インフルエンザの倦怠感はいつまで続く?原因と長引く場合の対処法を解説

インフルエンザの高熱は下がったのに、からだのだるさ(倦怠感)が続いて不安に感じていませんか。
「倦怠感はいつまで続くのだろう」「何かほかの病気ではないか」と心配になる方も少なくありません。
この記事では、インフルエンザ後の倦怠感が続く期間の目安や原因、回復を促す具体的な対処法を解説します。
最後までお読みいただくことで、ご自身の症状に対する不安がやわらぎ、安心して療養に専念できるようになります。

インフルエンザの倦怠感は発症から1週間以上続くことがある

インフルエンザの典型的な症状には、発熱やせき、のどの痛みに加えて、全身倦怠感が含まれます[1]

これらの症状は急激にあらわれ、熱が下がったあとも倦怠感だけが残るケースは珍しくありません。

通常は発症後1週間ほどで症状は軽快しますが、回復期間には個人差があり、とくに子どもや高齢者、基礎疾患を持つ方は重症化しやすく、回復に時間がかかる可能性があります[1]

<重症化しやすい方>

  • 妊娠中の女性
  • 5歳未満の子ども
  • 高齢者
  • 慢性疾患のある方
  • 免疫抑制状態(HIV/AIDS、化学療法やステロイド投与中、悪性腫瘍治療中など)にある方

上記にあてはまらない場合でも、体力の消耗が大きいほど倦怠感が長引く傾向にあるため、焦らず十分な休養をとることが大切です。

インフルエンザで倦怠感が長引くときに考えられる原因

インフルエンザの倦怠感が続く原因として考えられるのは、ウイルスと戦うことによる体力の消耗と、免疫反応物質の影響の2つです。

インフルエンザウイルスに感染すると、からだは発熱や炎症反応を起こしてウイルスと戦います。この過程で大量のエネルギーが消費され、体力が著しく低下します。

また、理化学研究所がおこなったラットを用いた研究によると、免疫システムが産生するサイトカイン(インターロイキン-1β)という物質が脳に作用し、倦怠感を引き起こすことが明らかとなりました[2]

1.ウイルスとの戦いで体力を大きく消耗する

インフルエンザに感染すると、からだはウイルスを排除するために多くのエネルギーを使います。

インフルエンザは急性のウイルス感染症で、以下の症状が急激にあらわれるのが特徴です[3]

  • 38度以上の高熱
  • 悪寒
  • 頭痛
  • 関節痛、筋肉痛

体温を上げてウイルスの増殖を抑えたり、免疫細胞を活性化させたりする過程では、平常時とは比較にならないほどのエネルギーが必要になります。さらに、高熱が3〜5日続くと体内のエネルギー貯蔵が使い果たされ、体力が大きく低下していきます。

そのため、ウイルスと戦い終えたあとには、体力が元の状態に戻るまで時間がかかり、その反動として倦怠感があらわれると考えられます。

2.サイトカインなど免疫反応物質の影響が残る

インフルエンザによる倦怠感は、免疫システムが産生するサイトカインという物質が脳に作用して引き起こされます[2]

理化学研究所がおこなったラットを用いた研究によると、インフルエンザ感染時の倦怠感や食欲不振などの症状はウイルスが引き起こすのではなく、免疫反応によって産生されるサイトカイン(インターロイキン-1β)が脳に働きかけることで生じることが明らかになっています[2]

サイトカインは、ウイルスと戦うために免疫細胞が放出する物質で、体温調節や炎症反応のコントロールに重要な役割を果たします。しかしサイトカインが脳内に移行すると、活動レベルを強制的に下げる指令として働き、倦怠感を引き起こすのです[2]

ウイルスが体内から排除されたあとも、サイトカインの影響が一定期間残るため、解熱後も倦怠感が続くことがあります[2]

インフルエンザの倦怠感をやわらげるためのセルフケア

インフルエンザによる倦怠感を軽減するには、十分な休息、こまめな水分補給、消化の良い食事の3つが重要です。

基本的なセルフケアを実践することで、倦怠感の軽減と早期回復が期待できます。

十分な睡眠と休息で体力の回復に専念する

インフルエンザにかかると、からだはウイルスと戦うために多くのエネルギーを使うため、からだをしっかり休めて体力を回復させることが重要です。

仕事や学校は無理をせずに休み、静かな環境で安静に過ごしましょう。動き回ると回復が遅れるだけでなく、周囲への感染リスクも高まります。

寝室の温度と湿度を適切に保ち、快適に眠れる環境を整えることもポイントです。からだが求めるだけ十分に眠ることで免疫機能がよりよく働き、早い回復につながることが期待できます。

こまめな水分補給で脱水を防ぐ

インフルエンザでは高熱や大量の発汗が続き、体内の水分が急速に失われるため、こまめな水分補給が欠かせません。食欲不振で食事からとれる水分も減るため、脱水のリスクは一段と高まります。

水やお茶に加え、経口補水液やスポーツドリンクも摂取すると、失われた電解質も補えるためおすすめです。

ただし、糖分が多い飲料を大量に飲むと、血糖値が急上昇してからだに負担がかかるほか、腸での吸収が悪くなって水分が十分に取り込めない場合があります。甘い飲料は飲みすぎに注意しましょう。

「のどが渇いた」と感じる前から、少量をこまめに飲むことがポイントです。

十分な水分が保たれることで、脱水による倦怠感を防ぎ、体温調節といった機能が適切に働きやすくなります。

おかゆやうどんなど、消化の良い食事で栄養を補給する

インフルエンザによる発熱や全身症状が続くと、胃腸の働きも一時的に弱まります。

この状態で普段どおりの食事をとると消化に負担がかかり、体力を消耗してしまうことがあるため、消化の良い食品を選ぶことが重要です。

<消化の良い食事の例[4]

  • 雑炊
  • うどん(月見うどんや鍋焼きうどん)
  • マッシュポテト
  • 煮魚・蒸し魚
  • 茶碗蒸し
  • 湯豆腐
  • 煮物

これらの食品は胃腸への負担が少なく、必要なエネルギーやタンパク質を効率良く摂取できます。

食欲がない場合は水分補給を優先し、食べられるものから少しずつ摂取してみましょう。

インフルエンザの倦怠感が残る場合は無理せず休養を優先する

インフルエンザの復帰基準は学校保健安全法によって「発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)」と定められています[5]。社会人の場合、法的な基準はありませんが、多くの企業が学校保健安全法の基準に則っています。

しかし、この期日は他者への感染リスクが低下する時期として決められた最低限の基準であり、「復帰しなければならない時期」を示しているわけではありません。

東京都感染症情報センターは、インフルエンザからの回復には十分な休養が必要であると指摘しています[6]。厚生労働省も、法的基準を参考にしつつ十分な休養をとることの重要性を強調しています[7]

倦怠感が残っている状態で無理に復帰すると、回復が遅れるだけでなく体調が悪化する可能性もあります。法的基準を満たしていても、からだが十分に回復していないと感じる場合は、休むことを優先させて回復に専念しましょう。

インフルエンザによる長引く倦怠感で再受診を検討すべき症状

倦怠感が長引いて、呼吸困難や意識障害がみられたり、1週間以上経っても改善しなかったりする場合は再受診を検討しましょう。

インフルエンザは通常1週間程度で回復に向かいますが、肺炎やインフルエンザ脳症などの合併症を起こすことがあります[8]

ただの回復の遅れと危険なサインを見分けるために、具体的な受診の目安を知っておきましょう。

呼吸が苦しい、顔色が悪いなど重症化のサイン

呼吸困難や顔色の悪化は、肺炎をはじめとした合併症の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。

インフルエンザに感染したのが子どもの場合は症状をうまく伝えられないケースもあるため、厚生労働省が示す以下の症状を目安に受診を検討しましょう[9]

  • 呼吸が苦しそう、息切れがひどい
  • 顔色が悪い、唇や爪が紫色になっている
  • 胸の痛みが続く
  • 嘔吐や下痢が続き、水分がとれない
  • 尿が半日以上出ていない

これらの症状は、インフルエンザに合併する肺炎や気管支炎などの症状かもしれません。高齢者や基礎疾患のある方なども重症化リスクが高いため、注意深い観察が必要です。

状態悪化のサインがみられたら、夜間や休日でも速やかに医療機関を受診しましょう。

意識がもうろうとする、けいれんが起きる

意識障害やけいれんは、インフルエンザ脳症といった中枢神経系の合併症が疑われるため、直ちに救急外来を受診します。

「インフルエンザ脳症の診療戦略」のフローチャートによると、以下の場合は救急受診が必要です[10]

  • 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い
  • けいれんを起こしたあとに意味不明な言動がある
  • けいれんが「長い」「くり返す」「左右非対称」などの複雑型である
  • 異常な発言・行動が1時間以上みられる(親がわからない、急に走り出す、大声で歌いだすなど)

これらは、インフルエンザ脳症や異常行動の兆候である可能性があります。

とくに子どもの場合は熱性けいれんや熱せん妄も起きやすく、脳症との区別が困難です。

少しでもおかしいと感じたら、医療機関を受診してください。

1週間以上経っても倦怠感が改善しない、悪化する場合

インフルエンザは通常、発症後3〜5日で熱が下がり、1週間程度で回復に向かいます[3]

しかし1週間を過ぎても倦怠感が強く残っている、一度改善したあとに再び悪化する場合は以下の可能性が考えられます[8]

  • 肺炎をはじめとした細菌感染による二次感染
  • 慢性疲労症候群といったほかの病気
  • 回復期の体力低下が想定以上に長引いている

1週間以上経過しても倦怠感が続く場合は、自己判断せず医療機関で診察を受けるか、当院クリニックフォアにご相談ください。

インフルエンザの倦怠感に関するよくある質問

インフルエンザの倦怠感について、よくある疑問にお答えします。

疑問点を解消して、どのように対処すべきかの判断材料としてご活用ください。

インフルエンザで倦怠感が続くのは「後遺症」なのでしょうか?

インフルエンザ後の倦怠感は、一般的に回復過程の一時的な症状であり、永続的な後遺症とはいえません。

「後遺症」とは、病気が治癒したあとも残る機能障害を指すことが多い用語です。

インフルエンザ後の倦怠感は、通常発症から1〜2週間程度で自然に改善していくため、後遺症とは区別されます。

注意が必要なのは「合併症」です。

インフルエンザでは、肺炎やインフルエンザ脳症などの合併症を起こす可能性があります[8]。これらの合併症は、インフルエンザそのものとは別の病態であり、重篤化すると長期的な影響を残すケースもあり、注意が必要な病態です。

倦怠感が1週間以上続いても改善しない場合や、呼吸困難といった危険なサインがあらわれた場合は、合併症の可能性を考えて医療機関を受診しましょう。

新型コロナウイルス感染症の倦怠感との違いはありますか?

倦怠感という症状そのものは、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症のどちらでも共通してみられる症状です。

そのため、倦怠感だけで両者を区別することはできません。

同じインフルエンザであっても人によって倦怠感の強さが異なるため、自己判断をより難しくさせます。

倦怠感が続く場合、原因がインフルエンザによるものなのか、新型コロナウイルスなのか、別の病気なのかの確定診断には、医療機関での診察や検査が必要です。

もし倦怠感が長引いて「感染症かもしれない」と不安がある場合は、自己判断せず早めに医療機関へ相談しましょう。

インフルエンザによる倦怠感は正しい知識を持って焦らず対処しましょう

インフルエンザの倦怠感は、発症後1週間ほど続くことがあります。

原因の多くが体力の消耗や、からだがウイルスと戦う過程で生じるサイトカインの影響による自然な生体反応です。

回復を促すためには、十分な休養をとり、こまめに水分補給・胃腸にやさしい食事などで無理なく栄養を補うことがポイントです。

呼吸が苦しい、意識がもうろうとする、倦怠感が1週間以上続くなどの症状がある場合は、重症化の可能性も考えられるため、早めに医療機関の受診を検討しましょう。

インフルエンザの倦怠感は多くの場合、適切なセルフケアで自然に回復していきます。

体調の変化には注意を払いつつ、安心して療養に専念することが大切です。不安な症状があれば、遠慮なく当院クリニックフォアにご相談ください。

参考文献

  1. 季節性インフルエンザ(ファクトシート)|厚生労働省
  2. Brain Interleukin-1β and the Intrinsic Receptor Antagonist Control Peripheral Toll-Like Receptor 3-Mediated Suppression of Spontaneous Activity in Rats|PLOS One
  3. インフルエンザ(詳細版)|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
  4. 消化の良い食事|北里大学病院
  5. 学校保健安全法施行規則 | e-Gov 法令検索
  6. インフルエンザ対策のポイント | 東京都感染症情報センター
  7. 令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A|厚生労働省
  8. A-02 インフルエンザ - A. 感染性呼吸器疾患|一般社団法人日本呼吸器学会
  9. 新型インフルエンザ対策ガイドライン保護者向けパンフレット|厚生労働省
  10. インフルエンザ脳症の診療戦略|日本医療研究開発機構研究費 (新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業)「新型インフルエンザ等への対応に関する研究」班