経鼻インフルエンザワクチン(フルミスト)とは?効果・注射との違い・接種できる人について解説

※クリニックフォアでは、注射タイプのインフルエンザワクチンのみ取り扱っています。

「子どもに痛くないインフルエンザワクチンを受けさせたい」とお考えの保護者の方は多いのではないでしょうか。
フルミスト点鼻液は、鼻にスプレーするタイプの経鼻弱毒生インフルエンザワクチンで、2024年から日本でも接種できるようになりました。
注射が不要なため接種時の痛みがなく、子どもの負担軽減が期待できる一方、接種対象は2〜19歳未満に限られています。
また、重度の喘息のある方や妊娠中の方など、接種できない場合もあるため事前の確認が必要です。
従来の注射タイプと比較して、粘膜免疫を誘導しうる点が特徴ですが、費用や効果の違いも理解しておくことが大切です。
この記事では、フルミストの効果や仕組み、注射ワクチンとの違い、接種できる人・できない人について詳しく解説します。
フルミストの接種を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。


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経鼻インフルエンザワクチン(フルミスト)とは

フルミストは、鼻腔内にスプレーして接種する「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン」です。

2023年3月に国内で製造販売承認を取得し、2024年シーズンから接種が可能となりました[1]

注射による痛みがないため、小児への接種において被接種者と接種者双方の負担軽減が期待されています。

接種対象年齢は、2歳以上19歳未満で、1シーズンにつき1回の接種で完了します。

フルミストの基本情報と特徴

フルミストは、弱毒化した生きたインフルエンザウイルスを含むワクチンです。2003年で始めて3価のワクチンとして製造され、その後2023年までは4価ワクチンとして製造されました。2024年時点ではにB/山形系統が除外され、現在はA型2種類(H1N1、H3N2)とB型1種類(ビクトリア系統)の3価ワクチンとなっています[2]

投与量は0.2mLで、各鼻腔に0.1mLずつ噴霧する方法で接種を行います[1]

注射が苦手な子どもでも、鼻にスプレーするだけで接種が完了するため、接種時のストレスを大幅に軽減できます。

フルミストの基本情報は、以下の表のとおりです。

項目内容
一般名経鼻弱毒生インフルエンザワクチン
販売名フルミスト点鼻液
製造販売元第一三共株式会社
ワクチンの種類弱毒生ワクチン(3価)
接種対象年齢2歳以上19歳未満
接種回数1シーズンに1回
投与量0.2mL(各鼻腔に0.1mLずつ)
投与方法鼻腔内噴霧
製造販売承認日2023年3月27日

鼻にスプレーする際、冷たさや違和感を覚える子どももいますが、痛みはほとんどありません。接種は数秒で終わるため、注射のように押さえつける必要がなく、スムーズに完了するケースがほとんどです。

2024年から日本で接種可能になった

フルミストは、海外では2003年から使用されており、2023年時点で36の国と地域で承認されています[1]

日本では長年にわたり承認が待たれていましたが、2023年3月にようやく製造販売承認を取得しました。

2024年10月4日に第一三共株式会社から正式に発売され、国内の医療機関で接種を受けられるようになっています[2]

2024/25年シーズンのワクチン供給量は約2734万本で、そのうちフルミストは130万本、従来の不活化インフルエンザHAワクチンは2604万本となっています[3]

注射タイプのワクチンに加えて新たな選択肢が増えたことで、子どもの希望に合わせた接種方法を選べるようになりました。

接種対象年齢は2〜19歳未満

フルミストの接種対象は、2歳以上19歳未満に限定されています。

2歳未満への接種は、海外の臨床試験において入院率や喘鳴の頻度が上昇したことが報告されているため、適応外となっています[1]

また、19歳以上の成人や高齢者に対しては、有効性のデータが十分に示されていないため接種対象に含まれていません。

なお、海外では2歳〜49歳以下が接種適応年齢とされていますが、国内承認では19歳未満に限定されている点に注意しましょう[1]

子どもの年齢が対象範囲内であっても、喘息などの基礎疾患がある場合は、接種前に医師への相談が必要です。

フルミストの効果と免疫の仕組み

経鼻ワクチンであるフルミストは、従来の注射型ワクチンとは異なる仕組みで免疫を誘導します。

鼻腔内で弱毒化ウイルスが増殖することで、全身免疫に加えて粘膜免疫も獲得しうる点が大きな特徴です[1]

インフルエンザウイルスは、鼻やのどの粘膜から侵入するため、粘膜での局所の防御機能を高めることには意義があると考えられています。

ただし、国内臨床試験における発症予防のワクチン有効率は28.8%と報告されています。注射タイプのワクチン同様、かならずインフルエンザ発症を予防できるわけではない点を理解しておく必要があります[1][4]

インフルエンザの発症予防効果

フルミストには、インフルエンザの発症を予防する効果が期待できます。

国内で実施された2〜19歳未満を対象とした第III相試験(J301試験)では、以下の結果が報告されています[1][4]

項目フルミスト群プラセボ群
対象者数595例290例
インフルエンザ発症割合25.5%(152例)35.9%(104例)
ワクチン有効率28.8%(95%信頼区間:7.4-43.0)

この数値は、プラセボ群と比較して、フルミスト接種により発症リスクが約29%低下したことを示しています。

なお、この臨床試験では、従来の不活化インフルエンザHAワクチンとの直接比較は実施されていません[1]

ワクチンの効果は、シーズンごとの流行株との一致度によっても変動するため、毎シーズンの接種が推奨されます。

粘膜免疫と全身免疫の二重防御

フルミストは鼻腔内で弱毒化ウイルスが増殖することで、粘膜免疫と全身免疫の両方を誘導することが期待されます。

経鼻接種により、上気道粘膜において分泌型IgA抗体が産生され、ウイルスの侵入口である鼻やのどでの防御機能が高まりうる点が特徴です[1]

同時に、血中の抗体(IgG)や細胞性免疫も誘導されるため、体内に侵入したウイルスに対しても免疫応答が期待できます。

この二重の防御機構により、自然感染に近い形での免疫獲得が可能になります。

フルミストと注射ワクチンの免疫誘導の違いは、以下の表のとおりです。

免疫の種類経鼻ワクチン(フルミスト)注射ワクチン(不活化ワクチン)
粘膜免疫(分泌型IgA抗体)〇(誘導される)△(誘導されにくい)
全身免疫(血中IgG抗体)〇(誘導される)〇(誘導される)
細胞性免疫〇(誘導される)△(誘導されにくい)
免疫誘導の仕組み自然感染に類似抗原刺激による

〇=誘導される、△=誘導されにくい

このように、フルミストは鼻やのどの粘膜で直接免疫を作るため、ウイルスが体内に侵入する前の段階でブロックする効果が期待できます。

一方、注射ワクチンは主に血液中の抗体を増やすことで、体内に入ったウイルスと戦う仕組みです。

粘膜での防御を重視するならフルミスト、幅広い年齢層への対応や接種実績を重視するなら注射ワクチンと、それぞれの特徴を踏まえて選ぶとよいでしょう。

効果の持続期間について

フルミストの効果は、接種後おおむね1シーズン(約5〜6か月)持続すると考えられています。

インフルエンザワクチンは接種から効果が現れるまでに約2週間かかり、その後徐々に効果が低下していきます[5]

また、インフルエンザウイルスは毎年少しずつ変異するため、前シーズンに接種したワクチンでは十分な予防効果が得られない可能性があります[5]

そのため、フルミストも従来の注射型ワクチンと同様に、毎シーズンの接種が推奨されています。


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経鼻ワクチンと注射ワクチンの違い

インフルエンザワクチンには、フルミストのような経鼻タイプと従来の注射タイプがあります。

それぞれにメリット・デメリットがあるため、子どもの年齢や持病の有無、希望に応じて選択することが大切です。

注射タイプは幅広い年齢層に接種でき、定期接種の対象にもなっている一方、経鼻タイプは痛みがなく接種回数が少ないという利点があります。

両ワクチンの主な違いをまとめると、以下のとおりです。

比較項目フルミスト(経鼻)注射ワクチン(不活化)
接種方法鼻腔内にスプレー皮下
痛みほとんどなしあり
接種対象年齢2歳以上19歳未満生後6か月以上
接種回数(13歳未満)1回2回(2〜4週間隔)
ワクチンの種類弱毒生ワクチン不活化ワクチン
免疫不全者への接種不可可能
妊婦への接種不可可能
定期接種の対象対象外(任意接種)65歳以上は定期接種

日本小児科学会は、2〜19歳未満に対しては経鼻弱毒生ワクチンと不活化ワクチンを選択肢として同等とし、適応・注意点を踏まえて判断するよう示しています[1]

どちらを選んでも予防効果は期待できるため、接種方法や年齢、持病などを踏まえて、医師と相談のうえ決めるとよいでしょう。

フルミストと注射ワクチンの効果の違い

フルミストと注射ワクチンの効果については、年齢層や研究によって結果が異なります。

海外の研究では、6歳未満の小児においてフルミストは従来の不活化ワクチンと比較して感染抑制効果が高いとされた一方、インフルエンザ関連の入院は減少させなかったと報告されています[1]

国内の研究では、フルミストの国内臨床試験での発症予防のワクチン有効率28.8%と有効性が報告されていますが、注射ワクチンと直接比較した臨床試験は行われていません。

フルミスト(経鼻)のメリット・デメリット

フルミストの最大のメリットは、注射による痛みがない点です。

鼻にスプレーするだけで接種が完了するため、注射を怖がる子どもでもスムーズに受けられます。

また、13歳未満でも1回の接種で済むため、医療機関への通院回数を減らせる点も保護者にとっては大きな利点といえます。

フルミストのメリット・デメリットは、以下の表のとおりです。

メリットデメリット
・注射による痛みがない
・1シーズン1回の接種で完了する(13歳未満も1回でよい)
・粘膜免疫(分泌型IgA抗体)が誘導される
・注射部位の腫れや痛みがない
・自然感染に近い免疫が得られる
・接種対象が2〜19歳未満に限られる
・生ワクチンのため、免疫不全の方には接種できない
・費用が注射タイプより高い傾向にある
・喘息のある方は慎重な判断が必要
・接種後に鼻水
・鼻づまりなどの副反応が現れることがある

注射を怖がる子どもや、通院回数を減らしたいご家庭には、フルミストが適していると考えられます。ただし、喘息がある場合や費用面が気になる場合は、注射ワクチンも検討してみてください。

注射ワクチン(不活化)のメリット・デメリット

注射タイプの不活化ワクチンは、生後6か月以上であれば年齢を問わず接種できます[5]

65歳以上の高齢者は定期接種の対象となっており、自治体からの助成を受けられる点も大きなメリットです。

また、不活化ワクチンは免疫不全の方や妊娠中の方でも接種可能であり、接種対象が幅広い特徴があります[1]

メリットデメリット
・生後6か月以上であれば接種可能である
・65歳以上は定期接種の対象である
・免疫不全の方や妊婦も接種可能である
・費用が比較的安い
・長年の使用実績がある
・注射による痛みがある
・13歳未満は2回接種が推奨される
・注射部位の腫れや痛みが出ることがある

幅広い年齢層に対応でき、費用も抑えられるため、とくにこだわりがなければ注射ワクチンを選ぶご家庭も多いです。注射の痛みが気にならない子どもや、2回の通院が負担にならない場合は、注射ワクチンで問題ありません。

フルミストと注射ワクチンの費用比較

インフルエンザワクチンの接種費用は、ワクチンの種類や医療機関によって異なります。

フルミストは自由診療となるため全額自己負担が基本ですが、一部の自治体では助成制度を設けている場合もあります。

注射タイプのワクチンも任意接種の場合は自己負担となりますが、65歳以上の方は定期接種として助成を受けられます[5]

接種を検討する際は、費用面も含めて医療機関や自治体に確認することをおすすめします。

フルミストの費用目安

フルミストの接種費用は、医療機関によって異なりますが、おおむね8,000〜10,000円程度が目安となっています。

注射タイプのワクチンと比較すると、やや高額な設定となっている医療機関が多い傾向です。

これは、フルミストが新しいワクチンであることや、輸入・流通コストなどが影響していると考えられます。

1回の接種で完了するため、2回接種が必要な13歳未満の子どもの場合は、トータルコストで大きな差がない場合もあります。

注射ワクチンの費用目安

注射タイプのインフルエンザワクチンは、1回あたり3,000〜5,000円程度で接種できる医療機関が多いです。

※クリニックフォアを含む他院で公開されている料金表を収集したお薬代の目安価格となります。診察料は含まれておりません。

13歳未満の小児は2回接種が推奨されているため、合計で6,000〜10,000円程度の費用がかかることになります[5]

65歳以上の方や60〜64歳で特定の基礎疾患がある方は定期接種の対象となり、自治体によっては無料または1,000〜2,000円程度の自己負担で接種できる場合があります[5]

小児向けの任意接種についても、自治体独自の助成制度を設けている場合があるため、お住まいの地域の制度を確認してみてください。

当院でもインフルエンザの注射ワクチンによる予防接種を行っております。

アプリ予約なら3,400円〜(1回あたり)で接種可能です(院によって費用が異なります。)。アプリで、24時間いつでも簡単に予約することができます

注射ワクチンでのインフルエンザ予防接種をご希望の方は、以下のページをご覧ください。

専門外来/ワクチン | CLINIC FOR

助成制度の確認方法

インフルエンザワクチンの助成制度は、自治体によって内容が大きく異なります。

助成の有無や金額、対象年齢などを確認するには、お住まいの市区町村の公式ウェブサイトや広報誌をチェックしましょう。

また、保健センターや子育て支援課などに電話で問い合わせることで、最新の情報を得ることもできます。

フルミストについては助成対象外となっている自治体も多いため、接種を希望する場合は事前に確認しておくと安心です。

助成制度の確認先の例については、以下のとおりです。

  • 市区町村の公式ウェブサイト
  • 広報誌・回覧板
  • 保健センター・保健所
  • 子育て支援課・健康推進課
  • かかりつけ医療機関

フルミストの接種方法と流れ

フルミストは、医療機関で医師または看護師によって接種されます。

接種方法は従来の注射とは異なり、専用の噴霧器を使って鼻腔内にワクチンを噴霧する形式です。

接種自体は数秒で完了し、痛みを感じることはほとんどありません。

接種後は副反応の有無を確認するため、医療機関内で一定時間の経過観察を行います。

接種の流れ

フルミストの接種は、予診から接種完了まで通常15〜30分程度で終わります。

接種当日の流れ

1. 受付・予診票の記入

  • 体温測定
  • 予診票への記入(体調、アレルギー歴、接種歴など)

2. 医師による問診・診察

  • 健康状態の確認
  • 接種可否の判断

3. 接種

  • 座った状態で実施
  • 片方の鼻腔に0.1mLを噴霧
  • もう片方の鼻腔に0.1mLを噴霧
  • 合計0.2mLを接種[1]

4. 経過観察

  • 一般的には15〜30分程度、医療機関内で待機
  • 体調変化がないか確認

5. 帰宅

  • 問題がなければ帰宅
  • 当日は激しい運動を避ける

全体の流れは注射タイプのワクチンとほぼ同じですが、接種自体は痛みがなく短時間で終わるため、子どもの負担が少ない点が特徴です。

接種回数とタイミング

フルミストは、2〜19歳未満の方であれば年齢を問わず1シーズンに1回の接種で完了します。

注射タイプのワクチンでは13歳未満の小児に2回接種が推奨されていますが、フルミストは1回で済む点が特徴です[1]

接種のタイミングは、インフルエンザの流行が始まる前の10〜11月頃が推奨されます。

ワクチンの効果が現れるまでに約2週間かかるため、流行のピークを迎える前に接種を済ませておくことが大切です[5]

日本では例年12月〜4月頃にインフルエンザが流行し、1月末〜3月上旬に流行のピークを迎えるため、12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいとされています[5]

他のワクチンとの接種間隔

フルミストと他のワクチン(新型コロナワクチン、インフルエンザHAワクチンを除く)との接種間隔に関する規定は電子添文にありません。

医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に接種することができます[7]

異なる種類のワクチンを接種する際のルールは、以下の3つです。

  1. 注射生ワクチン(麻しん風しんワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチン、BCGワクチンなど)から次の注射生ワクチンを接種する場合は、27日以上の間隔を空けること
  2. 同じ種類のワクチンの接種を複数回受ける場合はワクチンごとに決められた間隔を守ること
  3. 発熱や接種部位の腫脹(はれ)がないこと、体調が良いことを確認し、かかりつけ医に相談の上接種をうけること

フルミストは経鼻生ワクチンのため、27日以上間隔をあける必要がありません。また、不活化ワクチンに分類される、インフルエンザ注射ワクチンに関しても同様です。

ワクチンの接種間隔について、不明な点がある場合や判断できない場合は、医師に相談しましょう。

フルミストを接種できる人・できない人について

フルミストは2〜19歳未満の方を対象としたワクチンですが、すべての方が接種できるわけではありません。

免疫機能に問題がある方や妊娠中の方など、接種が禁止されている場合があります。

また、喘息のある方や特定のアレルギーをお持ちの方は、接種前に医師への相談が必要です。

安心して接種を受けるために、事前に接種可否の条件を確認しておきましょう。

フルミストを接種できる人の条件

フルミストを接種できるのは、2歳以上19歳未満の健康な方です。

とくに、注射を怖がる子どもや、2回の通院が難しいご家庭にとっては有力な選択肢となります。

過去にインフルエンザワクチンで重篤な副反応がなく、現在発熱や急性疾患がない状態であれば、基本的に接種可能です。

ただし、後述する禁忌事項や注意事項に該当しないことが前提となるため、接種前の問診で必ず確認が行われます。

フルミストを接種できない人【禁忌】

以下に該当する方は、フルミストを接種することができません[1][7]

接種不適当者(禁忌)

  • 明らかな発熱を呈している方
  • 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方
  • ワクチンの成分(鶏卵、ゼラチン、ゲンタマイシン、アルギニンなど)によってアナフィラキシーを起こしたことがある方
  • 明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する方
  • 免疫抑制をきたす治療を受けている方
  • 妊娠していることが明らかな方
  • 2歳未満の乳幼児
  • 19歳以上の成人

フルミストの接種に注意が必要な人

以下に該当する方は、接種の可否について医師との相談が必要です[1][7]

  • 重度の喘息がある方
  • 過去1年以内に喘鳴の症状があった方
  • ゼラチンや卵に対するアレルギーがある方
  • アスピリンまたはアスピリン含有製剤を使用している方(とくに15歳未満)
  • 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害などの基礎疾患がある方
  • 過去にけいれんの既往がある方
  • 過去に免疫不全の診断がなされている方と近親者にいる方
  • 授乳中の方

重度の免疫不全状態にある方と同居している場合は注意が必要です。

フルミストは生ワクチンのため、接種後しばらくは鼻咽頭からワクチンウイルスが検出されることがあり、重度の免疫不全の方が同居している場合などは注意が必要です。

ご家族に免疫が低下している方がいる場合は、注射タイプのワクチンを選択することをおすすめします。

フルミストの副反応と対処法

フルミストは安全性が確認されたワクチンですが、接種後に副反応が現れることがあります。

多くは軽度な症状で数日以内に改善しますが、まれに重篤な副反応が起こる可能性もゼロではありません。

接種後に気になる症状が現れた場合は、早めに医療機関に相談することが大切です。

副反応の種類と対処法を事前に知っておくことで、万が一の際にも落ち着いて対応できます。

よくある副反応

フルミストの接種後によく見られる副反応として、鼻閉・鼻漏が最も多く報告されています。

国内の臨床試験では、鼻閉や鼻漏といった鼻症状が59.2%の接種者に認められました[1]

そのほか、せき、咽頭痛、頭痛、倦怠感なども比較的多く見られる副反応です。

これらの症状はほとんどの場合、数日以内に自然に改善するため、過度な心配は必要ありません。

重篤な副反応

まれではありますが、アナフィラキシーなどの重篤な副反応が起こる可能性があります。

アナフィラキシーは、接種後30分以内に発疹、じんましん、呼吸困難、血圧低下などの症状が急速に現れる重篤なアレルギー反応です[5]

そのため、一般的に接種後15〜30分程度は医療機関内で経過観察を行い、異常がないことを確認してから帰宅します。

海外ではベル麻痺を含む脳神経障害、脳炎、けいれん(熱性けいれんを含む)、ギラン・バレー症候群などの報告もあります[1]

帰宅後に呼吸困難や顔面蒼白、意識障害などの症状が現れた場合は、医療機関を受診してください。

副反応が出た場合の対応

軽度の副反応(鼻づまり、せき、微熱など)が現れた場合は、安静にして様子を見ることが基本です。

軽度の副反応への基本的な対応方法は、以下の3つです。

  • 安静にして休養をとる
  • 水分を十分に摂取する
  • 発熱や頭痛がつらい場合は、医師の指示のもとで解熱鎮痛剤を使用

ほとんどの副反応は数日以内に自然におさまります。ただし、症状が3日以上続く場合や、日常生活に支障が出るほどつらい場合は、接種した医療機関に相談してください。

医療機関に相談すべき症状の目安は、以下のとおりです。

  • 症状が数日以上続く場合
  • 日常生活に支障をきたすほど強い症状がある場合
  • 高熱(38.5℃以上)が続く場合
  • 呼吸困難や全身のじんましんが現れた場合

とくに呼吸困難や全身のじんましんはアナフィラキシーの可能性があるため、すぐに医療機関への受診をおすすめします。判断に迷う場合は、救急相談窓口(#7119)や小児救急相談(#8000)を活用するとよいでしょう。

予防接種による健康被害が生じた場合は、予防接種法に基づく救済制度の対象となる場合があります。

フルミストを接種できる医療機関の探し方

フルミストは、すべての医療機関で接種できるわけではありません。

取り扱いのある医療機関は限られているため、事前に確認してから予約することが大切です。

かかりつけの小児科や内科で取り扱いがない場合は、インターネット検索や電話での問い合わせで対応している医療機関を探しましょう。

予約方法や当日の持ち物についても、事前に確認しておくとスムーズに接種を受けられます。

フルミスト取り扱い医療機関の探し方

フルミストを取り扱っている医療機関を探すには、いくつかの方法があります。

主な探し方は、以下の4つです。

  • かかりつけの小児科や内科に電話で問い合わせる
  • インターネットで「フルミスト 接種 (お住まいの地域名)」と検索する
  • お住まいの自治体のウェブサイトで接種可能な医療機関リストを確認する
  • 保健センターに問い合わせる

2024/25年シーズンのフルミスト供給量は130万本と限られているため、取り扱い医療機関も限定的となっています[3]

接種を希望する場合は、早めに医療機関を探して予約することをおすすめします。

予約の方法

フルミストの接種は、ほとんどの医療機関で事前予約が必要です。

電話予約のほか、医療機関によってはウェブ予約システムを導入している場合もあります。

予約の際には、接種希望者の年齢、過去のワクチン接種歴、アレルギーの有無などを聞かれることがあるため、事前に確認しておくとスムーズです。

フルミストは供給量に限りがある場合もあるため、接種を希望する場合は早めに予約することをおすすめします。

接種当日の持ち物について

医療機関によって異なりますが、一般的な持ち物は以下のとおりです。

【接種当日の持ち物】

  • 健康保険証
  • 母子健康手帳(小児の場合)
  • 予診票(事前に配布されている場合)
  • 助成券・接種券(自治体の助成を受ける場合)
  • お薬手帳(服用中のお薬がある場合)

接種前に、受診予定の医療機関のホームページなどで確認すると安心です。

予診票は医療機関の窓口で受け取れる場合もありますが、事前にホームページからダウンロードして記入しておくとスムーズです。

母子健康手帳は接種記録を残すために必要です。忘れた場合は接種できないこともあるため、来院前にかならず確認してください。

接種前日・当日の注意点

ワクチンの効果を最大限に発揮するためには、体調を整えておくことが大切です。

以下のポイントを参考に、接種に備えてください。

  • 前日は十分な睡眠をとる
  • 当日の体調が良好であることを確認する
  • 発熱や体調不良がある場合は、医療機関に連絡のうえ日程を変更する
  • 接種当日は激しい運動を避ける

ワクチンは体調が良好なときに接種することで、効果を最大限に発揮できます。当日朝に37.5℃以上の発熱がある場合や、体調がすぐれない場合は無理に接種せず、日程を変更しましょう。

フルミストは鼻腔内にスプレーするため、鼻水や鼻づまりがひどい場合は効果が十分に得られない可能性があります。鼻の症状がある場合は、接種前に医師に相談してください。

一般的に、接種後は15〜30分程度、医療機関内で待機して体調の変化がないか確認します。帰宅後も激しい運動や長時間の入浴は避け、安静に過ごしましょう。

インフルエンザの予防内服という選択肢

インフルエンザは予防接種以外にも、抗インフルエンザ薬を予防目的で服用する「予防内服」という方法があります。

予防内服とは、治療に使われる抗インフルエンザ薬を感染前に服用することで、発症リスクを下げる方法です。

たとえば、以下のような場面で検討されることがあります。

家族や職場でインフルエンザ感染者が出た場合

受験など、どうしても体調を崩せない予定がある場合

高齢者や基礎疾患のある方など、重症化リスクの高い方が身近にいる場合

ただし、予防内服は保険適用外のため自費での処方となります。また、服用しても100%発症を防げるわけではない点にご留意ください。

予防内服を希望される場合は、医師に処方の可否について相談しましょう。

当院でもインフルエンザ予防内服のオンライン診療を行っております。詳しくは以下のページをご覧ください。


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※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差があります。

点鼻インフルエンザワクチン(フルミスト)についてよくある質問

フルミストについて、多くの方が抱く疑問についてお答えします。接種を検討する際の参考にしてください。

Q. フルミストと注射ワクチン、どちらが効果的ですか?

両者の効果については、研究によって結果が異なるため一概にはいえません。

年齢や体質によって適したワクチンが異なる場合があるため、医師に相談のうえ選択することをおすすめします。

注射が苦手な子どもや1回で接種を完了したい場合は、フルミストが有力な選択肢となります。

Q. フルミストは、何歳から何歳まで接種できますか?

フルミストの接種対象は2歳以上19歳未満です。

2歳未満の乳幼児や19歳以上の成人・高齢者は、注射タイプの不活化ワクチンを選択してください。

年齢以外にも接種できない条件があるため、事前に医師への確認が必要です。

Q. 喘息があっても接種できますか?

喘息がある方は、接種できる場合とできない場合があります。接種前にかならず医師へ相談しましょう。

重度の喘息や過去1年以内に喘鳴の症状があった方は、注射タイプのワクチンが推奨される場合があります[1]

軽度の喘息でコントロールが良好な場合は接種できることもあるため、医師に相談してください。

Q. 接種後にインフルエンザにかかることはありますか?

フルミストを接種しても、インフルエンザにかかる可能性はあります。

ワクチンは発症リスクを下げる効果が期待できますが、100%予防できるものではありません[5]

ただし、接種後1〜2週間程度は、ワクチンウイルスが鼻咽頭に残存する可能性があります[1]。この期間中にインフルエンザの検査を行う場合は、接種歴を医師に伝えてください。

Q. 他の家族にうつることはありますか?

フルミストは弱毒生ワクチンのため、飛沫や接触により弱毒生ワクチンウイルスが周囲の人に伝播する可能性があります[1][7]

とくに、重度の免疫不全状態にある方と同居している場合は注意が必要です。

そのような場合は、接種後1〜2週間程度は密接な接触を避けるか、注射タイプのワクチンを選択することが推奨されています[1]

まとめ

フルミストは、鼻にスプレーするタイプの経鼻インフルエンザワクチンで、2024年から日本でも接種できるようになりました。

接種対象は2歳以上19歳未満で、1シーズンに1回の接種で完了する点が特徴です。

注射による痛みがないため、注射を怖がる子どもでも安心して接種を受けられます。

ただし、免疫不全の方や妊娠中の方、重度の喘息がある方などは接種できない場合があるため、事前確認が必要です。

費用は医療機関によって異なりますが、注射タイプより高額な傾向にあります。

接種を希望する場合は、取り扱いのある医療機関を事前に確認し、早めに予約することをおすすめします。

子どもの年齢や体質に合わせて、注射タイプとフルミストのどちらが適しているか、医師に相談のうえ選択してください。


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参考文献

  1. 日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会「経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方〜医療機関の皆様へ〜」
  2. 第一三共株式会社「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン『フルミスト®点鼻液』発売のお知らせ」
  3. 厚生労働省「第35回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 資料」
  4. 厚生労働省「小児に対するインフルエンザワクチンについて」第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会
  5. 厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」インフルエンザQ&A
  6. 国立感染症研究所「6歳未満児におけるインフルエンザワクチンの有効性:2013/14〜2017/18シーズンのまとめ」IASR Vol.40 p.194-195: 2019年11月号
  7. 第一三共株式会社「フルミスト点鼻液 添付文書」
  8. 厚生労働症「異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔のルールが一部変更されます」