インフルエンザワクチンは何歳から?子どもの接種時期と回数・注意点を解説

小さな子どもを持つ保護者の方にとって、インフルエンザの流行シーズンは不安が募る時期ではないでしょうか。

「赤ちゃんはいつからワクチンを打てるのか」「小さな体に注射をしても大丈夫なのか」といった疑問や、接種回数・副反応への心配をお持ちの方も多いでしょう。

本記事では、インフルエンザワクチンの接種開始年齢や年齢別の回数、効果、注意点について分かりやすく解説します。
子どもの予防接種を検討されている保護者の方は、ぜひ参考にしてください。

インフルエンザワクチンは生後6ヶ月から接種可能

インフルエンザワクチンの接種は、生後6ヶ月から受けることができます[1][2]。アメリカの厚生労働省であるCDCでは、生後6ヶ月以上のすべての人に対して、禁忌事項がない限り毎年のインフルエンザワクチン接種を推奨しています。

一方で、生後6ヶ月未満の赤ちゃんについては、ワクチン接種の対象外となっています。これは、この月齢では免疫機能が未発達であり、ワクチンの効果や安全性に関するデータが十分でないためです。

そのため、生後6ヶ月未満の赤ちゃんがいるご家庭では、周囲の家族がワクチンを接種して感染リスクを下げることが重要です。保育園などの集団生活に入る予定のお子様や、兄弟姉妹がいるご家庭では、感染リスクが高まります。

インフルエンザワクチンの子どもの接種回数

インフルエンザワクチンの接種回数は、年齢によって異なります。13歳未満の子どもは2回接種、13歳以上は原則1回接種です。

具体的な接種回数と接種量は以下のとおりです[2]。

年齢接種回数1回の接種量
6ヶ月以上3歳未満2回0.25mL
3歳以上13歳未満2回0.5mL
13歳以上1回0.5mL

なお、13歳以上でも基礎疾患があり免疫が著しく抑制されている方などは、医師の判断により2回接種となる場合があります。

13歳未満が2回接種を推奨される理由

13歳未満の子どもに2回接種が推奨される理由は、1回の接種では十分な免疫を獲得できない可能性があるためです。

厚生労働省によると、13歳未満の子どもでは1回接種後より2回接種後の方が抗体価の上昇が良いとされています[2]。これは、1回目の接種で免疫システムが抗原を認識し、2回目の接種でブースト効果(追加免疫効果)が得られるためです。

インフルエンザに初めてかかる可能性がある乳幼児においては、2回接種による免疫獲得が重要です。2回接種を完了することで、発症防止効果がより高まることが期待できます。

子どもがインフルエンザワクチンを初めて受ける場合や、13歳未満の場合は、必ず2回接種のスケジュールを立てましょう。

1回目と2回目の接種間隔は2~4週間

2回接種を行う場合、1回目と2回目の間隔はおよそ2~4週間あけることが推奨されています[2]。免疫効果を高めるためには、できれば4週間程度の間隔をあけることが望ましいとされています。

インフルエンザの流行は例年12月~3月にピークを迎えます[2]。ワクチンの効果が現れるまでに接種後約2週間かかるため、流行前の12月中旬までには2回目の接種を完了しておくことが理想的です。

接種間隔が短すぎると十分な免疫応答が得られない可能性があるため、かかりつけ医と相談しながら計画的に接種を進めましょう。

13歳以上は1回接種で対応

13歳以上の方は、原則1回の接種で十分な免疫効果が期待できます。

これは、13歳以上になると過去のインフルエンザへの罹患やワクチン接種により、すでに基礎免疫が形成されていると考えられるためです。1回の接種で抗体価が十分に上昇し、発症予防や重症化予防の効果が得られます。

インフルエンザワクチンの効果

インフルエンザワクチンには、「発症予防」と「重症化防止」の2つの効果があるとされています[2]。

重症化しやすい乳幼児や高齢の方にとっては、ワクチン接種による重症化予防のメリットは大きいといえるでしょう。

インフルエンザワクチンは発症と重症化を防ぐ

インフルエンザワクチンによる発症阻止効果とは、インフルエンザウイルスに感染した後、高熱やせきなどの症状が出る「発症」を抑える効果を指します。ワクチンを接種することで、発症のリスクを減らすことができるとされています[3]。

重症化予防効果とは、発症した場合でも肺炎や脳症などの重い合併症に進行するのを防ぐ効果です[2]。特に乳幼児はインフルエンザにかかると急性脳症を発症するリスクがあり、高齢の方は肺炎を併発しやすいとされています。

ワクチン接種による主なメリットは以下のとおりです。

  • インフルエンザの発症リスクを減らせる
  • 肺炎・脳症などの重症化を防げる可能性がある
  • 入院や死亡のリスクを低減できる

効果の持続期間は約5ヶ月

インフルエンザワクチンの効果は、接種後約2週間で現れ始め、約5ヶ月間持続します[4]。

ワクチンを接種すると、体内で抗体が作られ始めます。抗体価(抗体の量)は接種後2週間程度で十分なレベルに達し、その後徐々に低下していきます。一般的に、効果の持続期間は約5ヶ月とされているため、10月~11月に接種すれば、インフルエンザの流行ピークである12月~3月をおおむねカバーできます[4]。

なお、インフルエンザウイルスは毎年変異するため、前年に接種していても今年の流行株に対する十分な免疫が得られない場合があります。そのため、毎年の接種が推奨されています[2]。

インフルエンザワクチン接種後に見られる主な副反応

インフルエンザワクチンを接種した後、一部の方に副反応が見られることがあります。ただし、多くは軽度で、数日以内に自然に改善します[2][5]。

副反応は大きく「局所反応」と「全身反応」の2種類です。

<局所反応(接種部位に起こる反応)>

  • 接種部位の赤み(発赤)
  • 腫れ(腫脹)
  • 痛み(疼痛)

これらの局所反応は、接種を受けた方の10~20%に起こりますが、通常2~3日で消失します[2]。

<全身反応>

  • 発熱
  • 頭痛
  • 寒気(悪寒)
  • だるさ(倦怠感)

全身反応は接種を受けた方の5~10%に起こり、こちらも通常2~3日で消失します[2]。

副反応の種類主な症状発生頻度持続期間
局所反応発赤・腫脹・疼痛10~20%2~3日
全身反応発熱・頭痛・悪寒・倦怠感5~10%2~3日

まれではありますが、ショックやアナフィラキシー様症状(発疹、じんましん、呼吸困難など)が見られることもあります。

インフルエンザワクチンの接種を見合わせるケース

インフルエンザワクチンは多くの方が安全に接種できますが、一部の条件に該当する場合は接種を見合わせる、または慎重に判断する必要があります。

接種を受けることが適当でないとされる主なケースは以下のとおりです[2]。

  • 明らかな発熱がある方
  • 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方
  • インフルエンザワクチンの成分によってアナフィラキシーを起こしたことがある方
  • インフルエンザの定期接種で接種後2日以内に発熱や全身性発疹などのアレルギーを疑う症状が出たことがある方

また、以下に該当する方は接種の判断に注意が必要です[2]。

  • 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患などの基礎疾患がある方
  • 過去にけいれんの既往がある方
  • 過去に免疫不全の診断を受けている方
  • 接種しようとするワクチンの成分に対してアレルギーを起こすおそれがある方

これらに該当する可能性がある場合は、接種前に必ずかかりつけ医に相談しましょう。

卵アレルギーがある場合

卵アレルギーがある方でも、インフルエンザワクチンの接種は可能です[6]。

多くのインフルエンザワクチンは鶏卵を使用して製造されるため、微量の卵タンパク質(オボアルブミンなど)が含まれています。しかし、CDCの見解によると、2023-2024シーズン以降、卵アレルギーの重症度にかかわらず、追加の安全対策は不要とされています[6]。

卵アレルギーがある方への対応は以下のとおりです。

  • 卵アレルギーがあっても、年齢や健康状態に適したワクチン(卵を使用したものでも)を接種できる
  • 以前は重度の卵アレルギー(じんましん以外の症状)がある方には特別な対応が推奨されていたが、現在は通常の接種と同様の対応で問題ない
  • すべてのワクチン接種は、アレルギー反応に迅速に対応できる環境で行うことが推奨される

卵アレルギーの方の場合は、接種前に医師に伝えておくことで、適切な環境で接種を受けられます。

体調がすぐれない場合

体調がすぐれない場合は、インフルエンザワクチンの接種を延期しましょう[2]。

特に以下の状態にある方は、接種を受けることが適当ではないとされています。

状態対応
明らかな発熱がある接種不可
重篤な急性疾患にかかっている接種不可
軽い風邪症状(微熱、軽い鼻水など)医師の判断による

「明らかな発熱」とは、一般的に37.5℃以上の体温を指します。この場合、体調が回復してから改めて接種の予約を取りましょう。

接種当日に体調がすぐれない場合は、無理をせず医師に相談してください。接種前の問診で体調を確認し、医師が接種の可否を判断します。

接種を延期しても、流行シーズン中であれば体調回復後に接種することで、一定の予防効果が期待できます。

インフルエンザワクチンに関するよくある質問

インフルエンザワクチンについて、保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。妊娠中・授乳中の接種可否、家族の接種の必要性、接種時期についてなど、気になる疑問を解消しましょう。

妊婦や授乳中でも接種は可能ですか?

妊婦や授乳中の方でも、インフルエンザワクチンの接種は可能です[7]。

妊婦はインフルエンザに感染すると重症化するリスクが高いとされています。CDCによると、妊娠中は免疫機能、心臓、肺の機能に変化が生じるため、インフルエンザによる重症化リスクが高まります。そのため、妊娠中のワクチン接種は推奨されています。

また、妊娠中に母親がワクチンを接種することで、生まれてくる赤ちゃんのインフルエンザ発症予防効果も期待できます。

授乳中の接種についても問題ありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであり、授乳中の方が接種しても母乳を通じて赤ちゃんに影響を与えることはないとされています。

家族も一緒に接種したほうがよいですか?

家族全員でインフルエンザワクチンを接種することが推奨されています[2]。

特に、生後6ヶ月未満の赤ちゃんはワクチン接種ができないため、周囲の家族がワクチンを接種して感染を防ぐことが重要です。また、高齢者や持病のある方と同居している場合も、家庭内感染を防ぐために家族全員の接種が推奨されます。

インフルエンザは主に飛沫感染と接触感染で広がります[8]。家族の誰かが感染すると、家庭内で急速に広がる可能性があります。家族全員がワクチンを接種することで、以下のメリットがあります。

  • 家庭内へのウイルス持ち込みを防げる
  • ワクチン接種ができない乳児や重症化リスクの高い家族を守れる
  • 家庭内での感染連鎖を断ち切れる

乳幼児をインフルエンザから守るためには、家族や周囲の大人が手洗いやワクチン接種を徹底することが重要だと示されています。

流行時期を過ぎてからでも打つべきですか?

流行時期を過ぎていても、ワクチン接種には意義があります。

日本でのインフルエンザの流行は例年12月~3月ですが、4月や5月まで散発的に続くこともあります。そのため、流行のピークを過ぎた1月以降でも、接種を受けることで残りのシーズンを通じた予防効果が期待できます。

CDCも、インフルエンザの流行が続いている限り、1月以降でもワクチン接種を継続して提供すべきとの見解を示しています。

ただし、ワクチンの効果が現れるまでには接種後約2週間かかります[2]。そのため、接種後すぐに予防効果が得られるわけではない点には注意が必要です。

接種時期が遅れても、まだ受けていない方は医師に相談のうえ、接種を検討しましょう。

まとめ

インフルエンザワクチンは生後6ヶ月から接種可能であり、特に13歳未満のお子様は十分な免疫をつけるために2回の接種が推奨されています。

ワクチンには発症予防だけでなく、脳症や肺炎などの重症化を防ぐ重要な役割があります。副反応の多くは一時的なものですが、アレルギーや体調面で不安がある場合は、かかりつけ医と相談の上で接種スケジュールを立てましょう。

流行シーズン前の10月〜12月中旬を目安に、家族全員で予防に取り組むことが大切です。

参考文献

  1. CDC. Chapter 12: Influenza. Pink Book.
  2. 厚生労働省. 令和6年度インフルエンザQ&A.
  3. CDC. Chapter 12: Influenza. Pink Book.
  4. 新型インフルエンザワクチン接種事業(平成22年度)に関するQ&A
  5. 厚生労働省. インフルエンザワクチン(季節性)
  6. CDC. Flu Vaccines and People with Egg Allergies.
  7. CDC. Chapter 12: Influenza. Pink Book.
  8. 政府広報オンライン. インフルエンザの感染を防ぐポイント「手洗い」「マスク着用」「せきエチケット」.