インフルエンザの出勤停止期間に決まりはある?休みの扱いや出社目安についても解説

インフルエンザと診断され、「会社を何日休めばいいのだろう?」「出勤停止に法律の決まりはあるの?」と不安に思っていませんか。
熱が下がって元気になると、いつから出社してよいのか迷いますよね。
大人のインフルエンザ出勤停止には法律上の義務はありません。ただし、職場での感染拡大を防ぐため、厚生労働省は「発症後5日、かつ解熱後2日」を目安に休むことを推奨しています。
この記事では、インフルエンザの出勤停止に関する厚生労働省の見解や、子どもの出席停止基準との違いを解説します。
出勤停止期間の数え方から、有給休暇の扱いや治癒証明書の要否まで、あなたが抱える疑問や不安を解消できれば幸いです。

インフルエンザの出勤停止は大人に法律上の義務はない

大人のインフルエンザ出勤停止には、法律上の義務はないとしています。学校保健安全法では子どもの出席停止期間が明確に定められていますが[1]、成人の就業制限については労働安全衛生法などでも一律の規定は設けられていません。

ただし、法律による義務がないからといって、すぐに出勤してよいわけではないことに注意が必要です。インフルエンザウイルスは発症後3〜7日目までは鼻やのどから排出され続けるため[2]、この期間に出勤すると職場で感染を広げるリスクがあります。

厚生労働省で推奨している大人の出勤停止期間について、以下で詳しく解説します。

厚生労働省が推奨する大人の出勤停止期間の目安

厚生労働省は、職場でのインフルエンザ感染拡大を防ぐための施策は明確にしていませんが、学校保健安全法施行規則で定められた子どもの出席停止期間を参考にしている会社が多いです。そのため、インフルエンザにかかってしまった際には、ご自身で就業規則などを確認する必要があります。

インフルエンザウイルスは発症前日から発症後3〜7日目までにわたって鼻やのどから排出され続け[2]ます。そのため、熱が下がってもすぐにウイルスがいなくなるわけではありません。

学校保健安全法施行規則に則って出社可能日を考える場合、具体的な日数の数え方は以下の通りです。

  • 発症日(発熱などの症状が出た日)を0日目として、翌日から5日間カウント
  • 解熱した日を0日目として、翌日から2日間カウントする
  • 両方の条件を満たした日の翌日から出勤可能

たとえば、月曜日に発症し水曜日に解熱した場合、発症後5日目は土曜日、解熱後2日目は金曜日となります。この場合、両方の条件を満たす日曜日から出勤可能となります。

ただし、この期間はあくまで目安であり、法律での決まりではありません。実際の出勤可否は、自社の就業規則に従ってください。

インフルエンザの子どもには出席停止期間が定められている

子どもの場合は、学校保健安全法施行規則により出席停止期間が明確に定められています。この法律は、学校や保育施設での集団感染を防ぐために設けられており、保護者や学校が守るべき決まりです。

小学生・中学生・高校生にあたる学童と、保育園児・幼稚園児にあたる幼児では、出席停止期間の基準が異なります。

インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあつては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで。

引用:[1]e-Gov 法令検索. 学校保健安全法施行規則.

この違いは、幼児の方がウイルス排出期間が長い傾向にあるためです[3]。年齢が低いほど体力が十分に回復されず、再度発熱する恐れもあるためだと考えられています。

子どもの出席停止の詳細について、詳しく解説します。

小中高生の出席停止基準

小学生・中学生・高校生の出席停止基準は、以下のように定められています。

学童は「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日を経過するまで」

この基準は学校保健安全法施行規則で定められており、全国の学校で統一して適用されています。

具体的な日数の数え方は以下の通りです。

  • 発症日(熱などの症状が出た日)を0日目とし、翌日から5日間カウントする
  • 解熱した日を0日目として、翌日から2日間カウントする

両方の条件を満たした日の翌日から登校可能となります。

例として、月曜日に発症し水曜日に解熱した場合を見てみましょう。

月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日日曜日
発症0日目発症1日目発症2日目発症3日目発症4日目発症5日目登校可能
解熱0日目解熱1日目解熱2日目

発症後5日目は土曜日、解熱後2日目は金曜日となります。この場合、両方の条件を満たしている日曜日から登校可能です。

学校は集団生活の場であり、一人の感染者から多数の児童・生徒に感染が広がるリスクがあります。そのため、学校保健安全法施行規則という明確な基準を設け、確実に感染拡大を防ぐ仕組みが整備されています。

保育園・幼稚園児の出席停止基準

保育園児・幼稚園児の出席停止基準は小中高生の基準より解熱後の期間が1日長く設定されています。

幼児は「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後三日を経過するまで」

具体的な日数の数え方は、小中高生と同じ考え方です。発症日を0日目として翌日から5日間、解熱日を0日目として翌日から3日間カウントします。両方の条件を満たした日の翌日から登園可能となります。

こちらも例として、月曜日に発症し水曜日に解熱した場合を見てみましょう。

月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日日曜日
発症0日目発症1日目発症2日目発症3日目発症4日目発症5日目登園可能
解熱0日目解熱1日目解熱2日目解熱3日目

両方の条件を満たす土曜日の翌日、つまり日曜日から登園可能です。

保育園や幼稚園は、とくに密接な接触が多い環境です。おもちゃの共有や食事、昼寝など、ウイルスが広がりやすい場面が多いため、より慎重に対策することが求められます。

保護者は、子どもが完全に回復するまで十分な期間を確保することで、施設内での感染拡大を防ぐことができるでしょう。

家族がインフルエンザに感染した場合の出勤停止の定めについて

ご家族の方がインフルエンザに感染した場合、あなた自身が発症していなければ出勤停止の義務はありません。法律や厚生労働省のガイドラインでも、濃厚接触者というだけで出勤を制限する規定は設けられていないためです。

ただし、家族内で感染者が出た場合は、ご自身も感染している可能性が高くなります。インフルエンザは潜伏期間が1〜4日程度あり、症状が出る前から他人に感染させるリスクがあるためです[4]

企業によっては、就業規則でご家族の方が感染した際に、自宅待機や報告を求めるケースがあります。とくに医療機関や高齢者施設など、免疫力の低い方と接する職場では、独自の基準を設けている可能性があります[5]。まずは自社の就業規則を確認し、不明な点は人事部門に問い合わせましょう。

出勤する場合は、マスク着用や手洗いの徹底など、感染予防対策をしっかりおこなうことが重要です[6]。自分が感染源となって職場で感染拡大を引き起こさないよう、適切な対策が求められます。

家族がインフルエンザで出勤停止になったら予防内服薬の処方も検討しよう

家族がインフルエンザで出勤停止になり、「自分もインフルエンザにかかるわけにはいかない」と考える方も多いでしょう。そんなときは抗インフルエンザ薬の予防内服を検討してみませんか?

予防内服とは、実際の治療に使われるお薬を感染予防目的で使用することです。

家族がインフルエンザになったとき、以下のようなケースであれば予防内服を検討してもよいかもしれません。

  • 受験などどうしても感染するわけにいかない事情があるとき
  • 乳幼児や高齢者と生活しており感染拡大しないようにしたいとき
  • ご家族や会社の同僚など周囲の方がインフルエンザに感染したとき

抗インフルエンザ薬を服用することで、インフルエンザの感染を予防することができます。

※自由診療での処方となります。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合もございます。

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インフルエンザで熱が下がって出勤する際の注意点

インフルエンザを発症して解熱した際、すぐに出勤するとウイルスを排出して周りの方へうつしてしまう可能性があります。注意すべきポイントは2点です。

  • 解熱後もウイルスを排出している可能性がある
  • 自己判断での出勤は職場での感染拡大リスクを高める

熱が下がって体調がよくなると「もう出勤しても大丈夫」と判断しがちです。しかし解熱したからといって、すぐにウイルスがいなくなるわけではありません。自分では元気でも、他人に感染させる可能性が残っていることを理解しましょう。

出勤停止期間を守ることは、自分の健康だけでなく、職場全体の健康を守ることにつながります。

解熱後もウイルスを排出している可能性がある

解熱後も、体内でウイルスが排出され続けている可能性があります。

インフルエンザウイルスは発症の前日から体の外へ排出されはじめ、発症後も3〜7日目までは排出され続けます[2][7]。そのため、すぐに解熱したあとも数日間はウイルスが検出されることが確認されています。

厚生労働省が「発症後5日、かつ解熱後2日」の休養を推奨しているのは、この期間に感染リスクが残っているためです。

熱が下がって自覚症状がなくなっても、せきやくしゃみ、会話によってウイルスを周囲に拡散させる可能性が高いです。とくにせきが残っている場合は、飛沫に含まれるウイルスが他人に感染するリスクが高くなります。

また、人によっては一度熱が下がっても再度高熱になることがあり、二峰性熱と呼びます。これは体内でウイルスが完全に排除されていない証拠であり、無理に出勤すると症状が悪化する恐れがあるため注意が必要です。

自分では「もう治った」と感じても、医学的にはまだ回復途上にあることを理解しましょう。

出勤を急ぐ気持ちはわかりますが、しっかりと休むことで、職場での二次感染を防ぐことができます。解熱後2日間という期間は、周囲の人を守るための重要な期間と考えてください。

自己判断での出勤は職場での感染拡大リスクを高める

自己判断で早期に出勤すると、職場での集団感染を引き起こすリスクが大幅に高まります。とくにオフィスは密閉された空間で多くの人が長時間共に過ごすため、一人の感染者から複数人に感染が広がる可能性があります。

医療機関や介護施設では、インフルエンザ罹患者の出勤停止を厳格に管理することが感染対策の基本とされています[5]。これは、免疫力の低い患者や高齢者を守るためだけでなく、施設全体の機能を維持するために不可欠な措置です。一般企業においても、就業規則によっては同様の対策が求められている場合があります。

「仕事が忙しいから」「熱が下がったから大丈夫」という自己判断は、自分だけでなく同僚や取引先にも迷惑をかける可能性があります。とくに、会議や商談で多くの人と接触する機会がある場合、感染を拡大させるリスクはさらに高まるでしょう。

インフルエンザの出勤停止期間を守ることは、個人の責任であると同時に、組織全体の健康を守る行動です。自己判断せず、必ず会社の規定を確認し、必要であれば医師と相談のうえ出勤時期を決めましょう。

インフルエンザの出勤停止に関するよくある質問

インフルエンザの出勤停止期間について、多くの方が疑問に感じる点をQ&A形式で解説します。有給休暇の扱いや証明書の提出、外出の可否など、実務上の判断に迷いやすい内容を取り上げているため、一緒に確認していきましょう。

出勤停止期間中の休みは有給休暇扱いになりますか?

インフルエンザによる出勤停止期間の休みが有給休暇扱いになるか、特別休暇(病気休暇)扱いになるか、それとも欠勤扱いになるかは、企業の就業規則によって異なります。まずは自社の就業規則を確認しましょう。

インフルエンザなどの感染症による休業に対して、特別休暇制度を設けている企業は多いです。特別休暇制度を利用できた場合、有給休暇を消化せずに休むことができます。ただし、特別休暇が有給か無給かも企業によって異なるため、お勤め先の人事部門に確認が必要です。

会社から治癒証明書や陰性証明書を求められたらどうすればいいですか?

原則、治癒証明書や陰性証明書は不要とされています。厚生労働省は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症について、医療機関の負担軽減と患者の経済的負担を考慮し、事業者に対して証明書の提出を求めないよう明確に要請しています[9]。医療機関では季節性インフルエンザの流行時期の発熱外来の受診者が増加しており、証明書発行業務が医療提供体制を圧迫する要因となっているためです[9]

しかし会社や学校によっては、治癒証明書や陰性証明書の提出を求められる場合があるかもしれません。

証明書を取得するには、インフルエンザにかかった方が医療機関を再受診する必要があり、患者側に時間的・経済的負担がかかります。

2025年時点では、代替手段として、自己申告書の提出で対応する企業が増えているため、発症日や解熱日を記録したメモや体温記録を提示することで、出勤停止期間を適切に管理できるでしょう。

出勤停止期間中の外出は可能ですか?

出勤停止期間中の外出については、法律上の制限はないため、外出することは可能です。ですが、体の回復や感染拡大防止の観点から、自宅で安静にしておく方が安心できます。

インフルエンザウイルスは発症後3〜7日目まで排出され続け、とくに解熱後もウイルスを拡散させる可能性が高いです。そのため、外出することで公共交通機関や店舗など、不特定多数の人に感染を広げるリスクがあります。

もちろん医療機関への受診や生活必需品の購入など、やむを得ない外出が必要な場合もあります。その際は以下の対策をおこないましょう。

  • マスクを正しく着用する
  • 人混みを避け、短時間で用事を済ませる
  • 手洗いや手指消毒を頻繁におこなう
  • 公共交通機関の利用をできるだけ避ける

高齢者や乳幼児、基礎疾患のある人と接触する可能性がある場所への外出は、回復するまでは控えておいた方がよいかもしれません。これらの方々は重症化リスクが高く、感染させた場合に深刻な事態を招く恐れがあります[6]

出勤停止期間は自分の回復のためだけでなく、社会全体の感染拡大を防ぐための重要な期間です。外出は最小限に抑え、自宅での療養に専念しましょう。

インフルエンザで解熱はしたが2日経っていなくても出勤してよいですか?

解熱しても2日が経過していない場合、出勤は控えた方がよいでしょう。インフルエンザを発症した際の、出勤に関する法律上の義務はありませんが、厚生労働省が推奨する「発症後5日、かつ解熱後2日」という基準を守ると、周囲への感染を防ぐことができます。

解熱後もウイルスは体内に残っており、2日程度は他人に感染させるリスクがあります。職場での集団感染を引き起こす可能性があるため、熱が下がったからといってすぐに出勤しないようにしましょう。

もちろん、最終的な判断は会社の就業規則によります。多くの企業では独自に出勤停止基準を定めており、その規定に従う必要があるため、まずはご自身が務めている企業の就業規則を確認してみてください。

就業規則に明確な基準がない場合や、判断に迷う場合は、会社の人事部門や上司に問い合わせるのが確実な方法です。自己判断で早期に出勤すると、あとから問題になったり、職場での信頼を損ねたりする可能性があります。

クリニックフォアでは、インフルエンザの症状や出勤の可否について、医学的見地から適切なアドバイスを受けられます。迷った際は受診時に気軽にご相談ください。

まとめ

この記事では、インフルエンザの出勤停止期間について、厚生労働省などの公的機関の情報に基づいて解説しました。理解しておくべきポイントは以下のとおりです。

  • 大人の場合、インフルエンザによる出勤停止に法律上の義務はないが、職場での感染拡大を防ぐため、厚生労働省は「発症後5日、かつ解熱後2日」を目安に休養することを推奨している
  • 子どもは学校保健安全法により、小中高生は「発症後5日、かつ解熱後2日」、保育園児・幼稚園児は「発症後5日、かつ解熱後3日」が基準となっている

出勤停止期間中の休みが有給休暇扱いになるか、特別休暇扱いになるかは、ご自身が務めている企業の就業規則によって異なります。まずは自社の就業規則を確認し、不明な点は人事部門に問い合わせてみましょう。

重要なのは、ご自身の体調回復と周囲への感染拡大防止です。熱が下がって元気になっても、解熱後2日間はウイルスを排出している可能性があります。自己判断で早期に出勤すると、職場での集団感染を引き起こすリスクが高まります。適切な期間自宅で療養し、安心して職場復帰の準備を進めてください。

参考文献

  1. e-Gov 法令検索. 学校保健安全法施行規則
  2. 厚生労働省. 令和6年度インフルエンザQ&A.
  3. 川崎医科大学附属病院. インフルエンザに関するQ&A.
  4. 日本呼吸器学会. A-02 インフルエンザ - A. 感染性呼吸器疾患
  5. 千葉県医師会. 社会福祉施設等における インフルエンザ等の患者発生時への対応 に当たるための手引き.
  6. 政府広報オンライン. インフルエンザの感染を防ぐポイント「手洗い」「マスク着用」「咳(せき)エチケット」.
  7. 日本感染症学会. インフルエンザ(季節性)(seasonal influenza)|症状からアプローチするインバウンド感染症への対応.
  8. 厚生労働省. 年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています.
  9. 厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症及び季節性インフルエンザに係る医療機関・保健所からの証明書等の取得に対する配慮について