アフターピルとは?緊急避妊薬の基本を解説
アフターピルは、避妊に失敗した際や避妊をしなかった性行為後に、緊急的に妊娠を防ぐために服用するお薬です。
日本産科婦人科学会の指針では、緊急避妊法は「最後の避妊手段」として位置づけられています[1]。
ここでは、アフターピルの基本的な知識と、どのような場面で必要になるかをお伝えします。
アフターピルの目的
アフターピルは、避妊をしなかった性行為や避妊に失敗した性行為の後に、妊娠を防ぐ目的で服用する緊急避妊薬です。
英語では「Emergency Contraception(EC)」と呼ばれ、日本では「緊急避妊薬」「モーニングアフターピル」などの名称で知られています。
通常の避妊法が性行為の前に計画的に行うものであるのに対し、アフターピルは性行為後に緊急避難的に使用する点が大きな特徴といえるでしょう。
日本産科婦人科学会の指針でも、緊急避妊法は性行為後にとられる手段であることから「最後の避妊手段」と位置づけられています[1]。
アフターピルは避妊の失敗に対する最終手段であり、日常的な避妊法として使用するものではありません。
繰り返し必要になる場合は、低用量ピルやIUD(子宮内避妊具)など、より確実な避妊法を検討してください。
低用量ピルとの違い
低用量ピルは毎日決まった時間に服用して排卵を抑制する「定期避妊薬」であり、計画的に妊娠を防ぐために用いられます。
一方、アフターピルは性行為後に1回だけ服用する「緊急避妊薬」で、避妊に失敗した後の最終手段です。
含まれるホルモン量も異なり、アフターピルには低用量ピルよりも高用量のホルモンが含まれています。
- 低用量ピル:目的は計画的な避妊/服用方法は毎日1錠/効果は継続服用で高い避妊効果/日常使用に適している
- アフターピル:目的は緊急避難的な避妊/服用方法は性行為後に1回/効果は服用タイミングで変化/日常使用に適していない
アフターピルは緊急時のみに使用するお薬であり、低用量ピルの代わりにはなりません。
日常的な避妊を希望する方は、低用量ピルの服用を検討してみましょう。
どんなときにアフターピルが必要?
アフターピルは、様々な状況で避妊に失敗した際に必要となります。
日本産科婦人科学会の指針では、コンドームの破損や脱落、低用量ピルの飲み忘れ、膣外射精、性的暴行などが緊急避妊法の適応として挙げられています[1]。
- コンドームのトラブル:破損、脱落、不適切な使用
- 避妊なしの性行為:避妊具を使用しなかった場合
- 低用量ピルの服用忘れ:飲み忘れや下痢による吸収障害
- 膣外射精:外出しでの避妊失敗
- 性的暴行:レイプや性暴力の被害
「コンドームが破れたか分からない」「膣外射精だったけど不安」といった曖昧なケースでも、妊娠の可能性があれば服用を検討すべきです。
自己判断で「大丈夫だろう」と決めつけず、不安が残る場合は医師に相談することをおすすめします。
アフターピルの仕組み|どうやって妊娠を防ぐ?
アフターピルは、主に排卵を抑制・遅延させることで妊娠を防ぐお薬です。
日本産科婦人科学会の指針によると、アフターピルの効果は主に着床の阻害よりも排卵の抑制または遅延によるものと考えられています[1]。
服用するタイミングによって効果の出方が変わるため、できるだけ早く服用することが重要です。
ここでは、アフターピルが妊娠を防ぐ仕組みについてお伝えします。
排卵を抑制・遅延させる
アフターピルの主な作用は、排卵の抑制・遅延です。
排卵前にアフターピルを服用すると、排卵を止めたり遅らせたりすることで、卵子と精子が出会うことを防ぎます。
日本産科婦人科学会の指針によると、LHサージ前(卵胞サイズ15mm未満)にレボノルゲストレルが投与された場合、約80%の女性で5日以上排卵が抑制されるとのことです[1]。
精子は女性の体内で最大5〜7日間程度生存できるとされていますが、受精能力を維持できるのはより短い期間であり、排卵が抑制されている間に受精能力を失います。
排卵前に服用すれば、卵子と精子が出会わないため妊娠は成立しません。
排卵前の服用が最も効果的であることを覚えておきましょう。
子宮頸管粘液を変化させる
アフターピルには、子宮頸管粘液を変化させる作用もあるとされています。子宮頸管粘液の粘度が高まることで、精子が子宮内に侵入しにくい環境を作り出すと考えられています。
排卵抑制効果と合わせて、精子が卵子にたどり着くことを防ぐ働きが期待できるでしょう。
ただし、この作用は排卵抑制に比べると補助的なものと考えられています。アフターピルの主な効果は排卵の抑制・遅延であり、子宮頸管粘液の変化は追加的な作用と理解しておきましょう。
いずれにしても、服用が早いほど効果が高まることに変わりはありません。
排卵後に服用した場合の効果
排卵後にアフターピルを服用した場合、排卵抑制効果は得られないため、効果が限定的になる可能性があります。
すでに排卵が起きていれば、アフターピルで排卵を止めることはできません。
ただし、排卵後であっても受精を阻害する効果が期待できる場合もあるとされています。
重要なのは、排卵のタイミングは自分では正確に把握できないという点です。
生理周期から排卵日を予測しても、実際の排卵日はずれることが多いため、「排卵後だから意味がない」と自己判断で諦めるべきではありません。
期限内であれば服用する意味は十分にあるため、迷わず医師に相談しましょう。
性行為後のアフターピルの効果|72時間以内なら間に合う?
アフターピルの効果は、性行為からの経過時間によって大きく変わります。時間が経過するにつれて効果は低下していきますが、期限内であれば服用する意味は十分にあります。
経過時間別の妊娠阻止率[3]
- 24時間以内:妊娠阻止率約95%/使用できるお薬はノルレボ(レボノルゲストレル)
- 24〜48時間:妊娠阻止率約85%/使用できるお薬はノルレボ(レボノルゲストレル)
- 48〜72時間:妊娠阻止率約58%/使用できるお薬はノルレボ(レボノルゲストレル)
- 72〜120時間:効果あり/使用できるお薬はエラワン(エラ)
ここでは、経過時間別の効果と、どのタイミングで服用すべきかをお伝えします。
24時間以内|約95%の妊娠阻止率
性行為から24時間以内にアフターピルを服用すれば、約95%の妊娠阻止率が期待できます[3]。この段階であれば、72時間用のノルレボやレボノルゲストレルで十分な効果が見込めるでしょう。
「間に合うかどうか」と迷う時間があれば、気づいた時点ですぐに処方を受けることが大切です。24時間以内であれば、通常配送で翌日届いても十分に効果が期待できる時間的余裕があります。
ただし、服用が早ければ早いほど効果は高まるため、「まだ時間があるから後でいい」と先延ばしにするのは避けましょう。
24〜48時間|約85%の妊娠阻止率
性行為から24〜48時間経過している場合でも、約85%の妊娠阻止率が期待できます[3]。24時間以内と比べると若干下がりますが、まだ十分に高い効果が見込める段階です。
「もう1日経ってしまった」と焦る方もいますが、この段階であれば72時間用のアフターピルで問題なく対応できます。48時間以内であれば、翌日届く通常配送でも72時間以内に服用できる可能性が高いでしょう。
ただし、ギリギリまで待つ必要はないため、気づいた時点ですぐに処方を受けることが重要です。
48〜72時間|約58%の妊娠阻止率
性行為から48〜72時間経過している場合、妊娠阻止率は約58%まで低下します[3]。24時間以内と比べると効果は下がりますが、「服用しても意味がない」というレベルではありません。
アフターピルを服用しなかった場合の妊娠リスクと比較すれば、服用した方が妊娠を防げる可能性は明らかに高まります。「もう2日以上経ってしまった」と諦めかけている方も多いですが、72時間以内であればまだ間に合います。
この段階では時間との勝負になるため、通常配送ではなくバイク便を利用するか、産婦人科をすぐに受診することを検討しましょう。
72時間ギリギリの場合は、120時間用のエラワンに切り替えるかどうかも医師に相談してみてください。
72時間後に飲んでも意味はない?120時間用エラワンという選択肢
「72時間を過ぎたらもう意味がない」と思っている方は多いですが、これは正確ではありません。72時間用のノルレボやレボノルゲストレルでは効果が期待しにくくなりますが、120時間用のエラワンであれば避妊効果が期待できます。
72時間を過ぎてしまっても、120時間以内であれば諦める必要はありません。
ここでは、72時間後の服用と120時間用エラワンについてお伝えします。
72時間を過ぎると効果はどうなる?
72時間用のアフターピル(ノルレボ・レボノルゲストレル)は、72時間を過ぎると効果が期待しにくくなります。
日本産科婦人科学会の指針によると、WHOによる研究において、72時間を超えてレボノルゲストレルを投与した場合でも、妊娠率の低下が認められたとされています[1]。
72時間をわずかに超えた場合、医師の判断で72時間用が処方されることもあるでしょう。
ただし、添付文書上は72時間以内の服用が推奨されているため、72時間を過ぎた場合は120時間用のエラワンを選択する方が確実です。
「72時間を過ぎたから諦める」のではなく、まずは医師に相談することが大切です。
120時間用エラワンなら72時間を過ぎても対応可能
エラワン(エラ)は、性行為から120時間(5日間)以内であれば避妊効果が期待できる120時間用のアフターピルです。
有効成分はウリプリスタル酢酸エステルで、72時間用のレボノルゲストレルとは異なる作用の仕組みを持っています。
72時間を超えた時点でも、レボノルゲストレルより高い効果を維持するとされており、72時間を過ぎた方の選択肢となります。
エラワンは日本では未承認のお薬ですが、アメリカ食品医薬品局(FDA)では2010年に緊急避妊薬として承認されています[4]。オンライン診療であれば自由診療として処方を受けることが可能です。
エラワン(エラ):有効成分はウリプリスタル酢酸エステル/有効時間は120時間(5日間)以内/国内承認は未承認(自由診療で処方可)/価格相場は9,680〜20,000円程度
「72時間を過ぎたから、もうアフターピルは意味がない」と思っている方も多いですが、エラワンという選択肢があることを覚えておきましょう。
72時間を過ぎてしまった場合は、エラワンを取り扱っているクリニックにすぐ相談してください。
時間が経っていても「飲まない」より「飲む」方がいい理由
「もう時間が経ちすぎているから意味がない」と自己判断で諦めてしまう方がいますが、これが最も避けるべき選択です。
排卵のタイミングは自分では正確に把握できないため、時間が経っていても排卵前であれば効果が期待できる可能性があります。生理周期から排卵日を予測しても、実際の排卵日はずれることが多く、「この時期だから大丈夫」という判断は危険です。
期限内であれば一定の避妊効果が残っているため、「飲まない」よりも「飲む」方が妊娠リスクを下げられます。アフターピルを服用しなかった場合と比較すれば、遅れてでも服用した方が妊娠を防げる確率は明らかに高まるでしょう。
「間に合うかどうか」は医師が判断し処方を検討しますので、自己判断で諦めず、迷っている時間があればすぐに相談してください。
エラワンとノルレボの違い|どちらを選ぶべき?
アフターピルには、主にノルレボ(レボノルゲストレル)とエラワン(ウリプリスタル酢酸エステル)の2種類があります。
どちらも緊急避妊薬ですが、有効時間や成分、価格などが異なります。自分の状況に合ったお薬を選ぶことで、より高い避妊効果が期待できるでしょう。
ここでは、2種類のアフターピルの違いと選び方についてお伝えします。
ノルレボ(レボノルゲストレル)の特徴
ノルレボは、レボノルゲストレルを有効成分とする72時間用のアフターピルです。
日本国内で唯一承認されている緊急避妊薬であり、産婦人科やオンライン診療で広く処方されています[2]。
性行為後72時間以内に1錠を服用することで、妊娠を防ぐ効果が期待できます。
ジェネリック医薬品(後発品)も発売されており、先発品と同じ成分で価格を抑えることが可能です。
ノルレボ:有効成分はレボノルゲストレル/有効時間は72時間以内/国内承認あり/クリニックフォアでの価格は8,778~17,600円/処方場所は産婦人科、オンライン診療、一部薬局(試験販売)
72時間以内であればノルレボやレボノルゲストレルで十分な効果が期待できます。
国内承認薬のため、医薬品副作用被害救済制度の対象となる点も安心材料でしょう。
エラワン(ウリプリスタル酢酸エステル)の特徴
エラワン(エラ)は、ウリプリスタル酢酸エステルを有効成分とする120時間用のアフターピルです。
性行為から120時間(5日間)以内であれば避妊効果が期待でき、72時間を超えた方の選択肢となります。
日本では未承認のお薬ですが、アメリカ食品医薬品局(FDA)では2010年に緊急避妊薬として承認されています。
エラワン:有効成分はウリプリスタル酢酸エステル/有効時間は120時間以内/国内承認なし(自由診療で処方可)/クリニックフォアでの価格は8,965~9,680円/処方場所はオンライン診療が中心
日本では未承認のため、万が一重篤な副作用が出た場合は医薬品副作用被害救済制度の対象外となる点に注意が必要です。
オンライン診療ではエラワンを取り扱っているクリニックも多いため、72時間を過ぎた方は相談してみましょう。
経過時間別の選び方
ノルレボとエラワンのどちらを選ぶべきかは、性行為からの経過時間によって判断します。
72時間以内であれば、国内承認されているノルレボやレボノルゲストレルで十分な効果が期待できます。
72時間を過ぎている場合は、120時間用のエラワンを選択しましょう。
72時間以内:ノルレボ・レボノルゲストレルが推奨/国内承認、広く処方
72〜120時間:エラワンが推奨/120時間用で対応
クリニックフォアのアフターピル処方
クリニックフォアでは、オンライン診療・対面診療の両方でアフターピルの処方が可能です。
オンライン診療の場合、目安として16時までに決済いただければ当日発送し、翌日届くスピード対応が可能です。
※発送日は決済完了時間により前後します。
※北海道、中国、四国、九州、沖縄、その他離島に関しましては、発送からお届けまで最短2日必要となります。
※オンライン診療では、お薬代に加え、診察料1,650円・配送料550円が別途かかります。
※対面診療では処方可能なお薬が限られます。また、別途診察料1,650〜3,850円がかかります。
アフターピルの料金
- エラワン後発品(海外製):有効時間120時間/価格8,965円(税込)
- エラワン(海外製):有効時間120時間/価格9,680円(税込)
- ノルレボ(海外製)※1回2錠:有効時間72時間/価格8,778円(税込)
- ノルレボ(国内後発品):有効時間72時間/価格9,680円(税込)
- ノルレボ(国内先発品):有効時間72時間/価格17,600円(税込)
よくある質問
性行為後のアフターピルについてよくある質問にお答えします。
アフターピルは薬局で買えますか?
2023年11月より、厚生労働省の委託事業として一部の薬局で試験販売が開始されています[5]。ただし、調査研究への参加同意や質問への協力が必要であり、対応薬局も限られています。
確実に入手するなら、産婦人科またはオンライン診療で処方を受けることをおすすめします。試験販売の対象は18歳以上の女性で、価格は7,000〜9,000円程度です[5]。
アフターピルの副作用はどのような症状ですか?
アフターピル服用後は、吐き気、頭痛、倦怠感、不正出血などの症状が起こることがあります。
日本産科婦人科学会の指針によると、レボノルゲストレル服用後の悪心は3.6%に認められますが、嘔吐はほとんどみられないとされています[1]。
これらの症状は一時的なもので、多くの場合24時間以内に治まります。服用後2時間以内に吐いた場合は、お薬が十分に吸収されていない可能性があるため、処方を受けた医療機関に連絡してください。
アフターピルを飲んだ後、生理はいつ来ますか?
日本産科婦人科学会の指針によると、アフターピル服用後は80%以上の女性が予定月経日の前または2日後以内に月経があり、95%が予定月経日の7日後以内に月経があるとされています[1]。
月経が予定より7日以上遅れた場合や、通常より出血が軽い場合には、妊娠検査を受けることが推奨されています。
消退出血が数日〜1週間程度で起こることもありますが、通常の生理との見分けが難しい場合もあります。
そのため、お薬を服用してから3週間経過したら、妊娠検査薬で確認しましょう
アフターピルは何回まで飲んでいいですか?
回数制限はありませんが、頻繁な服用は推奨されていません。日本産科婦人科学会の指針では、緊急避妊薬は頻用するものではないとされています[1]。
繰り返し必要になる場合は、低用量ピルやIUD(子宮内避妊具)など、より確実な避妊法を検討することをおすすめします。
アフターピルはあくまで「緊急時の最終手段」として位置づけるべきです。
まとめ
アフターピルは性行為後72時間以内の服用が推奨されており、服用が早いほど避妊効果は高まります。
ノルレボ(レボノルゲストレ)であれば72時間以内、エラワンであれば120時間以内の服用でば約95%の妊娠阻止率が期待でき、迷っている時間があればすぐに処方を受けることが大切です。
72時間を過ぎてしまった場合でも、120時間用のエラワンであれば避妊効果が期待できます。
「もう遅い」と自己判断で諦めることは避け、期限内であれば必ず医師に相談しましょう。
