インフルエンザで起こる味覚障害の症状とは?
インフルエンザに感染すると、38℃以上の発熱やせき、のどの痛み、全身の倦怠感、関節痛といった典型的な症状に加えて、味覚に異常を感じることがあります[1]。
嗅覚と味覚は密接に関係しており、鼻づまりがあると味覚にも影響が出やすくなります。
味覚障害の症状は、人によってさまざまですが、大きく以下の3つに分けられます。
- 味が薄く感じる(味覚減退)
- 特定の味だけがわからない(部分的味覚障害)
- 本来と違う味に感じる(異味症)
インフルエンザによる味覚障害は、一時的なものが多いといわれています。症状の程度や持続期間には個人差があるため、ご自身の状態を把握しておくことが大切です。
【味覚減退】味が薄く感じる・まったく感じない
インフルエンザで最も多くみられる味覚障害は、味が薄く感じる「味覚減退」と呼ばれる症状です。
人は味覚だけでなく、嗅覚も使って食べ物の風味を認識しているため、鼻づまりによって嗅覚が低下すると「味がしない」と感じやすくなります。
甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つの基本味すべてが感じにくくなることもあれば、ほとんど味を感じなくなる「味覚消失」に近い状態になる方もいます。
食事の楽しみが減って食欲低下につながることもあるため、栄養摂取の面でも注意が必要です。
多くの場合、インフルエンザの症状が改善するにつれて、味覚も徐々に戻ります。体調の回復を優先しながら、しばらく様子を見ましょう。
【部分的味覚障害】特定の味だけがわからなくなる
甘味は感じるのに塩味がわからない、苦味だけが感じにくいなど、一部の味覚に限定して異常が現れる症状が「部分的味覚障害」です。
味覚を感じる味蕾(みらい)は舌の各部位に分布しており、炎症の範囲によって影響を受ける味覚が異なる場合があります。
部分的な味覚障害は全体的な味覚減退に比べて気づきにくい場合があるため、「いつもと味が違う」と感じたら、どの味がわかりにくいか意識して確認してみてください。
症状が続く場合は、医師に相談することをおすすめします。
【異味症】本来と違う味に感じる
食べ物が本来の味とは異なる味に感じる「異味症」も、インフルエンザに伴う味覚障害のひとつです。
甘いものを苦く感じたり、何を食べても金属のような味がしたりするのが主な症状です。また、口の中が常に苦い・甘いなどの味を感じ続ける「自発性異常味覚」が起こることもあります。
これらの症状は、ウイルス感染によって味覚を伝える神経に一時的な障害が起きることが原因と考えられています。
異味症は食事への意欲を大きく低下させ、栄養摂取に影響が出る場合もあるため、症状が強い場合は早めに医療機関を受診しましょう。
多くの場合は、インフルエンザの回復とともに改善していくため、過度に心配する必要はありません。
インフルエンザで味覚障害が起こる原因と仕組み
インフルエンザによる味覚障害の原因は、主に以下の4つです。
- 鼻づまりによる嗅覚低下
- ウイルスによる神経への影響
- 舌苔(ぜったい)の付着・増加
- 高熱や脱水
これらの原因が単独、あるいは複合的に作用することで味覚に異常をもたらします。
原因を理解することで適切な対処法を選ぶことができるため、それぞれの仕組みを知っておくと安心です。
ここでは、インフルエンザで味覚障害が起こる4つの原因を詳しく解説します。
その1:鼻づまりによる嗅覚低下
インフルエンザによる味覚障害で最も多い原因は、鼻づまりに伴う嗅覚の低下です。
人が食べ物の風味を感じるためには、味覚と嗅覚の両方が必要です。鼻が詰まると、匂いの情報が脳に届かなくなるため、結果として味覚にも影響が出ます。
実際には味覚検査で異常がなくても、嗅覚が低下しているために「味がわからない」と感じる「風味障害」の状態になっていることが多いのです。
この場合は、鼻づまりが解消すれば味覚も自然に回復することが多いため、加湿や鼻うがいなど鼻の通りを良くするケアが有用です。
症状が長引く場合は副鼻腔炎などの合併症の可能性も考慮して、耳鼻咽喉科への受診を検討してください。
その2:ウイルスによる神経への影響(感冒後嗅覚障害)
インフルエンザウイルスが嗅覚神経に直接影響を与えることで、味覚障害が起こる場合もあります。
これは「感冒後嗅覚障害」と呼ばれ、風邪やインフルエンザの後に嗅覚・味覚の異常が続くのが主な症状です。
発症の仕組みとしては、ウイルスによる神経組織への直接的な障害や、ウイルスに対する免疫応答による炎症が原因と考えられています。
感冒後嗅覚障害は、インフルエンザが治った後も数週間にわたって症状が続くことがあり、後遺症のような形で現れます。
自然に回復することが多い一方で、改善までに時間を要する場合もあります。2週間以上症状が続く場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
その3:舌苔の付着・増加
インフルエンザによる高熱や免疫力の低下で、舌の表面に白い苔状(こけじょう)の舌苔が厚く付着することがあります。
舌苔は舌の粘膜や細菌、食べかすなどが付着したものです。通常は薄く存在していますが、体調を崩すと厚くなりやすい特徴があります。
舌苔が分厚くなると、味を感じる味蕾の表面にある味孔が覆われてしまい、味の成分が味蕾に届きにくくなるため味覚を感じにくくなります。
体調が回復して口腔内の環境が整えば、舌苔も自然に減少していくことが多いです。
味覚の回復を促すためには、水分をこまめに摂って口腔内を清潔に保つことや、舌ブラシなどで優しくケアすることが有効です。
その4:高熱や脱水
インフルエンザによる高熱や脱水状態も、味覚障害を引き起こす原因のひとつです。
高熱が続くと体力が消耗し、味覚を含むさまざまな感覚機能が一時的に低下することがあります。
また、脱水状態では唾液の分泌量が減少するため注意が必要です。
唾液には、食べ物の味成分を溶かして味蕾に届ける働きがあり、唾液が減ると味を感じにくくなります。
こまめな水分補給を心がけ、経口補水液やスポーツドリンクなどで水分と電解質を補給することで、脱水による味覚障害の予防につながります。
多くの場合、解熱して体調が回復すれば味覚も自然に戻るといわれているため、まずは体の回復を優先してください。
抗インフルエンザ薬の副作用で味覚障害が起こることもある
インフルエンザの治療に使われる抗インフルエンザ薬の中には、副作用として嗅覚障害や味覚障害が報告されているものがあります[2][5]。
お薬の影響による味覚障害は、服用後早期に現れ、数日で改善することが多いです。しかし、症状が長引く場合はインフルエンザそのものによる影響や他の原因も考えられます。
気になる症状がある場合は、自己判断は避け、医師や薬剤師に相談してください。
ここでは、抗インフルエンザ薬と味覚障害の関係について解説します。
主な抗インフルエンザ薬の種類と副作用
インフルエンザの治療には、タミフル(オセルタミビル)、リレンザ(ザナミビル)、ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)などの抗インフルエンザ薬が使用されます。
これらの治療薬の特徴と副作用は、以下のとおりです。
| お薬名 | 服用方法 | 主な副作用 |
| タミフル | カプセル ・顆粒(1日2回、5日間) | 下痢、悪心、腹痛などの消化器症状[3] |
| ゾフルーザ | 錠剤(単回服用) | 下痢、悪心[4] |
| リレンザ | 吸入(1日2回、5日間) | 嗅覚障害[5] |
| イナビル | 吸入(単回吸入) | 下痢、悪心、めまい[6] |
タミフルやゾフルーザ、イナビルについては、味覚障害に関する記載は添付文書にはありません。
一方、リレンザは副作用として嗅覚障害が報告されており、嗅覚の低下が味覚にも影響を与える可能性があります[5]。
リレンザで報告されている嗅覚障害と味覚への影響
吸入タイプの抗インフルエンザ薬であるリレンザ(ザナミビル)では、副作用として嗅覚障害が報告されています。
添付文書には「感覚器」の副作用として「嗅覚障害、耳鳴」が記載されており、発現頻度は0.1%未満とまれではあるものの、服用後に嗅覚や味覚の異常を感じた場合は注意が必要です[5]。
嗅覚障害が起こると、味覚にも影響が出て「味がわからない」と感じることがあります。リレンザによる嗅覚障害は、一時的なものが多いとされています。
症状が続く場合や気になる場合は処方医に相談し、お薬の副作用かインフルエンザによる影響かを判断してもらうことが大切です。
薬剤性味覚障害の特徴と対処方法
抗インフルエンザ薬に限らず、さまざまなお薬が味覚障害を引き起こす可能性があります。
薬剤性味覚障害が起こる仕組みは主に2つあります。そのひとつが、お薬の成分が亜鉛と結びついて体内に吸収されにくくなることで、味覚障害が起こるケースです。亜鉛不足によって、味蕾の細胞の新陳代謝が十分におこなわれなくなり、細胞数が減少することで味覚を感じにくくなります。
もうひとつは、お薬が味蕾や味覚を伝える神経に直接影響を与えて、味覚障害を引き起こすケースです。
薬剤性味覚障害は、服用開始から2〜6週間後に現れることが多いとされています。複数のお薬を服用している場合は、医師や薬剤師に現在服用中のお薬を伝えることが重要です。
原因となるお薬の変更や中止で改善することがありますが、自己判断での中止は避け、必ず医師に相談してください。
インフルエンザ後の味覚障害は後遺症になる?
インフルエンザが治った後も味覚障害が続くと、「このまま後遺症として残るのではないか」と心配になる方もいるでしょう。
多くの場合、インフルエンザによる味覚障害は1〜2週間程度で自然に回復します。しかし、症状が長引く場合は他の原因が関係している可能性もあります。
ここでは、味覚障害の回復期間と長引く場合の対処法について解説します。
自然回復が見込めるケースと回復を促すポイント
インフルエンザによる味覚障害は、多くの場合1〜2週間程度で自然に回復します。
鼻づまりが解消されて嗅覚が戻れば、味覚も改善するケースがほとんどです。舌苔の増加や脱水による味覚障害も、体調の回復とともに治まるでしょう。
感冒後嗅覚障害の場合も、軽度であれば特別な治療を行わなくても自然に治ることが多いといわれています。
回復を早めるためには、十分な睡眠と水分補給を心がけ、バランスの良い食事で栄養を摂ることが大切です。
焦らず様子を見ながら、全身の回復を待ちましょう。
2週間以上続く場合に考えられる原因
味覚障害が2週間以上続く場合は、インフルエンザ以外の原因が関係している可能性を考えましょう。
副鼻腔炎や中耳炎などの合併症が起きていると、症状が長引くことがあり注意が必要です。また、亜鉛不足や糖尿病、貧血などの疾患が隠れていることも考えられます。
亜鉛は味蕾の細胞を新しく作り替えるために必要な栄養素です。不足すると、味覚機能が低下して回復も遅れやすくなります。インフルエンザによる食欲低下で食事量が減ると、亜鉛の摂取量も不足しがちです。
味覚障害は、発症から半年を過ぎると改善しにくくなるといわれています。「そのうち治るだろう」と放置せず、2週間経っても改善しない場合は、耳鼻咽喉科を受診して原因を特定してもらいましょう。
適切な治療を受けることで、回復が期待できます。
亜鉛不足が回復を遅らせることがある
亜鉛不足は、味覚障害の回復を遅らせる原因のひとつとして知られています。
亜鉛は味蕾の細胞を新しく作るために必要な栄養素です。不足すると味覚機能が低下して回復も遅れやすくなります。
インフルエンザによる食欲低下で食事量が減ると、亜鉛の摂取量も不足しがちです。とくに、高齢者や偏った食生活をしている方は注意が必要です。
亜鉛を多く含む食品には、牡蠣、牛肉、レバー、ナッツ類などがあります。これらの食材を積極的に摂取することで、味覚の回復を助けることができます。
食事からの摂取が難しい場合は、サプリメントを活用したり、医師に相談して亜鉛製剤を処方してもらったりすることを検討してください。
味覚障害の診断と受診の目安
味覚障害が長引く場合は、医療機関で適切な診断を受けることが大切です。
耳鼻咽喉科では、味覚検査や血液検査などを行って原因を調べ、その結果に基づいて治療方針を決定します。
受診のタイミングや検査の内容をあらかじめ知っておくと、スムーズに対応できるでしょう。
早めに受診することで、回復を促せる可能性があります。症状が気になる場合は、我慢せずに相談してください。
耳鼻咽喉科で行われる検査内容
味覚障害の診断では、問診で症状の経過や服用中のお薬、食生活などを詳しく確認します。
電気味覚検査や濾紙ディスク法などの味覚検査では、舌に電気刺激を与えたり、味のついたろ紙を当てたりして、味覚の感度を客観的に測定します。
嗅覚障害が味覚に影響している可能性もあるため、嗅覚検査もあわせて行われるのが一般的です。
血液検査では、亜鉛や鉄、ビタミンなどの栄養素の不足がないかを確認し、必要に応じて口腔内の診察や画像検査が行われることもあります。
検査結果をもとに、原因に応じた治療方針が決まります。気になる症状があれば、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
受診すべきタイミングの目安
味覚障害で医療機関を受診すべきタイミングには、いくつかの目安があります。
インフルエンザが治ってから2週間以上経過しても味覚の異常が続く場合は、耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
また、味覚障害に加えて激しい頭痛や発熱、鼻水に膿が混じるなどの症状がある場合は、副鼻腔炎などの合併症が起きている可能性があるため早めの受診が必要です。
味覚障害によって食欲が著しく低下し、体重減少や栄養不足が心配される場合も、医師に相談して適切な対応を取ることが大切です。
判断に迷う場合は、まず医療機関に問い合わせて相談してください。
味覚障害の治療法と回復までの期間
味覚障害は、原因によって治療法が異なります。
亜鉛不足が原因の場合は、亜鉛製剤の処方が行われます。
感冒後嗅覚障害が原因の場合、主な治療法は薬物療法と嗅覚刺激療法です。
治療に即効性はなく、1〜6か月程度の継続が必要となることもありますが、早めに治療を始めることで改善しやすくなります。
ここでは、味覚障害の主な治療法と回復までの期間について解説します。
亜鉛製剤による治療
亜鉛不足が原因の味覚障害に対しては、亜鉛製剤の処方が基本的な治療法です。
亜鉛は味蕾の細胞の新陳代謝に不可欠な栄養素です。十分な量を補充することで、味覚を感じ取る細胞が正常に機能するようになり、味覚の回復が期待できます。
治療に即効性はなく、効果が現れるまでに1〜6か月程度の服用が必要となることもあります。継続することで、徐々に改善が期待できるでしょう。
亜鉛製剤とあわせて、普段の食事でも亜鉛を多く含む食品を積極的に摂ることが推奨されます。亜鉛は、牡蠣、牛肉、豚レバー、卵黄、ナッツ類、チーズなどに豊富に含まれています。
処方された期間は自己判断で中止せず、医師の指示に従って服用を続けてください。
漢方薬やステロイド点鼻薬による治療
感冒後嗅覚障害に対しては、薬物療法と嗅覚刺激療法を組み合わせた治療が一般的です。
ステロイド点鼻薬を鼻腔内に注入して、粘膜の炎症を抑える治療法が用いられるほか、漢方薬が処方されることもあります。
処方される主な漢方薬は、以下の2つです。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
体力や免疫機能を整え、味覚回復を助ける効果が期待できる
- 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
体の栄養状態を整え、味覚の改善をサポートする効果が期待できる
原因が特定できない場合や新型コロナ後遺症の疑いがある場合にも、これらの漢方薬が処方されることがあります。
治療効果には個人差があるため、医師と相談しながら根気強く治療を続けましょう。
回復までの一般的な期間
味覚障害の回復期間は、原因や重症度によって異なりますが、一般的には数週間〜数か月程度とされています。
インフルエンザによる一時的な味覚障害であれば、1〜2週間程度で自然に回復するケースがほとんどです。
感冒後嗅覚障害による味覚障害の場合は、回復までに1〜3か月程度かかることもあります。
また、亜鉛製剤による治療を行う場合も、効果が現れるまでに数か月の服用が必要となることがあるため、焦らず継続することが大切です。
早めに治療を始めることで改善しやすくなるため、症状が長引く場合は早めに医療機関を受診してください。
味覚障害を引き起こす他の疾患との見分け方
味覚障害は、インフルエンザだけでなく、新型コロナウイルス感染症や糖尿病、貧血などさまざまな疾患で起こることがあります。
症状だけでは原因を特定することが難しい場合もあるため、他の疾患との違いを知っておくことが大切です。
味覚障害が長引く場合や他の気になる症状がある場合は、医療機関で適切な検査を受けることをおすすめします。
ここでは、味覚障害を引き起こす他の疾患との見分け方について解説します。
新型コロナウイルス感染症との違い
新型コロナウイルス感染症でも、味覚障害・嗅覚障害が起こることがあり、インフルエンザとの区別が難しい場合があります。
新型コロナウイルスは神経親和性があるといわれており、ウイルスによる直接的な神経への障害が起こる可能性が指摘されています。インフルエンザよりも、味覚・嗅覚障害の症状が強く現れることがあるのが特徴です。
また、新型コロナウイルスによる味覚・嗅覚障害は、発熱やせきなどの症状がなくても突然現れることがあります。
症状だけで感染症の種類を判断することは困難です。味覚障害に加えて発熱や倦怠感などの症状がある場合は、医療機関で検査を受けて原因の特定を受けましょう。
その他の原因(糖尿病・貧血・口腔疾患など)
味覚障害は、インフルエンザや新型コロナウイルス以外にも、さまざまな原因で起こることがあります。
そのひとつが糖尿病です。糖尿病が進行すると合併症として神経障害が起こり、味覚を司る神経に影響が及ぶことで、味覚障害が現れることがあります。
貧血になると舌の表面が赤くつるつるとした状態になり、痛みとともに味覚異常が起こることがあります。また、口内炎や口腔内の疾患によって、味覚障害が引き起こされる場合もあるのです。
加齢によって、唾液の分泌量や味蕾の数が減少し、亜鉛を吸収する機能も低下します。そのため、高齢者は味覚を感じにくくなる傾向があります。
味覚障害が長引く場合や原因がはっきりしない場合は、これらの疾患の可能性も含めて医師に相談することをおすすめします。
インフルエンザと味覚障害を予防するための対策
インフルエンザによる味覚障害を予防するためには、そもそも感染しないように対策を講じることが最も重要です。
また、普段から亜鉛などの栄養素を十分に摂取して、味覚機能を維持することも大切です。
感染予防策と栄養面での対策を組み合わせることで、インフルエンザによる味覚障害のリスクを減らせます。
ここでは、インフルエンザと味覚障害を予防するための具体的な対策について解説します。
インフルエンザの感染予防策
インフルエンザの感染を予防するためには、ワクチン接種と日常的な感染対策の両方が重要です。
インフルエンザワクチンは、感染や発症そのものを完全に防ぐことはできません。しかし、重症化や合併症の発生を予防する効果が期待できます[7]。
外出後の手洗い・うがいの励行、流行期に人混みを避けること、マスクの着用などが、日常的な予防策として有効です[7]。
また、室内の湿度を50〜`程度に保つことで、のどや鼻の粘膜の防御機能を維持し、ウイルスの活動を抑えられます[7]。
十分な睡眠とバランスの良い食事で免疫力を高めておくことも、感染予防に役立ちます[7]。
味覚機能を維持するための栄養素(亜鉛など)
味覚機能を維持するためには、亜鉛をはじめとする栄養素を十分に摂取することが重要です。
亜鉛は味蕾の細胞を新しく作るために必要な栄養素であり、不足すると味覚機能が低下しやすくなります。
亜鉛を多く含む食品は、牡蠣、牛肉、豚レバー、卵黄、ナッツ類、チーズ、大豆製品などです。とくに、牡蠣は亜鉛の含有量が非常に多く、効率よく摂取できます。
これらの食品を日常的に食事に取り入れることで、亜鉛不足を予防できます。
また、ビタミンB群や鉄分も味覚機能の維持に関係しているため、偏った食生活を避けてバランスの良い食事を心がけることが重要です。
サプリメントで補う場合は過剰摂取に注意し、医師や薬剤師に相談してから服用するようにしてください。
インフルエンザを発症しないよう予防内服薬の検討を
インフルエンザは、ワクチン接種だけでなく抗インフルエンザ薬による予防内服という選択肢もあります。
家族がインフルエンザを発症した場合や、受験・出張など「どうしても発症を避けたい」タイミングがある方にとって、予防内服は有効な手段の一つでしょう。
予防目的で服用できるお薬と服用方法は、以下のとおりです。
| お薬 | 服用方法(予防) |
| タミフル(オセルタミビル) | ・成人1回75mgを1日1回、7〜10日間経口投与する ・体重37.5kg以上の小児1回75mgを1日1回、10日間経口投与する[3] |
| リレンザ(ザナミビル) | 1回10mg(5mgブリスターを2ブリスター)を1日1回、10日間吸入する[5] |
| イナビル(ラニナミビル) | ・成人及び10歳以上の小児 40mgを単回吸入投与または20mgを1日1回、2日間吸入投与する[6]・10歳未満の小児20mgを単回吸入投与する[6] |
| ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル) | ・成人及び12歳以上の小児80kg以上の場合 20mg錠4錠を単回経口投与する 80kg未満の場合 20mg錠2錠を単回経口投与する[4]・12歳未満の小児 40㎏以上の場合 20mg錠2錠を単回経口投与する 20kg以上40kg未満の場合 20mg錠1錠を単回経口投与する[4] |
治療時と予防時では、用法が異なるため注意が必要です。
タミフルの予防効果は約86%とされており、服用しない場合の感染率8.5%が1.3%まで低下するとの報告があります[8]。
インフルエンザ発症者と接触してから48時間以内に服用を開始することが推奨されているため、早めの受診を心がけましょう。
クリニックフォアでは予防内服薬の処方もおこなっています。
- オセルタミビル(タミフル後発品)1日1回 10日分:8,250円
- イナビル(先発品)2容器で1回分:10,450円
- ゾフルーザ(先発品)2錠で1回分 ※ 80kg 未満の方向け:11,550円
- ゾフルーザ(先発品)4錠で1回分 ※ 80kg 以上の方向け:19,250円
予防内服は保険適用外となり全額自己負担です。
予防内服はワクチン接種の代わりにはならないため、流行期前のワクチン接種とあわせて検討することをおすすめします。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合もございます。
インフルエンザの味覚障害に関するよくある質問
インフルエンザの味覚障害について、多くの方が抱く疑問にお答えします。
Q1. インフルエンザの味覚障害はいつ治りますか?
インフルエンザによる味覚障害は、多くの場合1〜2週間程度で自然に回復します。
鼻づまりが解消されて嗅覚が戻れば、味覚も改善するケースがほとんどです。
ただし、感冒後嗅覚障害の場合は1〜3か月程度かかることもあり、回復期間には個人差があります。
2週間以上経っても改善しない場合は、耳鼻咽喉科を受診して原因を調べてもらいましょう。
Q2. 味覚障害があるときに食べやすいものはありますか?
味覚障害があるときは、香辛料や酸味、だしの風味を活かした料理が食べやすいとされています。
温かい料理は香りが立ちやすく、風味を感じやすくなります。また、食感に変化をつけることで食事の楽しみを維持する工夫も有効です。
栄養バランスを意識しながら、食べやすいものを選び、無理なく栄養を摂りましょう。
Q3. 味覚障害で医療機関を受診する場合、何科に行けばよいですか?
味覚障害の診察は、耳鼻咽喉科で受けることができます。
耳鼻咽喉科では、味覚検査や嗅覚検査、血液検査などを行って原因を調べ、適切な治療を提案してもらえるでしょう。
口腔内の問題が原因と考えられる場合は、歯科口腔外科への受診が必要になることもあります。
判断に迷う場合は、まず耳鼻咽喉科に相談してみてください。
Q4. 亜鉛を多く含む食品にはどのようなものがありますか?
亜鉛を多く含む食品は、牡蠣、牛肉、豚レバー、卵黄、ナッツ類、チーズ、大豆製品などです。
特に、牡蠣は亜鉛の含有量が非常に多く、100gあたり約14mgの亜鉛を含んでいます[9]。成人の1日の推奨摂取量が男性で11mg、女性で8mgであることを考えると、牡蠣は効率よく亜鉛を摂取できる食品です[10]。
日常的にこれらの食品をバランスよく取り入れることで、亜鉛不足を予防できます。
まとめ
インフルエンザによる味覚障害は、鼻づまりによる嗅覚低下、ウイルスによる神経への影響、舌苔の増加、高熱や脱水など複数の原因によって起こります。
多くの場合は1〜2週間程度で自然に回復します。しかし、2週間以上続く場合は亜鉛不足や他の疾患が関係している可能性があるため、耳鼻咽喉科を受診することを検討しましょう。
治療法としては、亜鉛製剤や漢方薬、ステロイド点鼻薬などが用いられ、原因に応じた対応が行われます。
抗インフルエンザ薬のリレンザでは、副作用として嗅覚障害が報告されているため、服用後に症状が現れた場合は医師に相談してください[5]。
インフルエンザの感染予防策を徹底し、亜鉛などの栄養素を十分に摂取することで、味覚障害のリスクを減らすことができます。
味覚障害は、早期の受診と治療開始が回復につながりやすいとされています。症状が長引く場合は、早めに対応することが重要です。
気になる症状や不安がある場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。
