インフルエンザで熱が上がったり下がったりする理由と受診の目安

インフルエンザと診断され抗インフルエンザウイルス薬を服用しているにもかかわらず、一度下がった熱が再び上昇する状態に不安を感じる方は少なくありません。
「お薬が効いていないのでは」「症状が悪化しているのでは」と心配になるでしょう。
この記事では、熱が上下する理由、様子をみて良い場合とすぐに受診すべき場合の見極め方、そして熱がぶり返した際の出席停止期間の数え方について解説します。
最後までお読みいただくと熱のぶり返しのメカニズムが理解でき、過度に不安を感じることなく適切なタイミングで受診の判断ができるようになります。

インフルエンザの一般的な経過と熱が上がったり下がったりする「二峰性発熱」の特徴

インフルエンザの発熱期間は通常1〜3日程度ですが、発熱パターンには個人差があります。

一度熱が下がった後に再び上昇する「二峰性発熱」という経過をたどるケースもあり、子どもに多くみられます[1]

現在の症状が通常の経過なのか、受診が必要なのかを判断するのに、まずは標準的な発熱パターンを知っておきましょう。

通常の発熱期間とピークの目安

インフルエンザは突然の高熱で発症し、38度以上の発熱が特徴の感染症です[2]。熱のピークは発症から2〜3日目に訪れることが多く、その後徐々に解熱していきます。

発症から治癒までの期間は通常3〜7日程度で、多くの場合1週間以内に症状が改善します[2]。ただし、高齢者や基礎疾患のある方では、症状が長引く場合や合併症のリスクが高まるため注意が必要です[2]

抗インフルエンザウイルス薬を服用した場合、ウイルスの増殖を抑え、症状の悪化を防ぐ効果が期待できます。発熱期間が1〜2日程度短縮される可能性がありますが、お薬を飲んでもすぐに熱が下がるわけではないことを覚えておきましょう[3]

一度下がってまた上がる「二峰性発熱」の特徴

二峰性発熱とは、インフルエンザを発症して一度解熱したあと、半日から1日程度経過してから再び発熱する現象です。この発熱パターンは子どもによくみられる経過で、珍しいものではありません[1]

二峰性発熱が起こるメカニズムは完全には解明されていませんが、インフルエンザウイルスに対する免疫反応の過程で生じると考えられています。

ただし発熱が5~7日以上続く場合や呼吸困難などの症状をともなう場合は、細菌による二次感染や合併症が生じている可能性があるため、医療機関への受診が必要です。

インフルエンザで熱が上がったり下がったりする主な理由

インフルエンザで熱が上下する理由は、ウイルスに対するからだの免疫反応と、服用しているお薬の作用の仕方によるものと考えられています。

一度下がった熱が再び上がると「お薬が効いていないのでは」と不安になりますが、多くの場合は正常な経過の一部です。

ただし、熱の変動パターンによっては医療機関への相談が必要になることもあります。

ウイルスと戦うための正常な免疫反応

発熱は、インフルエンザウイルスを排除するためのからだの正常な防御反応です。

体温が上昇することでウイルスの増殖が抑えられ、同時に免疫細胞の活動が活性化されます。

インフルエンザウイルスは体内で急速に増殖し、感染後1〜3日で症状がピークに達します[2]。抗インフルエンザウイルス薬を服用するとウイルスの増殖は抑えられますが、すでに体内に存在するウイルスを完全に排除するまでには時間が必要です。

そのため、一度解熱したあとも体内にウイルスが残っている場合、免疫システムが引き続き反応して再び発熱することがあります。

つまり、この発熱パターンは病状の悪化を意味するものではなく、からだがウイルスと戦っている証拠といえます。

解熱剤の効果切れによる一時的な変動

解熱剤は体温を一時的に下げるお薬で、抗インフルエンザウイルス薬のようなウイルスを排除する働きはありません。効果は4〜6時間ほど続き、切れると再び熱が上がるため「上がったり下がったりする」状態が起こります[4]

体内にインフルエンザウイルスがいる間は熱の上下が続くこともありますが、インフルエンザによる発熱そのものは、からだがウイルスと戦うための正常な反応です。

そのため、水分がとれ比較的元気に過ごせているようであれば、解熱剤に頼りすぎず安静を保って自然な回復を待つのもひとつの方法です。

ただし熱の上げ下げが5~7日以上続く場合は、細菌性の二次感染や合併症の可能性があるため医療機関を受診しましょう。

インフルエンザで熱が上がったり下がったりするときの再受診が必要なケース

熱の変動自体はかならずしも危険なサインではありませんが、それにともなう全身状態の変化が受診の判断基準となります。

呼吸困難、水分摂取困難、意識障害などの症状があらわれた場合は、年齢を問わず速やかな受診が必要です。

子どものインフルエンザ脳症や高齢者の肺炎など、年齢層によって注意すべき合併症が異なるため、具体的な危険サインを知っておくことが重要です。

水分がとれない・呼吸が苦しい

熱の上下に加えて以下のような症状がある場合は、年齢を問わず直ちに医療機関を受診してください。

  • 呼吸が速い、息苦しそうにしている
  • 顔色が悪い(青白い、唇や爪が紫色)
  • 水分がまったくとれない、ぐったりしている
  • 意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が鈍い

厚生労働省はインフルエンザによる肺炎の合併について、呼吸困難や持続する高熱をともなう場合は速やかに受診すべきとしています[3]

とくに水分摂取ができない状態が続くと、脱水症状が進行し、重症化のリスクが高まります。

けいれんや異常行動がある

子どもでは、インフルエンザ脳症による重篤な神経症状があらわれることがあります[5]

以下の症状がみられた場合は、救急受診を検討してください[5]

<インフルエンザ脳症の危険サイン>

  • けいれんが5分以上続く、または繰り返す
  • 意味不明な言動、幻覚を訴える
  • 呼びかけに答えない、目の焦点が合わない
  • 急に走り出す、高いところに登ろうとするなどの異常行動がある

抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無にかかわらず、インフルエンザ感染症では脳症に伴う異常行動が起こる可能性があります[5]

発症後少なくとも2日間は、子どもが一人にならないよう見守りましょう。

胸の痛みや長引くせきがある

高齢者や基礎疾患のある方は、インフルエンザ感染後に肺炎や心筋炎などの合併症を起こしやすくなります[5]。以下の症状がある場合は、速やかに受診してください。

<合併症が疑われる症状>

  • 胸の痛み、圧迫感
  • 激しいせきが続く、痰に血が混じる
  • 熱の上下も含めて発熱が7日以上続く
  • 全身の倦怠感が強く、起き上がれない

日本老年医学会は、インフルエンザ後の二次性細菌性肺炎が高齢者に起きやすく、ときに致命的になり得ると指摘しています[6]

また、基礎疾患として心疾患や糖尿病、呼吸器疾患がある方は、インフルエンザをきっかけに持病が悪化する可能性があります[2]

熱の上下が3日以上続く、せきが悪化するなどの場合、早めにかかりつけ医に相談しましょう。

インフルエンザで熱がぶり返した場合の「解熱日」の数え方と復帰基準

学校保健安全法施行規則では、出席停止期間の基準として「発症後5日を経過、かつ解熱後2日(幼児は3日)」と定められています[7]

「解熱」とは、解熱剤を使わずに平熱が維持された状態を指します。

一度平熱まで下がっても、その後再び上昇した場合、最初に下がった日は「解熱日」としてカウントされません。

以下は、経過の一例です。

発症からの日数熱の経過解熱の判断基準
発症0日目(発症日)38.5度
発症1日目37.2度(微熱が持続)
発症2日目午前は36.8度だったが夕方38.0度へ上昇解熱とみなされない(カウントリセット)
発症3日目1日中36度台で経過解熱0日目
発症4日目平熱解熱1日目
発症5日目(発症日からの条件クリア)平熱解熱2日目(解熱日の条件クリア)
発症6日目平熱解熱日3日目:登校可能

完全に熱が下がり、その状態が安定して維持できて初めて、解熱後の日数カウントが開始となります。

二峰性発熱のように熱が上下する場合は、最終的に解熱した日を起点として数え直さなければなりません。

幼児の場合は、上記に加えもう1日療養日を設けて登園可能となります。

会社員では規律や法律上で療養期間が決められているわけではありませんが、多くの場合で学校保健安全法施行規則の基準を採用しています。

インフルエンザの熱が上がったり下がったりするときによくある質問

インフルエンザで熱が上下する期間中は、日常生活のさまざまな場面で判断に迷うことがあります。

入浴や外出、食事など、「これをしても大丈夫か」という疑問は、体調管理と感染拡大防止の両面から重要です。

ここでは、熱が不安定な時期によくある生活上の疑問について、お答えします。

インフルエンザで熱ががったり下がったりしているとき、お風呂に入ってもいいですか?

入浴することは可能です。しかしインフルエンザによって倦怠感が強かったり、立ちくらみをするなど、入浴に差し障る症状があるなら、タオルでからだを拭く程度にとどめることがいいでしょう。

汗をかいた場合は、温かいタオルでからだを拭き、清潔な衣服に着替えることで、入浴の代わりとなります。

解熱後も体力が十分に回復していない場合は、短時間のシャワーから始めましょう。

インフルエンザで熱が夜だけ上がります。様子をみていて大丈夫でしょうか?

夜間だけ熱が上がる状態は、かならずしも悪化を意味するものではありません。体温には日内変動があり、夕方から夜にかけて自然と高くなる傾向があります。

こうした背景から夜に熱が上がるのは珍しい現象ではないため、多くの場合は自宅で経過をみていても良いと考えられます。

ただし、夜間の発熱が38.5℃以上になる、日中も熱が下がらなくなる、水分がとれなくなるなどの変化があれば、医療機関への相談が必要です。

熱の変動に不安を感じる方は、クリニックフォアのオンライン診療をご活用ください。

症状がつらい場合でも、自宅にいながら診察を受けられます。

まずはお気軽にお問い合わせください。

※触診・検査が必要な場合は、対面診療をご案内させていただく場合があります。

インフルエンザで熱が上がったり下がったりしても焦らず全身状態の観察を

インフルエンザで熱が上がったり下がったりするのは、子どもや回復期には珍しくない現象です。

二峰性発熱のように、一度解熱したあとに再び発熱することもありますが、かならずしも悪化を意味するものではありません。

重要なのは、熱の変動そのものよりも全身状態の観察です。

水分がとれているか、呼吸に異常がないか、意識ははっきりしているかといった点に注目してください。日中は比較的元気で水分摂取ができており、夜間のみ微熱が出る程度であれば、回復に向かっている可能性が高いといえます。

ただし、ぶり返した熱にともなって激しいせきや胸の痛み、呼吸困難、意識障害、けいれんなどがみられる場合は、肺炎や脳症などの合併症の可能性があります。

このような症状があらわれた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

参考文献

  1. インフルエンザと出席停止期間|川崎医科大学 総合医療センター
  2. インフルエンザ(詳細版)|国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト
  3. 令和7年度急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A|厚生労働省
  4. カロナールインタビューフォーム|一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)
  5. 学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説|日本小児科学会
  6. 2.高齢者におけるインフルエンザ|奥野英雄
  7. 学校保健安全法施行規則|e-Gov 法令検索