新型コロナウイルスの治療薬になりうるとして現在注目されているレムデシビルとアビガン。同じ新型コロナウイルスの治療に活用できるお薬ですが、この両方のお薬にはどのような違いがあるのか、この両者の違いを詳しくご紹介します。
レムデシビルってどんな薬?副作用はある?
レムデシビルとはギリアド・サイエンシズというアメリカの製薬会社が作っているお薬でもともとはエボラ出血熱の治療の目的で作られました。とはいえ、どこの国でも承認はされていなかったので実際に医療機関での使用はされておらず、臨床研究としてコンゴ民主共和国のエボラ出血熱の患者に投与されたのみとなっています。レムデシビルはウイルスの複製に関するRNAポリメラーゼを阻害する効果があり、これによりウイルスの増殖を抑え、症状を改善する効果が期待されています。
報告されている副作用では、肝機能障害、下痢、皮疹、腎機能障害などの頻度が高く、重篤な副作用として多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧が認められています。
アビガンってどんな薬?副作用は?
アビガンとは一般名ファビピラビルといいインフルエンザの治療薬として開発され、2014年3月に承認をされています。タミフルなどほかのインフルエンザ治療薬で効果がなかった場合にのみ使用するお薬としています。アビガンは、生体内で変換された三リン酸化体がウイルスのRNA ポリメラーゼを選択的に阻害することによって、コロナウイルスのようなRNAウイルスの増殖を抑えて、症状を改善させていくことが期待されています。
アビガンの副作用は尿酸増加、下痢、好中球数減少、肝機能障害が高い頻度で見られています。また他の抗インフルエンザ薬で認められている、ショック、アナフィラキシー、劇症肝炎、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、急性腎障害などにも注意するように薬の添付文書に述べられています。
また、アビガンの最も懸念される副作用に胎児の催奇形、初期胚の死産、流産があります。これらはまだ動物実験において認められたものであり実際に人での副作用は認められてはいません。ですが、この副作用の可能性から妊娠を望む女性や、妊娠を望む女性のパートナーの男性(アビガンは精液に移行することが認められているため)への投与については慎重に行うべきです。
レムデシビルとアビガンの違いは?
レムデシビルとアビガンは、もともとの適用疾患は異なるものの、作用機序は似ています。ですが、レムデシビルは5月7日に薬事承認が下り、日本で初めての新型コロナウイルス治療薬として5月中旬から医療機関での使用が開始されます。一方、アビガンは現在も審査中です。この二つのお薬にはどのような違いがあるのでしょうか。二つの薬の特徴的な違いを見ていきましょう。
最も違うところは同じ新型コロナウイルスへの効果が期待されていますが、想定している対象患者さんの重症度が違うというところです。アビガンは口から飲む内服薬であるため、口から薬を飲むことが可能な程度の重症度であることが必要です。レムデシビルは点滴で投与する薬ですので患者さんの状態は問いません。また現在での備蓄量や、これまでそれぞれの薬が使用された患者さんの数や集まった知見などから、アビガンは軽症から中等症の新型コロナウイルス患者が重症化せず、早く改善するようにする効果を期待されています。一方、レムデシビルは人工呼吸器を必要とするなどの重症患者の死亡率を改善する効果が期待されています。そしてそれらを検討するような臨床試験が現在それぞれの薬で行われています。
またもう一つ考えられるのが、既知の副作用です。どちらもまだ研究を含めた人での使用例は決して多くはなく今後の知見の蓄積が待たれますが、アビガンには動物実験で認められた催奇形性があります。このため例年のインフルエンザでは使用されず、新型インフルエンザのような緊急事態のために備蓄されています。今回想定される対象には、軽症の若い妊娠の可能性がある年齢層も含まれるでしょうから、このことは非常に注意が必要です。レムデシビルは、まだ副作用に関する知見も少ないことから、そのリスクを許容しながらでも使用しなくてはならないような命の危機にある重症な方が想定される対象になっている面があります。
他にも薬が既に使われている国についても違いがあります。レムデシビルは5月1日よりアメリカでは緊急的に使用できるお薬として承認されています。一方、アビガンは特許の点から、中国において製造、利用することが可能であり、中国からの臨床研究などの発表が早期から届いています。
効果や副作用など違いのある二つの薬ですが、この違いをうまく活かすことで、より新型コロナウイルス治療薬として多くの患者を救うことができるようになるのかもしれません。
新型コロナウイルス治療薬として今後日本で期待されているアビガンとレムデシビル。これらの薬が新型コロナウイルス感染症に対して良い効果を生む出すかどうか今後も情報が出ましたら詳しく解説していきます。
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監修:クリニックフォアグループ医師
公開日:5月12日
参考文献
国立感染症研究所 http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_200430.pdf
厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000625757.pdf
国立感染症研究所 http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_200430.pdf
添付文書 https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00066852