インフルエンザと新型コロナの症状の違いとは?見分け方や受診の目安を解説

急な発熱やのどの痛み、だるさがあらわれ始め「インフルエンザ?新型コロナ?」と悩む方は多いものです。
ご自身やご家族、とくに小さな子どもの体調が悪いと、どう対処すればよいのか不安を感じますよね。
この記事では、インフルエンザと新型コロナ、風邪の症状の具体的な違いを解説します。
症状ごとのチェックポイントや、医療機関を受診すべきタイミングを理解して次にとるべき行動をはっきりさせましょう。

インフルエンザと新型コロナの症状のおもな違いは「症状のあらわれ方」と「全身症状の強さ」

インフルエンザと新型コロナは、どちらも呼吸器にかかわる感染症です。[1]

両者のおもな違いは、症状のあらわれ方と全身症状の強さにあります。

疾患おもな症状発症の仕方潜伏期間
インフルエンザ・高熱(通常38℃以上)・筋肉痛・関節痛・頭痛・全身のだるさ・せき、鼻水突然1~3日間
新型コロナ・のどの痛み・せき・鼻水・発熱・頭痛・だるさ徐々に1~14日
風邪・鼻汁・せき・のどの痛み・微熱徐々に1~3日間

インフルエンザは、38℃以上の高熱、頭痛、全身の強いだるさ、関節痛などが突然あらわれ、その後にせきや鼻汁などの上気道炎症状が続くことが多いです。[2]

発症の仕方が急激で、強い全身症状が特徴です。

新型コロナはせきや鼻水、のどの痛み、発熱などの症状を引き起こします。[1]

インフルエンザと同様の症状が見られますが、無症状や軽症の人もいれば重症になる場合もあります。[1]

インフルエンザに特徴的な症状:38℃以上の急な発熱と強い関節・筋肉痛

インフルエンザの特徴的な症状は、突然の高熱と強い全身症状です。[2]

  • 38℃以上の高熱
  • 頭痛
  • 全身の強いだるさ
  • 筋肉痛
  • 関節痛

これらの全身症状のあとにせきや鼻水、のどの痛みなどの気道症状が続き、約1週間の経過で改善するのが典型的なインフルエンザです。[2]

感染者のせきやくしゃみで空中に吐き出された分泌物に混じったウイルスが、ほかの人の口や鼻から侵入することで感染が成立します。[2]

国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト(JIHS)によると、潜伏期間は通常1〜3日間です。[2]

新型コロナに見られやすい症状:のどの痛みや長引くせき、息苦しさ

新型コロナは、のどの痛みやせき、鼻水などが中心で、重度になると息切れや胸部の圧迫感といった症状を引き起こす場合もあります。[1]

症状の程度あらわれる症状
一般的・せき、鼻水、のどの痛み・発熱・頭痛・だるさ
重度・息切れ・食欲不振・錯乱・胸の持続的な痛みまたは圧迫感・高熱(38°C以上)

重度の症状がある場合は、医療機関の受診が必要です。

新型コロナもインフルエンザと同様、症状の重さは人によって異なり、軽い症状で済む人もいれば重症化する人もあり、致命的となる可能性もあります。[1]

三輪高喜が報告した「COVID-19と嗅覚・味覚障害」によると、初期に流行した株で特徴的だった味覚・嗅覚異常については、近年の変異株では発生頻度が減少傾向にあるとされています。[3]

一般的な風邪との違いは全身症状の有無と重症化リスクの高さ

インフルエンザや新型コロナと一般的な風邪の重要な違いは、重症化しやすい疾患であるという点です。

インフルエンザは風邪に比べて全身症状が強く、突然の高熱や筋肉痛、関節痛などの全身的な不調があらわれるのが特徴です。

肺炎といった合併症も起こしやすく、高齢者や呼吸器・循環器・腎臓などに慢性疾患を持つ方では、持病の悪化とともに細菌による二次感染が起きやすくなり、入院や重篤化の危険性が高まります。[2]

子どもが感染した場合、中耳炎の合併や熱性けいれん、気管支喘息の誘発などが見られることもあり、重篤な合併症として脳症があげられています。[2]

一般的な風邪は鼻水や軽いせきなどの局所症状が中心で、全身症状は軽度、重篤な合併症を起こすリスクも低い傾向です。

インフルエンザか新型コロナか見分ける5つのチェックポイント

今感じている症状から、インフルエンザか新型コロナかを判断する手がかりとなる5つのポイントがあります。

  • 発熱の仕方
  • のどの痛みとせきの特徴
  • 全身の痛みの程度
  • 頭痛の有無と強さ
  • 鼻水・鼻づまりの状態

受診のタイミングを判断する際の参考にしてください。

1.発熱の仕方:インフルエンザは「急激な高熱」、新型コロナは多様なパターン

インフルエンザでは、感染してから2日前後の潜伏期間を経て、通常38℃以上の高熱が急激にあらわれます。[4]

「昨日まで元気だったのに、今朝突然高熱が出た」というような、発症の仕方が非常に急であることが特徴です。[5]

新型コロナでも発熱は見られますが、インフルエンザほど急激ではなく、発熱の程度や経過は人によって大きく異なります。[4]

高熱が出る人もいれば、微熱程度で済む人、まったく発熱しない無症状の人もいます。

「突然38℃以上の高熱が出た」という場合は、インフルエンザの可能性が高いといえるでしょう。

2.のどの痛みとせき:インフルエンザは「激しいせき」、新型コロナは「強いのどの痛み」から始まる傾向

呼吸器症状のあらわれ方にも、インフルエンザと新型コロナで違いがあります。

インフルエンザでは、突然の発熱や全身症状が出たあとにせきや鼻汁などの上気道炎症状が続き、せきは強くあらわれやすいことが特徴です。[4]

新型コロナでは、せきや鼻水、のどの痛みなどの呼吸器症状がおもな症状としてあげられており、重度の症状として息切れや呼吸困難があらわれることがあります。[1]

「強いのどの痛みから始まった」場合は新型コロナ、「高熱のあとに激しいせきが出てきた」場合はインフルエンザの可能性を考慮する必要があります。

3.全身の痛み:インフルエンザは「強い関節痛・筋肉痛」、新型コロナは「倦怠感」が主体

インフルエンザの特徴的な症状として「体中が痛い」「関節が痛くて動けない」といった強い筋肉痛や関節痛、全身のだるさがあげられます。[4][5]

新型コロナや一般的な風邪でもだるさは見られますが、インフルエンザほどの強い筋肉痛・関節痛は典型的ではありません。[1]

そのため「高熱とともに強い関節痛や筋肉痛がある」場合は、インフルエンザの可能性が高いと考えられます。

4.頭痛の有無と強さ:インフルエンザ患者の約7割が経験する症状

頭痛は、インフルエンザの重要な判断材料の一つです。

2010年から2020年にかけてスペインで実施されたサーベイランスに基づく研究では、インフルエンザ患者7,832例のうち5,275例(67.4%)が、頭痛を訴えていたと報告されています。[6]

とはいえ、アメリカでおこなわれた文献レビュー研究では新型コロナ患者の半数は頭痛を自覚しているとされており、頭痛があるからといってインフルエンザの可能性が高いともいい切れません。[7]

頭痛以外の症状のあらわれ方を考慮する必要があります。

5.鼻水・鼻づまり:一般的な風邪で多く見られる症状

鼻水や鼻づまりは、一般的な風邪で多く見られる症状です。

インフルエンザでも鼻水といった上気道炎症状も見られますが、これらは発熱や全身症状が出たあとに続いてあらわれるのが特徴です。[2]

新型コロナでも鼻水は症状の一つとしてあげられるものの、主要な症状というよりは付随的な症状といえます。

以上から「鼻水・鼻づまりがおもな症状で、発熱や強い全身症状がない」場合は、一般的な風邪の可能性が考えられます。

【インフルエンザと新型コロナ】潜伏期間とウイルス排出期間から見る感染力の違い

インフルエンザと新型コロナでは、潜伏期間やウイルスを排出する期間が異なります。

項目インフルエンザ新型コロナ
潜伏期間1~3日1~14日
感染力の高い(ウイルス排出量が多い)期間症状出現の前日から発症後5~7日症状出現前から解熱後数日間続く可能性

期間は異なるものの、インフルエンザも新型コロナも症状が出る前から感染力がある点や、ウイルス排出が長く続く可能性があることに注意しましょう。

潜伏期間はインフルエンザが1〜3日、新型コロナはより長い可能性

潜伏期間とはウイルスに感染してから症状があらわれるまでの期間で、インフルエンザの場合は1〜3日です。[2]

新型コロナの場合は国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト(JIHS)によると1~14日といわれており、インフルエンザより長い可能性が示されています。[8]

インフルエンザでは感染後比較的早く症状が出るため、感染源の特定がしやすい一方、新型コロナでは潜伏期間が長いため、いつどこで感染したかの特定が難しくなる傾向があります。

発症前から感染力がある点はインフルエンザ・新型コロナ共通

インフルエンザも新型コロナも、症状が出る前から他人に感染させる可能性があり、気づかないうちにすでに周囲にウイルスをうつしている可能性があります。[9]

またインフルエンザでは発症後約5〜7日、新型コロナも解熱から数日はウイルスが排出される可能性があることから、学校保健安全法で以下のように出席停止期間が決められています。[10]

疾患出席停止期間
季節性インフルエンザ発症後5日を経過し、かつ解熱したあと2日(幼児は3日)を経過するまで
新型コロナ発症後5日を経過し、かつ症状が軽快したあと1日を経過するまで

このように症状が出る前から感染力があり、症状が改善しても感染力が残る点が、インフルエンザと新型コロナに共通する特徴です。

インフルエンザや新型コロナに子どもが感染したらとくに注意すべきポイント

子どもがインフルエンザや新型コロナに感染した場合、子ども特有の症状や重症化のサインに注意する必要があります。

とくにインフルエンザでは、脳症といった重篤な合併症が起こる可能性があります。

解熱剤の使用にも注意が必要であるため、保護者は子どもが感染した場合の危険なサインを知り、適切なタイミングで医療機関を受診しましょう。

インフルエンザ脳症の初期症状(けいれん・意識障害・異常言動)を見逃さない

インフルエンザの重篤な合併症として、脳症があげられます。[5]

脳症の初期症状として、以下のようなサインに注意してください。[11]

  • けいれんした、呼びかけにこたえない
  • 意識がおかしい、意識がない
  • 異常な言動がある

これらの症状が見られた場合は、すぐに救急車を呼びましょう。

インフルエンザ脳症は急速に進行する可能性があるため、早期の対応が重要です。

頭痛や嘔吐が続く場合はほかの病気の可能性も考慮する

子どもが頭痛や嘔吐を訴える場合、インフルエンザや新型コロナ以外の重篤な疾患の可能性も考慮する必要があります。

頭痛の原因はさまざまで、インフルエンザ、風邪、緊張性頭痛などが考えられます。[11]

けいれんをともなう場合や、頭をぶつけたあとの頭痛には注意が必要です。

以下のような症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。[12]

  • 嘔吐や下痢が続いている
  • 症状が長引いて悪化してきた
  • 呼吸が速い、息切れがある
  • 呼吸困難、苦しそう

インフルエンザでは中耳炎の合併、熱性けいれん、気管支喘息の誘発なども見られることがあります。

これらの合併症や髄膜炎など、ほかの病気の可能性も考慮して医師の診察を受けることが重要です。

市販の解熱剤は自己判断で使わない

子どもの発熱に対して市販の解熱剤を使う場合は、医師や薬剤師に相談してからにしましょう。

日本小児科学会の見解では、一部のNSAIDsはインフルエンザ脳炎・脳症の「直接の原因」ではないものの、発症や重症化になんらかの形で関与している可能性があると指摘されています。[13]

一方アセトアミノフェンでは、脳症の致命率が上昇するという報告は少なく、インフルエンザにともなう発熱を抑える場合はアセトアミノフェンの使用が推奨されています。[13]

インフルエンザや新型コロナの確定診断が可能なのは、医療機関で受ける検査のみです。

すぐに医療機関に行けない状況で子どもに解熱剤を使用する際は、当院クリニックフォアにご相談ください。できる限り医師や薬剤師に相談してからアセトアミノフェンを使用するようにしましょう。

※検査等が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。

インフルエンザや新型コロナのつらい症状をやわらげる自宅でのケア方法

インフルエンザや新型コロナに感染した際の基本的なケアとして、休養を十分にとること、高熱による発汗での脱水症状を予防するために水分補給をこまめにすることが重要です。

室内の空気が乾燥するとのどの粘膜の防御機能が低下するため、適度な湿度(50%〜60%)を保つことも忘れないようにしましょう。[12]

ただし、これらはあくまで対症療法です。症状が悪化する場合はためらわずに医療機関を受診してください。

高熱がつらいときの対処法

高熱が出た場合は、安静にして十分な休養をとることが基本です。

高熱による発汗で脱水症状を起こしやすくなるため、症状があるあいだは、こまめな水分補給が必要です。水やお茶、スポーツドリンクなどで少量ずつ頻繁に水分をとるようにしましょう。

市販の解熱剤を使用する場合は、インフルエンザ脳症のリスクを高めないためにもアセトアミノフェンを選ぶことが推奨されています。できる限り医師の診断を受けて処方されたお薬を服用しましょう。

もし高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪ければ、早めに内科や小児科などを受診しましょう。

なお、インフルエンザの検査は発熱後12時間以上経過してから受けると、より正確な結果が得られます。[12]

せきやのどの痛みをやわらげる方法

せきやのどの痛みをやわらげるためには、適度な湿度を保つ、こまめに水分補給するなどを意識しましょう。

空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下します。[12]

乾燥しやすい室内では加湿器の使用や濡れタオルを干すなどして、適切な湿度(50%~60%)を保つことが推奨されています。[12]

また水やお茶などでのどを潤すことで、乾燥による不快感を軽減できます。温かい飲み物は、のどを温めて痛みをやわらげる効果も期待できるので取り入れてみると良いかもしれません。

これらをおこなっても症状が強い場合や長引く場合は、医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。

インフルエンザと新型コロナの症状の違いに関するよくある質問

インフルエンザと新型コロナの症状や対応について、よく寄せられる質問にお答えします。

これらの情報を参考に、適切な行動をとってください。

症状だけでインフルエンザ・新型コロナの判断が難しい場合、検査は必要ですか?

症状だけでインフルエンザと新型コロナを見分けることは難しく、確定診断には検査が必要です。

インフルエンザの検査には、医療機関で広く使われている「迅速診断キット」があります。鼻の奥やのどから採取した検体を使ってウイルスの有無を調べる検査で、結果は20分以内にわかるのが特徴です。

ただし発症して12時間以内では体内のウイルス量がまだ少なく、検査で陽性にならないことがあるため、より正確な結果を得るには発熱から半日以上経ってから検査を受けましょう。

12時間経っていないからといって、つらい症状を我慢する必要はありません。

症状が強い場合は、発症後12時間を待たずに当院クリニックフォアにご相談いただくか、近医を受診してください。

※触診・検査が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。

インフルエンザと新型コロナが同時に感染することはありますか?

インフルエンザと新型コロナに同時に感染することもあります。

2つのウイルスは感染経路が似ており、どちらも感染者がせきやくしゃみをしたり、話したりする際に、飛沫やエアロゾル(細かい粒子)によってうつります。

WHOによるとインフルエンザと新型コロナの重症化および入院を防ぐ方法は、両方のワクチン接種です。[1]

以下のような基本的な感染予防策も欠かせません。

  • ほかの人から少なくとも1メートルの距離を保つ
  • 距離を保てない場合はマスクを着用する
  • 混雑した換気の悪い場所を避ける
  • 部屋の窓やドアを開けて換気を良くする
  • 外出後の手洗い、うがいを徹底する
  • 室内の湿度を50~60%に保つ

インフルエンザ、新型コロナのワクチン接種は、当院クリニックフォアでも受けられます。

同時感染のリスクがあるからこそ、両方の感染症に対する予防策をしっかり実践しましょう。

インフルエンザと新型コロナの症状の違いを理解し冷静に対応しましょう

インフルエンザと新型コロナは、どちらも呼吸器にかかわる感染症ですが、症状のあらわれ方や重症化リスクに違いがあります。

インフルエンザは突然の高熱と強い全身症状が特徴で、新型コロナはせきやのどの痛みといった気道症状があらわれやすく、程度は人によって異なります。

症状だけでの確定診断は難しいため、高熱や強い症状がある場合、子どもにけいれんや意識障害が見られる場合は、早めに医療機関を受診してください。

正しい知識を持って症状に応じて冷静に対応し、ご自身とご家族の健康を守りましょう。

参考文献

  1. Q&A(COVID-19):インフルエンザとの類似点と相違点 | WHO Centre for Health Development
  2. インフルエンザ(詳細版)|国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト(JIHS)
  3. COVID-19と嗅覚・味覚障害|一般社団法人日本血栓止血学会
  4. 季節性インフルエンザ(ファクトシート)|厚生労働省検疫所FORTH
  5. A-02 インフルエンザ - A. 感染性呼吸器疾患|一般社団法人日本呼吸器学会
  6. Factors associated to the presence of headache in patients with influenza infection and its consequences: a 2010–2020 surveillance-based study|PMC
  7. Headache associated with COVID-19: Epidemiology, characteristics, pathophysiology, and management|PubMed
  8. 新型コロナウイルス感染症|国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト(JIHS)
  9. インフルエンザ(季節性)(seasonal influenza)|一般社団法人日本感染症学会
  10. 学校保健安全法施行規則|e-Gov 法令検索
  11. 頭を痛がる|東京都こども医療ガイド
  12. インフルエンザの感染を防ぐポイント「手洗い」「マスク着用」「せき(せき)エチケット」 | 政府広報オンライン
  13. Q57:インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?|一般社団法人 日本小児神経学会