付き合い方を見直すことが、改善の土台になります。
ここからは、脂肪肝を整えるために意識したい3つのポイントを、ひとつずつ見ていきましょう。
食事を見直す
脂肪肝を整えるうえで、まず取り組みたいのが毎日の食事の見直しです[1]。
脂肪肝の改善は、その多くが食事で決まるとも言われるほど、食生活の影響はとても大きいとされています。
ポイントは、脂っこいものや甘いもの、糖質のとりすぎをひかえ、青魚や大豆製品、野菜やきのこ、海藻などをバランスよくとることです[2。
揚げ物や菓子パン、加糖飲料を毎日のように口にしている場合は、その回数を減らすだけでも、肝臓にたまる脂肪をおさえやすくなります。
食事の最初に野菜から食べる、よく噛んでゆっくり食べるといった食べ方の工夫も、血糖値の急な上昇をやわらげるのに役立ちます。
すべてを一度に変えようとすると続きにくいため、まずはできそうな一品や一回から、無理なく置きかえていくのがおすすめです。
毎日の食事をていねいに整えていくことが、脂肪肝を良くするためのいちばん確かな土台になるといえるでしょう。
運動とゆるやかな減量
食事とあわせて取り組みたいのが、適度な運動と、あせらないゆるやかな減量です[8]。
体を動かしてエネルギーを使うことは、肝臓にたまった脂肪を減らすのを後押ししてくれると考えられています。
激しい運動である必要はなく、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を、無理のない範囲で続けることが大切です。
とくに肥満が背景にある場合は、いまの体重の7%ほどをゆっくり減らすだけでも、肝臓の脂肪が減りやすくなるとされています[8]。
一方で、短期間で体重を一気に落とす極端な減量は、かえって肝臓に負担をかけてしまうこともあるため、ゆるやかなペースを心がけたいところです。
エレベーターを階段に替える、ひと駅ぶん歩くなど、日常の中で体を動かす機会を少しずつ増やしていくのもよい方法です。
食事と運動を両輪で続けていくことが、脂肪肝を整えながら健やかな体重に近づく近道になるでしょう。
お酒との付き合い方
お酒を飲む習慣がある方は、お酒との付き合い方を見直すことも大切なポイントです[1]。
アルコールは肝臓で分解される過程で中性脂肪の合成を活発にしてしまうため、量が多いほど脂肪がたまりやすくなります。
とくにアルコール性の脂肪肝の場合は、お酒の量を減らすことが、何よりも効果的な対策になると考えられています。
毎日飲む習慣がある方は、いきなりやめようとせず、週に2日ほどの休肝日をつくる、一回の量を少し減らすところから始めてみてください。
おつまみも、揚げ物や脂っこいものに偏らせず、枝豆や冷ややっこ、刺身などを選ぶようにすると、肝臓の負担をやわらげられます。
お酒をまったく飲まない方でも、糖質や脂質のとりすぎには気をつけたいので、自分の生活に合わせて見直すポイントを選ぶとよいでしょう。
無理に断とうとするよりも、量と頻度を少しずつ整えていくことが、長く続けられる現実的な近道になります。
脂肪肝を防ぎ、良い状態を保つために続けたい習慣
脂肪肝は一度改善させても、もとの生活に戻ってしまうと再びたまりやすい点に注意が必要です。
そのため、改善を目指すときだけでなく、その状態を保ち、再発を防いでいく視点も大切になります。
食事や運動に加えて、睡眠やストレス、定期的な検査といった習慣を整えておくと、肝臓の健康を長く守りやすくなるはずです。
どれもむずかしいことではなく、毎日の生活の中で少し意識するだけで続けられるものばかりです。
ここからは、脂肪肝を防ぎ、良い状態を保つために続けたい習慣を見ていきます。
睡眠とストレスを整える
脂肪肝を改善させるうえでは、十分な睡眠とストレスのケアも、見落とせない大切なポイントです。
睡眠不足が続くと、食欲を調整するホルモンのバランスが乱れ、つい食べすぎてしまったり、甘いものが欲しくなりやすいです。
また、強いストレスがかかると、暴飲暴食や飲酒に向かいやすくなり、結果として肝臓に脂肪をためこむ一因になってしまいます。
毎日できるだけ決まった時間に寝起きする、寝る前のスマートフォンを控えるといった工夫で、睡眠の質を整えやすいでしょう。
自分なりにリラックスできる時間をもつことも、食べすぎや飲みすぎを防ぎ、脂肪肝を整える助けになってくれます。
食事や運動だけに気をとられがちですが、心とからだの休息も、肝臓をいたわるうえで欠かせない要素です。
睡眠とストレスを整えることは、脂肪肝だけでなく、生活習慣病全体の予防にもつながっていくといえるでしょう。
定期的な検査で経過を確認する
脂肪肝とうまく付き合っていくうえで、定期的に検査を受けて経過を確認しておくことも大切です。
脂肪肝は自覚症状が出にくいため、自分の感覚だけでは、良くなっているのか悪くなっているのかを判断するのがむずかしいです。
毎年の健康診断で肝機能の数値を確認し、去年とくらべて数値がどう変化しているかを見ていくと、対策の成果や注意すべきサインに気づきやすくなります。
数値が気になるときや、すでに脂肪肝を指摘されている場合は、医療機関で超音波などの検査を受けて、肝臓の状態を直接確かめておくと安心です。
とくに糖尿病や脂質異常症などをあわせてもっている方は、医師と相談しながら定期的にフォローしていくことがすすめられます。
検査の結果という客観的な目安があると、生活習慣を整えるモチベーションにもつながり、無理なく続けやすくなります。
「整えて終わり」ではなく、「整えながら見守っていく」という姿勢が、肝臓の健康を長く保つコツだといえるでしょう。
脂肪肝かなと思ったら何科を受診する?
脂肪肝かもしれないと思ったとき、いったい何科を受診すればよいのか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
まずは内科を受診すると、必要な検査を受けられるだけでなく、次にどの専門科へ進めばよいかという案内も受けられます。
脂肪肝をより専門的に診てもらいたい場合は、肝臓を専門にあつかう消化器内科や肝臓内科を受診するのがおすすめです。
健康診断で「肝機能要再検査」「脂肪肝の疑い」などと指摘されたときは、その結果票を持って受診すると、相談がとてもスムーズに進みます。
どの科にかかればよいか迷うときも、かかりつけの内科でまず相談してみると、自分に合った診療科を案内してもらえます。
お酒を多く飲む方や、糖尿病・脂質異常症などをすでに指摘されている方は、これらの治療とあわせて脂肪肝も診てもらうと安心です。
症状がないからと先延ばしにせず、気になったときに早めに医療機関へ相談しておくことが、結果として肝臓を守ることにつながっていきます。
脂肪肝に関するよくある質問
Q:脂肪肝とはどんな病気ですか?
A:脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまった状態のことで、肝細胞の5%以上が脂肪化したものを指します[1]。
食べすぎや飲みすぎ、運動不足、肥満などが背景にあることが多い、とても身近な状態です。
初期は自覚症状がほとんどないため、健診の数値で気づくケースが多くみられます。
Q:脂肪肝は治りますか?
A:脂肪肝は、脂肪がたまっただけの早い段階であれば、生活習慣の見直しで十分に改善が期待できる状態です[1]。
肝臓は回復する力が強い臓器のため、食事や運動の習慣を改善させることで脂肪が減っていきます。
ただし、炎症が進むと肝臓の状態を改善させることは難しくなるため、早めの対処が大切です。
Q:脂肪肝は数値がいくつから疑われますか?
A:健診ではAST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTPといった肝機能の数値が手がかりになり、とくにALTの上昇が脂肪肝で目立ちやすいとされています[8]。
基準値は検査機関によって異なり、数値が正常範囲でも脂肪肝のことがあります。
確定には超音波などの画像検査が必要なため、気になるときは医療機関で相談すると安心です。
Q:痩せていても脂肪肝になりますか?
A:痩せ型の方やお酒を飲まない方でも、脂肪肝になることがあります。
日本人は少しの脂肪でも肝臓にたまりやすいとされ、極端な食事制限や運動不足も原因になります。
「太っていないから大丈夫」と油断せず、健診の数値を確認しておくと安心です。
Q:脂肪肝を放置するとどうなりますか?
A:脂肪肝を放置すると、肝炎から肝硬変、さらには肝がんへと進んでしまうおそれがあります[8]。
また、糖尿病や脂質異常症、動脈硬化など全身の生活習慣病とも関わり、リスクが広がります。
早い段階なら立て直しやすいため、放置せず生活習慣を見直すことが大切です。
Q:脂肪肝にいい食べ物はありますか?
A:青魚や大豆製品、野菜やきのこ、海藻など、低脂質・高たんぱくで食物繊維の多い食材がすすめられます。
反対に、揚げ物や甘いお菓子、加糖飲料などは控えたい食べ物です。
特定の食材にかたよらず、バランスよく食べていくことが大切です。
まとめ
脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまった状態のことで、誰にでも起こりうる身近な病気です。
おもな原因は、食べすぎや飲みすぎ、運動不足、肥満や糖尿病などの生活習慣にあり、痩せ型の方でもなることがあります。
種類としてはアルコール性と非アルコール性に分けられ、近年は代謝の異常をともなうものをMASLD、炎症を起こしたものをMASHと呼ぶようになりました[7]。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるとおり初期には症状が出にくく、健診の数値や画像検査ではじめて気づくことが多くみられます。
放置すると肝炎・肝硬変・肝がんへと進むおそれがある一方、早い段階なら食事や運動の見直しで十分に改善が期待できる状態です。
毎日の食事を整え、適度な運動と減量、お酒との付き合い方を見直すことが、肝臓を守る確かな一歩になります。
健診で脂肪肝を指摘されたら、症状がなくても自己判断で放置せず、早めに医療機関へ相談してみましょう。
