インフルエンザによる頭痛の特徴
インフルエンザウイルスに感染すると、約1〜3日の潜伏期間の後に発症します。[1]
38℃を超える高熱が出ることが多く、それに伴って頭痛があらわれることがあります。関節や筋肉の痛みと同様に、頭痛も全身症状の一環として強く感じられるのが特徴です。[2]
【痛みの特徴】
- ズキンズキンと脈打つような激しい痛み
- 頭全体または前頭部を中心とした広範囲の痛み
- 目の奥の圧迫感や重だるさ
風邪による軽い頭痛とは異なり、インフルエンザ特有の強い不快感を伴うことがあります。
インフルエンザの頭痛について知識を深めるために、詳しく見ていきましょう。
インフルエンザの頭痛はいつまで続く?
インフルエンザによる頭痛は、通常は数日以内に自然と改善していきます。
しかし、症状が長引いたり、頭痛が悪化したりする場合には注意が必要です。
特に、発熱が治まったにもかかわらず頭痛だけが続くケースでは、二次感染や合併症の可能性が否定できません。インフルエンザ脳症や副鼻腔炎など、頭痛を引き起こす別の疾患が隠れていることもあるため、自己判断せず、早めに医療機関を受診することが重要です。
安心して回復を目指すためにも、症状の経過をよく観察し、異変を感じたら医師に相談しましょう。
当クリニックのオンライン診療では、初診でもお薬の処方が可能で、必要なお薬をご自宅までお届けします。お家に居たまま医師の診察が受けられ、外出による体への負担も避けられます。
※触診・検査が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。
できるだけ早く受診すべき頭痛の症状
インフルエンザの頭痛で以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
【早期受診が推奨される症状】
- これまでに経験したことがないひどい頭痛
- 突発して短時間でピークに達するような頭痛
- 発熱を伴う頭痛
- 手足の麻痺やしびれを伴う頭痛
これらの症状は、髄膜炎、脳炎、くも膜下出血などの重篤な疾患の可能性があるため、至急、脳神経外科または脳神経内科を受診して、正確な診断を受ける必要があります。
また、頭痛が数週間のうちに悪化してくるような場合には、脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの可能性もあるため注意が必要です。
頭痛だけで熱がない場合の受診のタイミング
発熱を伴わない頭痛であっても、周囲の流行状況や体調の変化を踏まえて受診を検討することが大切です。
たとえば、職場や学校でインフルエンザが流行している時期であったり、熱はないものの頭痛や倦怠感、食欲不振などの症状があったりする場合は、インフルエンザの可能性も考えられます。こうした背景や体調の変化を見ながら、必要に応じて医療機関に相談しましょう。
インフルエンザによる頭痛の原因は?
インフルエンザによる頭痛は、ウイルス感染に伴う体内の炎症反応によって引き起こされると言われています。
ウイルスが細胞に侵入すると、免疫系がそれを感知して防御反応を開始します。この過程で、体内では「NLRP3インフラマソーム」と呼ばれる免疫システムが活性化され、炎症性の物質である「IL-1β」が分泌されます。
近年の研究では、インフルエンザウイルスが持つM2タンパク質がこの免疫システムを刺激し、ミトコンドリア外膜のタンパク質「ミトフシン2」と結びつくことで、IL-1βの分泌が促進されることが示唆されているのです。[3]
このようにして生じた炎症性物質が、発熱や頭痛などの全身症状を引き起こします。体の免疫細胞は、ウイルスのような異物を的確に識別し、それに対してのみ反応することで、感染に対抗しようとします。その結果としてあらわれる頭痛は、体がウイルスと戦っているサインともいえるでしょう。
症状が頭痛だけでもインフルエンザの可能性はある?
頭痛のみの症状でもインフルエンザの可能性はあります。予防接種を受けている場合や個人の体質、免疫状態によっては、発熱などの典型的な症状が軽減され、頭痛だけが目立つケースも存在します。
ただし、頭痛のみでインフルエンザと断定することは困難です。以下の要素を総合的に判断する必要があります。
- 周囲でのインフルエンザの流行状況
- 予防接種の有無・個人の免疫状態や持病の有無
- 倦怠感、寒気、筋肉痛などの他の症状が後からあらわれる可能性
インフルエンザは通常、突然の高熱、全身倦怠感、筋肉痛などの全身症状が強くあらわれるのが特徴ですが、すべての方が同じ症状パターンを示すわけではありません。特にワクチン接種を受けている場合、症状が軽微に留まることがあります。
そのため、頭痛のみの症状であっても、市販薬を服用する前に一度医療機関で検査や相談を受けると安心です。
インフルエンザは迅速検査によって短時間で診断でき、抗インフルエンザウイルス薬は発症から48時間以内に服用することで、症状の軽減や回復の促進に効果が期待できます。また、早期治療により周囲への感染拡大を防ぐことにもつながります。
特に高齢者や子ども、持病のある方は、頭痛だけの症状でも早めに受診することが重要です。これらの方は重症化しやすい傾向があるため、迷わず医療機関に相談しましょう。
インフルエンザの頭痛があるときの市販薬の選び方
インフルエンザによる頭痛に対して市販の解熱鎮痛薬を服用する場合は、まずアセトアミノフェンが主成分の製品を選ぶことが推奨されています[4]。アセトアミノフェンは、子どもや高齢者でも服用することができるお薬です。
イブプロフェンという成分を含む解熱剤は、成人であれば選択することができますが、子どもの場合は医師の指示が必要です。
自己判断で市販薬を服用する前に、できるだけ医療機関を受診し、医師の診断を受けることが望ましいでしょう。
医師は患者さんの状態を総合的に判断し、必要であれば解熱剤などのお薬を処方します。また、インフルエンザと診断された場合、抗インフルエンザウイルス薬の処方を受けることで、発熱期間の短縮や重症化の予防が期待できます。
当クリニックでは、インフルエンザの診療をおこなっております。また、ご家族やご自身への感染を広げないための「インフルエンザの予防内服」もオンラインで処方が可能です。(自費での処方となります)
※検査等が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。
インフルエンザのときに避けた方がよい解熱剤や痛み止めはある?
子どものインフルエンザや、その感染を疑う場合には、以下のお薬は避けてください。
- ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)
- メフェナム酸(ポンタールなど)
- アスピリンなどのサリチル酸系解熱鎮痛薬
ジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸は、インフルエンザ脳症のリスクを高めるおそれがあるためです[4]。
インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルスに感染した後に発症する可能性がある重篤な脳の疾患で、意識障害やけいれん、異常な言動・行動などの神経症状を引き起こします。特に5歳以下の子どもに多く見られ、発症後は短時間で症状が急速に進行することが特徴です。軽度で回復するケースもありますが、場合によっては後遺症が残ったり、命に関わることもあります。
また、アスピリンなどのサリチル酸系解熱鎮痛薬には、内服薬だけでなく坐薬などもあり、子どもや未成年者に使用すると「ライ症候群」という合併症を引き起こす可能性があります。ライ症候群とは、急性脳症を中心とした重篤な疾患であり、嘔吐、意識障害、けいれん、高熱などの神経症状を伴います。主に水痘やインフルエンザなどのウイルス性疾患の後に発症し、特に子どもに多く見られる疾患です。
市販の解熱鎮痛薬や風邪薬(総合感冒薬)の一部には、アスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛薬を含んだものがあるため、注意が必要です。
成人ではライ症候群やインフルエンザ脳症を過度に心配する必要はありませんが、体調や持病によっては服用を控えた方がよいケースもあるため、市販薬を使う前に医師や薬剤師に相談すると安心です。
自宅でできる頭痛への対処法3選
インフルエンザによる頭痛を自宅で和らげるためには、安静と休養、水分補給、冷却が基本です。
これらに加えて、室内の温度や湿度を快適に保つことや、消化に負担をかけないバランスの取れた食事で栄養をしっかりとることも、体力の回復を助けるうえで役立ちます。体調の変化に注意しながら、無理をせず穏やかに過ごすことが症状の緩和につながります。
安静にして体を休める
インフルエンザから回復するためには、安静に過ごし、十分な休養と睡眠をとることが欠かせません。無理をせず体を休めることで免疫力が保たれ、症状の悪化を防ぐことにつながります。睡眠時間をしっかり確保し、症状が落ち着くまでは自宅で療養するようにしましょう。
インフルエンザは短期間で広く感染が広がる傾向があるため、安静にすることは自分の体調を整えるだけでなく、他者への感染を防ぐ意味でも重要です。適切な対症療法とあわせて安静を保つことで、症状の緩和や回復のスピードを高めることが期待できます。
こまめに水分補給する
インフルエンザによる頭痛や発熱の際には、こまめに水分補給をおこないましょう。発熱によって体内の水分が失われやすくなるため、脱水を防ぐことが症状の悪化を防ぐうえでも重要です。お茶やジュース、スープなど、飲みやすいもので構いませんので、少量ずつでもこまめにとるようにしましょう。
経口補水液やスポーツドリンクなども、電解質の補給に役立ちます。安静に過ごすことや適切な対症療法とあわせて水分をしっかりとることで、体力の回復を助けられるでしょう。症状が続いている間は、いつでも飲めるように水分を手元に置いておき、意識的に摂取するよう心がけることをおすすめします。
頭や額を冷やす
頭痛や高熱がある場合、頭や額を冷やすことで症状が和らぐことがあります。体温を下げるだけでなく、血管の拡張による頭痛の不快感を一時的に緩和する手助けにもなります。
【冷却のポイント】
- 額や後頭部、首の後ろなどを中心に冷やす
- 保冷剤や氷枕はタオルで包んで使用する
- 長時間同じ場所を冷やさない
- 冷やしすぎに注意する
冷却には氷枕や保冷剤を使用するのが一般的ですが、直接肌に当てると凍傷のリスクがあるため、清潔なタオルやガーゼで包んでから使用しましょう。また、同じ部位を長時間冷やし続けると逆効果になることもあるため、適度な時間で場所を変えることが大切です。
冷却はあくまで補助的な対処法であり、安静・水分補給・適切な治療と組み合わせておこなうことで、症状の緩和につながります。
インフルエンザの頭痛に関するよくある質問
インフルエンザによる頭痛について、多くの方から寄せられる疑問にお答えします。症状の経過や対処法について正しく理解することで、適切な自宅療養と早期回復につながります。
インフルエンザで1番しんどい期間はいつですか?
インフルエンザで「しんどいと感じる時期」は人によって異なります。
ですが、インフルエンザは、発症してから1〜3日目が症状のピークと言われているため、この期間がつらいと感じる方が多いでしょう。この期間には、38℃以上の高熱や頭痛、全身倦怠感、食欲不振などの全身症状が最も強くあらわます。
熱が下がり始める頃からは、せき、のどの痛み、鼻水などの呼吸器症状が目立つようになります。多くの場合、10日前後で症状は落ち着き、回復に向かいます。
高熱が続く、呼吸が苦しい、意識がもうろうとする状態が10日以上経っても症状が改善しない場合は注意が必要です。
これらの症状が見られる場合は、重症化の可能性があるため、速やかに医療機関を受診することが望ましいです。特に高齢者、子ども、基礎疾患のある方は重症化しやすいため、症状の経過を慎重に観察することを心がけましょう。
インフルエンザは寝ていれば治りますか?
インフルエンザは、安静に過ごしながら体をしっかり休めることで回復に向かうことがあります。ただし、こうした自然回復が期待できるのは、症状が軽く、体力に余裕がある場合に限られます。
また、市販薬で症状を緩和できるケースでは、自宅での療養によって改善することもありますが、すべての人に当てはまるわけではありません。
症状の重さや年齢、持病の有無によっては、医師の診察や抗インフルエンザ薬の服用が必要となる場合があります。特に高熱が長引いているときや、著しく体力が低下しているときは、早めに医療機関を受診することで安心して療養を続けることができます。
体調の変化に注意を払いながら、状況に応じて医師の判断を仰ぎましょう。
子どもが頭痛を訴える場合の注意点は何ですか?
子どもが頭痛を訴える場合、通常の風邪症状とは異なる重篤な状態のサインを見逃さないことが重要です。特に注意すべき症状として、意識障害、けいれん、異常な言動が挙げられます。
以下の症状が見られた場合は、直ちに医療機関を受診しましょう[5]。
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応が鈍い
- けいれん(ひきつけ)を起こしている
- 意味不明な言葉を繰り返す、幻覚を訴えるなどの異常な言動
- 激しい頭痛が突然始まり、嘔吐を伴う
これらはインフルエンザ脳症などの重篤な合併症の可能性があります。特に5歳以下の子どもでインフルエンザと診断された後に上記の症状が出現した場合は、緊急性が高い可能性があります。
また、子どもの頭痛に対して、保護者の判断で市販の解熱鎮痛薬を使用するのはなるべく避けてください。特定の解熱剤は、インフルエンザ脳症やライ症候群などの重篤な副作用を引き起こす可能性があります。医師の診察を受け、年齢や症状に応じた適切なお薬の処方を受けましょう。
発熱を伴う頭痛の場合、自宅での対応として水分補給と安静を保ちながら、速やかに医療機関を受診する準備を整えておきましょう。
仕事はいつから復帰できますか?
成人の場合、インフルエンザによる出勤停止は特に定められていません。仕事へ復帰する時期は勤務先の就業規則によって異なります。
また、勤務先によっては復帰時に医師の診断書や治癒証明書の提出を求められることもありますので、併せて人事部門や上司に確認しておくと安心です。
復帰可能かどうかの判断の目安として、学校保健安全法に定められた出席停止期間の基準を参考にしている職場も多いです。
学校保健安全法では、インフルエンザの出席停止期間について「発症後5日が経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで」と定められています[6]。
【例】月曜日に発症し、水曜日に解熱した場合、発症から5日後の土曜日、解熱から2日後の金曜日の両方を満たすのは日曜日以降となり、復帰可能と判断されます。
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
| 0日目(発症日) | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 |
| 発熱 | 発熱 | 解熱 | 解熱後1日目 | 解熱後2日目 | 解熱後3日目 | 出勤可能 |
| 発症後、最低5日が経過するまで休む | ||||||
| 解熱後2日が経過するまで休む | ||||||
勤務先の基準を満たして復帰ができる状況だったとしても、軽度の頭痛や倦怠感が残っているような場合は無理をせず、体調を最優先に考えましょう。
まとめ
インフルエンザによる頭痛は、高熱や倦怠感とともにあらわれる強い痛みが特徴で、風邪とは異なる不快感を伴います。通常は数日で軽快しますが、症状が長引く場合は合併症の可能性もあるため早めの受診が重要です。特に突然の激しい頭痛や麻痺を伴う場合は緊急対応が必要です。
自宅での対処法としては、安静・水分補給・冷却が基本で、市販薬はアセトアミノフェンを選び、自己判断は避けましょう。
特に高齢者や子ども、持病のある方は重症化しやすいため、頭痛の症状だけでも医師の診察を受けることが安心につながります。
