インフルエンザの「前兆」はないが典型的な初期症状はある
インフルエンザには前兆といえる症状は存在しません。「突然」発熱や頭痛、全身のだるさなどがあらわれる呼吸器系の感染症です[1]。
潜伏期間は通常1〜4日間(平均2日間)で、この期間中は症状がないまま経過します[1]。
つまり「なんとなく調子が悪い」という段階を経ずに、いきなり高熱や強い全身症状で発症するのがインフルエンザの特徴です。
多くの方が「前兆」と感じているのは、発症直後にあらわれる初期症状である可能性があります。
インフルエンザでみられる前兆(初期症状)
インフルエンザの発症直後には、以下のような症状があらわれます。[1]
- 突然の高熱
- 頭痛
- 全身のだるさ
- 筋肉痛、関節痛
- 悪寒
一般的な風邪と異なる点は、全身症状が「突然」かつ「強く」あらわれることです。
風邪では鼻水やのどの痛みから徐々に症状が進むことが多いのに対し、インフルエンザは高熱と全身のだるさで急激に発症するのが特徴です。
日本呼吸器学会によると、これらの全身症状に続くかたちで、せきや鼻水、のどの痛みなどの気道症状がみられることが多いです[2]。
発熱やそのほかの症状は、約1週間で改善することが多いとされています[2]。
消化器系(腹痛・下痢・嘔吐)の症状が出る場合も
インフルエンザは呼吸器の感染症ですが、消化器症状をともなうこともあります。
国立成育医療研究センターによると、インフルエンザでは発熱や全身のだるさといった典型的な症状に加え、吐き気や腹痛、下痢などの消化器症状が出ることもあります[3]。
「お腹の風邪」と呼ばれるウイルス性胃腸炎(ノロウイルスやロタウイルスなど)とは異なり、インフルエンザでは呼吸器症状や全身症状が主体です。
消化器症状だけが目立つ場合は、インフルエンザ以外の感染症(ウイルス性胃腸炎など)の可能性が考えられます。
子ども特有の症状と注意すべきサイン
国立成育医療研究センターによると、インフルエンザは軽症のまま改善することも多い一方で、子どもでは以下のような合併症を引き起こすことがあります[3]。
- クループ症候群(声がかすれる、ケンケンというせき、息を吸うときのヒューヒュー音)
- 気管支炎・肺炎
- 熱性けいれん(発熱時のけいれん発作)
- 急性脳症(まれだが重篤)
クループ症候群は生後6か月から3歳くらいまでのお子さんに多く、熱性けいれんは1〜2歳がもっとも起こりやすい傾向です[3]。
また、日本小児科学会は、インフルエンザ罹患時は抗ウイルス薬投与の有無にかかわらず、異常行動の出現に注意しながらの見守りが必要としています[4]。
けいれんや意識障害、異常行動などがみられた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
インフルエンザと風邪・新型コロナの前兆(初期症状)の主な違いは「進行速度」と「範囲」
インフルエンザと風邪の違いは、「症状の進行速度」と「症状があらわれる範囲」です。
インフルエンザは突然発症し、高熱とともに頭痛や全身倦怠感など「全身症状」が強くあらわれるのが特徴です[1]。
一方、一般的な風邪は鼻水やのどの痛みといった「局所的な症状」から始まり、比較的ゆるやかに進行します。
日本呼吸器学会も「インフルエンザは一般的な風邪とは異なり重症化しやすい」と明記しています[2]。
新型コロナとの違いについては、WHOによると「どちらもせき、鼻水、のどの痛み、発熱、頭痛、倦怠感など、共通の症状を引き起こす」とされているため、初期症状だけでインフルエンザと新型コロナを区別することは困難です[5]。
正確な診断には医療機関での検査が必要です。
インフルエンザが疑われる際の医療機関受診のタイミングと注意点
インフルエンザが疑われるときの受診のタイミングには、治療薬の効果が高い時期(発症後48時間以内)と、正確な検査ができる時期(発熱から6〜12時間以上経過後)という2つの目安があります。
高齢者や妊娠中の方、基礎疾患のある方などは重症化リスクが高いため、インフルエンザを疑う症状が出たら早めに医療機関へ相談してください。
抗ウイルス薬の効果が高い「発症後48時間以内」の受診がひとつの目安
抗インフルエンザウイルス薬の効果を最大限に得るためには、発症から48時間以内の服用開始が重要です。
政府広報オンラインによると、抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間が通常1~2日間短縮され、ウイルス排出量も減少します[6]。
症状が出てから48時間以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できませんが、医師の処方どおりに服用することが推奨されています[6]。
高熱や強い全身症状を感じたら、翌日には医療機関を受診することを検討してください。
ただし後述するように検査の精度の観点からは、発熱後6~12時間以上経過してから受診したほうが、より正確な診断を受けられます。
正確な検査のためには発熱から12時間以上経過後を推奨
インフルエンザの迅速診断検査を受ける際は、発熱から6~12時間以上、可能ならば12時間以上経過してからの受診が推奨されます。
政府広報オンラインでは「発熱12時間未満の場合、検査の結果が陽性にならないことがある」と明記されています[6]。
発症直後はウイルス量が検出可能なレベルに達していない場合があるためです。
実際にはインフルエンザに感染していても、検査では「陰性」と判定されてしまう(偽陰性)可能性があるのです。
受診タイミングの目安をまとめると、「発熱後6~12時間以上(出来れば12時間以上)、48時間以内」がインフルエンザの検査・治療において適切な受診タイミングといえます。
高齢者や妊婦など重症化リスクが高い人は速やかに相談
厚生労働省検疫所(FORTH)によると、以下の方々は感染すると重症化したり、重篤な合併症を起こすリスクが高くなったりします[1]。
- 65歳以上の高齢者
- 妊娠中の女性
- 5歳未満の子ども
- 慢性疾患(心臓病、肺疾患、腎臓病、糖尿病など)のある方
- 免疫機能が低下している方
日本呼吸器学会も「高齢者では肺炎、小児では脳症が重要な合併症」と指摘しています[2]。
重症化リスクの高い方は、「発熱後12時間」という検査精度上の目安を待たず、症状が出た時点で速やかにかかりつけ医もしくはクリニックフォアにご相談ください。
※検査が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。
インフルエンザ発症後の経過と回復までにかかる期間の目安
インフルエンザは一般的に発症から約1週間で回復するとされています[1]。
症状が順調に回復し、学校保健安全法で定める「発症後5日経過かつ解熱後2日(幼児は3日)」をクリアすれば、登校・登園が可能です[7]。
社会人に対して決められた法律はありませんが、多くの企業で学校保健安全法の基準を適用しています。
一般的な症状の経過と熱が下がるまでの日数
インフルエンザでは突然発熱や全身のだるさなどがあらわれ、せきや鼻汁、のどの痛みなどの気道症状がこれに続き、約1週間で改善するとされています[2]。
ただしインフルエンザは軽症の人もいれば重症になる場合もあり、致命的となる可能性もゼロではありません[5]。
症状が長引く場合や悪化する場合は、再度医療機関を受診しましょう。
大人が仕事を休む期間の目安は「発症後5日間かつ解熱後2日間」
社会人がインフルエンザで仕事を休む期間の目安は、学校保健安全法に定められた出席停止期間「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日を経過するまで」が参考となります。
この基準は、インフルエンザウイルスの排出期間や感染力を考慮して設定されたものです。
熱が下がってもインフルエンザウイルスは体内に残り、発症後5〜7日は周囲の人への感染リスクが続くといわれています[8]。そのため熱が下がったあとも、少なくとも2日間は自宅療養を続けることが推奨されます。
会社独自の基準が設けられている場合もあるため、規定については会社に確認しておきましょう。
子どもの登園・登校停止期間は年齢で異なる
子どものインフルエンザによる出席停止期間は年齢によって異なり、学校保健安全法の基準は以下のとおりです[7]。
| 対象 | 出席停止期間 |
| 小学生以上 | 発症後5日を経過し、かつ解熱後2日を経過するまで |
| 保育園児 ・幼稚園児 | 発症後5日を経過し、かつ解熱後3日を経過するまで |
保育園児・幼稚園児の解熱後の出席停止期間が1日長く設定されているのは、年齢の低い子どもではインフルエンザウイルスの排出が長期間続くという知見があるためです[4][8]。
抗ウイルス薬によって早期に解熱した場合でも感染力は残るため、発症後5日を経過するまでは登園・登校を控えることが推奨されます。
インフルエンザの前兆(初期症状)に気づいたときに家庭や職場でできること
インフルエンザの初期症状がみられたら、周囲に広げないための対策を早めに始めましょう。
家庭や職場では、マスクの着用や手洗い、必要最小限の接触にとどめることが基本です。
周囲への感染を防ぐための基本対策
インフルエンザが疑われる場合、もっとも効果的なのはマスクの着用と手洗いです。
| 対策 | 正しい方法 |
| マスクの着用 | 鼻と口をしっかりおおう |
| 手洗い | 石けんと流水でこまめに洗う |
とくに手洗いはウイルスを物理的に除去してくれるため、入念におこなうべき対策です。
職場で対策する場合は、可能であればデスク周りの換気やアルコール消毒も取り入れると良いでしょう。
体力を消耗しないための自宅での過ごし方
インフルエンザは短期間で体力を奪うため、早期の休養が回復につながります。
- しっかり睡眠をとる
- 水分補給をこまめにおこなう
- 消化にやさしい食事をとる
ゼリー飲料やスポーツドリンク、すぐ食べられるものを少し準備しておくと、体調が悪化したときでも無理なく過ごせます。
症状が強くなり始めたら無理に動かず、体力の回復を優先してください。
解熱後もすぐに通常の生活へ戻るのではなく、数日はペースを落として過ごしましょう。
家族や同僚が発症した場合に検討できる予防内服薬
家族や同僚がインフルエンザに感染し、ご自身も感染リスクが高い状況では、予防内服薬という選択肢があります。
予防内服とは、治療に使われる抗インフルエンザウイルス薬を感染予防目的で服用することです。受験や大事な会議など、どうしても休めない用事がある方や、感染した方と濃厚接触があった方に検討されます。
もちろんご自身がすでに前兆を感じている場合に、周りの方が予防内服をおこなうことも可能です。
予防内服は保険適用外(自費診療)となります。詳しくはクリニックフォアにご相談ください。
※自費診療となります。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合もございます。
【インフルエンザ予防内服】のオンライン診療 | クリニックフォア
インフルエンザの前兆(初期症状)に関するよくある質問
インフルエンザの初期症状に関して、多くの方が疑問を抱きやすいポイントがあります。
「熱がないけどインフルエンザ?」「市販薬を飲んでもいい?」「妊娠中はどうすれば?」など判断に迷いやすいケースについて解説しますので、対応の参考にしてください。
熱がない、または微熱でもインフルエンザの可能性はありますか?
熱がない、または微熱であってもインフルエンザの可能性はあります。
厚生労働省検疫所(FORTH)のWHOファクトシートでは「病態は軽度から重度、死に至るものまでさまざま」と記載されており、症状のあらわれ方には個人差があると示されています[1]。
熱が高くない場合でも、インフルエンザの流行期に突然の全身のだるさや筋肉痛・関節痛、頭痛などの全身症状がみられた場合は、医療機関を受診して検査を受けることを検討してください。
インフルエンザの初期症状に対して市販の風邪薬を飲んでも大丈夫ですか?
インフルエンザが疑われる場合、自己判断で市販の風邪薬を服用するのはおすすめできません。
とくに子どもの場合はアスピリンやジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸など一部の解熱剤は、症状の悪化やライ症候群、インフルエンザ脳症との関連が指摘されています[4]。
解熱が必要な場面ではアセトアミノフェンの服用が推奨されますが、医師の診断を受けてからの服用をおすすめします。
市販薬の選択に迷うときは、自己判断せず医師の診察を受けて適切な治療を受けてください。
インフルエンザの前兆(初期症状)に気づいたら早めに医療機関へ相談しましょう
インフルエンザには医学的な「前兆」はありませんが、発症すると高熱や強い全身症状が突然あらわれることが多く、風邪とは進行の早さが異なります。
発熱後12時間以上、48時間以内の受診では検査の精度も高まり、治療薬の効果も期待できます。
重症化リスクが高い高齢の方や5歳未満の子どもは、症状が出た時点でかかりつけ医もしくはクリニックフォアに早めにご相談ください。
クリニックフォアなら、対面での診療もオンライン診療でも対応が可能です。
「もしかしてインフルエンザ?」と感じた段階で適切に対応することが、回復を早め周囲への感染を防ぐことにつながります。
※触診・検査が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。
