インフルエンザによるのどの痛みの原因と正しい対処法や受診の目安について解説

インフルエンザにかかり、熱だけでなくのどが焼けるように痛くてつらい方や、のどの痛みがいつまで続くのかと不安に感じていませんか?
高熱や関節痛が注目されがちなインフルエンザですが、強いのどの痛みに悩まされる方は少なくありません。
この記事では、インフルエンザののどの痛みの特徴や痛みが強いときの対処法について解説します。
市販薬の選び方についても紹介しますので、のどの痛みにお困りの方はぜひ参考にしてみてください。

インフルエンザの症状であるのどの痛みの特徴や経過

インフルエンザでは、高熱や関節痛とともに、のどの痛みが主要な症状としてあらわれます。

厚生労働省や日本呼吸器学会によれば、インフルエンザの典型的な症状は38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状に加えて、のどの痛み、鼻水、せきといった呼吸器症状です[1][2]

のどの痛みは、インフルエンザウイルスが上気道の粘膜細胞に侵入し、増殖する過程で炎症反応が生じるために起こります。

この炎症は急速に進行するのが特徴で、感染初期から強い痛みを自覚することが多いです。

のどの痛みの程度には個人差があり、つばを飲み込むのもつらいと感じる方もいれば、声がかすれるほどの症状を訴える方もいます。

また、高熱による脱水症状が加わると、のどの乾燥がさらに痛みを増強させることもあります。

インフルエンザA型・B型ともにのどの痛みを引き起こす

のどの痛みは、インフルエンザA型・B型のどちらであってもあらわれる可能性があります。

厚生労働省では、A型・B型ともに「発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状」と「のどの痛み、鼻汁、せきなどの呼吸器症状」が症状として記載されており[3]、特定の型のみにのどの痛みが限定されるという記載はありません。

A型の方が症状が重くなる傾向があるとされていますが、B型でも同様の症状があらわれるため、変わりはないとされています。

どちらの型であっても、ウイルスが上気道の粘膜に感染して炎症を起こすメカニズムは同じであるため、のどの痛みは両方の型で共通してみられる症状です。

のどの痛みのピークと経過

インフルエンザウイルスの潜伏期間は通常1~4日(平均2日)とされており[2]、この期間を過ぎると突然38℃以上の高熱とともに、のどの痛みなどの症状があらわれることがあります。

のどの痛みは発熱のピークとほぼ同じタイミングで最も強くなることが多いです。インフルエンザウイルスの排出期間は一般的に発症後3~7日間とされています[1]。症状が強い期間中は、ウイルスが上気道で活発に増殖しているため、炎症も強く、のどの痛みが最もつらい時期といえるでしょう。

このことから、症状のピークは発症から約48時間で訪れることが多く、その後は徐々に軽減していきます。解熱する時期は人によって異なり、のどの痛みも同時期から改善していくケースが大半です。

のどの痛みなどの症状が1週間以上続く場合は、二次感染や合併症の可能性もあるため、医療機関への受診を検討しましょう[2]

のどの痛みだけでもインフルエンザの可能性がある?

のどの痛みだけがあらわれる場合でも、インフルエンザである可能性は否定できません。

高熱や全身症状を伴わない場合、インフルエンザではなく風邪や他の上気道感染症の可能性が高いと考えられます。

しかし、インフルエンザワクチンを接種している場合はのどの痛みだけでもインフルエンザの可能性があります。ワクチン接種により発症をある程度抑える効果が期待でき、仮に発症してものどの痛みや倦怠感などの症状が軽くなることが報告されています[3]

厚生労働省は、インフルエンザワクチンには重症化を予防する効果があることを明示しており、ワクチン接種者でも感染・発症する可能性があると説明しています[1]

特に高齢者や赤ちゃんと接触する機会が多い方、基礎疾患を持つ方と同居している方は、軽症でも早めに受診し、適切な診断と感染対策を受けることが大切です。

つばも飲み込めないのどの痛みへの対処法

インフルエンザによる強いのどの痛みを和らげるための対処法として挙げられているポイントは3点です[3][4]

  • 部屋の湿度を50~60%に保ちのどの乾燥を防ぐ
  • こまめな水分補給でのどを潤す
  • のどへの刺激が少ない食事をとる

空気が乾燥すると、のどや鼻の粘膜の防御機能が低下するため、加湿器などを使用して室内の湿度を50〜60%に保ってのどの乾燥を防ぎましょう。加湿器によりのどが潤い、痛みの緩和に役立ちます。

インフルエンザを発症しているときは高熱による発汗で脱水症状になりやすいため、こまめに水分をとることが必要です[4]。のどの痛みで飲み込みづらい場合でも、少量ずつゆっくりと水分を補給するよう心がけましょう。食事に関しても同様に、のどに刺激がなく、のどごしのよいものを少量ずつ食べるようにしてください。

それぞれについて、解説します。

部屋の湿度を50~60%に保ちのどの乾燥を防ぐ

空気が乾燥すると、インフルエンザウイルスに対する抵抗力が弱まるだけでなく、のどの痛みも強まります。厚生労働省が推奨している適切な湿度を保つことで、のどの粘膜を保護し、痛みの軽減に効果があるとされています。湿度の目安は50〜60%です[4]

加湿器がない場合でも、以下の方法で対処ができます。

  • 濡れたタオルを室内に干す
  • 洗濯物を部屋干しにする
  • 水を入れた容器を置く

乾燥しやすい冬季や、暖房を使用している室内では、意識的に湿度管理をおこなう必要があります。

ただし、湿度が高すぎるとカビやダニの発生につながる可能性があるため、50〜`の湿度を保つことが大切です。湿度計を使用して室内の湿度を確認しながら、加湿器の出力を調整するとよいでしょう。

こまめな水分補給でのどを潤す

インフルエンザによるのどの痛みには、こまめな水分補給をおこないましょう。

水分を十分に補給することは、インフルエンザ療養の基本的な対策のひとつです。特に高熱による発汗などで脱水症状になりやすいため、意識的に水分をとるようにしてください。

水分の種類については、お茶でもジュースでもスープでも、飲みたいもので構いません[3]。無理に特定の飲み物を飲む必要はなく、自分が飲みやすいと感じるものを選びましょう。少量ずつゆっくりと飲むことも、のどへの負担の軽減につながるかもしれません。

水分をとることが困難なほどのどの痛みがひどい場合や、尿の量が極端に減った場合は、脱水症状のサインかもしれないため、早めに医療機関を受診しましょう[5]

のどへの刺激が少ない食事をとる

のどに刺激が少なく、柔らかく飲み込みやすいものを食事に取り入れましょう。

以下の食べ物が適しています。

  • おかゆ
  • うどん
  • スープ
  • プリン
  • ゼリー

厚生労働省は、インフルエンザにかかった際の基本対策として、十分な休養とバランスのよい食事の重要性を示しています[3][4]。野菜スープ、ポタージュスープ、栄養補助飲料など、栄養価の高いスープや飲み物をとるよう心がけましょう。のどが痛い場合は、栄養バランスだけでなく、のどへの刺激を最小限にする工夫も大切です。

熱すぎる食べ物や冷たすぎる食べ物は、のどの粘膜を刺激する可能性があります。また、からい食べ物、酸味の強い食べ物、硬い食べ物は、のどの痛みを悪化させる可能性があるため、避けた方がよいでしょう。

安静にして休養をとりながら、できる範囲で栄養補給を続けることが、早期回復への近道です。

インフルエンザののどの痛みに使える市販薬の選び方のポイント

インフルエンザによるのどの痛みに対して市販薬を選ぶ際は、薬局・ドラッグストア等の薬剤師・登録販売者に相談してください。

市販薬とはいえ、医薬品の有効成分にはさまざまな種類があり、効き方や副作用などにいろいろな違いがあるため、自分の症状や体質に合ったお薬を選ぶ必要があります[6]

特に注意すべきは、解熱鎮痛薬や風邪薬との併用です。市販の解熱鎮痛薬には、医療機関で処方される解熱鎮痛薬と同じ有効成分が入っており、症状を和らげてくれます。

しかし、他の解熱鎮痛薬や風邪薬と併用すると、同じ効果がある成分が重なってしまい、安全な量より多く服用することになってしまうことがあります[6]

以前、お薬でアレルギーやぜんそくが起きたことがある方や、医療機関で処方されたお薬を服用中の方、妊娠している方も市販薬を選ぶ際は注意が必要です。子どもや妊娠している方は、服用できるお薬が限られるため、慎重に選ばなければなりません。

どのようなお薬を選べばよいのか、詳しく見ていきましょう。

のどの炎症を直接抑える成分を含むお薬を選ぶ

のどの痛みを和らげるためには、炎症を抑える成分を含む市販薬の選択が考えられます。

ただし、インフルエンザに感染している場合は、市販薬で対処するのではなく、医療機関を受診することが最優先です。

インフルエンザの検査をおこない、陽性と診断された場合の治療には、抗インフルエンザウイルス薬が処方されることがあります。発症後48時間以内に服用を開始することで、症状の重症化を防ぎ、回復を早める効果が期待できます。

市販薬の服用を検討している場合、できれば薬剤師や登録販売者にご相談ください。

全身の痛みも和らげる解熱鎮痛成分を選ぶ

インフルエンザによるのどの痛みだけでなく、全身の痛みを和らげるのであれば、解熱鎮痛成分を含む市販薬が有効です[6]。解熱鎮痛薬には「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と呼ばれるものと、そうでないもの(アセトアミノフェン)があります。

痛みを和らげる成分として、厚生労働省では有効成分がアセトアミノフェンであるお薬を推奨しています。特に子どもの場合、一部のNSAIDsはインフルエンザ脳炎・脳症に何らかの関与をしている可能性があると考えられており、インフルエンザ治療に際してはNSAIDsの服用は慎重にすべきと考えられています[6]

のどの痛みに加えて早めの受診が必要なタイミング

インフルエンザによるのどの痛みに加えて、以下のような症状があらわれた場合は、早めに医療機関を受診してください[4]

  • けいれんしたり呼びかけにこたえない
  • 呼吸が速い、または息切れがある
  • 呼吸がしづらく、苦しそうにしている
  • 顔色が悪い
  • おう吐や下痢が続いている
  • 症状が長引いて悪化してきた
  • 胸の痛みがある

これらは重症化のサインである可能性があります。幼児や高齢者、持病のある方、妊娠中の女性は、インフルエンザにかかると重症化する危険性が高いため、特に注意が必要です。

厚生労働省によれば、高齢者や呼吸器や心臓などに慢性の病気を持つ方は、インフルエンザそのものや、もともとの病気が悪化しやすく、死に至る原因となることもあるため、十分に注意する必要があります。また、小児では、まれに急性脳症を起こして死亡したり後遺症が残ったりすることがあることが明らかとなっており、早期の受診が重要です[3]

発熱12時間未満でも、症状が急激に悪化していたら受診し、医師からの指示を仰ぐことが大切です。

インフルエンザののどの痛みに関するよくある質問

インフルエンザによるのどの痛みについて、多くの方が抱える疑問にお答えします。初期症状の見分け方や風邪との違いについて解説します。

のどのイガイガはインフルエンザの初期症状ですか?

のどのイガイガは、インフルエンザの初期症状である可能性が高いです。日本呼吸器学会でも、インフルエンザでは発熱、頭痛、全身倦怠感などの全身症状とともに咽頭痛を伴うとしています[2]

のどのイガイガ感は、インフルエンザウイルスが上気道の粘膜に感染し始めたときにあらわれる初期の違和感である可能性があります。この段階では、まだ高熱や強い全身症状が出ていないこともありますが、数時間から1日程度で急激に症状が悪化するケースがあることも否定できません。

のどのイガイガに加えて全身症状があらわれた場合は、インフルエンザの可能性が高いです。早めに医療機関を受診することを推奨します。

のどの痛みだけで風邪かインフルエンザか見分けられますか?

のどの痛みだけで風邪かインフルエンザかを見分けることは困難です。

インフルエンザの特徴は、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が急激にあらわれることです[1]。一方、風邪は発熱があってもインフルエンザほど高くないこともあり、のどの痛み、鼻水、くしゃみ、せきなどの部分的な症状が中心で、比較的ゆっくり発症します。

また、流行の時期も異なり、インフルエンザは12~3月(1~2月がピーク)に流行しますが、風邪は年間を通じて、特に季節の変わり目などに見られます[1]

のどの痛みだけでインフルエンザかどうかを判断せず、全身症状があるかどうかと発症の急激さを確認し、インフルエンザが疑われる場合は早めに医療機関を受診しましょう。

のどの痛みにトローチやのど飴は効果がありますか?

トローチやのど飴は、のどの痛みを一時的に和らげる効果がありますが、インフルエンザそのものを治療する効果はありません。

トローチやのど飴には以下のような一時的に症状を和らげる効果が期待できます。

  • 唾液分泌を促しのどを潤す
  • 含有成分(メントール、ハーブエキスなど)による清涼感
  • 抗炎症成分配合のものは軽度の痛み緩和

ただし、これらはインフルエンザウイルスに対する治療効果はありません。

のどの痛みが強い場合、医師の処方による鎮痛薬や消炎薬の方が効果的です。トローチやのど飴に頼りすぎず、症状に応じて適切な医療を受けましょう。

まとめ

インフルエンザによるのどの痛みは、ウイルスが上気道の粘膜に感染することで引き起こされます。A型・B型のどちらでも症状があらわれ、発症から5〜7日程度で改善します。のどの痛みだけでもインフルエンザの可能性があり、ワクチン接種済みの方では軽症で済むケースも少なくありません。

のどの痛みに対する対処法は3点です。

  • 安静と休養
  • こまめな水分補給
  • 室内の湿度を50〜60%に保つこと

のどへの刺激が少ない食事を心がけ、症状がつらい場合は市販の解熱鎮痛薬も選択肢となります。市販薬を服用する際は、薬剤師や登録販売者に相談して購入することが重要です。

インフルエンザの症状で医療機関に行きたいけれど、外出がつらい、感染を広げたくないという方には、オンライン診療という選択肢があります。

クリニックフォアのオンライン保険診療では、風邪・発熱・のどの痛みなどの内科症状に対して医師が診察をおこないます。

自宅から安心して医療を受けられるオンライン診療を、症状に応じて活用することをご検討ください。

参考文献

  1. 厚生労働省. 令和6年度 今冬のインフルエンザ総合対策について インフルエンザQ&A.
  2. 日本呼吸器学会. インフルエンザ.
  3. 厚生労働省. インフルエンザの基礎知識.
  4. 政府広報オンライン. インフルエンザの感染を防ぐポイント「手洗い」「マスク着用」「咳(せき)エチケット」. 2009.
  5. 東京都感染症情報センター. 保護者のための新型インフルエンザ対策ガイド.
  6. 厚生労働省. 市販の解熱鎮痛薬の選び方.