PMDDの可能性は? まずはセルフチェック
月経前に気分の落ち込みや倦怠感などを感じる、心身がとてもつらいと感じる場合、それはPMDDの可能性が考えられます。まずはセルフチェックしてみましょう。
過去1年間の月経周期(特に生理前)において、以下の症状・自覚がないか思い出してみましょう。当てはまる項目を数えてみてください。
- 著しい抑うつ気分、絶望感、自己卑下の観念を持つことがある
- 著しい不安、緊張、“緊張が高まっている”とか“いらだっている”という自覚がある
- 著しい情緒不安定感がある(例: 突然悲しくなるまたは涙もろくなる、拒絶に対する敏感さが増大する)
- 持続的に著しい怒りを持つ、ささいなことでも怒りっぽくなる、または対人関係で摩擦が増加する
- 日常の活動(例: 仕事、学校、友人、趣味)に対する興味が減退する
- 物事にまったく集中できない
- 倦怠感、特に激しく体を動かしていないのに疲れやすい、または気力が著しく欠如する
- 著しい食欲の変化がある、過食、または特定の食物を著しく求める
- 過眠または不眠の症状がある
- 圧倒されたり、自分の制御が不可能になることがある
- 乳房の圧痛または炎症などに伴う腫れ、頭痛、関節痛または筋肉痛、“膨らんでいる”感覚、体重増加といった他の身体症状がある
特に以下の内容すべてが当てはまる場合は、PMDDの可能性が高いと言えるでしょう。
- 上記の症状の5つ以上が、生理がくる前の最後の週の大半に存在する
- 月経後に消失し始め、月経後1週間は存在しない
- 1〜4のいずれかの症状が少なくとも1つ存在する
PMDDは「月経周期に連動して起こる不快な症状」のこと
PMDDとは、月経周期に連動して起こる不快な症状のことを指します。PMDDとよく似た言葉にPMSがあり、その症状はとても似ていますが、PMSに比べて精神症状がより強く表れるのがPMDDです。まずはPMDDやPMSとの違いについて、押さえておきましょう。
PMDDは主に「月経前」に発症する
PMDDは月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder)とも呼ばれ、月経前に3〜10日間程度、不快な状態が続きます。この期間、精神的な症状や身体的な症状が出ますが、月経が始まると徐々に症状がなくなる(または軽くなる)のが特徴です。
日本では月経のある女性の約70〜80%が、月経前に何らかの症状があるとされています*。
*参考:公益社団法人 日本産婦人学会「月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)」
PMDDとPMSとの違いは”精神症状”
PMDDとよく似た状態に、PMSがあります。PMSはPMDDと同じように、毎月の月経前に症状が表れ、月経後に軽快しますが、その症状は異なります。
PMSは、倦怠感や胸の張り・頭痛など身体的な症状と、イライラや不安感・不眠などの精神的な症状が同程度、もしくは身体的な症状が強く出ている場合。一方、自分自身では感情をコントロールできず、対人関係など社会生活において支障が出るほど精神症状が強く出ている場合は、PMDDである可能性があります。
つまり、月経による影響が「身体>精神の場合はPMS」、「身体<精神状態の場合をPMDD」と呼びます。
ある研究によると、PMDDは月経がある女性の1.8~5.8%が該当すると報告されています*。これは、重症のPMSとみなされていた人たちの割合とほぼ一致しているようです。
PMDDの原因は、いまだ不明
PMDDやPMSの原因は、まだはっきりとは分かっていません。しかし、月経周期に関連してその症状が現れるため、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の変動や、脳の中の伝達物質などが関わっているのではと考えられています。そのほか、ストレスなどの要因も関係しているともされています。
PMDDの対処法は大きく2つ
PMDDやPMSで悩んでいる場合、お薬の服用やセルフケアを行うことで対策できます。つらい症状を緩和するためには、どのような方法があるのか具体的に紹介していきます。
「お薬」による治療を受ける
PMDDやPMSの症状がつらいと感じる場合、お薬によってその症状を緩和できます。
PMDDやPMSは、排卵によって生じる一連の女性ホルモンの変動などが原因とされているため、排卵を抑えるお薬を服用することでその症状を止められます。代表的なお薬として低用量ピル(OC、低用量経口避妊薬)があります。なお、低用量ピルの働きは女性ホルモンをコントロールして一時的に排卵を止めます。そのため、妊娠を希望する場合は、お薬の服用を中止すれば妊娠活動に影響を与える心配はありません。
また他にも、精神的な症状に対して向精神薬を処方されたり、体質や症状に合せて漢方薬が処方されたりすることもあります。
「セルフケア」を行う
お薬を服用せずに、自分でできるセルフケアを行うことで、症状の緩和を目指す方法もあります。まずは自分自身がPMDDやPMSのときに、どのような症状が出ているのか把握しましょう。
セルフケアの方法の1つとして、ストレスをできるだけ溜めないようにリラックスできる時間を作ったり、バランスの良い食事や適度な運動をしたりなど、生活習慣を見直すことも大切。特に食事では、イライラや不安感に良い影響を与えるとされる、カルシウムやマグネシウムを含む食べ物を積極的に摂ると良いでしょう。例えばカルシウムなら、牛乳やチーズなどの乳製品、納豆、豆腐などの大豆製品など。またマグネシウムは、ナッツ類や小松菜などの緑黄色野菜などに含まれています。
ほかにも、PMDDを自覚する間は仕事量を調整したり、カフェインやアルコールを控えたりすることもおすすめです。
自分の症状や傾向を把握して、PMDDの対策をしよう
PMDDとは、月経前に起こる不快な心身症状のうち、精神症状が強く表れている状態を言います。はっきりとした原因は分かっていないものの、排卵に伴って起こるホルモン変動が関係していると考えられているため、ピルなどによる対策が有効とされています。また体質に合わせた漢方薬の服用や、リラックスをしてストレスを溜めないようにするなど、自分に合った対策をとることで症状改善を期待できる場合もあるでしょう。PMDDやPMSなどによるつらい症状は、1人で悩まずに、まずは産婦人科等のクリニックで相談してみてはいかがでしょうか。
*参考 大坪天平(2018)「精神科からみたPMS/PMDDの病態と治療」
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