一人暮らしのインフルエンザ|病院に行けないときはどうしたらいいか対処法を解説

一人暮らしで突然高熱や強い倦怠感が出ると「インフルエンザかもしれないけれど病院に行けない……」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
発熱で動けない、付き添いがいない、外出がつらいなど、一人暮らしでは受診そのものが大きな負担になることがあります。
この記事では、受診できないときにまず何をすべきかや、受診が必要な症状、注意点など、一人暮らしでも安心して対応できるポイントをわかりやすく解説します。
いざというときに慌てないよう、まずは受診できない状況での正しい対処法を確認していきましょう。

一人暮らしでインフルエンザになったら|病院行けないときの対処法

一人暮らしで急に高熱や強いだるさが出ると「インフルエンザかもしれないけど、しんどくて受診できない」と不安になるものです。

インフルエンザでは、発症後に高熱・頭痛・関節痛・筋肉痛などの全身症状が急激にあらわれますが、健康な成人であれば安静にしていれば1週間ほどで自然に回復するとされています[1]。まずは落ち着いて、自宅でできる対処から始めましょう。

まずは安静にして水分補給をする

インフルエンザが疑われる場合、まずは無理せず体を休め、十分な水分補給と睡眠をとって体力の消耗を防ぐことが大切です。

高熱が出ると体内の水分が失われやすくなるため、こまめに水分をとり、脱水を防ぐようにしましょう。水分補給は水やお茶、スープなど飲みやすいもので構いません[1]

加えて、経口補水液やスポーツドリンクなど電解質を含む飲料は、汗で失われた水分とミネラルを効率よく補えるためおすすめです。スポーツドリンクは糖分が多い製品もあるため、過剰にならないように注意しましょう。

一人暮らしの場合は、体調が悪いと買い物に行けないことも考えられるため、日頃から飲料を常備しておくと安心でしょう。

室内環境を整える

空気が乾燥すると、のどや鼻の粘膜が乾燥して抵抗力の低下や症状の悪化を引き起こしてしまうことがあります。インフルエンザのときは、湿度を適切に保つことで気道粘膜の防御機能を維持し、回復をサポートできます。

室内の適切な湿度は50〜60%とされており、乾燥しやすい冬場は加湿器を活用すると効果的です[2]

また、部屋の換気も重要です。部屋の窓を2か所以上開けて空気の通り道をつくると効率よく換気できます。

一人暮らしの場合は、体調が悪いと室内環境の管理が難しくなるため、あらかじめ加湿器や温湿度計を常備しておくとよいでしょう。

外出できないときはオンライン診療を活用する

一人暮らしでインフルエンザにかかると、発熱や倦怠感で外出が難しいことが多いでしょう。そんなときに役立つのがオンライン診療です。

スマートフォンやパソコンがあれば自宅から医師の診察を受けられます。医師の判断で処方となる場合、薬の受け取り方法は医療機関により異なりますが、配送や最寄りの薬局での受け取りなどが選択できることが多いです。

クリニックフォアでも、インフルエンザに対する保険診療をオンラインでおこなっています。

一人暮らしだと医療機関を受診することさえ負担になることがありますが、外出が難しいときでも医療につながれる方法を知っておくと、いざというときにも落ち着いて対応でき、安心でしょう。

※オンライン診療においても、インフルエンザ陽性者との濃厚接触歴、高熱などの症状から医師がインフルエンザと推定診断した場合には、抗インフルエンザ薬が処方される場合があります。市販の抗原検査キットの結果も参考にする場合があります。※症状や状況に応じて、対面での検査や診察をご案内する場合があります。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合もございます。

すぐに受診すべき症状と受診した方が良い人

インフルエンザにかかったとき、すべての人が医療機関を受診する必要があるわけではありません。しかし、症状が重い場合や重症化リスクのある方は、早めに医師の診察を受けることが重要です。

受診の目安を知っておくことで、一人暮らしでも適切なタイミングで判断できるようになります。自分の症状や体の状態を冷静に観察し、必要に応じて医療機関に相談しましょう。

インフルエンザのすぐに受診すべき症状とは

次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください[1]

  • 高熱が続く
  • 呼吸が苦しい
  • 意識がもうろうとしている、反応が鈍い
  • けいれんを起こす
  • 水分がとれず、尿が出ない(脱水の兆候)
  • 症状が急激に悪化している

これらの症状は、肺炎や脳症などの重篤な合併症のサインである可能性があります。厚生労働省は、具合が悪ければ早めに医療機関を受診するよう呼びかけています[1]

一人暮らしでは症状の変化に気づきにくいこともあるため、少しでも不安を感じたら医療機関に相談しましょう。

高齢者や持病がある人は重症化リスクが高い

高齢者や持病のある方は、インフルエンザに感染すると重症化するリスクが高くなります。加齢や持病により免疫機能や体力が低下していることが多いためです。

厚生労働省によると、以下のような方は注意が必要とされています[3]

  • 慢性呼吸器疾患(気管支喘息など)
  • 慢性心疾患(慢性心不全や不整脈など)
  • 糖尿病
  • 腎機能障害
  • ステロイド内服などによる免疫機能不全

これらに該当する方は、インフルエンザの症状が出たら早めに医療機関を受診し、治療を受けてください。一人暮らしで持病のある方は、かかりつけ医に事前に相談し、発症時の対応について確認しておくと安心です。

受診タイミングと注意点

抗インフルエンザ薬は、ウイルスの増殖を抑え、症状を早く改善させる効果が期待できるお薬です。

ただし、効果を十分に発揮するためには、服用するタイミングが重要です。発症から時間が経ちすぎると、お薬の効果が十分に得られない場合があります。

一人暮らしで受診のタイミングを迷っている方は、抗インフルエンザ薬の正しい服用タイミングについて知っておきましょう。

抗インフルエンザ薬は48時間以内の服用開始が効果的

抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に服用を開始することで効果が期待できるため、医療機関を受診する場合は早めに受診してください。

これは、インフルエンザウイルスが発症後に急速に増殖するため、早い段階でお薬を服用することでウイルスの増殖を抑えやすくなるからです。

適切なタイミングで治療を開始すると、発熱期間が通常より1〜2日短くなり、ウイルス排出量も減少するとされています[1]

一方で、発症から48時間以上経過してしまうと、お薬の効果は十分に得られない可能性があります。「ただの風邪かも……」と様子を見ているうちに時間が過ぎてしまうこともあるため、インフルエンザの可能性がある場合は、早めに医療機関へ相談すると良いでしょう。

クリニックフォアでは、東京・埼玉・大阪に対面診療のクリニックを展開しています。インフルエンザの診察・検査にも対応していますので、お近くの方はご利用ください。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合もございます。

自己判断での服用リスクに注意

抗インフルエンザ薬は医師の処方が必要なお薬です。以前もらったものが余っていた、友人や家族からもらった、などの状況であっても自己判断での服用は避けてください。

お薬の種類によって服用方法や適応が異なり、患者さんの状態に合わせて医師が判断する必要があるためです。

現在、抗インフルエンザ薬にはオセルタミビル(タミフル等)、ザナミビル(リレンザ)、ペラミビル(ラピアクタ)、ラニナミビル(イナビル)、バロキサビル(ゾフルーザ)などがあります[1]

お薬の効果や副作用については医師に相談し、適切な処方を受けることが大切です。

市販のお薬は症状を抑えるだけで治療薬ではない

市販のお薬は発熱や頭痛を和らげる目的で服用される場合もありますが、インフルエンザウイルスそのものを抑える効果はありません。

インフルエンザウイルスの増殖を抑える抗インフルエンザ薬は医師の処方が必要です[1]

また、解熱剤の種類によってはインフルエンザ脳症のリスクを高める成分もあるため、自己判断が不安な場合は医師・薬剤師に相談する、もしくはアセトアミノフェンを選択肢として検討しましょう[4]

高熱が続く、息苦しい、水分がとれないなどの状態があるときは、早めに医療機関へ相談しましょう。

発症する前に準備しておきたいものとリスク対策

一人暮らしでインフルエンザにかかったときは、症状の悪化だけでなく、高熱による判断力低下や思わぬ事故にも注意が必要です。

とくに高熱時には異常行動が起こる可能性があり、転落などの重大な事故につながるケースも報告されています。安心して療養するために、事前の対策を知っておきましょう。

常備しておきたい食品や衛生用品

体調を崩すと買い物が難しくなるため、元気なうちに備えておきましょう。

  • 食品:おかゆ、ゼリー、スープ、レトルト食品
  • 飲料:経口補水液、スポーツドリンク、お茶
  • その他衛生用品など:体温計、のど飴、マスク

必要なものが揃っているだけで、発症時の負担が大幅に軽減されるでしょう。

高熱時の異常行動による事故を防ぐ対策

インフルエンザでは、急に走り出す、部屋から飛び出そうとするなどの異常行動が稀ではありますが小児・未成年者を中心に報告されています。成人でも高熱時には判断力が低下する可能性があります。

厚生労働省によると、この異常行動は抗インフルエンザ薬の種類や服用の有無にかかわらず起こることがあり、とくに発熱から2日間は注意が必要とされ、小児・未成年者に対しては注意喚起されています[5]

一人暮らしの成人でも、以下の対策を判断力低下に対して、事前に確認しておきましょう。

  • 玄関・窓の施錠をしてベランダへ出られないようにする
  • 高所につながる場所に近づかない
  • 体調が悪いときは無理に行動しない

万が一に備え、家族や友人に定期的に連絡を入れてもらうなど、見守り体制を整えておくことも大切です。

緊急時に備えた戸締まりと連絡先の確認

一人暮らしでは、体調が急変したときにすぐに助けを求められる準備をしておくことが大切です。高熱で動けなくなったり、意識がもうろうとしたりする可能性もゼロではありません。

いつ何があっても大丈夫なよう、事前に下記の内容を確認しておきましょう。

  • 家族・友人の緊急連絡先を確認・登録しておく
  • 救急相談窓口(#7119)を控えておく
  • オンライン診療ができる医療機関を調べておく

救急安心センター(#7119)は、「救急車を呼ぶべきか」「医療機関へ行くべきか」と迷ったときに、看護師などの専門家が電話でアドバイスしてくれる相談窓口です。

迷ったときにすぐ相談できる体制をつくっておくことが、一人暮らしではとても重要です。

一人暮らしで不安ならインフルエンザの予防内服という選択肢も

一人暮らしだと、インフルエンザにかかったときに頼れる人がいない不安から、そもそも感染しないことをより強く意識するかもしれません。

そのような場合、予防接種に加えて、曝露した後に抗インフルエンザ薬を発症前に服用する「予防内服」という方法があります。

予防内服とは、治療にも使われる抗インフルエンザ薬を発症前に服用し、発症リスクを下げる目的でおこなうものです。

一人暮らしの方でも、次のような状況では検討されることがあります。

  • 身近な人(職場・学校など)でインフルエンザの感染者が出たとき
  • 受験など、絶対に体調を崩したくない大切な予定があるとき
  • 基礎疾患がある方、もしくはそういう方を介護しているなど、発症を避けたい場合

ただし、予防内服は保険適用外の自由診療となり、服用しても100%発症を防げるわけではありません。しかし、一つの選択肢として知っておくと良いでしょう。

予防内服薬として処方できるお薬は以下のとおりです。

  • オセルタミビル(タミフル後発品)1日1回 10日分:8,250円
  • イナビル(先発品)2容器で1回分:10,450円
  • ゾフルーザ(先発品)2錠で1回分 ※ 80kg 未満の方向け:11,550円
  • ゾフルーザ(先発品)4錠で1回分 ※ 80kg 以上の方向け:19,250円

予防内服を希望される場合は、医師に相談のうえ、ご自身の状況に合った対応を確認しましょう。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合もございます。

一人暮らしの方のインフルエンザについてよくある質問

一人暮らしの方から寄せられる、インフルエンザに関するよくある質問に回答します。

Q. 一人暮らしでインフルエンザのとき、受診しなくても大丈夫ですか?

健康な成人であれば、安静と水分補給で自然に回復することがほとんどですので、必ずしも受診しなければいけないわけではありません。

ただし、高熱が続く場合、呼吸が苦しい場合、水分がとれない場合は医療機関の受診を検討してください。

高齢者や基礎疾患のある方は重症化リスクがあるため、早めの受診をおすすめします。

Q. インフルエンザで一人暮らしのとき、食事はどうすればよいですか?

食欲がないときは無理に食べる必要はありませんが、水分補給はこまめにおこないましょう。

口にしやすいおかゆやゼリー、スープなどを少量ずつ摂取すると、体力の回復につながります。

事前にレトルト食品や冷凍食品を備蓄しておくと安心です。

Q. 市販の解熱剤を飲んでも問題ありませんか?

一部の解熱剤はインフルエンザ脳症を悪化させるリスクがあるため、成分を確認してから服用することが望ましいです。

アセトアミノフェン系の解熱鎮痛剤は、インフルエンザの発熱時にも比較的安心して服用できます[3]

不安な場合は、医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

Q. オンライン診療でインフルエンザのお薬は処方してもらえますか?

オンライン診療でも、医師の判断により抗インフルエンザ薬を処方してもらえる場合があります。

インフルエンザ陽性者との濃厚接触歴、高熱などの症状から医師がインフルエンザと推定診断した場合には、抗インフルエンザ薬が処方される場合があります。市販の抗原検査キットの結果も参考にする場合があります。

スマートフォンやパソコンから受診できるため、一人暮らしで体調が悪く外出が難しい場合でも医師に相談しやすいのでおすすめです。

クリニックフォアでもインフルエンザに対する保険診療をオンラインで実施しており、処方されたお薬は自宅まで配送することも可能です。

※症状や状況に応じて、対面での検査や診察をご案内する場合があります。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合もございます。

まとめ

一人暮らしでインフルエンザにかかったときは、まずは無理をせず休息と水分補給を確保し、自宅でできる対処を優先しましょう。

健康な成人であれば自然に回復することが多いものの、高熱が続く・水分がとれない・呼吸が苦しいなどの症状がある場合は、早めの受診が必要です。

受診できないときでも、オンライン診療を利用すれば自宅から医師の診察を受けられますので一人暮らしで外出が難しいときの受診手段として覚えておくと安心です。

また、発熱時には判断力が低下することもあります。戸締まりの確認や緊急連絡先の共有、食品や飲料の備蓄などの準備をしておきましょう。平時から整えておくことで、いざ体調を崩したときの負担が大きく減ります。

一人暮らしでも落ち着いて対応できるよう、自宅での対処法・受診が必要なサイン・オンライン診療という選択肢の3つを押さえておくことが、安心して過ごすための大切なポイントです。

参考文献

  1. 厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A」
  2. 政府広報オンライン「インフルエンザの感染を防ぐポイント」
  3. インフルエンザ脳症ガイドライン 【改訂版】
  4. 厚生労働省「新型インフルエンザに関するQ&A」
  5. 小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は、異常行動にご注意下さい|厚生労働省